仮面ライダーウィザード FANTASTIC DAYS 作:青空野郎
静かに目を覚ました晴人はゆっくりと身体を起こして状況を整理する。
いつの間にか変身が解けていたが、そんなことよりもまず違和感を覚えた。
――――
晴人は自分がどこにいるのかは理解している。
それは間違いないはずなのだが、今までのプロセスが明らかに違っていた。
あの子がゲートではないからなのか、それとも――――
その時、晴人の脳裏にひとつの可能性が過ぎる。
そして同時に、晴人の中で燻る違和感は既視感に変わろうとしていた。
だがそれも束の間、そんな疑念は予想外の人物の存在によりはるか彼方へと消えて行ってしまった。
「すぅ……すぅ……すぅ……………」
「………なんで?」
気配を感じ、視線を移せば晴人のすぐ隣でレオンが横たわっていたのだ。
彼女も眠っているようで、規則正しい寝息が聞こえる。
なぜ彼女がここにいるのかと思いながらも、無邪気な寝顔に間の抜けた声が漏れた。
「レオンちゃん。おい、レオンちゃん!」
放っておくわけにもいかず、とりあえず呼びかけながら肩を揺すればレオンはゆっくりと目を覚ます。
「ん、ぅん~ぅ………はる、と?」
ピコピコと動くネコ耳になんともかわいらしい甘い声音にときめいてしまうのはご愛嬌だ。
だが、しばし寝ぼけ眼で見つめられていたかと思えば、寸俊の内にレオンの瞳は大きく見開かれた。
「――っ、ハルト!」
完全に覚醒したようで、レオンは晴人の姿を認めるなり血相を変えて叫びをあげる。
「この馬鹿者がッ!」
さらには晴人が声をかける間もなくいきなり胸ぐらを掴まれ、鼻先がぶつかりそうな位置まで引き寄せられてしまった。
立て続けの予想外の展開に一層混乱してしまうが、彼女は構うことなくさらに怒号を飛ばしてくる。
「勝手にひとりで納得したかと思えば、勝手に姿を消しおって!心配したであろうが!」
そんな激情に込められた言葉が晴人の中で大きく響いた。
「………そっか、心配してくれたんだ」
「っ!?」
レオンに事情を説明しなかったとは完全に晴人の落ち度と言えよう。
心配をかけさせたことに気が咎める思いに駆られるが、それ以上にこうして身を案じて追いかけてきてくれたことにうれしさがこみ上げてくる。
現にレオンの瞳に映る晴人ははにかんだ笑みを浮かべていた。
対してレオンは冷静を取り戻したのか、互いの態勢を理解した途端に晴人を開放し、距離を離した。
「いや……無事なら、それでよい………」
伏せ目がちの頬が赤く染まっているのは羞恥からくるものだろう。
それはさて置いて晴人の無事を確認して安堵の息をついた後、レオンは周囲に視線を巡らせた。
「それよりも、ここは一体?見たところ、フロニャルドの景色と似ているようじゃが……」
呆然と呟くレオンは夢でも見ているような心地に見舞われていた。
今、彼女の眼前に広がっているのはつい先ほどまで魔物の暴走によってもたらされた地獄のような世界が嘘のような、平穏という表現が相応しい長閑な世界だったのだ。
当惑するレオンの反応は至極当然のことだろう。
「ここもフロニャルドだよ。ただし、記憶の中の世界だけどね」
「どういうことじゃ?」
「ここは精神世界『アンダーワールド』。俺たちは今、あの土地神の記憶の世界、つまり心の中にいるんだ」
アンダーワールド―――その背景はゲートが過去に経験した記憶のうち、最も心に深く刻まれた心象風景が再現された世界である。
晴人とレオンはエンゲージウィザードリングの力で飛び込んだのだ。
「心の中、じゃと……?」
晴人が説明する突拍子もない事実に、レオンは驚愕を浮かべた面持ちで再び眼前の景色を見渡した。
「ああ。そして、この世界の光景こそが、あの土地神にとっての心の支えで、希望なんだ」
未だに半信半疑のレオンだったが、晴人の表情は真剣そのものだった。
『その通りでございます』
その時、確信する晴人の言葉を肯定する声が2人の耳朶を打つ。
晴人とレオンの前に姿を現したのは、先ほどミルヒの前に現れた土地神の母狐だった。
『お初にお目にかかります。あなたさまは魔戦斧の姫君であらせられますね?』
「ああ、そなたは……?」
『私は魔物となってしまった土地神の母でございます』
☆
母狐が語る真実に晴人とレオンは沈黙を持って聞いていた。
今2人の中でどのような感情が渦巻いているのだろうか。
話を終えた母狐にレオンが開口一番で訊ねた。
「なるほどな、話は分かった。ワシたちはその土地神を救いたい。なにか方法に心当たりはないか?」
事態は刻一刻を争う。
こうしている間にも現実世界では被害が拡大していることだろう。
すがる思いでレオンが訪ねるが、母狐は悲痛な面持ちを浮かべて答えた。
『方法は、ございません……』
「なんじゃと!?」
『先ほど聖剣の姫君が我が子の首を落としてさえくれていれば、少なくとも我が子の魂は救われていました。ですが―――』
思わず耳を疑うレオンに母狐は陰りが落ちた瞳で続けようとした矢先、突然の地響きが晴人を襲った。
さらには体勢が崩れかけるほどの大きな揺れとともに世界が一変する。
長閑だった山林の景色が一瞬にしてミルヒが見た世界と同じ、荒廃した暗黒の世界に変わったのだ。
それこそ、現在のフロニャルドと大した差はない光景にレオンは動揺を露わにしている。
一方、レオンの隣で晴人ははるか前方に妖刀に貫かれた子狐の姿を認めた。
すぐに駆けつけようと思い立つのだが、子狐を囲むように走る亀裂に行く手を阻まれてしまう。
『どうやら我が子を蝕んでいた呪縛が弱まったことで妖刀の核が目を覚ましてしまったようです』
母狐の言葉を肯くように亀裂からドス黒い瘴気が発生した。
その光景に晴人の脳裏に夢で見た出来事がフラッシュバックする。
少年姿で現れた子狐の全身に回る亀裂から瘴気が噴き出すというモノをまるで体現しているようではないか。
やがて立ち上る瘴気は意志を持つかのように蠢き、妖刀ごと子狐を飲み込んだ。
ヴォロロロロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!
次第に膨張していく瘴気が身の毛もよだつ咆哮を響かせ、そして巨大な魔獣となった。
見上げるほどの巨体を誇る魔獣の、現実世界で暴れる魔物と酷似している点を挙げるとするならば、狐のような頭部と5つの尾。
しかし、それぞれの尾の先端は血のように紅い刃になっていた。
ヴォロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
魔獣の2度目の咆哮で、湧いて出る瘴気の中から大量のグールが現れた。
しかしグールたちはこちらに向かうわけでもなく、炎のような揺らぎに包まれてその姿を消していく。
おそらく現実世界に転移したのだろう。
どうやら、母狐の言っていた妖刀の核こそがファントムを生み出していた根源と見て間違い。
『こうなってはもう手は付けられません。逃げてください!このままでは我が子があなた方を――』
「お断りだね」
切迫した声音で逃げるように促す母狐だったが、その言葉は強引に遮られた。
「ようするに、アレを倒せばあの子を救えるってわけだろ?」
相変わらずの飄々とした口調で晴人は魔獣を見つめている。
誰もが恐怖で心が押しつぶされかねない事態を前にして尚、その顔はとても落ち着いているものだった。
「どうするつもりじゃ、ハルト?」
「もちろん、助けるさ。約束したからな」
レオンの問いに答えるその言葉に迷いはない。
ゲートの絶望から生まれたファントムはアンダーワールドを破壊することで現実に現れる。
つまりアンダーワールドで誕生したファントムが現実に出る前に撃破すればゲートの死を防ぐ事が可能という逆説が成立する。
しかし、その理屈を知らない母狐からしてみれば心中穏やかでいられるはずがなかった。
『何をおっしゃっているのですか!?妖刀の核が姿を現した以上、もう、私たちにできることは何も……』
「そんなことはない」
希望が失われかける母狐の涙で滲ませた声音を晴人は切り捨てる。
「あの子はずっと俺に言ったんだ、助けてって」
この暗い世界の中で子狐はずっと助けを求めていた。
自分の中にある希望を信じて、ひとり絶望と闘っていた。
夢の中では掴ことができなかったが、今なら伸ばせばその手が届く。
ならば、何を迷うことがあろうか。
やるべきことは何も変わらない。
「必ず助ける。そう約束した。だから俺はここに来たんだ」
『なぜそこまで?聖剣の姫君も、あなたさまも………どうしてそこまで言い切れるのですか!?』
明らかな内心の変化に母狐は戸惑いを覚えていた。
ミルヒがアンダーワールドに囚われていた時点であれば、彼女が世界を救い、子狐の魂を解放できていたはずだった。
だが自身の懇願は拒まれ、事態は妖刀の核の封印が解かれるという最悪にまで陥る始末だ。
そんな時に突如として現れたのが魔戦斧の姫君、レオンと謎の青年だった。
その青年が子狐の魂ではなく、命を救うと豪語した。
青年は聖剣や宝剣の主でもなければ、ましてや異界より召喚された勇者でもない。
にもかかわらず、一見しただけで何の変哲もない青年の姿にミルヒの面影が重なって見えた。
母狐の中で枯れ果てようとした希望に再び光が宿ろうとしていたのだが、同時に数百という長い年月をかけて巣食った絶望が理解を押しとどめてくるのだ。
その結果が先の慟哭だ。
「簡単なことさ。きっとミルヒちゃんはなにひとつあきらめたくなかったんだ。そして、それはあの子も同じだ」
だが、アンダーワールドに木霊する母狐の叫びに晴人は表情を崩さない。
「こんな絶望に満ちた世界、俺がぶっ壊してやるよ」
静かに暗い世界を見渡していた晴人が振り返る。
それはまるで凍りついた心を溶かすようなとてもあたたかな笑みだった。
そして母狐を見つめる決意の瞳には、逸らすことを許さない力強さがそこにあった。
「あいつを倒して、レオンちゃんの希望を、シンクやミルヒちゃんたちの未来を、あの子の命を、そして――――あんたの心を救う」
『あなたさまは、一体……?』
晴人から感じる、暗雲を振り払うような未知なる可能性に気付けば母狐は呆然と訊ねていた。
【ドライバーオン!プリーズ!】
笑みを湛え、そして晴人は、自身が背負ったもうひとつの名を口にする。
「俺はウィザード。希望の魔法使いで――――仮面ライダーだ」
「仮面、ライダー?」
「人々の自由と平和を守る、戦士の名だ」
【シャバドゥビタッチヘンシーン!……シャバドゥビタッチヘンシーン!……】
それは数多の戦士に受け継がれてきた称号であり、晴人にとっても特別な覚悟と栄光の証。
今度こそ希望を届けるために、ふたつの名に懸けて、高らかに晴人は明言する。
「魔法使いがいる限り、誰一人絶望なんてさせやしない。仮面ライダーがいる限り、誰一人死なせやしない!―――変身!」
【フレイム!プリーズ!】
【ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!】
炎揺らめく魔方陣が透過して、晴人の姿が変わる。
そして今ここに、交わした約束を果たすために、魔法使い、仮面ライダーウィザードが舞い降りた。
「さあ、ショータイムだ!」
ウィザーローブを翻し、晴人は現実に現れ出でようとするグールの大群に向かって駆け出した。
☆
「不思議であろう?」
目の前で繰り広げられる戦いを呆然と見つめていた母狐にレオンが話しかけていた。
「ワシもおぬしと同じじゃ。奴はかつて星が見せた未来に絶望していたワシに向かって希望になるとヌかしおった」
初めて出会ってから一週間にも満たない間での出来事を思い出してか、自嘲気味な笑みを浮かべているレオン。
「結局最後にはこちらが折れてしまう体たらくじゃったが、その強さに救われたのもまた事実じゃ」
だが、言葉を紡ぐにつれて表情に誇らしさが宿っていく。
「だから、ワシもハルトの信じる希望を信じたい。ハルトが助けると決めたのなら、ワシも最後まで付き合おうと思う。………結論はその後からでも遅くはなかろう?」
レオンの決意に呼応するように、彼女が肩に担いだグランヴェールが輝力の光を放っていた。
☆
晴人の存在に気づくなり、大多数のグールが襲い掛かってくる。
対して、蹴り飛ばし、ウィザーソードガンで斬り伏せ、撃ち抜いていていく晴人だったが、状況は彼の劣勢だった。
倒しても倒しても湧き出る瘴気が新たなグールを生み出していくのだ。
時間がたつにつれ、グール数は減るどころか逆に増えていってしまっている。
だが、晴人が苦戦を強いられる理由は別にあった。
ヴォロオオオオオオオオオ!
晴人というイレギュラーを異物と認識した魔獣がその牙を向けて来たのだ。
魔獣からして見ればアリのような存在に本能の赴くまま刃を振り下ろす。
地面を抉る容赦のない洗礼にグールが巻き込まれようがお構いなし。
いざ間隙を縫い、魔獣との距離を詰めようものなら群がるグールが晴人の行く手を阻む。
さらにグール相手に手間取る隙を突いて再び魔獣が刃を振り回してくる。
「さて、どうすっかなぁ……」
直面する悪循環に苦々しく独りごちる晴人に魔獣はさらなる攻撃を仕掛けてくる。
おもむろに開いた口に瘴気が収束していき、球状に膨れ上がっていく。
そして魔獣は破壊球となった瘴気の塊を撃ち出した。
次々と降り注ぐ破壊球に火柱が立ち上る。
「ぐあああああっ!」
直撃こそは免れるも、晴人の身体は爆風によって宙を舞う。
想像を絶する威力に悶絶する晴人だが、魔獣は攻撃の手を緩めることはない。
気が付けば、すでに追い打つ破壊球が目前に迫っていた。
「でりゃあああああっ!」
だが、まずいと身構えたその時、白銀の絹髪をなびかせた人影が視界に過ぎった。
「はあああっ!」
勇猛な獅子の如き雄叫びを上げるレオンがグランヴェールで破壊球を見事両断した。
「レオンちゃん?」
立ち上がり、レオンと背中を合わせて周囲を取り囲むグールと対峙する。
「今回はワシが引き受けよう。お前は先に行け。………ワシたちの希望、お前に託したぞ」
背中越しに送られるレオンの声援に、晴人は自身の胸が熱くなるのを確かに感じた。
頼れる仲間がひとりいるだけでずいぶんと心持ちが軽くなり、緊迫する空気の中で自然と笑みが零れた。
「………わかった」
【コネクト!プリーズ!】
現実世界から召喚したマシンウィンガーを駆り、群がるグールを蹴散らしながら晴人は指輪を付け替える。
ここはアンダーワールド。
故に本来は絶望の化身でありながら、今ではもはや相棒とも呼べる晴人の希望を呼び出せる。
「来い、ドラゴン!」
【ドラゴライズ!プリーズ!】
腕を高く掲げた上空に浮かび上がる魔方陣の下、迸る紅蓮の炎の中から黄金を纏った銀灰色の巨躯が現れる。
かつてウィザードの進化形態で顕現してきた火を司るドラゴンスカル、水を纏うドラゴンテイル、風を支配するドラゴンウィング、土を鼓舞するドラゴヘルクロー、そのすべてを備えた全容はまさしく
晴人が内に宿すファントム―――ウィザードラゴンの真の姿である。
グオオオオオオオオオオオオオオオオオンンッッ!!
ドラゴンが自身の存在を知らしめるように蒼然たる咆哮をアンダーワールドに響き渡らせるや、真紅に爛々と輝く眼光で己が敵を見定め、先を行く晴人とともに猛進する。
魔獣との距離が縮まる中で並走するタイミングを見計らってウィリージャンプ、空中でマシンウィンガーが展開されていく。
車体は一対の翼となり、ハンドルは手綱となったマシンウィンガーがドラゴンの背部と合体した。
これによりドラゴンは飛行能力が上昇した強化形態――――ウィンガーウィザードラゴンとなる。
ドラゴンを駆る魔法使い。
その姿はどこか神秘的な趣を醸し出していた。
「はっ!」
ドラゴンとともに飛翔し、まずは火炎放射をお見舞いする。
灼熱の劫火に苦悶の声を漏らしながらも魔獣は咄嗟に巨大な腕で振り払い、お返しにと破壊球で反撃してきた。
【フレイム!スラッシュストライク!】
だが、負けじと晴人もフレイムスラッシュで一閃、そしてドラゴンのドラゴヘルクローで斬り裂き、ドラゴテイルで薙ぎ払って次々と飛来する破壊球を無に帰していく。
ヴォロオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!
魔獣とドラゴンが互いの咆哮を張り上げる。
ドラゴンの巨躯は魔獣と比べてまだ小さいが気迫では決して負けていない。
両者とも寄せては返し、揺るがずの中で、ドラゴンの火炎弾と魔獣の破壊球が衝突し、轟音を巻き起こす。
すぐさま魔獣が5枚の刃を操り縦横無尽に襲い掛かってくるが、ドラゴンは最小限の動作で攻撃を掻い潜り空高く舞い上がる。
徐々に高度を増していき、やがて魔獣の全容を拝めるまでの位置に到着した。
【ルパッチマジックタッチゴー!……ルパッチマジックタッチゴー!……】
仮面の内で、魔獣を見下ろす晴人の瞳に哀れみの色はない。
あるのは絶望を振り払う希望の光ただひとつ。
「今まで気付いてやれなくてすまなかった。………今、助けてやる!」
今ここで、悲しみの連鎖を断ち切るために!
【チョーイイネ!キックストライク!サイコー!】
グオオオオオオオオオオオオンッ!
その瞬間、咆哮するドラゴンから翼状に展開したマシンウィンガーが分離し、晴人は宙に立つ。
マシンウィンガーは再び元のバイクの形態に戻り、ドラゴンは巨大な脚部を模した形態―――ストライクフェーズに変形する。
「はあっ!」
突き出した右足でマシンウィンガーを火のエレメントを宿したドラゴンに接続させ、巨大なウィザードの幻影を纏いながら跳び蹴りを叩き込む三身一体の必殺技―――ストライクエンドが炎の軌跡を描く。
魔獣もまた、紅い刃の切っ先を晴人目がけて繰り出した。
ストライクエンドと刺突の激突。
力と力のぶつかり合いが巨大な衝撃波を生み出すが、双方の拮抗が崩れるのに時間はかからなかった。
「でぃああああああああっ!」
ピシリ、と魔獣の紅い刀身に亀裂が入る。
亀裂は瞬く間に刀身全体に広がり、ついに紅い刃は儚い音を立てて見るも無残に砕け散った。
そして勢いは衰えることなく、炎を纏う竜の蹄が魔獣の頭部を捉える。
刹那、悲鳴を上げる間もなく爆発が魔獣を飲み込んだ。
☆
変化はすぐに訪れる。
激しい爆音がレオンの耳朶を叩いたかと思えば、彼女の周りに屯していたすべてのグールたちが再び瘴気となって消滅していったのだ。
その束の間、吹き荒ぶ熱風を防ぎながら、レオンはその視界に着地を決める晴人の姿を認めた。
「ハルト!」
緊張した糸が緩む心地で駆けつければ、晴人の腕には子狐がしっかりと抱かれていた。
小さな体から妖刀は引き抜かれており、気は失っているようだがわずかに呼吸をしている。
「よかった、これで―――」
「いや、まだだ……」
無事を確認し、安堵の息を吐こうとしていたレオンだったが、突如不穏な気配を気取った晴人に制された。
見れば、辺りに霧散していた瘴気が一点に集中していく。
「どうやら、奴さんはアンコールをご所望みたいだな」
うんざりとした声音で呟く晴人。
晴人とレオンに訪れたのは勝利ではなく、絶望がその深淵を露わにした瞬間。
絶望の進撃は止まらない。
アンダーワールド戦、まだまだ続くよ!
ホントご無沙汰してました、青空野郎です。
長い間お持たせして申し訳ありません!
今思えば、ウィザードはスランプに陥っていたんですかね?
ラブライブの更新後にいざ取り掛かってみると約5日ほど間が空きましたが、執筆自体は半日もかかりませんでした。
なんか、思ってたよりサクサクキーボードが進んで約半年ぶりにようやく最新話を投稿できました。
このまま第一期終了目指し、第二期、そして現在放送中の第三期と頑張っていきますのでこれからもよろしくお願いします!