仮面ライダーウィザード FANTASTIC DAYS   作:青空野郎

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第4話 参戦、魔法使い

ビスコッティ共和国領主ミルヒオーレ・フィリアンノ・ビスコッティ誘拐事件から始まった戦。

その舞台となっているミオン砦へと続く道を晴人とレオンは進んでいた。

マシンウィンガーのエンジン音とドーマの地を蹴る音が静かな夜の世界によく響く。

晴人は隣を走るレオンに声をかけた。

 

「ねえ、レオンちゃん」

「変な呼び方をするな」

 

呼ばれ方がお気に召さなかったのか、目を細めるレオンが背筋が凍るほどの視線で晴人を射抜いた。

短い返事には明らかに不機嫌が表れていたが当の晴人はレオンの威圧をどこ行く風と言うふうに真顔で受け流す。

 

「みんなが勇者って呼んでた子、シンクって言ったけ。どんな子?」

 

晴人と同じく異世界フロニャルドに飛ばされたシンクという少年については、ガレット陣地でレオンと合流するまでの間に予めバナードから聞いていた。

どうやら召喚の儀を取り行ったミルヒオーレ姫はもともとシンクだけを呼ぶ予定だったらしい。

晴人は偶然その場に居合わせたために儀式に巻き込まれたのだ。

 

「一言でいえば…へっぽこじゃ」

「なにそれ?」

 

ずいぶんと拍子抜けな返事が返ってきたものだ。

 

「わしらの戦は見せて何ぼのパフォーマンスじゃ。強さ華麗さ豪快さ、それが騎士と戦士の必須事項。その点に関しては申し分ないが、まだ動きには無駄が多い上に単調で読みやすい。もし仮に奴がまともに紋章術を扱えるようになれば我が軍の兵士たちでは相手にはなるまい。じゃが、所詮その程度じゃ」

「ふーん…」

 

淡々と語られる辛口な評価に晴人は相槌を打っていると、目の前に今回の戦の戦場となるミオン砦が見えてきた。

 

「行くぞ、ハルト!遅れるでないぞ!」

「ああ!」

 

気を引き締め直し、晴人とレオンは愛機の速度を加速させた。

 

                     ☆

 

丁度その頃、ミオン砦内ではガレットの戦士が一時的に無力化にされた状態、ねこだまが辺り一面に雑駁に転がっている。

その中心でブリオッシュとゴドウィンが対峙していた。

揺らめく炎が、涼しい顔を作るブリオッシュと出方を伺うゴドウィンを照らしている。

 

「親方様~!大変でございます!敵増援が参ります!」

 

そんな時、砦の外壁からユキカゼが大声を上げて知らせる。

 

「数は?」

「それが…一騎のみなのであります!」

 

独特な口調でブリオッシュの問いに答えたのは、ビスコッティ国立研究学院主席研究士、リコッタ・エルマールだ。

 

「レオ姫様一騎掛けでいらしているのであります!」

 

リコッタが覗く望遠鏡のレンズには白銀の髪を大きくなびかせ、猛スピードでこちらに向かってくるレオンの姿を捉える。

 

「あ、いや、違うであります!レオ姫様の後ろにもうひとり!あれは…?」

 

しかし同時にレオンの後方を走る晴人を認め、報告を訂正した。

 

「正門!開けええい!」

 

砦の正門を目の前にしたレオンの叫びに門兵が反応し、レバーを下ろす。

重い音を立てて、木製の扉がせりあがる。

 

「閣下!」

「これはレオ姫、ご無沙汰でござる」

 

すぐに進入してきたレオンにゴドウィンは跪き、ブリオッシュは頭を垂れる。

 

「久しいの、ダルキアン卿。じゃが姫とは呼ぶな。今は領主じゃ」

「これは失礼を」

「あれ、ブリオッシュちゃん?」

 

レオンの後に続いて入ってきた晴人は見覚えのある顔に声をかけた。

 

「おや、ハルト殿ではござらんか。久しぶりでござるな」

 

ブリオッシュも晴人の姿を認めて柔らかな微笑みを向けた。

 

「知り合いじゃったか?」

「前にいろいろ世話になったんだよ」

 

レオンの問いに簡単に答える晴人。

それを聞いた後、切り替えるようにレオンドーマから降りる。

 

「そこを退け、ダルキアン。わしはガウルに話がある」

「申し訳ございませぬ。ここは戦場。そして、拙者は若者たちの殿を勤めておりますれば…」

 

意味深な言葉に、その真意を察したレオンは僅かに口角を上げて紡ぐ。

 

「押して、通れと」

 

「御意」

 

静かな、そして短い受け答えにこの場の空気が張り詰めるのが分かった。

 

「わしを以前のわしと思うなよ。もはや、キサマが相手でも引けを取らぬ!」

 

ドーマから降り、戦斧を握りしめ声を張り上げるレオンは背後に神々しい真翠の光を放つ紋章を浮かび上がらせた。

 

「お相手、仕るでござる」

 

真っ向から受けて立つブリオッシュも大太刀の刀身に紫の光を走らせる。

一瞬の静寂の後、構えを取って地を蹴り一気に距離を詰める両者はお互いの得物を振るう。

甲高い音が轟き渡り、斧と太刀の衝突が凄まじい閃光を生み出し、地面が大きく爆ぜた。

 

「すっげ…」

 

反射的に身体を庇うように足を踏ん張る晴人は無意識に感嘆の一言を漏らした。

そして同時に、自分がここを訪れた目的を思い起こした。

 

「悪いレオンちゃん!俺先行くから!」

 

口元に手を添えるようにして叫び、晴人彼女たちに背を向けた。

 

「なっ!?おい待て!ハルト!」

「ハハハ。相変わらずでござるな、ハルト殿は」

「言うてる場合か!」

 

後ろでレオンとブリオッシュがなにやら口論する声が聞こえたが、気にすることなく晴人は砦の奥へと消えていった。

 

                      ☆

 

ビスコッティ騎士団・ミルヒオーレ直属親衛隊隊長エクレール・マルティノッジは苦戦を強いられていた。

彼女の愛用する2本の短剣を構えて対峙するのはガウルの直属親衛隊、通称ジェノワーズの3人だ。

 

「よォいしょっと!」

 

トラ耳の少女ジョーヌ・クラフティが巨大な大斧を振り下す。

それを視認したエクレールが躱せば、ジョーヌの大斧が地面を大きく抉る。

 

「ノア!」

「了解」

 

起伏のない声音で返事をしたノワール・ヴィノカカオが空高く跳躍し、数本のナイフを投擲する。

直線を描いて飛来するナイフの雨を、空中で不安定な姿勢になりながらも反応したエクレールは斬撃を飛ばして弾き落した。

だが、それでもすべてを落とすことは叶わず、落とし損ねたナイフがエクレール目掛けて降り注ぐ。

エクレールは身を躍らせてやり過ごす。

 

「ベル」

「はぁい」

 

続いておっとりとした口調で答えるのは弓術士のベール・ファーブルトンだ。

しかしおっとりとした雰囲気とは裏腹に、放たれる弓矢は一筋の閃光となってエクレールに迫った。

一瞬で判断を下すエクレールは両の短剣を交差させて受け止める体勢をとった。

刃と鏃の衝突とともに眩い閃光が迸り、腕から全身に駆け抜ける凄まじい衝撃に耐えきれずエクレールは悲鳴を噛み殺しながらも身を沈めて弓矢をいなした。

 

「ガウル殿下の腹心、ジェノワーズ…」

 

そのまま方向を失った弓矢で爆ぜた砦の壁の崩落を背に、苦悶の表情で冷や汗をたらしながらエクレールは眼前で構えるジェノワーズをにらめつける。

 

「基本的に3人ともバカで違いないが、戦いとなればやはり強い」

 

と、内心で呟きながら双剣を構え直した時だった。

緊張する空気に水を差すように、何の前触れもなく扉が開かれた。

 

「…あれ?」

 

何事かと同時に向けられる4つの視線に、晴人は間の抜けた声をあげた。

 

「誰だ?」

 

4人の共通する考えを代表してエクレールが呟く。

 

「えっと…お取り込み中のこところ悪いんだけど、シンクって子を探してるんだ。キミたちどこにいるか知らない?」

 

どうしたものかとポリポリと後頭部をかく晴人の問いにジョーヌが答えた。

 

「シンク?…ああ、勇者ならこの先でガウ様が相手してるはずやで」

「そうか、ありがとう」

「いやいや、気にせんでええよ………ってちょっと待たんかい!」

 

先に進もうとした晴人だったが、残念ながら、ノリ突っ込みの要領で大斧を振り下ろすジョーヌに遮られてしまった。

 

「うおッ!あぶね!」

 

咄嗟に横に飛んで回避する晴人にジョーヌが叫ぶ。

 

「あんた誰や!?ビスコッティの回しもんか!?」

「いや、私は知らないが…」

「ああ、俺は別に―――」

「問答無用!」

「なんで!?」

 

ジョーヌの発言をエクレールは戸惑いがちに否定し、晴人が事情を説明しようとしたが再び振り下ろされた大斧によって遮られてしまった。

その後も次々と繰り出される大斧の連撃をかわしていく晴人だったが、このままでは埒が明かないと思い立ち、指輪をベルトにかざした。

 

【ディフェンド!プリーズ!】

 

音声が鳴り、晴人は赤い魔法陣の防壁を出現させ、間一髪のタイミングで大斧の重い一撃を受け止めた。

 

「なっ!?」

 

目の前の光景にジョーヌを始め、ノワールにベール、エクレールが驚愕の色を表す。

その隙に晴人は衝撃を殺すために後ろに跳び退いて、一度ジョーヌたちと距離を取った。

 

「こんなところで時間を食いたくはないんだけどな…」

 

ゆっくりとした動作で立ち上がりながら嘆息交じりに独りごちる晴人。

いくらフロニャ力のおかげで死ぬことはないとはいえ、獣耳と尻尾を除けば見た目は人間そのもの、それも女の子と戦うことに気が引ける。

だが晴人の魔法を目の当たりにして警戒心を剥き出しに武器を構えるジェノワーズとエクレールを見て、どうやら話し合いの余地はないと悟りやれやれと肩をすくめた。

 

【ドライバーオン!プリーズ!】

 

「悪いけど、意地でも通らせてもらうぜ」

 

ウィザードライバーのハンドオーサーを左手側に傾け、晴人はフレイムウィザードリングを左手に装着する。

 

【シャバドゥビタッチへンシーン!…シャバドゥビタッチへンシーン!…】

 

「変身!」

 

【フレイム!プリーズ!】

【ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!】

 

ハンドオーサーにかざした左手を正面に伸ばす。

炎で形成された赤い魔方陣がゆっくりと通り抜け、晴人はウィザードに変身した。

その現象に今まで以上にその目を大きく見開くエクレール、ノワール、ジョーヌ、ベールの4人に、フレイムウィザードリングを仮面の横に掲げる晴人は得意げに呟いた。

 

「さあ、ショータイムだ」

 

                      ☆

 

レオンの戦斧とブリオッシュの太刀がぶつかり合うたびに大気が震え、大地が砕ける。

一進一退の攻防を繰り広げ、激しく火花を散らせながら競り合う中でブリオッシュが尋ねた。

 

「ところでレオ様。わが軍に侵略を繰り替えされてるそうでござるが」

「それがどうした…。栄治通りの我らガレットの戦興業じゃ!」

「レオ様の侵攻に、わが軍のまじめな騎士団長が頭を悩ませておりまする。うちの姫様のコンサート興行や一般イベントがなかなか行えぬと」

「それがどうした!だいたいキサマのところの犬姫!奴の開催する芋掘りバトルだの、海水浴大会もどきの水上戦などで若者の決起を癒してやれるか!」

「いや、なかなか楽しそうにござるが」

 

ここで一度、お互いは同時に後ろに跳んで距離を取った。

 

「楽しくないとは言っておらん…。それだけでは済まぬこともあると言うておる」

「まあ、うちの姫様にも至らぬ点はありましょうが、年と経験を重ねれば今よりもっと立派な領主になっていかれると、家臣一堂信じております。それまで、どうか今しばらく―――」

 

説得を試みるブリオッシュはこの時初めてレオンの伏せる瞳に陰りが映ったことに気付いた。

その瞳は何かを必死に隠そうとしているそれだった。

 

「それが、そうできればどれだけ…」

 

その時、絞るような声を漏らすレオンはその表情を悲痛に歪めた。

 

「レオ姫?」

「おしゃべりはここまでじゃ!誰に何を言われようと、わしはわしの道を行く!」

 

眉を顰め、訝しげな面持ちを浮かべるブリオッシュだったが、レオンは迷う気持ちを振り払うように背後に紋章を出現させた。

雄叫びを上げながら地を蹴るレオンの紋章の輝きを纏った戦斧が弧を描き、炎が照らす夜の世界に真翠の光が閃いた。

太刀を盾にするブリオッシュだったが、甲高い音ともに折れた刃が宙を舞う。

レオンの放った一閃を正面から食らったブリオッシュは後方に吹っ飛び、激突した衝撃で分厚い砦の岩壁を大きく陥没させた。

上着が弾け飛び、壁からずり落ちるブリオッシュはそのまま地に倒れた。

 

「おみごと。降参にござる」

 

安らかな表情を浮かべながら静かに呟くブリオッシュは、手のひらサイズの小さな白旗を振って戦闘を放棄した。

 

「…来い、ゴドウィン!」

「は、はあ!」

 

レオンはそんな彼女の姿を一瞥するだけで小さく舌打ちを鳴らし、ゴドウィンを連れてその場を後にした。

 

                      ☆

 

一方その頃、4対1という不利な状況の中でも晴人は圧倒的な戦いを見せつけていた。

攻めると見せかけては退き、退くと見せかけては攻める。

流れる雲のような捉えようのない蹴り技に、いつのまにか共闘するエクレールとジェノワーズは翻弄されていた。

 

「裂空十文字!」

 

同時に跳躍したエクレールが得意の紋章術を放ち、ノワールがナイフを投擲した。

 

【ディフェンド!プリーズ!】

 

しかし素早くに指輪を取り換えて、十字の斬撃とナイフの雨を炎で形成される赤い魔方陣の防壁で焼き尽くした。

 

【コネクト!プリーズ!】

 

ウィザーソードガンを取出して、晴人はエクレールとノワールの振り下ろされる短剣を受け止める。

ガキインッ!と辺りに甲高い音が響く。

すぐに晴人は刃のせめぎ合いを振り払い、後ろ上空に跳んで砦の外壁に着地する。

だが、追いかけるようにジョーヌが晴人の前に降り立った。

刹那にジョーヌが自慢の大斧を振り回してくるが、晴人は彼女の斧捌きを的確なタイミングでいなしていく。

そして大きく振り上げたところをウィザーソードガンの剣先を突き付けた。

時間が止まったかのような一瞬の静寂。

その時、視界の端でベールが援護射撃を放つのが見えた。

即座に反応した晴人は素早くウィザーソードガンをガンモードに変形させ、飛来する数本の弓矢を銀の銃弾で撃ち落し、再度振り下ろされるジョーヌの重い一撃を銃身で受け流す。

隙が生まれたジョーヌを旋風客で蹴り飛ばし、晴人はフレイムウィザードリングを黄色の指輪、ランドウィザードリングに付け替えて、ハンドオーサーを左手に傾ける。

 

【ランド!プリーズ!】

 

【ド!ド!ド!ドドドン!ドン!ドドドン!】

 

ハンドオーサーに翳した左手を下に向けると、晴人の足元に土塊が浮遊する黄色の魔方陣が出現する。

せり上がる魔方陣を透過する晴人は、土のエレメントを司るランドスタイルへとスタイルチェンジして着地を決めた。

赤い円形の仮面も黄色の四角形へと形が変わっている。

 

「色が変わった!?」

 

突然の姿が変わったことに、思わず動揺を見せるエクレールと同様に当惑の表情を浮かべるジェノワーズの面々。

だが驚いてばかりいられない。

晴人はすぐさま指輪を付け替え、ハンドオーサーを右手側に傾ける。

 

【ドリル!プリーズ!】

 

外壁から飛び降りながらギュィィイイイン!と鋭い音を鳴らして高速回転する晴人の身体が着地と同時に地面を堀り抉る。

地面の下に消えた晴人がどこから現れるのかと頬に汗を流しながら背中合わせに警戒するエクレールとジェノワーズ。

しかし、丁度彼女たちの背後に地面から飛び出す晴人。

反応が追いつかず4人の少女たちは晴人の剣戟を食らってしまう。

苦悶尾表情で後退しながらも、すぐにベールが晴人に狙いを定め、強い輝きを纏わせた弓矢を放った。

先ほどよりも速く、鋭い一閃が土煙を巻き上げて晴人に迫る。

しかし、冷静を保つ晴人はバタフライで跳躍する。

返す刀で弓矢を往なすが一息つくまもなく、彼女たちの追撃はさらに続く。

休む間もなく、今度はノワールとジョーヌがそれぞれの得物を構えて晴人に攻めかかってきた。

 

「まったく、困った暴れん坊ちゃんたちだ」

 

ブリオッシュやユキカゼを見て思っていたことだが、この世界の女性はなかなかタフだと内心で感嘆しながら晴人は再び右手の指輪を付け替えた。

 

【バインド!プリーズ!】

 

すると、魔方陣から飛び出した土塊の鎖が肉薄するエクレールとジョーヌを縛り上げた。

 

【ビッグ!プリーズ!】

 

「よっと」

 

すかさず晴人は巨大化した腕を伸ばし、2人を指先で軽く弾き飛ばした。

丁度少女たちが一か所に固まったところを見計らい、晴人はランドウイザードリングを取り外した。

 

「特別サービス」

 

軽い口調で晴人は三度ハンドオーサーを左手側に傾け直し、緑の指輪、ハリケーンウィザードリングをはめた左手をウィザードライバーのハンドオーサーにかざした。

 

【ハリケーン!プリーズ!】

【フー!フー!フーフーフーフー!】

 

頭上に展開した風の渦巻く緑の魔方陣を跳躍して通り抜け、晴人はランドスタイルから緑を基調とした出で立ちに、逆三角形の仮面が煌めく、風のエレメントを司るハリケーンスタイルへと姿を変えた。

魔方陣を足場に大空高く飛翔した晴人はウィザーソードガンを逆手に持ち替えて、エクレールたちめがけて滑空した。

一瞬にして距離を詰める晴人の全身に纏う暴風がエクレールたちを吹き飛ばした。

しかし、それで晴人の攻撃は終わらなかった。

辺りを縦横無尽に飛び回り、次々と少女たちを上空へと蹴り上げ、または斬り上げていった。

きれいに着地を決めてウィザーローブを翻しながら振り返る晴人に、無残に地面に叩き付けられるエクレールとジェノワーズ。

 

【キャモナスラッシュ!シェイクハンズ!…キャモナスラッシュ!シェイクハンズ!…】

 

「さあ、フィナーレだ」

 

機を見極めた晴人は起動させたウィザーソードガンのハンドオーサーと握手を交わす。

 

【ハリケーン!スラッシュストライク!】

【フー!フー!フー!…フー!フー!フー!…】

 

晴人は神経を研ぎ澄ませるように旋風渦巻くウィザーソードガンを中段に構える。

続けて右足を軸足に身体を回転させ、真横に薙いだウィザーソードガンから放たれた烈風が竜巻となってエクレールたちを包み込んだ。

 

「なっ、これはっ!?」

「くっ、動けない…!」

「ちょっと、これってまずいんじゃ!」

「目が回るぅ~」

 

宙に浮遊する少女たちは必死にもがくが、吹き荒ぶ風圧が自由を奪う。

 

「はああっ!」

 

気合の発声をあげ、縦方向の一閃から繰り出された一陣の斬閃が疾風の如くエクレールたちを貫き、天高く駆け抜けていった。

 

「「「「きゃあああああああああっ!!!」」」」

 

4人の少女の絶叫が木霊し、浮かび上がる緑の魔方陣が月夜の明かりに照らされた。

 

「ま、こんなもんかな」

 

ウィザーソードガンを肩に担ぎながらいつものようにひとつ息を溢す晴人。

 

「大丈夫か?」

 

歩み寄りながら変身を解く晴人は、唯一意識のあったエクレールに手を差し出した。

エクレールがその手をつかむかどうかを悩んでいると、バタン!とけたたましい音を立てて扉が開かれた。

 

「ハァルトォオ…。さっきはよくもわしに面倒事を押し付けてくれたのぉ…!」

 

晴人の姿を認めるなり、ゴドウィンを連れたレオンが怒り心頭のご様子で睨めつけていた。

 

「レオンミシェリ姫!?」

「あー、やっぱ怒ってる?」

「あたりまえじゃ!」

 

驚きの声を上げるエクレールの隣で、頬に冷や汗を流しながら恐る恐る尋ねる晴人にレオンは一喝で返した。

思わず苦笑を浮かべる晴人はレオンから視線をそらす。

 

「はあ…。ところで、それはおまえがやったのか?」

 

レオンは未だに目を回しているジェノワーズに視線を移して晴人に問うた。

 

「まあ、そうだけど…もしかしてまずかった?」

「…いや、かまわん。おかげで仕置きをする手間が省けた」

 

そう言って、静かに嘆息を溢すレオンは瞑目する。

これが嵐の前の静けさだということを、晴人はこの後すぐに実感することとなる。

 

                      ☆

 

「てか、この後コンサートってマジか?マジなのか?」

「だからそう言ってんじゃないか…!」

 

砦内部で焦りを見せるガウルの質問に、異世界より召喚されし勇者シンク・イズミが答えた。

 

「あんのぉ…。ジェノワーズのあほどもが、また適当な仕事しやがったな…」

「何をごちゃごちゃと…」

 

お互いが競り合っていると、突然の轟音と共に砦の岩壁が崩れ散った。

 

「あ?」

「え?」

 

無意識に間の抜けた声を出していると、砂塵と土煙の向こう側で仁王立ちするレオンがいた。

 

「ガウル…それに、ビスコッティのへっぽこ勇者!」

 

眉を吊り上げるレオンが、背筋が凍るようなドスの利いた声を砦内に響かせる。

その瞳に抑えようのない怒気を孕んでいた。

 

「あ、あああ姉上!」

「へ、へっぽこ!?」

 

レオンの迫力に気圧されたのか、ガウルとシンクが絞り出す声は明らかに震えていた。

深呼吸して一拍を置くレオン。

 

「ガァキドモォォオオオッ!!!戦場で何を遊んでおるかァッ!!!!」

 

 

一瞬の静寂の後に放たれた怒号が大気を震わせた。

 

「「はいぃ!ごめんなさいぃい!」」

 

獅子の如き形相を浮かべるレオンに、縮み上がるガウルとシンクが同時に足をそろえてザ・平謝り。

 

「うわぁ、容赦ねえ…」

 

その光景に、口元を手で押さえる晴人は同情する視線を2人の少年に向けるのであった。




はい、つーわけでシンクさん初登場の回でした。
スーパーヒーロー大戦から早4ヶ月。
ようやくこの季節がやってきましたね!
仮面ライダーウィザード IN MASICLAND。
今から待ち遠しいです!
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