仮面ライダーウィザード FANTASTIC DAYS   作:青空野郎

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第15話 守り抜いた未来

「「裂空……ダブル十文字!!」」

 

宙に跳んだシンクとエクレが同時に二ふりの得物を振るう。

放たれた十字の斬撃が押し寄せるグールと浮幽霊の大群を吹き飛ばした。

着地するなり手近な敵を叩きのめしていく両名だが、決してそのまま深追いすることはしない。

むしろ、互いをフォローするように最小限の範囲で立ち回る戦い方だった。

さらに加えて、ミルヒとリコも2人の援護に徹している。

ミルヒが紋章術の防壁で敵の進行を妨げ、リコは光の弾丸で撃ち抜いていく。

しかし、倒しても倒しても湧いて出てくる敵の勢いは止まる気配を見せることはない。

 

「くっ……さすがにキリがないな、まったく!」

 

「まずいでありますよ!さすがにこのままでは……」

 

「でも、こんなところであきらめるわけにもいかないよね?」

 

「もちろん!今はなんとしてでも耐え忍ぶのみです!」

 

焦りを見せながらも、厳格な姿勢は決して崩さないが、体力と輝力ともに底を尽きようとしていたことに各々気付きかけていたが、グールたちは怨嗟のごとき唸り声を漏らしながらにじり寄り、シンクたちを確実に追い詰めていく。

いよいよ終わりの見えない持久戦にも、限界が迫ろうとした時だった。

 

 

オオォォォォォォォォォォン………

 

 

魔獣が歩む足を止めたかと思えば、突如天に向かって咆哮を上げた。

だが、その咆哮は今までの恐怖を感じさせるものとは違い、まるで凍てついた心を溶かすようなあたたかさを聞く者に感じさせた。

瞬間、魔獣の身体中に伸びきっていた赤い触手が淡い光となって消滅していく。

続いて、シンクたちを取り囲んでいたグールや浮幽霊もまた、もがき苦しむような素振りを見せるや、崩れゆく砂城のようにその体が粒子となって次々と散って行った。

 

「な、なにが起きたでありますか!?」

 

「これは……もしかして!」

 

突然の事態に緊張を隠せない面々であったが、その中でひとり、ミルヒの脳裏にひとつの可能性が過る。

すると、その予想を裏付けるかのように彼女たちのそばに赤い魔方陣が出現した。

矢庭に彼女たちの意識が向けられる中、飛び出してきたのは、やはりマシンウィンガーに跨った晴人とレオンだった。

 

「レオさま!」

 

「晴人さん!」

 

「2人とも、今だ!」

 

無事であることが確認できて安堵の声を上げるミルヒとシンク。

駆け寄ろうとする2人にすかさずレオンが声を投げかけることで、やるべきことを促した。

シンクとミルヒもレオンの意図を汲み取り、妖刀の元へと急いだ。

エクレとリコも続いて2人の後を追っていく。

数百年にも及ぶ悲劇の元凶を前に、改めてシンクとミルヒの表情が引き締まる。

まずはシンクがゆっくりと手を伸ばしてみるが、今度は赤い火花が散ることはなかった。

それを確認してシンクとミルヒは同時に妖刀の柄を掴む。

刀身に巻きついていた鎖が邪魔をしてくるが、少しずつ刀身が持ち上がっていく。

いける、と確信してさらに力を加えながらシンクとミルヒはアイコンタクトで互いにタイミングを見計らう。

そして――――

 

「「せーのぉ!」」

 

揃ってあげた掛け声とともに2人の腕に確かな手応えが伝わった。

力が抜けた反動で後ろに倒れてしまうが、見上げれば空中にひとつの土塊がくぐもった音を立てて爆ぜていた。

薄く広がっていく砂煙の中から小さな影が飛び出したのを見て咄嗟に走り出すミルヒ。

そのまま放物線の着地地点を冷静に見定めてダイブする。

みると、彼女の手の中には土地神の子狐があった。

妖刀によって貫かれていて傷口から出血が見られたが、弱弱しい鳴き声を漏らして横たわる体を身動ぎさせた。

まだ息があることに一同は胸を撫で下ろすが、息をつかせぬ間に事態はさらなる展開に急転していく。

どこからともなく地響きが聞こえたと思えば、晴人たちの足元が揺れ始めた。

見れば、妖刀が突き刺さっていた個所を起点に、頭部から背中、脚部、尾部と、風化が始めていたのだ。

生気を感じさせないながらも、その存在を知らしめた身体から色素が失われていき、完全に浸食されたころには魔獣は、その形をした土像と成り果てていた。

最後には自身の重みに耐えきれず、魔獣の四肢に亀裂が走っていく。

一層大きくなる地鳴りに、崩壊が始まったと考えが至るのは至極当然と言えよう。

 

「まずい、崩れる!」

 

「早くここから離れるぞ!」

 

狭まっていく足場の上でシンクが子狐を懐に収めるのを確認して、晴人たちは急いで脱出するように示し合せる。

そうこうしている内に崩壊はさらに加速していき、いよいよ本格的に魔獣の原型が瓦解していく。

足元を取られないように行動に移る一部始終を、晴人たちとは別に魔獣を追いかけていた放送陣のカメラが捉えていた。

空中に浮かぶディスプレイを通して、フロニャルドの国民たちも彼らの固唾を飲んで行く末を案じていた。

崩壊による余波は予想以上に荒まじく、大多量の土砂による飛沫が一瞬にしてカメラの視界を奪う。

決して長い時間ではなかったが、画面越しに伝わる事態の大きさは晴人たちの無事を願う人々の不安を仰ぐには十分だった。

 

 

クァッハアアアアアアアーッ!

 

ブゥゥゥウウウウウウンッ!

 

 

そうして、誰もが強く祈りを込めていた瞬間、セルクルの鳴き声と機械独特な駆動音が皆の耳に届いた。

顔を上げれば、立ち上る砂煙の中から2つの影が飛び出していた。

ひとつは、背中にシンク、ミルヒ、エクレ、リコを乗せて飛翔するハーランの姿。

そしてもうひとつは、マシンウィンガーを駆る晴人と彼の背中に捕まるレオンの姿だった。

彼らの生還に歓喜の声が巻き起こり、やがて、魔獣だった土砂は盛大に砂塵を巻き上げるのを最後に完全に崩れ散った。

その光景を離れた高台まで避難を終えた晴人たちは見つめていた。

 

「ようやく、終わったのですね……」

 

「ああ。とりあえず、無事に解け、つ――――」

 

感慨深そうに呟くミルヒに晴人も続こうとしたが、最後まで言うことはできなかった。

それどころか、彼女たちの目の前で晴人の体が突然倒れこんでしまったのだ。

 

「ハルト!?」

 

今までのように魔方陣を透過するのではなく、ウィザードの装甲が弾け飛ぶ形で変身が

解けたことに驚きながらも咄嗟にレオンが晴人の体を抱き上げる。

ようやく安堵の息を零そうとしたところでの出来事に動揺が広がっていく中で、予想以上に伸し掛かる重さから、レオンは晴人には自身の体すら支えられないほどまでに憔悴していると気付くことができた。

 

「ハルト!一体どうした!?しっかりしろ!ハルトッ!!」

 

「悪い……。さすがに、魔力……切れた………」

 

全身から血の気が引く思いで叫べば、息も絶え絶えでうわ言のようなかすれた声が晴人の口から紡がれた。

『魔力切れ』――――その名の通り、魔法を使うための魔力が枯渇する現象のことである。

一度魔力切れを引き起こすと、しばらくの間は魔法を発動できない上に、意識を失うほど体力も著しく低下してしまう。

現に、今も必死に呼びかけるレオンたちの声が遠のいていく。

 

「少し、寝る………」

 

最後にそれだけ言い残して、晴人は意識を手放した。

 

                    ☆

 

一時、ミオン砦に引き返したミルヒたち。

そこに合流してきたユキカゼに事の顛末の説明をしていた。

 

「と言うわけで、私はこの子の母親に頼まれて、それで妖刀の事を聞いて――――」

 

「エクセリードとパラディオンが力を貸してくれて今に至る」

 

「なるほど、そうでござったか」

 

ミルヒとシンクから事の詳細を聞いて相槌を打つユキカゼはその場で跪いた。

 

「姫さま、改めてお見事にございます。魔物の多くは、呪いに見舞われた悲運な存在。それをただ退治するのみならず、拙者の同胞を救ってくださいました」

 

そう言って、ユキカゼの視線の先には、ミルヒに抱きかかえられた土地神の子狐がいた。

すでに治療も終えて、今はとても穏やかな寝息を立てる姿を見ながら感謝の言葉を贈るユキカゼに、ミルヒは小さく首を横に振った。

 

「いえ、私ひとりではなにも……。シンクやレオさまたちのおかげです」

 

「勇者殿も見事にござる。あとでうんと撫でてあげるでござるよ」

 

果たしてどこまで本気なのかは定かではないが、ありがとう、と言って照れ笑うシンク。

その隣で密かにむくれるエクレをリコは微笑ましく眺めていた。

ご愛嬌なやり取りに心が和んでいく。

そんな雰囲気にも拘らず、いや、だからこそミルヒは神妙な顔つきで問いかけた。

 

「ユキカゼ、この子の母親はやっぱり、もう……?」

 

ミルヒの問いに、ユキカゼも顔を曇らせて答える。

 

「姫さまがお会いになったその子の母親は、魔物の血肉に取り込まれた中、我が子を思う一心で心をつないでいたものと思われます。魔物としての五体は滅び、この子が助かった今、母狐の魂は天に還ったのではと……」

 

無念をにじませた彼女の言葉は『一度失われた命はもう返ってこない』ということを暗に語っていた。

 

「そうですか……」

 

「姫さま。その子狐、拙者がお預かりしてもよろしいでしょうか?元気になるまで、我が家で面倒見たいと存じます」

 

実際に母狐の苦悩を目の当たりにした本人としては、やりきれない気持ちでいっぱいになり、一層顔色が暗くなっていく。

そんな彼女にユキカゼが申し出た。

まっすぐ見据える彼女の瞳から子狐への思いやりが伝わってくる。

ユキカゼの純粋な優しさを受け止めて、ミルヒは快く了承するのだった。

 

「あとはレオさまか……。お怪我の具合、悪くないといいのだが……」

 

フロニャルド全土を震撼させた災厄を退けたとあっても、まだ完全にすべての不安と動揺を取り除けたわけではない。

その他にもまだ懸念すべき点を指摘するエクレにシンクも頷く。

 

「それに晴人さんも。まだ目を覚ましてないんだよね?」

 

                    ☆

 

「砦の防衛隊と、ビスコッティ2番隊の兵士たち。負傷者は出ていますが、死者や行方不明者は出ていません。魔物の様子が中継されていたため、各地の戦闘は停止中。両国民とも皆、レオさまやミルヒ姫さまの安否を心配しております」

 

砦内の一室にて、レオンは医師の診断を受けながらルージュの報告を聞いていた。

重度の怪我というわけではないが、衣服の下で華奢な身体に巻かれた包帯が何とも痛々しい。

 

「………ハルトの様子はどうじゃ?」

 

一通り話を聞き終えてレオンが最初に口にしたのは晴人の安否だった。

誰よりも近くで崩れ落ちる様を目の当たりにした彼女にとっては気が気ではないのだろう。

内心を不安に駆られるレオンに、ルージュは安心させるように微笑んだ。

 

「まだ目は覚ましていませんが、医師の話によれば私たちで言う、過度の輝力を消費したことによる疲労だろうと。命に別状はないそうです」

 

「そうか……」

 

心配はいらないことを知り、レオンにも安堵の笑みが戻る。

そして、ようやく人心地ついたレオン意を決したように口を開いた。

 

「ホールを開け、報道陣を呼べ。代表放送を行う」

 

                    ☆

 

心配するビスコッティ、ガレット両国民に向けて急遽代表放送行われた。

その内容はレオンによる謝罪と、この日の戦を中止とするというもの。

中止の原因は巨大な魔物が現れたこと、それによる負傷者が出たこと、魔物出現の原因調査と安全確認のため。

 

「魔物が現れた原因はまだわからんが………今回はワシが調子に乗って、国の宝剣を賭けようなどと言いだしたことに対する天罰やもしれん。皆が楽しみにしていた大戦をこのような形で終了せざるを得なかったこと、興行主として心から謝罪したい。すまなかった」

 

多くの報道陣を前に会見に臨んでいたレオンは真摯な姿勢で頭を下げる。

その姿を隣に座るミルヒたちが、放送を視聴していたすべて者たちが見守っていた。

 

「次はこのようなことがない楽しい戦を近々に用意する。無論ビスコッティ側ときちんと協議をしてな。ワシは今回のことを経て、領主としてより一層精進することを心に決めた。こんな頼りない領主ではあるが、ガレットの皆は今後も、ワシについてきてくれるであろうか?」

 

かつては大切な幼馴染の為を想っての行為が暴走し、自国どころかフロニャルドを巻き込む事態に繋がってしまったのだ。

ひとりの領主として民と向き合おうとレオンは心に決めていた。

不安がないと言えば嘘になるが、淀みのない言葉にガレットの国民が答える。

 

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!

 

 

レオンを慕う歓声として……。

 

「ビスコッティのみんなも、ワシの戦に参加してくれるであろうか?」

 

対するビスコッティ側もまた然り。

拳を上げて飛び交う拍手と喝采に、誰もが笑顔を咲かせていた。

時を同じくして、別室でベッドに横たわっていた晴人の瞼がゆっくりと開かれた。

 

「ハルトさん!気付かれましたか?」

 

目を覚ましたことに気付いて、そばに控えていたビオレが駆け寄ってきた。

ビオレに一度笑みを向けると、晴人は窓の外に目を向けた。

 

「……希望があふれてる」

 

窓に差し込む暖かな陽の光とともに、浅く耳朶を叩く歓声に口元を綻ばせて、とても穏やかな心地で呟いた。

 

「感謝する。ありがとう!」

 

自分の不甲斐なさを受け入れて尚慕ってくれる人々に精一杯の喜びを込めた言葉を贈るのだった。

 

                    ☆

 

滞りなく謝罪会見を終えたその日の夜、中断した戦の埋め合わせを兼ねてミルヒの臨時ライブが開催されることになった。

ココナ平野では特設のステージの建設が進められている。

同時に、ガレット領の街ではライブに先駆けてお祭りが開かれていた。

大勢の人々が行き交う賑わいの中に晴人の姿もあった。

 

「すごいな。みんな盛り上がってる」

 

つい数時間前までの災厄がまるでウソのような盛況ぶりに、晴人は周りを見渡しながら感嘆の言葉を口にした。

思えば、向こうの世界でも戦いに明け暮れる日々を送っていた彼にとって一体いつ以来の風景なのだろうか。

懐かしい感覚に思いを馳せるとともに、軒並みに並ぶ出店が並ぶ道を進むに連れて半ば興奮を覚えていた。

浮足立つ足取りで何をしようか考えながら出店を覗き込む晴人。

幸いにも、彼のポケットにはフロニャルドの硬貨が詰め込まれた麻袋がある。

事前に街に繰り出す時にビオレからもらったものである。

最初はさすがにお金は……と渋る晴人だったが、ビオレ曰く、それは先の戦での報酬分だとのこと。

中止になったにも拘らず律儀に配当金が支払われることに戸惑いを見せるも、正当な権利であることを主張するビオレに押されて、ありがたく受け取ったものだ。

とりあえず見た感じでは、出店で一食分使ったとしてもまだ余裕はあるだろうか。

さて、何をしようかと考えながら晴人は再度周囲に視線を巡らせる。

すると、とある一軒の出店が彼の目に留まった。

正確な理由というものはない。

ただ、なにかに引っ張られるようにそのお店に近づいてみると、瞬間、晴人は大きく目を見開いた。

 

「ウソ、だろ……。あれは……まさか………!」

 

我が目を疑う思いでさらに歩みを向けると、予感は確信に変わった。

 

                    ☆

 

ライブのステージと祭りの喧騒から少し離れた道をレオンは歩いていた。

憑き物が落ちたような面持ちで歩みを進める彼女の銀髪が夜の風で優しくなびく。

月の光が反射してきらきらと輝きを放つその姿は、幻想的な美しさを魅せていた。

徐に流れる髪を押さえていると、レオンは視界の端で人影をとらえた。

 

「ハルト……」

 

「よ、レオンちゃん」

 

彼女の視線の先にいたのは、大きな紙袋を抱えて大変ご満悦な晴人だった。

名前を呼べば、向こうも気が付いたようで片手を上げて挨拶を返した。

 

「もう出歩いて大事はないのか?」

 

「まあな。あの時も言っただろ?ただ魔力が切れただけだって。もう心配はいらないよ」

 

「そうか……。結局お前の見舞いにも行ってやれなんだ。その、すまない」

 

「別に気にする必要なんてないって、そんなの。結構バタバタしてたのは何となくわかってたからさ」

 

どこか申し訳なさそうな様子のレオンに対し、晴人は飄々と応じる。

 

「で、どうしたんだ?こんなところにひとりで」

 

「なに、ただの散歩じゃよ。お前こそどうした?やけにうれしそうではないか」

 

「ああ、実はな……」

 

今までレオンは、飄々とすることはあっても上機嫌な晴人の姿を見たことはなかった。

子どものように無邪気な一面が気になって訊ねてみると、晴人はさらなる笑みを浮かべて紙袋からあるものを取りだした。

 

「じゃーん!ドーナツ!」

 

「……は?」

 

声高らかに何を取り出したのかと思えば、予想の斜め上を行く答えにレオンは間の抜けた声を漏らした。

 

「俺の好物なんだよ。いや~、まさかこの世界でも食べられるとは思わなくてな」

 

「お、おぉ……それはよかったな……」

 

種類はもちろん、プレーンシュガー。

やっぱりあきらめない限り希望はあるもんだよな~、と嬉々として語る晴人に、愛想笑いで取り繕うレオン。

 

「それで、そっちはちゃんと仲直りはできたか?」

 

気が抜けたところに、唐突に訊いてきた。

呆気にとられてしまうレオンだったが、誰と、と問い返す必要はない。

 

「ああ、おかげでな。自分を殺してまで守ろうとしなくていいと怒られてしもうたがな……」

 

「そっか、怒られちゃったか」

 

「わ、笑うでない!」

 

途端に顔を赤らめて噛みついてくるレオンだが、晴人は軽く受け流す。

 

「此度のことで、ワシは自分の甘さを思い知らされた」

 

明らかにいつもの覇気が抜け落ちているレオン。

そんな彼女の言葉を晴人は静かに耳を傾けていた。

 

「星読みの未来ばかり鵜呑みに、肝心のミルヒの言葉を聞こうとしないまま空回りばかり繰り返した。挙句に自分の身勝手さで関係のない者たちまで巻き込んでしまった。お前がいなければワシは、ワシ自身の弱さに振り回されたまま星読み以上に最悪の未来を招いてしまっていたのかもしれん……。本当にありがとう、ハルト。そして――――」

 

「いっしょに食べようぜ」

 

すまなかった、と頭を下げようとしたレオンを遮る晴人。

彼の手にはレオンに差し出したプレーンシュガーがあった。

 

「いいのか?それはお前が買ったものでは……」

 

「いいて、いいって。うれしくてつい買いこんでしてしまったんだが、ひとりでこの量はさすがにな……」

 

苦笑を浮かべる晴人が抱える紙袋の中を覗けば、確かに10個近いプレーンシュガーが詰め込まれていた。

いくら好物とは言え、ひとりで食べるには多すぎると察したレオンは毒気が抜かれる思いでレオンは溜め息をこぼすのだった。

 

「そうか。なら、いただこう」

 

プレーンシュガーを受け取ったレオンはさっそく口に運ぶ。

口の中で溶け合うもちもちとした食感とパウダーシュガーの甘みが滅入っていた気分を和らげてくれる。

隣を見ると、並んで頬張る晴人の子供のようなあどけない笑顔が何ともおかしかった。

 

「ん?どうかしたか?」

 

「いや、たまにはドーナツも良いものだと思ってな」

 

レオンの視線に気付いて晴人が問いかけるが、それとなくごまかした彼女の答えにそっか、と相槌を打つ。

簡単に納得したかと思えば、続けて晴人が口を開いた。

 

「……確かにレオンちゃんがしてきたことは全部空回りだったのかもしれない」

 

突然の辛辣な言葉にレオンは項垂れてしまう。

自信に満ちた瞳にも陰りが過ぎりっていた。

 

「でも、全部が無駄だったわけじゃない」

 

だが、ハッと顔を上げて晴人を見やる。

 

「あれが、俺たちが守った希望だ」

 

晴人の視線を追うと、散りばめられた星々のように煌々と焚かれた明かりが目に留まる。

耳を澄ませば、祭りを楽しむ笑い声や、ライブを心待ちにする人々の歓声が聞こえきた。

 

「空回りしたからこそ気付けることだってあるんだ。大切なのは、今を受け入れてどうするかだ。結局、いろいろ遠回りしてしまったかもしれないけど、レオンちゃんのミルヒちゃんを守りたいっていう希望が未来を変えたんだ。だから、もっと胸を張ってもいいんじゃないか?」

 

そう言って、晴人はポン、とレオンの頭に手を置いた。

見上げれば、優しい微笑みを浮かべる晴人がいた。

 

「こ、子ども扱いするな!ワシは領主だぞ!」

 

見惚れてしまったことに気付かれることを恥ずかしくなり、思わず視線を逸らして口にしたのは強がりな一言だった。

 

「ハハ、悪い。ついな」

 

「………」

 

いつものように晴人が調子よく謝って終わるかと思われた。

しかし、手を下げようとした挙動が止まる。

 

「いや……お前なら、いい」

 

今にも消え入りそうな声に一層顔を赤らめたレオンが、晴人の袖を掴んでいたのだ。

 

「……そっか」

 

晴人もからかうことはせずにレオンの頭を優しく撫で始める。

 

「今までも、お前はこうして希望を守ってきたのだな……。ありがとう、ハルト」

 

晴人の手の温もりを感じながら呟いたレオンの言葉は、誰の耳にも届くことないまま夜の風に乗って消えていった。

 




いや~、あれから1年経つんですね……。
日朝もガラリと変わるごとに時間が経っていることを感じます。
スーパー戦隊はジュウオウジャー。
へー、今回のテーマは動物で、敵はメダルを使うんだねー。
動物とメダルかー。
………オーズを思い浮かべた人は僕だけじゃないはず………!

プリキュアは魔法使いかー。
………ウィザードを連想した人は少なくないはず……!

そっかー、もう1年なんだねー……。

はい、というわけで約1年ぶりの更新となりました、『仮面ライダーウィザード FANTASTIC DAYS』最新話です。
今まで更新できずにいて………ホントすいまっせんしたアアアアアアアアアアアアアアア!!
今まで感想返信できずにいてホントすいまっせんしたアアアアアアアアアアアア!!

まさかここまで間が開くとは思わなかったんです!
ラブライブ×ガッシュのssが思っていた以上に人気が出たことがうれしかったんです!
諸事情で昨日発売の『バトライドウォー創生』を今日買う予定ですが、これからもクウガともども更新していくんでどうぞ、これからも不肖青空野郎の作品をよろしくお願いします!
ホント、まことに申し訳ありませんでしたアアアアアアアアア!!!
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