仮面ライダーウィザード FANTASTIC DAYS   作:青空野郎

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第2話 蘇る絶望

異世界、フロニャルドの土地でグールと遭遇した晴人はウィザードに変身し、視界のほとんどを埋め尽くすほどのグールの群れを前にしても臆することなく立ち向っていた。

 

「ふん!はっ!」

 

深緑の満ちる深い森の中でウィザーソードガン・ソードモードの銀閃がグールたちを翻弄していく。

 

「あらよっと」

 

しゃにむにグールが槍を振るって襲ってくるが、晴人はエクストリームマーシャルアーツを基礎としたアクロバティックな動きで軽々とかわしていく。

 

「はっ!」

 

再び銀閃が閃き、グールは火花を散らせて倒れていく。

 

「にしても、やけに数が多いな…」

 

独りごちながらまた一体斬り伏して周りを見渡せば、未だに結構な数のグールたちが犇めき合っている。

だが、何故かグールを仕向けてきたであろうファントムの姿が見当たらない。

どこかに隠れてこちらの隙をうかがっているのであろうか。

戦法を変えようかと思い、新たな指輪を手にしようとしていた時、晴人の横を2つの影が通り過ぎた。

 

「はあっ!」

 

「せいっ!」

 

大太刀と小太刀の斬撃に眼前のグールが吹き飛ばされる。

 

「微力ながら、拙者たちも助太刀いたすでござる」

 

「こう見えて、腕には自信があるのでござるよ!」

 

ブリオッシュとユキカゼが頼もしく思える笑みを晴人に向けるなり、グールの群れに飛び込んでいった。

ブリオッシュが大太刀で両断し、ユキカゼは小太刀で斬り刻んでいく。

 

「すごいな」

 

みるみる内にグールはその数を減らしていく2人の少女の戦いを見て、晴人は素直に感嘆の声を漏らす。

 

「俺も負けてはいられないな」

 

背後から襲いかかってくるグールをカウンターの要領で適当に蹴り飛ばし、晴人はウィザーソードガンをくるりと回して駆け出した。

 

「このまま一気に畳み掛けるでござるよ!」

 

目が冴えるような剣捌きで次々とグールを斬り払っていくブリオッシュだが、目の前の敵に集中しすぎたせいか、背後で魔力弾を発射する別のグールの存在に気付くのに一瞬遅れてしまった。

 

【ディフェンド!プリーズ!】

 

背中を取られたとブリオッシュが舌打ちした瞬間、突如目の前に炎が揺らめく赤い魔法陣出現した。

 

「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ」

 

炎の魔方陣で魔力弾を防いでいく晴人は素早く指輪を取り換え、ハンドオーサーを傾け直す。

 

【ビッグ!プリーズ!】

 

指輪とはめた右手を頭上に伸ばした先に出現したのは等身大の魔法陣。

それに腕を透過させれば、晴人の腕は数倍の大きさに巨大化する。

そのまま巨大化した腕を勢いよく振り下ろして数体のグールを叩き潰す。

地響きを生むほどの衝撃で周りにいたグールたちが宙を舞う。

続けて腕を大きくスイングさせ、大量のグールを弾き飛ばしていく。

 

「油断大敵だぜ」

 

虚を浮かべるブリオッシュに、振り向きざまにウィザーソードガンで軽くさしながら晴人が言う。

 

「すまない。助かったでござる」

 

「気にするな」

 

簡単な受け答えしながら晴人は再度ウィザーソードガンをくるりと回す。

晴人がウィザーソードガンで薙ぎ払い、ユキカゼは小太刀で蹴散らし、ブリオッシュは大太刀で斬り伏せていき、辺りを埋め尽くしていたグールの大群の数を確実に減らしていく。

 

「それじゃ、そろそろフィナーレといこうか!」

 

晴人の言葉にユキカゼとブリオッシュの2人は頷き、互いに背中を向け合った。

 

【キャモナスラッシュ!シェイクハンズ!キャモナスラッシュ!シェイクハンズ!…】

 

ウィザーソードガンのハンドオーサーを起動させれば軽快な音声が鳴り響く。

 

「ユキカゼ式忍術、閃華烈風!」

 

ユキカゼの手の上で翡翠の光を放つ手裏剣が旋回する。

 

「裂空…一文字!」

 

居合の構えから放たれる弧月状の一閃が紫の光を放つ。

すかさず晴人は握手をするようにフレイムウィザードリングを翳した。

 

【フレイム!スラッシュストライク!…ヒーヒーヒー!ヒーヒーヒー!…】

 

ウィザーソードガンの刀身に炎で形成された赤い魔方陣が揺らめく。

 

「はああっ!」

 

晴人はウィザーソードガンを振りぬき、炎の斬撃を飛ばす。

炸裂する3者3様の必殺技に残るすべてのグールたちは爆発霧散した。

 

「ふぃ~」

 

そして例によって、最後に晴人はひとつ息を溢した。

 

                      ☆

 

戦闘を終えて人心地ついた晴人だが、もしかしたらまだ近くに敵が潜んでいるかもしれないと考えた。

思い過ごしかもしれないが、警戒することに越したことはないだろう。

晴人は3つの指輪を立て続けにバックルにスキャンした。

 

【ガルーダ!プリーズ!】

 

【ユニコーン!プリーズ!】

 

【クラーケン!プリーズ!】

 

晴人の目の前でプラモデルのように組み立てられていくのは、晴人の使い魔のプラモンスター“レッドガルーダ”、“ブルーユニコーン”、“イエロークラーケン”である。

 

「ハルト殿、それは?」

 

後ろでブリオッシュが興味深げに話しかけてきた。

 

「ああ、俺の使い魔だよ」

 

簡単に説明しながら、召喚に使用した指輪を定位置にセットして、使い魔たちはピコピコと動き始める。

 

「使い魔?…わっ!動き出したでござる!」

 

驚くユキカゼを流し目で見ながら、晴人は3体の使い魔に指示を出す。

 

「よろしくな」

 

全ては語らなかったが、晴人の意図を読み取ったようにこくりと頷く仕草を見せた後に使い魔たちはそれぞれの方向に散って行った。

それを見届けて晴人は変身を解いた。

 

「さてと、とりあえずこれで一安心かな?」

 

「そうでござるな」

 

2人に向き直る晴人にブリオッシュが首肯する。

 

「ハルト殿のおかげで手早く片付けることができた。感謝するでござる」

「困った時はお互い様だろ?」

 

謝辞を述べたブリオッシュに破顔の笑みで答える晴人。

 

「ところで、ハルト殿は一体何者でござるか?先ほどの立ち回り、とても素人とは思えなかったでござる」

 

問いかけてきたユキカゼに同意するように、彼女の隣でブリオッシュも頷く。

それを聞いて、晴人は左薬指に嵌めた赤い指輪、フレイムウィザードリングを見せながら、軽く笑みを浮かべながら言う。

 

「俺は希望を守る魔法使い、ウィザードだ」

 

                      ☆

 

グールを撃退した晴人、ブリオッシュ、ユキカゼ一行は場所を近くの川原に移した。

パチパチと魚を焼く焚き火を晴人たちが囲む形になっている視界の端では探索を終えた使い魔たちと子犬たちが戯れている(正確には使い魔たちが一方的に追いかけられている)。

カラフルすぎるその姿にしばし戸惑いを覚えたが、いざ食べてみるとこれがなかなかいける。

 

「ハルト殿はあの魔物のことを知っているのでござるか?」

 

「ファントムのことだろ?」

 

「ふぁんとむ、でござるか?」

 

最初に話を切り出したブリオッシュが初めて聞く言葉を反芻する。

 

「俺たちの世界には魔力の高い人間、ゲートって呼ばれる人間が存在する。そのゲートのすべてを奪って生まれる魔力の塊が、奴らファントムさ」

 

「すべて、というと?」

 

今度はユキカゼが尋ねてきた。

 

「そのままの意味さ。絶望したゲートの心の中で生まれたファントムは、ゲートの命も記憶も、そして希望を、そのすべてを奪って現実に現れるんだ」

 

「そんな…!」

 

晴人の言葉を聞いて、ブリオッシュとユキカゼは思わず目を見開き、絶句してしまった。

彼女たちでなくとも、死に対する概念の認識が浅ければ誰が聞いても同じ反応を見せるだろう。

 

「ということは、今までハルト殿は異世界でそのファントムと戦ってきたということでござるか?」

 

まあね、と軽く頷いて晴人は焼き魚を一口含んだ。

あっさりとした淡白な味と、程よい塩加減が口の中いっぱいに広がる。

 

「でも、なんであいつらもこの世界に…?」

 

やはりファントムが異世界に現れたということが腑に落ちない晴人はぼそりと呟く。

もしかしたら晴人が召喚の儀式に巻き込まれた時に奴らも紛れ込んだのでは?考える。

だが、晴人の呟きを聞いたブリオッシュが緊張した面持ちで晴人の予想を否定した。

 

「実はハルト殿、どうやらそのファントムという魔物はずいぶんと前からフロニャルドの各地に出没しているようなのでござる」

 

「なんだって?」

 

内容に、晴人は思わず眉根をしかめた。

 

「それって、だいたいどれくらい前なんだ?」

 

 

「拙者たちが存在を確認したのはつい半年ほど前でござる」

 

「フロニャルドに満ちるフロニャ力のおかげで死者こそは出ていないものの、やはり民や土地に甚大な被害が及んでいるのが現状でござる」

 

どうやらこの世界にファントムが現れたのは晴人が原因ではないらしい。

だが同時に、ファントムはいつ、どうやってこの世界に現れたのかという新たな疑問が脳裏を過ぎる。

 

「そうか…」

 

焼き魚の最後の一口を含んで晴人はひとつの決断を下した後、ゆっくりとした動作で立ち上がる。

 

【コネクト!プリーズ】

 

少し大きめの魔法陣の中から晴人はマシンウィンがーを引っ張りだした。

 

「ハルト殿?」

 

「ごめん、2人とも。俺は少しファントムを追ってみるよ。奴らがこの世界で何を企んでるのかが気になる。もし誰かを絶望させようとしてるなら、絶対にとめないと」

 

「悠長にしていたら帰れなくなるかもしれないでござるよ?」

「例えそうでも、やっぱりファントムを放っておくことはできない」

 

静かな口調で即答する晴人は振り向く。

 

「ファントムを倒すのは、魔法使いの役目だからな」

 

しばしの沈黙の後、その瞳に宿した強い決意を読み取ったのか、ブリオッシュは一つ頷いて懐から巻物のようなものを取り出した。

 

「ユキカゼ」

 

「はいでござる」

 

ユキカゼから筆を受け取ったブリオシュはしばしその紙面に黒い線を走らせたかと思うと、それを晴人に差し出した。

 

「これを持っていくでござる」

 

「これは?」

 

晴人は受け取った2本の巻物を不思議そうに見つめる。

 

「ひとつは拙者たちの住まい、風月庵への地図。来てくれればいつでも歓迎するでござるよ。そしてもうひとつは先ほど話した召喚の儀式を行える御方、ビスコッティ共和国代表領主、『ミルヒオーレ・フィリアンノ・ビスコッティ』様への書状でござる。それを見せれば話を聞いてもらえるはずでござろう」

 

思わず晴人はブリオッシュとユキカゼを見やった。

一度共闘したとはいえ、出会って間もない晴人に親切にしてくれたのだ。

晴人は、この人たちはいい人かもしれないと思った。

 

「すまない。助かる」

 

「困った時はお互い様、でござるよ」

 

訂正、やはりこの人たちはいい人だ。

晴人はマシンウィンガーに跨り、エンジンをかける。

 

「それじゃ」

 

「道中お気をつけて」

 

「また会いましょうでござる」

 

「ああ」

 

ヘルメットのシールドをおろし、晴人はアクセルを回してその場を後にした。

 

                      ☆

 

それから、晴人がフロニャルドに来てすでに一週間が経った。

その間にもう1度グールのぬれと遭遇した。

だが、やはりファントムの姿は見当たらなかった。

晴人はいまだにファントムの目的が分からないことに腑に落ちないでいた。

ただ、晴人の悩みのタネはそれだけではなかった。

ひとつはあの白い夢だ。

ファントムと出くわす度にあの白い夢を見るようになった。

つまり、これであの白い夢を見るのは3度目になる。

気のせいか、回数を重ねるたびに夢を見る時間が伸びているような気がする。

何度思い返いても、どうにもあの少年の悲痛に歪んだ顔が頭から離れない。

最初は偶然かと思ったが、偶然も3度続けばなんとやらである。

少年といえば、晴人と一緒にフロニャルドに飛ばされたであろう少年のことが気にかかる。今も自分と同じようにどこかに迷っているのだろうか。

ファントムに襲われていまいだろうか。

一度考えると、どうも予想が悪い方向へ流れてしまう。

2つ目は晴人の世界の現状だ。

いくらなんでも、すべてのファントムがこの世界にいるとは考えられない。

今もこうしている内に、向こうの世界でゲートがファントムに襲われていると考えると気が気ではない。

早く戻ることに越したことはないのだが、地球に帰る手段を持ち合わせていないのもまた事実だ。

悔しいが、今はもうひとりの魔法使い、仁藤攻介に任せるしかない。

3つ目はコヨミのことだ。

コヨミは晴人から魔力を供給することで擬似的に生きている。

一刻も早く元の世界に帰る方法を見つけなければ、いずれコヨミの魔力が尽きて死体に戻ってしまうだろう。

とりあえず、出かける前に魔力を渡しておいてよかったと思う。

そして、もうひとつはというと、

 

「ドーナツ、食べたいな…」

 

晴人が思い浮かべるのは愛しのドーナツ。

この一週間、豊かな自然のおかげで食料に困ることはなかったが、その間に晴人はドーナツを一度も口にしていない。

これは晴人にとって非常に由々しき事態であって、普段ではありえないことだ。

あのほどよい甘さを恋しく思い、本気で泣きそうになったことが何度かあったりした。

ただ、今は悩んでも仕方がない。

気分を変えるために顔でも洗おうかと、立ち上がった晴人は川原へと歩みを進めた。

 

                    ☆

 

さっぱりした気分で朝食を済ませた晴人は、穏やかな川のせせらぎを聞きながら再び頭を悩ませていた。

 

「まったく読めねえ…」

 

以前にブリオッシュからもらった巻物を前に晴人は難しい顔で呟いた。

その中身は風月庵への道を記した地図。

割と細かくかつ丁寧に黒線が描かれているのだが、地名を指しているであろう文字が全く読めなかったのだ。

会話が成立していたから完全に油断していた。

落胆する思いで溜息を溢していたそんな時、遠くのほうから探索に出していたガルーダが戻ってきた。

何かを伝えたいのか、忙しない仕草で晴人の頭上を旋回する。

 

「ファントムを見つけたのか!」

 

言うが早いか素早く巻物を片付けると晴人はガルーダの後を追いかけていった。

 

                    ☆

 

フロニャルド南中央ココナ平野では、猫耳、猫尻尾の一団とグールの軍団が激しい攻防が繰り広げられていた。

 

「クッ!ようやく戦を終えたばかりだとというに…!」

 

長柄斧で一体のグールを叩きのめした絹糸のように美しい白銀の髪を靡かせる少女が顔を顰める。

ちらりと辺りを見渡せば、兵士一人一人がそれぞれグールと相対しているもののどうも全体的に押されている。

長柄斧で一体のグールを叩きのめした絹糸のように美しい白銀の髪を靡かせる少女が顔を顰める。

ちらりと辺りを見渡せば、兵士一人一人がそれぞれグールと相対しているもののどうも全体的に押されている。

 

「ものども!なんとしても防衛ラインは死守せよ!」

 

『『『オオォォォォォォオオオッ!』』』

 

少女の喝に兵士たちが答える。

 

「閣下、やつらはやはり…」

 

「ああ、間違いない。最近噂に聞く魔物どもだ」

 

「しかし、ここはフロニャ力の守護が働く場所なのに何故…」

 

背中合わせに少女と長身の青年と鮮やかな紫の髪が特徴的な女性が言う。

 

「クッ…。こんな時に将軍が不在とは…」

 

「ないものねだりをしても仕方がない。考えるのは後じゃ。まずはこやつらを退けるぞ!」

 

「「御意!」」

 

少女の指示に、青年と女性が返事をした時だった。

 

『『『うわあああああああああっ!』』』

 

『『『ぎゃあああああああああっ!』』』

 

2人の返事と同時に、兵士たちの悲鳴が重なった。

慌ててその方に視線を向けると、3人と他の兵士たちは大きく目を見開いた。

突如目の前に現れたのは、2体の異形の怪人たち。

そのどれもが、グールたちとは比べ物にならないほどの威圧感を放っている。

その証拠に、グールたちが取り巻きのように怪人たちの周りに屯している。

 

「どうやら、こやつらがこの魔物どもを束ねている親玉のようだな」

 

怪人たちの鋭い眼光に、無意識に生唾を飲む。

怪人たちの無言の圧力に、武器を握る手に汗が滲む。

 

「閣下、お下がりください。ここは私と近衛隊長で」

 

青年は槍を、女性は徒手空拳を構えて怪人たちに向かって直進する。

女性と対峙する怪人は戦槍で迎え撃つ。

しかし、怪人の振るう槍の攻撃を冷静に見切って女性は軽い身のこなしでかわしていく。

 

「ハアッ!」

 

そしてすぐさま隙を見つけて、闘気を漲らせた拳を怪人のどてっぱらに叩き込んだ。

別の場所では青年が怪人の剣捌きに対抗していた。

槍と剣が打ち合うたびに、甲高い音が辺りに響く。

 

「甘い!」

 

青年が大振りの攻撃を見極め、素早く槍で怪人に剣を打ち上げた。

そして、青年はすかさず手に持つ槍を怪人の腹部に突き刺した。

女性と青年の一撃が同時に決まり、兵士たちは勝利を確信した。

 

「ビオレ!バナード!油断するな!」

 

だがその刹那、少女の声で女性ビオレと青年バナードは顔を強張らせた。

確かに、2人の痛打は見事に決まっていた。

並みの者がくらえばひとたまりもない威力だ。

しかし、そんな一撃をくらってもなお、怪人たちの双眼から獰猛な光が灯っていたのだ。

その眼光に射抜かれてしまったことが致命的な隙となった。

隙を突かれ、ビオレとバナードはお返しとばかりに怪人の炎攻撃をくらってしまった。

 

「キャアッ!」

 

「ガッ!?」

 

苦悶の声を上げ、地面を転がる2人の猫耳の戦士。

 

「ビオレ!バナード!」

 

慌てた様子で少女が地に落ちた2人の元に駆けよる。

致命傷までとはいかないが、やはり先ほどの攻撃が効いたようだ。

目の前で何事もなかったように立ち上がる怪人の姿に、兵士たちが動揺するのが分かった。

だが、さらに風向きは悪くなる。

何の前触れもなく、怪人たちの横にひとつの魔方陣が出現した。

そして、放たれる赤黒い不気味な光の中から新たに2体の怪人と十数体のグールが現れ出でた。

 

「ここで援軍か…!」

 

無意識の内に苦虫をかみしめる表情を作る少女。

2人が押されるところを見ても怪人たちの力量はかなりのものだ。

それがさらに2体も増えて合計4体、グールを含めればその数は100体を超えている。

もはや戦況は火を見るより明らかだ。

 

「キサマたちは一体何者だ!何が目的だ!」

 

少女が怒気を露わに問い質すが、怪人たちが言葉を発することはなかった。

 

「答えろオオオオオッ!」

 

再度戦斧を強く握りしめ、少女は犬歯を剥き出しに、獅子の如く怪人たちに向かって飛びかかる。

 

「邪魔だッ!」

 

すぐさまグールが前に躍り出るが、少女は戦斧の一閃で蹴散らす。

怪人たちの中央に飛び込み、華麗に、そして豪快に戦斧を振り回す。

だがその軌道は、新たに現れた怪人の鋭い爪攻撃に逸らされ、もう一体の怪人に腹部を蹴りつけられた。

 

「ぐうぅっ!」

 

予想以上の衝撃に少女は苦痛に顔を歪めながら宙を舞う。

うまく受け身を取ってすかさず立ち上がるが、追い打ちをかけるように怪人たちが火炎弾と魔力弾を放つ。

咄嗟の判断で盾を構えるが、怪人たちの攻撃には耐えきれず簡単に破片と化してしまった。

 

「があああああッ!」

 

『『『わああああああああああっ!』』』

 

立ち上る炎と煙の中で再び少女と、その余波で兵士たちが宙を舞った。

 

「クッ…!」

 

全身に痛みが走るが、特に立ち上がれないというわけではない。

しかし、わずかに霞む視界にじりじりと近づくグールの群れが映りこんでいた。

 

「閣下!」

 

「まずい!このままでは…!」

 

バナードとビオレが駆け寄ろうとするが、グールたちが邪魔で近づけないでいる。

それは他の兵士たちも同じだ。

そうこうしているうちに数体のグールが少女に飛び掛かった。

だが、残酷な冷たい光を見せる刃が少女に振り下ろされようとした―――その時だった。

 

【チョーイイネ!キックストライク!サイコー!】

 

突然耳に届いた電子音とともに両者の間に割り込む者がいた。

 

「だああああああああっ!」

 

その者の炎を纏った蹴りが大多数のグールたちを消滅させた。

 

【コネクト!プリーズ!】

 

そして着地と同時に黒いローブを翻すその者は振り向きざまに魔方陣から取り出した銀銃の引き金を引いた。

連射される銀の弾丸に撃ち抜かれたグールたちは火花を散らし、見事に爆発する。

 

「大丈夫か?」

 

突然の出来事に目を白黒させる少女に、ウィザードに変身した晴人が声をかけた。

 

「あ、ああ…、すまない。助かった。……キサマは?」

 

「俺はウィザード。お節介な魔法使いさ」

 

「魔法使い?」

 

怪訝そうな反応を見せる少女に、相変わらずの飄々とした口調で簡単に自己紹介をした晴人はフレイムウィザードリングを見せつける。

 

「で、なんでお前らがこの世界にいるわけ?」

 

そして、改めて怪人たちに視線を向けながら、先ほどの飄々さが消えうせた口調で呟く晴人は、赤い仮面の下で目を疑っていた。

なぜなら、目の前にいるその怪人たちは以前に晴人が倒したはずのファントム、ミノタウロス、ヘルハウンド、ケットシー、ノームの4体だったからだ。

だが、同時に晴人はファントムから理性の欠片もない、逆に獣のような獰猛さ、或いは意思のない亡霊のような雰囲気を感じ取った。

 

「聞いても無駄、か…」

 

そのことに疑念を抱くが、すぐに今は考えている場合ではないと判断する。

 

「なら、とっとと片付ける!」

 

意識を切り替えるようにウィザーソードガンをくるりと回し、晴人はファントムに軍団に向かって駆け出した。

 




なんか前回と同じ感じで終わっちゃった感じがするようなしないようなな第2話です。

DOG DAYSについて調べていると、紀乃川市って愛知県じゃん!ってことがありました。
というわけで、このお話では紀乃川市は東京都内という設定でお願いします。
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