暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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こんばんは、さんめん軍曹です。
今、モチベーションが上がっております。

鈴谷と提督は、果たしてどうなっているのでしょうかね…?


では、本編行きましょう!




さらば ハードボイルドストーリー【その5】

 

 

夜が明け、病室を照らし出す。

窓際に座っていた鈴谷は、ひとり物思いに耽っていた。

艦娘が人と違う点は、もう1つある。それは入渠、つまり普通の人間がするような入浴で傷が癒えるのである。

銃弾を喰らった鈴谷も例外ではないが、獠達に入渠させられた後、検査という名目で目下入院中であった。

 

「はぁ〜、今日も寝らんなかったなぁ」

 

あの日以来、鎮守府にいる艦娘達がひっきりなしに来る。

肩に看護妖精を連れてやって来る者、花束や果物を片手にやって来る者、暇だと言いながら鈴谷の相手をしに来る者など、様々である。

提督がいないので、鎮守府は開店休業状態ではあるが鈴谷も彼女らのおかげで暇は潰せたし、元気を取り戻した姿を見て気持ちが暖かくなるのであった。

妹である熊野も、自身が入渠を終えてからは付きっ切りで鈴谷の看病をしており、今もベッドに寄りかかって気持ち良さそうな寝息を立てている。

 

先日の事件で、この鎮守府の抱えていた問題はほぼ全て解決できた。しかし、彼女が寝ることができない理由が1つだけある。それは、操られていた提督のことだ。

彼は生きていた。だが最悪な形で、だ。薬で自由を奪われていたばかりか、誤射とはいえ鈴谷を傷つけてしまったのだ。

しかし、彼女はそんな事を気にしてはいなかった。

状況が状況、急所は外れていたし、こうやって無事に過ごせている。

問題は今も眠っている提督であり、彼が起きた時にはまだ効力が残っているのか、それとも元に戻っているのか。それが気がかりで寝るに寝れない状況なのだ。

 

「よう、鈴谷」

 

ふと見れば、そこには獠が立っていた。

 

「おっ、獠ちんじゃん。調子はどうよ?」

「バーカ、そりゃ俺のセリフだ。」

「ん…」

「あっ、ごめん熊野。起こしちゃった?」

「いいんですのよ。おはようございます、鈴谷。そして冴羽様もおられるのですね」

「よっ、熊野ちゃん。鈴谷の看病もいいけど、遅くまで起きてるのは肌によろしくないぜ?」

「大きなお世話ですわ。冴羽様は何をしにいらしたのかしら?」

「鈴谷が随分と暇してるみたいじゃねえか、と思ってね」

「お陰様でね」

「もう普通に動けんのか?」

「もちもち。艦娘を舐めないで欲しいじゃん?」

「そうか。んじゃ、ちょいと散歩に出かけるとするか」

「ナイスアイディアだね!たまにはいいこと言うじゃん?」

「たまにっつーのは余計だ。ほれ、行くぞ」

「っととっ。待ってよ獠ちーん」

「行ってらっしゃいまし」

 

そのまま2人は医療棟を出て、鎮守府の裏にある浜辺へ向かった。

 

「こうしてゆっくり歩くのも久しぶりだね」

「ああ。前回は槇村もいたからな。2人だけ、ってのは初めてじゃないか?」

「そーいえば確かに。槇ちゃんどったん?」

「…奴は死んだよ」

「は?」

 

一瞬、理解ができなかったが獠の表情に影が若干かかった事からして、本当の事なのであろう。まずい事を聞いたかなと鈴谷は後悔した。

 

「………そっか、ごめん」

「いいさ」

 

辺りを静けさが包む。波の音を聴きながらしばし黙り込んでいた2人だったが、ふと鈴谷が思い出したように尋ねた。

 

「そいえば、かおりんの名字も槇村だったよね」

「もうアダ名呼びかよ。随分と親しくなったじゃないか」

「まーねー。かおりんの話はちょーおもろいし?…で、質問に答えようか冴羽くん?」

「はいはいっと。…実はな、香は槇村の妹だ。血は繋がってないがな」

「どーいう意味さ?血は繋がってないのに兄妹って」

「槇村の親父が追ってた犯人の娘らしい。そいつが事故死したから、あいつの親父が娘として引き取ったんだとさ」

「ふうん…」

「槇村が麻薬組織に殺された日から、ずっと俺のパートナーをやっているんだ。本当はやらせたくなかったんだが、頑固なもんでなぁ」

「お?お?獠ちんまさかのホの字ですかな??」

「なっ?!ばっ、ばかいえ!!だぁーれがあんな男女!」

 

「悪かったな、男女で」

 

振り向くと、そこには香がいた。

 

 

 

 

 

数秒後、そこには砂浜から頭だけを出した獠の姿があった。

 

「おいこら!なんてことしやがる!俺はギャグ漫画の主人公じゃねーんだぞ!!」

「青葉、見ちゃいましたぁ!冴羽さん、今の気持ちを一言!」

「そうだなあ……デュフフ、ここから見る青葉ちゃんの谷間もなかなかえーのう」

「それでは今の写真を鎮守府中にばら撒きますね。題名は、〔鎮守府を救ったヒーロー、セクハラ容疑で地面に埋まる〕でいかがです?」

「はい、すみませんでした」

 

そのやりとりを見てた鈴谷が、突然笑い出した。

 

「ぷっ…あーっははははは!なにこれおかしーっ!!ちょーーウケるwwww」

「なんでです?」

「君たち見てたら、なんか提督の事で悩んでる鈴谷が馬鹿みたいに思えてさ。いやー、…あっ」

 

誰に向かって話してたのか気づいた鈴谷だが、時すでに遅し。青葉は手に持っていたメモ帳に速記で記入していた。こちらと目が合うと、不敵な笑みを浮かべてこういった。

 

「特ダネですーっ!早速記事にしてきますね!!」

「やめろおおおおおおっ!返せ青葉あああああ!!」

 

それから青葉を鎮守府中追いかけ回し、結局のところは偶然通りかかった長門が差し押さえてくれた。

 

「ぜーっ、はーっ、あ”ー、ムダにはじっだ…」

「全く。傷が癒えたからといって、無理な運動はするもんではないぞ。しばらく休めと言われたろう」

「そうだけどさー。まさか走るとは思わなかったワケですよ…」

「仕方がない。自室へ戻ってゆっくり休め」

「あいよー。長門さんありがと」

 

そういって鈴谷は部屋に入っていくが、いつもと雰囲気が違っていた。

自分が寝るはずのベッドには、提督が横たわっていたのだ。

そう、彼女は間違えて提督が寝ている隣の部屋に入ってしまったのである。

 

「ビンゴ…」

 

 

「くっそー、香のやつ…服の中に砂が入ったじゃねえか」

「ひえぇ…香さんって恐ろしいですね。でも、冴羽さんも自業自得だと思いますよ」

 

獠がひとり浜辺に残され、どう抜けようかと格闘していた所に比叡が通りかかり救出されたのである。

 

「いやあ、そうは言ってもねぇ、比叡ちゃんも相変わらずなかなか美味しそうな身体ですな…」

「私を舐めるように見ていいのはお姉さまだけですから」

「ああ、そう…ん?」

 

比叡にきっぱりと振られ、ふと前を見ると人集りが出来ていた。

 

「なんでしょうね、あれは」

「あの場所に集まるって事は、1つしかないな。どれ、行ってみるとするか」

「ひえっ、待ってください!」

 

獠達が近づいてみると、僅かに開けたドアの隙間から艦娘達が様子を伺っていた。獠は、いちばん手前にいた少女に声をかける。

 

「雷ちゃん、いったいどうし…」

「シッ!今いい所なのよ!冴羽さんも見る?」

「どれどれ……」

 

 

少し前。

こんこんと眠り続ける提督の隣に座った鈴谷は、やる事もなかったので話しかけていた。

 

「やほ、提督。そろそろ起きて鈴谷とナニかする?」

 

反応なし。

 

「てーいーとーく!ほれ、起きろ!」

 

ほっぺをつんつんとつつくが、一向に変わらない。

 

「……ね、提督。鈴谷さ、ずーーっと待ってたんだよ。殺されたって聞いても、実感が湧かなかったんだ。どっかで生きてるって信じてたし、みんなからはもういないって言われまくったけど、それでも待った」

 

鈴谷の視界がぼやける。

 

「鈴谷がこうしていられるのも、提督がここで寝てられるのも、全部、ぜんぶぜーんぶ鎮守府のみんなと獠ちん達のおかげなんだよ。生きてるってわかって、すごく嬉しくって。提督に撃たれた時、一緒なら死んでもいいって思った。でも、みんながそれを許さなかったから、鈴谷泣いちったんだ。今も、また話したい。また、出撃だーって、指示を出してよ…。帰ってきた時に、メンバーによしよししてよ。お願いだよ、起きてよ…」

 

鈴谷の頰を伝ったそれは、提督の顔に落ちた。

 

「うっ、ぐすっ…ひぐっ…お願いだよぉ、神様でもなんでもいいがら、でいどぐをがえじでよぉ…」

 

「ん、うーん…はっ!」

 

奇跡が起きた。

提督が目を覚ましたのだ。

 

「俺はいったい…」

 

彼が左を見ると、涙を流しながら唖然とした鈴谷の顔があった。

 

「鈴谷……そうか。俺は確か、運転中に襲撃を…」

「提督っ!!!!」

「ぐおっ?!」

 

意識を取り戻した提督に抱きつき、熱いキスを交わす。それは何分も続き、鈴谷と提督の左手の薬指は、朝日に照らされてまばゆく光っていた。

 

 

「なんてこった…」

「奇跡よ!奇跡が起きたんだわ!」

「ばか!そんな大きな声を出したら…」

 

注意しようとした獠だが、いつの間にか鎮守府中の艦娘や香達が集まっており、その重さに耐えきれずにバランスを崩してしまった。

 

「「「「「「「「のわーーーっ?!」」」」」」」」」

 

バターーーン!と派手な音を立て、人が雪崩れ込む。

 

「重いですわ!」

「いだだっ!ちくしょう!早くどけ!」

「あら〜」

 

やいのやいのと騒ぎ出す艦娘達であったが、前から2つの視線を感じて動きが止まった。

 

「て、提督、お帰りなさいっぽい…」

「やあ、僕は最上だよ…」

「ハラショー」

 

「お前ら…」

「うっわ…はっずいし…」

 

こうして、横須賀鎮守府に再び平和が戻った。

 

 





いかがでしたか?
これにて、ハードボイルドストーリーは完結です。

長かったぁ…!!
次回からは、しばらく日常に入って行こうと考えております。
鈴谷と提督、感動の再会ですね。
彼女らにはたくさん痛い思いや悲しい思いをした分、幸せになってもらいたいですね←ぉぃ

再び平和を取り戻した彼らですが、この後どうやって題名を回収していくのでしょう…?
乞うご期待!

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