仮面ライダーウィザード FANTASTIC DAYS   作:青空野郎

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第5話 その瞳に映るもの

「レオ様、申し訳ございません。こんなこととは露知らず…」

 

ミオン砦城内の廊下を進みながらガウルに仕える近衛メイド長ルージュ・ピエスモンテがレオンに真摯な気持ちで謝罪の言葉を口にした。

 

「よい。悪いのはそこのバカ2匹だ」

 

しかしルージュの謝罪を特に気にした様子もなく、レオンが冷めた視線を後ろに向ける。

その先では今回の事件の発端であるバカ2匹こと、勇者シンクとレオンの弟ガウルが頭に大きなたんこぶを作って猛省していた。

さらにその後方にジェノワーズと、そして晴人が続いていた。

やがて目的となる部屋に辿り着いたレオンが扉を前にして歩みを止めた。

目を閉じてゆっくりと息を吸い、静かに吐き出す。

 

「邪魔するぞ」

 

そして気持ちを押し殺したような面持ちで扉を開いた。

 

「レオ様…」

 

レオンの登場に驚いたように声を漏らした人物こそ、ビスコッティ共和国領主ミルヒオーレ・フィリアンノ・ビスコッティ。

シンクと晴人を異世界フロニャルドに呼び寄せた張本人である。

艶のある桜色の髪の隙間からは、やはり特徴的な犬耳が覗いていた。

 

「あの、ご無沙汰―――」

 

「すまなんだな、ミルヒオーレ姫殿下。戦勝国の宴の邪魔など無粋の極み。お主の都合を無視して連れ出した不肖の弟の非礼を詫びよう」

 

「いえ、あの…ガウル殿下はご存知なく―――」

 

「今回のことは、何か別の形で侘びを考える。今は早く戻るとよかろう」

 

神妙な顔で話しかけるミルヒだったが、レオンは冷たい声音で彼女の言葉を一方的に断ち切るだけ。

 

「レオ様…」

 

2人の会話はそれきりだった。

 

「ルージュ、後は頼んだ」

 

「は、はい!」

 

後を後ろに控えていたルージュに任せて、ミルヒは部屋を後にするレオンの背中を見つめることしかできなかった。

晴人は部屋に掛けられている幼き頃のレオンとミルヒが描かれた絵画を黙って見つめていた。

 

                      ☆

 

「災難だったな」

 

晴人はようやくたんこぶの引っ込んだ頭をさするシンクに声をかけた。

 

「あー!あなたは確かあの時の!」

 

晴人に気付いたシンクが大きく目を見開いた。

どうやら向こうもあの時に晴人の姿を見ていたようだ。

心配事がひとつ減ったことでほっと胸をなでおろすシンク。

 

「俺の名前は操真晴人。よろしく」

 

「こちらこそ!ボクはシンク・イズミって言います!」

 

2人が自己紹介し合ったところで、するとそこにミルヒが割り込んできた。

 

「勇者さま!」

 

「姫さま!ご無事で何よりです!」

 

「いえ、勇者さまこそ本日2度目の戦、お疲れ様です」

 

お互い無事であることを確認して、改めてシンクはミルヒに深々と頭を下げた。

 

「すみません、姫さま。何も知らなかったとはいえこんなことになってしまって…」

 

「いえ!勇者さまが誤るようなことではございません。お気になさらないでください」

 

謝るシンクに、ミルヒは逆に申し訳なさそうに優しい声音で返すと、視線を晴人に向けた。

 

「ところで勇者さま、こちらの方は?」

 

「この人は操真晴人さん。どうやらボクと一緒に召喚されてたみたいなんです」

 

「そうなのですか!?」

 

シンクの言葉に思わずミルヒは目を大きく見開いてしまった。

 

「まあ、俺は巻き込まれたってのが正しいんだけどな。てことは、もしかしてキミがミルヒオーレさま?」

 

「え?ええ、そうですが…なぜ私の名前を?」

 

「実は…ええと…あった」

 

晴人が取り出したのは一本の巻物。

それはこの世界に来た時にブリオッシュがくれたものだった。

晴人はそれをミルヒに手渡した。

 

「前にブリオッシュからもらってね。それを見せれば話を聞いてもらえるって」

 

「確かに、これはブリオッシュが書いたもので間違いがいありません」

 

巻物を広げて中身を確認したミルヒが納得したように大きく頷いた。

 

「でもよかった~。まさかこの世界に来たその日にこうして出会えるなんて」

 

「――え?」

 

晴人はシンクの何気ない一言に違和感を覚えた。

――この世界に来たその日。

ということは、シンクは今日フロニャルドに来たばかりということになる。

これは単なる偶然なのだろうか。

 

「どうかしましたか?」

 

顔に出ていたのだろうか、シンクが頭を悩ませていた晴人の顔を心配そうに見つめていた。

 

「え…ああ。いや、なんでもない。とりあえずそっちも無事みたいで安心したよ」

 

しかし無理に状況を混乱させるほど晴人は無粋ではない。

すると、愛想笑いでそれとなくごまかす晴人の元にガルーダが飛んできた。

 

「どうした、ガルーダ?」

 

忙しない様子で周囲を飛行ガルーダが晴人を窓の外を示す。

ガルーダに連れられて窓の外を覗き込むと、晴人は表情を強張らせた。

 

「ダメでござるよリコ!それはハルト殿のでござる!勝手に分解するのはまずいでござるよ!」

 

「止めないでくださいでありますユッキー!あれを一目見た瞬間自分の研究心としっぽの付け根がギュンギュンを通り越してギュインギュインなのであります!こんなチャンスはめったにないのであります!是が非でもあのメタルチックなボディに隠されたプレシャスをレッツトレジャーしたいのであります!」

 

晴人の眼下ではマシンウィンガーを前にタケ○プターよろしく尻尾をブンブン振り回すリコッタを羽交い絞めにするユキカゼがいたがいた。

 

「ちょっ!それ俺のバイク!」

 

今ユキカゼがリコッタを解放すれば、たちまち彼女はマシンウィンガーに飛びついてしまいそうな勢いだ。

手遅れになる前にゴメンと一言謝って晴人は部屋を飛び出した。

 

「えと、お気になさらずー…」

 

そんな晴人を、シンクとミルヒは苦笑いを浮かべて見送った。

 

                      ☆

 

晴人の叫びは聞こえていなかったようで、未だにリコッタはユキカゼの腕の中で盛大に暴れていた。

 

「大丈夫であります!ちょこっとだけ!ちょこっとだけでありますから!バラバラ、先っちょ触るだけでありますから!解体、何としてでもあの解析、マッスィーンの全容をこの手でえええええ!…おっといけね、よだれが」

 

「落着くでござる!説得力がまるでないでござるよ!サブリミナル的に本音が漏れてるでござるよ!最後に至ってはだだ漏れでござるよ!」

 

久々に再開を果たした友の豹変ぶりに戸惑いを覚えながらもつっこみを入れてしまうユキカゼ。

 

「むむむ~。こうなれば………ユッキー、あれを!」

 

「へ?」

 

「隙ありであります!」

 

適当な方向に指を指しに反応したユキカゼの一瞬の隙をついてリコッタは彼女の耳にふぅ~と息を吹きかけた。

 

「ひゃんっ」

 

即座にリコッタは驚きでかわいらしい声を上げるユキカゼの緩んだ拘束を抜け出して高く跳躍した。

 

「いざ行かん!未知なる世界へえええええ!」

 

小さな少女の狂気に染まる手がマシンウィンガーに及ぼうとした時だった。

 

【グラビディ!プリーズ!】

 

寸前のところで突如空中に出現した黄色に光る魔法陣がリコッタの勢いを殺した。

 

「あれれ?浮かんでる?自分何故か浮かんでいるであります!」

 

浮遊するリコッタが小柄な体を大きくばたつかせる。

 

「これは…」

 

「ちょっとなにやってんの!?」

 

魔法陣に見覚えのあるユキカゼが思考を巡らせていると、丁度晴人が現れた。

 

「ハルト殿、お久しぶりでござる!」

 

「よお、ユキカゼ。お前も来てたんだな」

 

久々の再会に晴人もユキカゼも自然と笑みがこぼれた。

 

「それもハルト殿の魔法でござるか?」

 

「まあね」

 

ユキカゼの問いを得意げに肯定した晴人は魔法陣の下で浮遊するリコッタを地面に下ろした。

 

「で、ええと…」

 

リコッタと向かい合った晴人が先ほどの少女らしからぬ蛮行について問いただそうとしたが、はたと彼女の名を知らないことに気付いた。

そんな晴人の様子に気づいたのか、リコッタはビシッと敬礼してハキハキとした口調で答えた。

 

「初めましてであります!自分はビスコッティ王立学術院主席リコッタ・エルマールであります!あなたさまのことはユッキーから聞いてるであります!是非とも!是非ともあの機械を調査させていただけないでしょうか!」

 

「いや、ダメに決まってるでしょう」

 

危険な色を映す瞳が爛々と輝きを見て、危険を感じた晴人はすかさず却下を下す。

リコッタの手によって解体され、無残な残骸へと成り果てた愛機の末路が簡単に想像できてしまう。

何としてもそれだけは阻止しなければ。

 

「心配ないであります!ちょっと調べるだけでありますから!ちょっとパーツ外すだけでありますから!ちょっと中身いじるだけでありますから!私が保証するであります!」

 

しかしなおも食い下がるリコッタ。

このままではらちが明かないと察し、ひとつ頷いて晴人は強硬手段に出ることにした。

 

「キミの言いたいことはよく分かった。だから…ゴメン」

 

優しい口調で語る晴人は素早い動作リコッタの手に指輪とくぐらせ、ベルトの前に持って行った。

 

【スリープ!プリーズ!】

 

何が起きたのか理解するまもなくリコッタは糸が切れた人形のように膝から崩れ落ちた。

 

「リコ!?」

 

「大丈夫。少し眠ってもらっただけだから」

 

声をあげたユキカゼだが、すぐにその心配は杞憂に終わった。

晴人の腕の中ではリコッタは規則正しい寝息を吐いていたのだ。

 

「しかしながら相変わらずハルト殿の魔法はおもしろいでござるな」

 

安堵の息を溢したユキカゼは安らかな表情で眠るリコッタを背負うようにして立ち上がる晴人に語りかけた。

 

「え?」

 

「失礼ながら、遠くから先程の戦闘を拝見させてもらったでござる」

 

どうやらあの時のエクレールとジェノワーズとの戦いを見られていたらしい。

 

「エクレもジェノワーズの御3方も、いずれもフロニャルドに名を連ねる実力者にござる。そんな彼女たちをも圧倒するハルト殿の実力。拙者思わず感服したでござる」

 

「ああ、えと…ありがと」

 

照れ隠しの笑みを浮かべる晴人。

しかし称賛されることは素直に嬉しいのだが、今までに幾度となく死線を戦い抜いてきた晴人にとってはどおということはない。

 

「そういえばさ―――」

 

「いってきまあああああす!」

 

思い出したように口を開いた晴人の言葉は突然の叫びに遮られてしまった。

辺りに視線を巡らせるとフロニャルドの夜の空に、一筋の閃光が走った。

わずか一瞬の出来事だったが、晴人は確かに見た。

橙の閃光の正体はミルヒを背負ったシンクだった。

シンクはそのまま流れ星の如き速度でミオン砦を飛び出していった。

しばしの間唖然とする晴人とユキカゼ。

すると一瞬早く我に返ったユキカゼが切り出す。

 

「すみません、ハルト殿。拙者は勇者殿に挨拶をしてくる故、これにて失礼させてもらうでござる」

 

「え?ああ、うん。気を付けてな」

 

「はい、また会いましょうでござる!」

 

紋章術を発動させ、両の脚に輝力を漲らせたユキカゼもまた、閃光となって金色の軌跡を残してこの場を去って行った。

10秒と立たない内に彼女の姿は遥か彼方に消えていった。

後に取り残されたのは眠るリコッタを背負う晴れ人ただひとり。

 

「さて、とりあえずどうするかな…」

 

「ハルト殿。ご無沙汰でござる」

 

完全に手持ち無沙汰な状態だったので先の部屋に引き返そうかと考えていると、後ろから声をかけられた。

聞き覚えのある柔らかな声音の主に振り向くと、やはりそこにいたのは穏やかで大人びた笑みを浮かべるブリオッシュだった。

 

「ブリオッシュちゃんも久しぶり。一週間ぶりだな」

 

改めて晴人は、今度はブリオシュと再会の挨拶を交わした。

 

「いやあ、最初にハルト殿がレオ姫様と現れたときは驚いたでござる。さらには戦にまで参加していたとは。しかしなんでまた?」

 

「この戦にシンクって子が出てただろ?」

 

「ビスコッティに召喚された勇者殿のことでござるな。もしかして勇者殿はハルト殿の―」

 

「そ。俺と同じ世界の人間なんだ。向こうの世界で召喚に巻き込まれてそれきりだったから、その子の無事を確認したくてね」

 

「そうでござったか。拙者も先程勇者殿と話をしたでござるが、なかなか元気なお方でござったな」

 

「確かに」

 

何気ない会話で自然と笑みがこぼれる。

しかし、晴人覚えずほころんでいた表情を真剣なものに変えた。

 

「今朝、グール以外のファントムが現れた」

 

突然の晴人の言葉に耳を疑ったのか、ブリオッシュの犬耳がピンと立った。

 

「それは真にござるか?」

 

「ああ。そっちはどうだった?」

 

「こちらは幸いというべきか、残念ながらというべきか、ハルト殿と出会ってからは一度も」

 

「そっか。とにかく、奴らが現れたってことは向こうも本格的に動き始めたってことかもしれない」

 

「なるほど。…一報感謝するでござる」

 

真剣な面持ちで頭を下げるブリオッシュに晴人は気にするなと勤めて明るく返した。

晴人の思いを察したのか、ブリオッシュが話題を変えてきた。

 

「ところで、ハルト殿はこれからどうするつもりでござるか?」

 

「これから、か。そういや考えてなかったな……」

 

異世界の夜空を見上げながら晴人は小さくつぶやく。

今回晴人が戦に参加したのはただの成り行きだ。

シンクの無事も確認できたことだし不安要素の一つは解消された。

おそらく彼はこのままビスコッティで世話になるのだろう。

ファントムのこともあるが、今晴人の脳裏に浮かんだのは―――レオンの姿だった。

晴人はそれを認めるなりひとつ頷いて、

 

「そうだな。俺はもう少しレオンちゃんのところで世話になるよ。ちょっと気になることもあるし」

 

と、結論を出した。

 

「もしかしてハルト殿もレオ姫さまの様子に気づいたでござるか?」

 

「まあね」

 

晴人が違和感を確信したのはレオンとともにミルヒのいる部屋に訪れた時だった。

ミルヒと会話していた時、レオンは一度もミルヒと目を合わせようとしなかった。

必要最低限の内容で切り上げ、逃げるようにその場を後にするレオンの表情を晴人は見逃さなかった。

思い返せば、初めて会った時から何かを無理やり抑え込もうとして今にも悲痛に歪みそうな顔が、陰りが見え隠れするあの瞳がどうしても頭から離れなかったのだ。

それは晴人にとって1番嫌いな顔、絶望に歪む表情とよく似ていから。

 

「そうでござるか…。ならレオ姫さまのことはハルト殿にお任せするでござる」

 

必要以上に詮索してこないブリオッシュの心遣いが素直にありがたかった。

 

「おう」

 

それではと頭を下げるブリオッシュに、ついでにリコッタを任せて晴人は遠ざかっていく後姿を見送った。

そうして最後に一人残った晴人も動き始める。

とりあえず上の部屋に戻ろうかと考えながら歩き始めると何やら上空から騒がしくなった。

何事かと顔を上げると、例の空中ディスプレイに映像が映し出されていた。

場所はどこかのホールのような場所なのだろうか、大きく舞台と客席に分けられている。

観客で埋め尽くされる客席に灯る色とりどりの光はサイリウムだろうか。

そしてスポットライトが照らす薄暗い舞台からひとりの少女が現れた。

 

『お待たせしました!ミルヒオーレ・フィリアンノ・ビスコッティ殿下のご登場です!』

 

少女の登場に観客の盛り上がりはさらに増した。

司会者の言葉通り、現れたのは美しいドレスに着替えたミルヒだった。

どうやらシンクは間に合ったらしい。

そうこうしているうちにディスプレイの向こうで静寂が訪れた。

そしてマイクを持つミルヒが静かに口を開いた。

 

『今日の戦ではビスコッティに来てくださった勇者さまと、いつも頑張ってくれているこの国の騎士たちが勝利を運んでくれました』

 

ホール内に響くミルヒの言葉を観客のだれもが黙って聞いている。

そして舞台でただ一人立つミルヒの笑顔も雲の切れ間から差し込む陽の光の如く言葉も弾んでいく。

 

『今日の勝利を糧に、今日よりもっと素敵な明日を皆さんに送れるように、頑張って勇気を乗せて歌います!―――“きっと恋をしている”』

 

直後、ホール内に明るく優しいメロディが流れ始める。

メロディに合わせてミルヒは身体を揺らしてリズムを取り、やがて歌詞を紡ぎ始める。

聴いていて気持ちが前向きになってくる、そんな印象が受け取れる曲だった。

曲に合わせて揺れるサイリウムの光がとても幻想的に見えた。

思わず聞き入ってしまいそうになったが、その時晴人は見覚えのある後姿を見つけた。

ゆっくりとした足取りで進むドーマにまたがり砦を後にしようとするレオンだ。

直接見なくても後姿だけでレオンの表情が予想できる。

 

「見てかなくていいのか?」

 

ディスプレイの向こうで歌うミルヒに背を向けるように去ろうとするレオンに晴人は声をかけた。

 

「ハルトか…」

 

今にも消え入りそうなか細い声と覇気のない表情が向けられる。

なんとなく見てられなくなり晴人はレオンの横に並んで歩を進める。

 

「結構いい歌だな」

 

「ふん。犬姫の歌などに興味はない」

 

今でも夜空に響き渡る曲に素直に感想を言う晴人にレオンは強がる声音で返す。

どうやら思っていた以上に頑固な性格をしているようだ。

 

「そういえば、あの部屋に飾ってあった絵ってレオンちゃんとあのお姫さまでしょ?」

 

晴人は夜空に浮かぶディスプレイに映るミルヒを指さしてレオンに話しかけた。

 

「……そうだとして、それがどうした?」

 

「彼女とケンカでもしたの?」

 

「お前には関係ない」

 

淡々と放たれる言葉の端々に苛立ちがにじみ出ていた。

やはりレオンは何かを隠そうとしているのは間違いなさそうだ。

晴人はレオンの横顔をただ黙ってじっと見つめる。

悲痛と焦燥に揺れる瞳のさらに向こうに悲しみの光を見たからだ。

レオンは何かを守るため、そして自分を保つために、あえて自分をふるいだたせているのだろう。

ただ、今すぐにでも絶望に押しつぶされてしまいそうなその表情は、あの日初めて出会ったばかりのコヨミとよく似ていた。

だから―――

 

「そっか。……じゃあ今は何も聞かないよ」

 

暗くなる雰囲気を吹き飛ばすように、明るく言う晴人は歩みを止める。

何事かと思い、レオンもドーマを止めて晴人と並んだ。

 

「でも、もし本当に絶望しちまいそうになったら―――」

 

見下ろすレオンの瞳を見つめ返す晴人は指輪を付けた右腕をまっすぐ突出し、

 

「俺が最後の希望になってやるよ」

 

自身と決意に満ちた笑みを浮かべて、力強く言い切った。

 

「…………、―――――ッッ!!」

 

しばしの静寂の後、突然レオンの顔がボンッと赤くなった。

 

「なッ!?お、おおおまえは何を言っておるのだ!からかうのもいい加減にしろ!」

 

晴人の言葉をどう受け取ったのか、さらに顔の赤みを増していくレオン。

 

「もうよいわ!」

 

羞恥を振り切るように進み始めたレオンに慌ててついていく晴人。

 

「それとだ、ハルト。お前にひとつ言っておく」

 

「ん?」

 

「次そのような名で呼べばただではおかんぞ」

 

『そのような名』が指すのは恐らく『レオンちゃん』という呼び方だろう。

ギロリと晴人を見下ろすレオンの瞳はまさに獲物を射殺さんとする獅子そのものだった。

並みの者が睨まれれば、全身が震え上がってしまうほどの鋭さだった。

しかし晴人はレオンの睨みを得意げな笑みだけで適当に流して言い返す。

 

「えー?結構かわいいと思うんだけどな」

 

「か、かかかかわいいだとっ!?」

 

思いもよらぬカウンターに再度レオンは顔を朱く染める。

 

「へ、変なことを申すな!」

 

頭から湯気を吹き出しそうな勢いでたまらず反撃するレオンだが、晴人の面白おかしそうな笑みに調子を崩される。

 

「~~~~!お前というやつはァ………」

 

「ハハハ、ゴメンゴメン」

 

頬を紅潮さるレオンは半分涙目でギリギリと奥歯を噛みしめる。

いまひとつ覇気が弱いのは気恥ずかしいせいだからだろう。

そんな反応がとてもかわいらしい。

それなりに楽しんだことだし、さすがにやりすぎたと思った晴人は苦笑を浮かべて素直に謝る。

それから砦を後にしてしばらく進んでいるとレオンが静かに話しかけてきた。

 

「……ハルトよ。お主は勇者と同じ世界から来たのだったな」

 

「ん?まあ、そうだけど」

 

そして惚けたように返事をする晴人からわずかに視線をそらし、気恥ずかしそうに言う。

 

「陣地に戻るまで、まだしばらく時間が掛かる。いい機会じゃ。お前の世界について興味がある。話してみろ。聞いてやる」

 

開き直ったような物言いに、しかし覇気は感じられなかった。

聞いたところによるとレオンはまだ16歳らしい。

今まで領主としての大人びたレオンしか知らなかったため、晴人にとってこうした年相応の女の子らしい一面が新鮮に思えた。

 

「何を笑っておるのだ!」

 

「ん?いや、なんでもない。そうだな、じゃあまずは………」

 

2人は夜の帰路をのんびりと進んでいった。

 




本日、仮面ライダー一番くじのクリアファイルをコンプリートしました!
いやぁ、さすがに並べると壮観でしたわ。
でも、コンプリートするまでの道のりは24回で14400円!
金額見てちょっとびびりました(笑)
無駄に被るし、無駄にABCD賞が当たっちゃうし…。
正直、釈然としねえ!

それはそうと………

クウガもウィザードも更新遅れて大変申し訳ありませんでした!
前回映画楽しみと言って以来、もう映画公開から一ヶ月経過ですよ。
とりあえず映画を見て一言、やっぱ仮面ライダー最高!
すんげぇ面白かったけど…………鎧武が出てこなかっただと!?
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