仮面ライダーウィザード FANTASTIC DAYS   作:青空野郎

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第12話 約束を果たす時

突如として発生した地震をきっかけにフロニャルドの景色は一変した。

先ほどまでの晴天が嘘のように暗雲の隙間から雷鳴迸る曇天へと上昇する天空武闘台に取り残されたレオンとミルヒは不安を抱いていた。

 

『こ、これはいったい!? グラナ砦名物、天空武闘台が上昇しているように見えますが………』

 

「ちょ!? あ、あれ!!」

 

丁度パーシーとカメラマンの実況を耳にしながら見上げた先―――武闘台のさらに上、暗雲をかき分けるようにゆっくりと降下するように現れたのはひとつの巨大な黒い球体だった。

自分たちなどちっぽけに思えてしまうほど、常識外れで圧倒的な大きさを誇るそれは見方によっては繭のように見て取れる。

禍々しく、圧倒的な存在感に、ミルヒは息をのんだ。

 

「あれは、このあたりの土地神様……?」

 

「いや、ちがう」

 

しかし、ミルヒの言葉は同じく繭を見上げるレオンによって否定された。

 

「昔、ダルキアンに聞いたであろう。おそらくは、あれがかつて地の底に封じられたという禍々しき魔物であろうよ」

 

そして、レオンの言葉を証明するように、繭の中で蠢いていた存在の目が開かれた。

 

ルオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!

 

瞬間、大気を震わせる咆哮と呼応するようにグラな砦を中心とした各地から火柱が燃え立った。

 

                      ☆

 

「なんだあれ……」

 

時を同じくして、晴人も巨大な繭状の存在に呆然とつぶやいた。

火柱が連鎖的に激発していく天変地異に誰もが逃げ惑う中、人々の流れに逆らうように晴人はマシンウィンガーで駆けている。

そして現れた繭に茫然自失となりながらも、晴人は武闘台に残されたレオンとミルヒの姿を認めた。

 

「レオンちゃん……!」

 

うねるように闇黒が流動する禍々しい存在に言い知れない胸騒ぎを覚え、晴人はマシンウィンガーをさらに加速さるのだった。

 

                      ☆

 

晴人の心配をよそに、事態はさらに悪化の一途をたどっていく。

天へ牙を立てるかのように次々と発生していく火柱の一本が武闘台をかすめた。

 

「きゃあっ!?」

 

運よく直撃は免れたが、宙空を漂う武闘台を襲う激しい振動にミルヒはその場で体勢を崩してしまった。

 

「ミルヒ!」

 

すぐにレオンが立ち上がろうとするが―――――

 

ォォォオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!

 

耳をつんざくような咆哮に堪らず膝をついてしまう。

未だ事態を飲み込みきれないまま再度視線を上方に移した瞬間、レオンもミルヒも言葉を失った。

繭の中に封じられている魔物が抜け出そうと必死にもがいていたのだ。

増悪していく事態になす術を見つけられないまま呆然とするそんな時、ミルヒは気づいた。

彼女が見る日が見つめる先―――魔獣の身体のある一点に何かが刺さっていた。

 

―――大きくて怖い魔物かもしれないけど……あの子、泣いている?―――

 

なぜそう思ったのか明確な根拠はない。

だが、そう思った途端、ミルヒには魔物の咆哮が哀哭に聞こえてならなかった。

そうして蠢いていた魔獣は繭を突き破り、ついにその姿を現した。

冷たく爛々と輝く両の複眼と剥き出しに生え揃う牙を併せ持った狐のような頭部。

生気が感じられない骸のような外皮に覆われた巨大な四肢と5つ尾の獣。

まさに、レオンが夢で見た魔物の姿そのものであった。

辺りにドス黒い瘴気を撒き散らしながら魔物の周囲に霊魂のような浮遊霊が出現していく。

禍々しいその姿に言葉を失うミルヒは無意識の内にエクセリードを握る手に力を込めた。

 

ヴォルルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンッッ!!!

 

エクセリードを認めた魔物は三度産声のような咆哮を轟かせた。

その矢庭、レオンとミルヒの背後から無数の触手が武闘台の床を突き破り現れた。

それぞれの触手の先端には接合された刀剣類の武器が鈍い光を見せつけている。

 

「―――ッ!」

 

再び魔物が咆哮を上げると同時、レオンは即座に反応した。

蛇のようにうねっていた触手が刀剣の切っ先をミルヒに目掛けて迫ってきたのである。

 

「はぁあぁああッ!」

 

前に躍り出たレオンが防壁の紋章術を発動させて攻撃からミルヒを庇った。

 

「でやあああああああああ!」

 

第一射、第二射と攻撃を防ぎながら、レオンは裂帛の気合いともにグランヴェールを振るって触手をまとめて切り落とす。

 

「ミルヒ、無事か?」

 

「え、はい…」

 

安否を確認するレオンにミルヒは困惑気味にも頷く。

その時、ミルヒの視界にレオンの背後で触手が映り込んだ。

背中を向けているレオンは銀光となって忍び寄る狂気に気づいていない。

 

「レオ様、危ない!」

 

前に飛び出したミルヒがレオンを庇うようにエクセリードを構えて防御しようとした。

 

「―――ダメじゃ、ミルヒ!」

 

その光景に全身の血が凍るような感覚に襲われレオンが叫ぶ。

しかし―――――触手の刃がエクセリードの刀身を貫き、ミルヒの身体を切り裂いた。

 

「――ぁ―――」

 

目の前で舞う鮮血に、星詠みで見た悪夢が蘇る。

さらに現実は無慈悲にも、声にならない声を漏らすレオンに追い打ちをかける。

血の気を失うレオンの視界に、横手から現れた触手が刀身の腹でミルヒの脇腹を殴りつけたのだ。

鈍い音とともに吹っ飛ばされてしまったミルヒは、浮遊していた霊魂のひとつに飲み込まれてしまい、そのまま魔獣のもとへ導かれるように消えていった。

 

「ミル―――――」

 

なす術もなく呆然と立ち尽くすレオン。

これはいったい何の冗談なのだろうか?

最初は真っ白だった頭の中にふつふつと言い表せない感情が込み上げてくる。

そして、現実をようやく頭が理解した瞬間、理性が弾けた。

 

「キサマァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」

 

怒髪天を衝かれ、憤怒の咆哮をあげて怒り狂うレオン

それはミルヒを守れなかった慟哭であり、怒号。

レオンの感情に呼応し、グランヴェールに集中する輝力が曇天の暗闇を照らし、大気を震わせる。

その光景に魔獣が低く唸る。

放たれる輝力の波動に本能で危惧を覚えたのだろう、魔獣が著大な尾の一本をレオンに叩き付ける。

 

「うおおおおおおおおおおおッ!」

 

だがレオンは輝力を纏わせたグランヴェールの斬撃で魔獣の尾を切断した。

苦悶の唸りをあげる魔獣にミルヒの救出に駆け出すレオン。

魔獣はレオンの行く手を阻もうと再び武闘台を突き破り、刃の触手が襲い掛かる。

レオンは素早く跳躍し、逆に触手の上に飛び乗りさらに魔獣へと迫る。

すかさず魔獣は浮遊霊を弾丸の如く幕無しに発射する。

質より量。

雨のように降り注ぐ浮遊霊に武闘台が粉々に破壊される。

 

「おおおおォォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

しかし、さらに高く跳躍してかわしたレオンが獅子の如き雄叫びとともにグランヴェールを振り下ろす。

とめどなく湧き上がる怒りを本能の赴くまま繰り出された一撃で輝力が爆ぜ、激しくスパークを発生させて砂煙を巻き上げた。

かろうじて宙空を漂っていた武闘台の残骸に着地するレオンは煙が立ち込める前方を見据える。

 

「ミルヒ……ミルヒィッ!」

 

レオンが沈痛な面持ちでミルヒを呼ぶが、やはり彼女が答えることはない。

 

「まだ無事なはずじゃ………すぐに助け出せばきっと!」

 

ヴォルルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

一度本能のままに暴れ狂ったおかげか、ある程度の冷静を取り戻し、荒れる息を整えながら自身に言い聞かせるレオンの瞳にはまだ諦めの色は消えていなかった。

しかし、わずかに残るレオンの希望をあざ笑うかのように邪悪な咆哮が風塵を吹き飛ばし、魔獣が姿を現した。

レオンの一撃を食らっても尚、その出で立ちは未だ健在。

同時に、魔獣は禍々しい輝力を宿らせた尻尾をレオン目がけて振り下ろす。

レオンもまたグランヴェールに輝力を纏わせて迎え撃つ。

大きな力がぶつかり合い拮抗する。

踏ん張りをきかせようとさらに力を込めるレオンだったがしかし、先に足場が限界を迎えてしまった。

さらには体勢が崩れたところに追い打ちをかけるように重ねて尻尾で叩き付けられた。

途端に逃げ場を失った衝撃が全身を駆け巡る。

風圧と重力に逆らえるはずのもなくレオンは地上へと落ちていく。

真っ逆さまに墜落するレオンの姿を見た瞬間、グラナ砦に残されていたルージュは駆け出した。

もしも地面に激突してしまえば果たしてどうなるか……。

 

「レオさま!」

 

導き出される答えに青ざめるルージュが叫ぶが、その声も、伸ばした腕もレオンには届かない。

もう間に合わないことも理解してしまう。

何もできない己の無力さに言葉も出ない。

しかし、それでもルージュは願わずにはいられなかった。

―――誰か―――助けて!

ルージュが心の中で強く叫んだその刹那―――。

 

【ハリケーン!プリーズ!】

 

【フー!フー!フーフーフーフー!】

 

突として発生した烈風にルージュは思わず目を瞑る。

耳朶を打つ聞き覚えのある機械音に、心当たりは一人しかいない。

ルージュが瞼を開いたその先に、レオンを抱きかかえたウィザード(晴人)の姿があった。

 

「ハルトさま!」

 

ルージュの声を背中越しに聞きながら晴人はレオンに目を向ける。

 

「ぅぅ………ハル、ト……」

 

多少外傷は見られるが意識は保てているようで、晴人は安堵する。

 

「大丈夫か、レオンちゃん」

 

「……ああ、すまん。また助けられたな」

 

全身に走る痛みに表情をゆがませながら、かすれる声音を漏らすレオン。

駆け寄るルージュと晴人に支えられて立ち上がるレオンたちの視線の先では、地に足をつけた魔獣がグラナ砦から移動を始めていた。

 

                      ☆

 

「ミルヒは今、あの魔物に取り込まれつつある。だが、今はまだ聖剣の守護が働いている。それもミルヒの輝力次第だ。いつまでもはもたん」

 

切羽詰まった面持ちで経緯を説明するレオンの隣で晴人は焦りを隠せなかった。

魔獣は既に遥か彼方へと進撃している。

ミルヒの安否についてもそうだが、もしも適当な都市や町が魔獣の通過点になってしまえば最後、世界中が人々の阿鼻叫喚の巷と化してしまうだろう。

悠長にしている暇はないと判断した晴人の行動は早かった。

 

「なら、すぐに助けに行かないとな」

 

即決と同時に晴人は指輪を取り換えた左手をウィザードライバーのハンドオーサーにかざした。

 

【ハリケーン!ドラゴン!】

 

【ビュー!ビュー!ビュービュービュービュー!】

 

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!

 

頭上に掲げた魔方陣から現れ出でた風のエレメントのドラゴンが咆哮とともに翠嵐を生み出し、晴人を包み込む。

穢れを清める風がウィザーローブを緑よりさらに鮮やかな翡翠色に染め上げる。

最後に渦巻く暴風を振り払い、晴人はハリケーンスタイルの進化形態、ウィザード・ハリケーンドラゴンへのスタイルチェンジを完了させた。

そして晴人が再び指輪に手をかけた時だった。

 

「ワシも一緒に連れてってくれ!」

 

いきなりの申し出に晴人はレオンに視線を向けた。

 

「何をおっしゃるんですかレオさま!?そのお身体では……!」

 

だが当然、レオンを支えているルージュが止めに入った。

彼女の言うとおり、手負いの状態のレオンを連れて行くことは得策ではない。

しかし、元から引き下がるつもりがなかったのかレオンはルージュの手を振り払い晴人に詰め寄る。

 

「頼む!」

 

息の届く至近距離で見上げるレオン。

晴人はその瞳に揺るぎない決意の光を確かに認めた。

 

「…………わかった」

 

「ハルトさま!?」

 

「大丈夫。ミルヒちゃんも助けてすぐに戻ってくるさ」

 

【チョーイイネ!スペシャル!サイコー!】

 

多少強引気味ではあるがルージュを説得し、再び呼び出したドラゴンが晴人と重なると、晴人の背部にウィザードラゴンの翼―――ドラゴウィングが実体化させた。

 

「しっかりつかまってろよ」

 

頷くレオンの腰に手を回し、晴人空高く飛翔した。

残されたルージュはただ、晴人たちの無事を祈るばかりだった。

 

                      ☆

 

風を切り裂き、翠の軌道を描きながら晴人たちはみるみるうちに魔獣に迫っていく。

最初は豆粒程度の大きさ認識していたはずが、今では魔獣の体躯が視界の半分を埋め尽くそうとする勢いだ。

晴人たちは瓦礫が浮遊するエリアに差し掛かった。

大きさはまちまちだが、小惑星隊のような一帯を築くそれらは正しく鈍器の群集。

しかし晴人は迂回するどころかウィザーローブでレオンを庇いつつ、さらに速度を上げていく。

羽ばたくドラゴンウイングが生み出すかまいたちが一帯に漂う岩石を微塵に砕いていく。

瓦礫群を難なく通過した晴人たちだったが、今度は魔獣の周囲に屯していた浮遊霊が縦横無尽に晴人たちを撃ち落とそうと押し寄せてきた。

だが晴人は今更回避しようとは思わない。

晴人はレオンの腰に回した腕にさらに力を込めた。

 

「―――ッ!?バカ!どこを触っておる!?」

 

「しゃべると舌噛むぜ!」

 

突然のことで動揺したレオンの羞恥の怒りをサラリと流し、晴人は指輪をハンドオーサーにかざした。

 

【チョーイイネ!サンダー!サイコー!】

 

すると、晴人の周囲に翠の光を放つ雷が発生し、晴人の速度が音速を超える。

 

「はあああああッ!」

 

雷を纏った、ハリケーンドラゴンの必殺技―――ドラゴンソニックが、襲い掛かる浮遊霊を次々と消滅させていった。

そして最後の関門を真正面から突破した晴人とレオンの視界が開けた。

晴人はハリケーンドラゴンウィザードリングを付け替え、また新たな指輪をハンドオーサーにかざした。

 

【ランド!ドラゴン!】

 

【ダン!デン!ドン!ズドゴーン!ダン!デン!ドゴーン!】

 

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!

 

咆哮する土のエレメントのドラゴンが砂塵の嵐とともに晴人の周りを旋回する。

そして今度はランドスタイルの進化形態であるランドドラゴンにスタイルチェンジした。

同時に、風圧ではためく琥珀色のウィザーローブ翻しながら、ついに晴人とレオンは魔獣の背中に着地した。

もう目の前には浮遊霊に飲み込まれ、意識を失っているミルヒがいる。

しかし、2人の行く手を阻むかのように無数の浮遊霊が現れる。

 

「チィッ!まったく、次から次へと……!」

 

「このまま一気に突っ切るぜ、レオンちゃん!」

 

苛立ちまぎれに舌打ちするレオンに晴人が戦意を同調させて、駆け出そうとした時だった。

 

ヴォロオオオオオオオオオオオオオッ!!

 

唐突の魔獣の咆哮に晴人たちの出鼻がくじかれた。

魔獣の咆哮に呼応して事態はさらに退転する。

 

「ハルト、アレは!」

 

レオンの声に反応し、彼女が指差す方向に視線を向ける。

2人の目の前で骸のような外皮に走る亀裂からドス黒い黒血が噴き出したかと思うと、黒血がひとりでに動きだし、ひとつ、またひとつと人の形を形成していくのだ。

そして黒血の塊がその姿を完成させた時、晴人は我が目を疑った

頭部に生える2本の角に、石の如き硬質な皮膚に罅のようなラインが走る身体。

見間違えるはずもない。

元の世界で幾度となく相対し、フロニャルドでも度々出現した晴人の敵。

 

「グール!?まさかこいつがファントムを生み出していたのか!?」

 

明確な理由は不明だが、確かに今目の前で魔獣がグールを生み出したのだ。

さすがの晴人も目の前の事態に驚きを隠せなかった。

だが同時に驚愕で立ち尽くしている場合でもないこともまた事実である。

 

「ここは俺が引き受ける。レオンちゃんは先に行け」

 

「ハルト……。いや、だがしかし―――」

 

【チョーイイネ!グラビティ!サイコー!】

 

レオンの反論を遮るように魔法を発動させた晴人は重力を操る魔方陣を通じてグールと浮遊霊をまとめて押し潰す。

凄まじい重力に耐えきれず爆発霧散するグールと浮遊霊を見据え、晴人はレオンを促す。

 

「いいから。とっととミルヒちゃんを助けて、早く仲直りしてきなよ」

 

「………すまぬ!」

 

晴人の好意を受け取り、ミルヒの元へと走り行くレオンの背中を見送る。

すると、やはりまた新たなグールと浮遊霊が生み出される。

すぐさまグールと浮遊霊が背を向けるレオンを襲おうと動き始めるが、すかさず晴人はウィザーソードガンで撃ち抜いた。

 

「悪いけど、これ以上邪魔はさせないぜ!」

 

意思も持たぬ2つの敵意をいつもの軽い口調で受け流し、ウィザーソードガンをクルリと回す晴人はグールと浮遊霊の一群に飛び込んだ。

 

                      ☆

 

目を覚ましたミルヒはまず最初に疑問を覚えた。

暗雲に覆われた空に赤い稲妻が迸り、草木が枯れる大地は盛大に荒れ果てている。

他の生物の気配も感じられず、漂う空気も粘度を持っているかのようにどこか重苦しい。

すべての生命が朽ちた暗黒の世界がミルヒの視界に広がっていた。

 

『―――姫君』

 

不気味な世界にただひとり訳も分からず茫然とするミルヒは不意の声に反応した。

振り向くと、何もない虚空から声の主が姿を現した。

金色のラインで独特な模様が描かれた純白の毛並みと、人ひとりを軽く背負えるぐらいの大型の四肢から数本の尻尾を携えた狐のような存在だった。

 

『聖剣の姫君』

 

「あ、はい!」

 

思わず眼前の神秘的な美しさに息を飲んでいたミルヒはハッと我を取り戻す。

 

『申し訳ありません。我が子があなた方にひどいことをしてしまいました』

 

そして、何者かを尋ねる前に深々と頭を下げる白狐が放ったその一言がミルヒに思いもよらぬ衝撃を与えた。

 

                      ☆

 

【コピー!プリーズ!】

 

新たにウィザーソードガンを複製し、晴人はすかさず引き金を引く。

乱射される銀の銃弾が縦横無尽に弧を描きグールと浮遊霊を撃ち抜いていく。

 

【チョーイイネ!グラビティ!サイコー!】

 

重力で捻じ伏せ、地功拳を取り入れたトリッキーな体捌きで翻弄し、ドリルも用いたヒット&アウェイで晴人は次々と群集を蹴散らせていく。

しかし、あれから相当な数の敵を倒したはずだが、数が減る気配もなく、また新たなグールと浮遊霊が生まれてくる。

無駄に数ばかりが増え、いい加減うんざりしてきた時だった。

 

「晴人さーーーーん!」

 

突然名前を呼ばれ、声のした方に視線を向けると、パラディオンをジェットボード状に発動した輝力武装形体―――トルネイダーに駆ったシンクがいた。

どうやらシンクもミルヒを救出するために追いかけてきたのだろう。

かなり無茶をしたのか、勇者衣装の所々が破けていた。

丁度その時、辺りを漂っていた浮遊霊が一か所に集まり、一本の長大な大刀の形を成した。

怪しい光を放つ大刀は一直線にシンクを狙う。

 

【ランド!スラッシュストライク!】

 

【ダンデンドゴン!…ダンデンドゴン!…】

 

着地の隙を突かれて反応が遅れてしまうシンクだったが、彼の前に躍り出た晴人が土の魔力の一閃―――ランドスラッシュをぶつけて大刀を消滅させた。

 

「ミルヒちゃんはこの先だ!レオンちゃんもいる。早く行け!」

 

「あ、はい!ありがとうございます!」

 

晴人に尻を叩かれ、シンクは急いだ先にグランヴェールを振りかざすレオンを見つけた。

ミルヒは浮遊霊が形を変えた球体に閉じ込められている。

レオンが頸烈な勢いでグランヴェールを叩き続けていたが、球体は傷ひとつつかない強度を誇っていた。

 

「閣下!」

 

「勇者か!」

 

刻一刻を争う状況の中、ミルヒのもとに辿り着いたシンクはミルヒの無事に一先ず安堵した。

意識を失うミルヒのそばではおれたエクセリードが弱弱しくではあるが、輝力を放っている。

 

「姫様! 姫様!」

 

いてもたってもいられず、シンクは球体を叩きながら、閉じ込められているミルヒを呼び続けた。

 

                      ☆

 

その頃ミルヒは赤い稲光が走る轟音だけが響く荒廃した世界を歩いていた。

当てがないわけではなく、隣を歩く一体の白狐が道標の役を買ってくれている。

 

『もう、数百年も前の話になります』

 

白狐の言葉にミルヒは静かに耳を傾ける。

すると、白狐が語り始めるにつれて周りの風景に変化が生じる。

今までの暗澹たる世界からは一変し、ミルヒの視界には青々とした木々がきらめく緑豊かな世界が広がっていた。

どうやら白狐の記憶が反映されているようだ。

 

『まだ大陸のほとんどが人の分け入らぬ地であった時代、私と我が子は山間で静かに暮らす土地神でした』

 

白狐に導かれて、ミルヒがさらに奥に足を踏み入れた場所に木漏れ日の注ぐその下で清閑なひと時を仲良く戯れる白狐の土地神の親子がいた。

心地よい草の香りが広がる野原を自由気ままに駆け回る子狐を慈愛の眼差しで見守る母狐。

誰もがこのまま平穏な時間が続いていくと信じていた。

 

『ですが、あの日……』

 

陰りが混じった母狐の声音とともに、どこからともなく忍び寄る暗雲がやがて晴天を喰らい尽くし、

安寧を引き裂くかの如く黒い雷が轟音を轟かせた。

急な天候の変化に、不安に煽られて母狐が駆けつけた時には子狐が邪悪な光を漂わせる一本の妖刀に貫かれる惨劇が広がっていた。

 

『落雷とともに降ってきた刀が我が子の体を貫き通し―――』

 

子狐の小さな身体を穿った傷口からは鮮血が溢れ出している。

記憶の中で母狐が子狐に近づいて触れるも、ピクリとも動かない。

冷たくなっていく体温に母狐が半ば諦めかけた時だった。

すでに絶命したと思われた子狐の瞳が開かれた。

しかしその眼光は子狐に突き刺さった妖刀と同じ、鮮血のような深紅を閃かせていた。

母狐が驚く間もなく、フワリと浮上する子狐の小さな四肢が徐々に肥大化し、美しかった純白の体毛は生気を感じさせない骸の如き硬質な皮膚へと変異する。

 

『――あの子は、禍々しい魔物の姿になってしまいました』

 

―――ヴォロロロロオオオオオオッ!!

 

それは産声にしてはあまりにも禍々しい咆哮だった。

そして、魔獣となった子狐の牙はまず母狐に向けられる。

辺りにぶちまけられる紅い華。

目の前で繰り広げられた惨劇に胸を衝かれてミルヒは立ち尽くしていた。

 

『私はあの子の体に取り込まれ、あの子は魔物として山の生き物を食らい、大地を破壊して行きました』

 

そして魔獣は200年余り前に一度、人里に下りようとしたところ聖剣の主、つまり数世代先任のエクセリードの持ち主の手によって封印されたらしい。

しかし、封印が弱まったのが原因なのか、聖剣のにおいに惹かれたのか、封印が解かれ、魔獣は目覚めてしまった。

世界は再び元の荒廃した光景に戻る。

 

『我が子はもはや、破壊の魔物です。ですが……魔物の姿に変わってからずっと、あの子は泣いているのです』

 

『痛いよぉ……苦しいよぉ……お願い……………助けて……』

 

悲痛な母狐の言葉の後にミルヒの耳が第三者の声を捉える。

弱弱しく、嗚咽交じりの幼い声音は魔獣となった子狐のものだった。

身体を貫く妖刀で地面に縫付けられるように横たわる子狐はわずかに首だけを動かしこちらを見上げている。

あまりにも理不尽な魔獣誕生に隠された悲劇にミルヒは言葉を失い蒼白する。

すでに精神は平静を保てなくなるほどまでに疲弊していた。

 

『聖剣の姫君。あなたなら魔物となった我が子を殺すことができるはずです』

 

静かに耳朶を打つ意味深な言葉。

視線をミルヒの背に背負われているエクセリードに向けた母狐は悲痛に、そして朗々と言った。

 

『その聖剣で、この子の首を落としてください』

 

母狐の言葉に理解が追い付いた瞬間、ミルヒは我が耳を疑った。

そんな彼女の心情を知ってか知らずか、母狐は続ける。

 

『そうすれば魂の尾が離れ、魔物も姿を保てなくなります』

 

「そんな……」

 

ようやく絞り出したミルヒの言葉はただただ廃れた世界に溶け込み轟音に掻き消される。

 

『私は、この子に触れることができないのです』

 

言葉通り、近づく母狐の身体は子狐に触れることなく透過してしまっていた。

 

『聖剣の姫君……どうか……』

 

それが目の前で苦しむ我が子に何もしてやれない母狐のせめてもの情けなのかもしれない。

子狐を殺す。

そうすればフロニャルドの危機は完全に排除されるのだろう。

一刻を争う状況にミルヒの選択にフロニャルドの命運がかかっている。

一国の主でもあるミルヒにとって、土地神一匹の命とフロニャルドに生きるすべての命を天秤にかけた場合、どちらを取るべきかはすでに自明の理。

心中に生まれた選択は決して愚行などではなく、むしろ誰もが英断として受け止めてくれるだろう。

そしてミルヒは―――

 

「お断りいたします」

 

決意とともに英断を握りつぶした。

 

『―――ッ』

 

ミルヒの言葉に母狐は驚愕を表した。

 

「ここでこの子を斬れば、魔物は消えるかもしれません。……ですが、積み重ねられた悲しみは消えません」

 

ミルヒは子狐を優しくなでる。

 

「あなたもお子さまも、長い時の中どんなにか辛く、悲しい思いをされたことか……」

 

指から確かに伝わる命の鼓動を感じ取り、ミルヒの言葉に力がこもっていく。

母狐に向き直るミルヒの瞳には哀しみの色が消え去り、代わりに迷いを振り切った決意の光が宿っていた。

 

「ビスコッティの宝剣、エクセリードとパラディオンは魔を断つ剣です。ですがそれ以上に、人と命を導き、大地に希望を育むための剣です!あなた方も間違いなく、フロニャルドに生きる命です!妖刀ごときに悲しい思いをさせられたまま終わるなんて……そんなの、私が許しません!」

 

言葉を紡ぐミルヒの決意に呼応するかのように桜色の輝力が溢れ出す。

聖剣の姫として、絶対に譲れないミルヒの覚悟に輝きは一層強くなる。

 

「ビスコッティが領主!ミルヒオーレ・フィリアンノ・ビスコッティが絶対絶対!許しません!」

 

そして、輝力の光が暗い世界を照らした。

 

                      ☆

 

現実世界―――ミルヒを閉じ込めていた球体に亀裂が走る。

隙間からエクセリードの眩い輝きが溢れ、やがて粉々に砕け散った。

 

「姫さま!」

 

「ミルヒ!」

 

解放され、倒れこむミルヒをシンクが受け止めた。

 

「姫さま!」

 

「――シン、ク………?」

 

シンクの呼びかけにミルヒは

 

「はい!よかったぁ……―――ッ!?」

 

その時、ふとシンクは気付いた。

砕けた破片と一緒に何故かミルヒの衣服も消し飛んでいた。

つまり、今、ミルヒは神秘的な美しさの裸体を晒してしまっているのだ。

 

「「…………」」

 

ミルヒも事態に気付いたのか、お互いフリーズしてしまう。

まず何をすべきなのかわからず、完全に思考が飛んでしまっていた。

 

「何を見とるかアアアアアアアッ!」

 

割り込んでくるレオンの怒号とともにブオンッ!とうい重々しい風切り音をとらえる。

 

「うわあああああっ!?」

 

本能的に危機を察知したシンクがとっさによけると、たった今いた場所に魔戦斧の刃が飛んできた。

 

「すいません!すいません!」

 

「ごめんなさいぃ!」

 

咄嗟に背を向けて謝るシンク。

魔戦斧を隔てた向こうからもミルヒの上擦った声が聞こえてくる。

レオンはミルヒを案じて羽織っていたマントをかぶせてやる。

 

「そんなことよりシンク!レオさま!私、この魔物を助けてあげたいんです!」

 

「助ける?」

 

「どういうことじゃ?」

 

ミルヒの突然の申し出にシンクとレオンは首をかしげる。

 

「この子、もとは普通の土地神様なんです。身体に刺さってる赤い妖刀を引き抜けばきっともとに戻せるはずなんです!」

 

「わかった、姫さまはここで」

 

話を聞いて即決するシンクは立ち上がる。

 

「いえ、私も行きます!」

 

そぐに同行する旨を伝えるミルヒだったが、シンクはバツが悪そうに視線を逸らした。

 

「えっと、その格好で……?」

 

「あへ?あぁあ、ええと……」

 

すぐにシンクの言葉の意味を察し、頬が羞恥に染まる。

身に着けるのはマント一枚のみ。

お世辞にも同行できる状態ではなかった。

しどろもどろになっていると、折れていたエクセリードがひとりでに浮き上がり、そのままミルヒの前まで移動したかと思うと、突然光を放った。

目を覆うこと一瞬、光が止んだ時には短剣から長剣へと姿を変えたエクセリードと元の鎧装束をまとったミルヒがいた。

 

「エクセリード、これはあなたが?」

 

そしてエクセリードの変化はシンクの持つパラディオンにも起きた。

 

「パラディオン?」

 

指輪状態のパラディオンの放った光がシンクを包む。

再びの放光後、完全に修復された勇者装束をシンクの手には長剣形態を成したパラディオンが握られていた。

 

「これは……」

 

「エクセリード……私たちにがんばれって言ってくれてますか?」

 

「頑張るよ。だから少し、力をかして!」

 

語りかけるミルヒとシンクの言葉に頷くかのように、それぞれの宝剣は輝きを強める。

 

「シンク!」

 

「はい、姫さま!」

 

宝剣を構えて2人は魔獣の頭頂箇所に怪しげな炎を揺らめかせた妖刀を見つける。

その刀身は何本もの鎖が巻き付き固定されている。

希望は見えた。

 

ヴロオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

宝剣の輝力を感じ取ったのか、魔獣が咆哮する。

すると、目の前で刃に姿を変えた浮幽霊、刀剣の切っ先を向ける触手、そしてグールの大群が視界を埋め尽くした。

生気を感じさせない障害の放つ異様な圧迫感は思わずたじろいてしまうほどだ。

 

「まったく、本当にご苦労なことだな」

 

しかし、強烈なプレッシャーをものともしない飄々とした声が割って入ってくる。

わざわざ確認する必要もない。

口元を緩め、肩にグランヴェールを担ぎながらレオンは晴人ともに前に歩みを進めた。

 

「雑魚はワシらが請け負おう。2人は何も気にせず、前に進むことだけを考えろ!」

 

「「はい!」」

 

力強い返事に、シンクは足元に輝力を解放する。

 

「行くよ姫さま!目標地点まで―――」

 

「一直線です!」

 

シンクとミルヒを乗せたトルネイダーが突き進む。

その爆発的なスピードが落ちることはない。

 

【チョーイイネ!スペシャル!サイコー!】

 

指輪をかざし、呼び出した土のエレメントのドラゴンが巻き起こす砂塵が晴人の両腕にウィザードラゴンの鉤爪―――ドラゴヘルクローを具現化させた。

晴人はドラゴヘルクローに魔力を、レオンはグランヴェールに輝力を集中させる。

そして、両者がそれぞれの得物を振り抜いた。

 

「だああああっ!」

 

「魔人閃光斬!」

 

魔力を集中させたドラゴヘルクローのから繰り出す衝撃波―――ドラゴンリッパーと翡翠の輝きを放つエネルギー刃がシンクとミルヒの前に立ちはだかる敵を容赦なく無に帰していく。

だが、魔獣は足掻く。

殲滅から免れた浮幽霊を掻き集め、長大な怪刃を成す。

 

「「ホーリー……」」

 

それでも止まることなく、シンクとミルヒは宝剣を天に掲げて呼吸を合わせる。

 

「「セイバァァァアアアアアアアアアアッッ!!」」

 

勇者と姫が放つ巨大な輝力の奔流がものの見事に怪刃を貫き、魔獣の背中で大きく爆発を生んだ。

 

【フレイム!プリーズ!】

 

「やったみたいだな」

 

宝剣を指輪に戻し、着地を決めるシンクとミルヒ、そして2人の後を追いかけた晴人とレオンの目の前には一本の妖刀が鎮座している。

これを引き抜けばすべてが解決に終わる。

シンクが期待に胸を膨らませ、妖刀の柄に手を伸ばした時だった。

 

バチィッ!

 

指先が触れる寸前、赤い稲妻が走った。

 

「痛ッ!?」

 

予想外の痛みにシンクは思わず手を引っ込める。

 

「そんな、どうして……?」

 

訳も分からず自身の指先を見つめるシンクの隣で、晴人の脳裏に一つの仮説が浮かんだ。

 

「まさか……」

 

【ライト!プリーズ!】

 

すかさず指輪をかざし魔法の光で辺りを照らした。

晴人の魔法、ライトは周囲を照らすだけでなく、眼に見えない魔をあぶりだすこともできるのだ。

そして、目に飛び込んできた光景に言葉を失った。

 

「こ、これは……!?」

 

「ひどい……」

 

魔獣の身体を、妖刀を起点として赤い触手が不規則な脈を打っていたのだ。

さらに触手は木の根のように分岐し、端から端まで身体の至る所まで這っている。

 

「そんな……やっとここまできたのに―――」

 

現実に希望を拒絶され、誰もが諦めかけようとしていた。

 

「まだだ」

 

しかし、まだ諦めていない人物がひとり。

晴人の声に3人が視線を向ける。

 

「ハルト?」

 

「まだ諦めるのは早い。必ず何か方法があるはずだ。……必ず!」

 

しかし晴人たちが意識を妖刀に向けていたため、その瞬間が致命的な隙となる。

好機と見たのか、新たに出でた浮幽霊たちが一斉に殺到してきたのだ。

気づいた時にはもう指輪を着け替える暇さえなかった。

だが、誰もが身構えたその時、晴人たちの眼前で光が弾けた。

恐る恐る目を開くと、白い光が晴人たちの周りを覆っている。

そして、浮幽霊の群れが姿を消した代わりに、晴人たち目の前にひとりの少年が立っていた。

 

「誰じゃ?」

 

「キミは……」

 

レオンたちが警戒する中、晴人はその少年に見覚えがあった。

間違いない、夢に現れた白装束の少年だ。

身に纏う民族衣装も、髪も瞳も、狐のような獣耳と尻尾も白で統一された出で立ち。

少年は穢れのない澄んだ瞳をこちらに向けている。

しかし、目の前の少年はいったい何者なのか。

なぜ今このタイミングに突然姿を現したのか。

晴人たちの心情を知ってか知らずか、少年はゆっくりと晴人を指差した。

すると、晴人の左腰のウィザードリングホルダーにかけられているひとつの指輪がキラリと光った。

謎の現象に驚きながらも晴人はその指輪を手に取る。

瞬間、晴人の中で疑問は答えに変わった。

 

「そうか。そういうことか……」

 

ひとり納得する晴人は指輪を握りしめ、少年の元へと歩み寄る。

 

「キミは、キミだったんだな」

 

晴人の確信する言葉に、確かに少年は頷いた。

答えに辿り着き、約束の指輪―――エンゲージウィザードリングを見せながら、そして晴人は言う。

たとえ世界が違っても変わらない、絶望を振り払い、希望を救う、絶対の誓いを。

 

「約束する。俺がお前の、最後の希望だ」

 

決意を表す言葉に小さく微笑む少年の右手を優しく手に取り、晴人は小さな指に指輪を潜らせる。

 

【エンゲージ!プリーズ!】

 

指輪をハンドオーサーにかざすと、晴人の目の前の空間に魔方陣が出現した。

それは少年の心へと繋がる希望の扉。

ふと晴人がレオンたちの方に視線を向けると、3人ともが呆けた表情を浮かべていた。

事情を知らないため理解が追い付いていないのだろう。

 

「大丈夫。この子はまだ絶望しちゃいない。ちょっと行ってくる」

 

そんなレオンたちに軽い口調で一言言い残し、晴人は魔法陣の中に飛び込んだ。

 

「―――っ!待て、ハルト!」

 

「レオさま!」

 

「閣下!?」

 

晴人が魔法陣の中に消えたことで一早く我を取り戻したレオン。

後ろで呼ばれる声を振り切り、咄嗟に駈け出すレオンもまた魔方陣に飛び込み姿を消した。

そして魔方陣とともに少年の身体も光の粒子となって消失する。

最後に残されるのは、再び呆然とするミルヒとシンクだけだった。

 




ホント、おまたせしてすいませんでした!
まずは謝辞を、青空野郎です。
いや~、前回の投稿から結構時間が経っちゃいました。
特に7月はやっ!
どのくらい早いかというと、いつの間にか鎧武の映画の前売り券の購入を忘れてしまうぐらい早かったっす(笑)

最後に、なんとなくですけど次回予告作ってみました。




次回、仮面ライダーウィザードFANTASTIC DAYS

「ここは精神世界、アンダーワールド」

「どうするつもりだ、ハルト?」

「逃げてください!このままでは我が子があなた方を―――」

「人々の自由と平和を守る、戦士の名だ」

第13話『もうひとつの名』

さあ、ショータイムだ!
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