暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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こんばんは、さんめん軍曹です。
今回のお話、題名は陽気ですが最初はめっさシリアスです()
割と生々しいのでご注意ください。
該当部分だけ多めにスペースを設けているので、苦手な方は飛ばしてください。
ですが、いつもの1.5倍は書いたので読み応えは十分ございます!

では、本編どうぞ!







潮がピンチ?! ツンとデレっと助けます!

 

 

その夜。

かすみは獠の指示通りのルートで侵入していた。

天井裏を伝って問題の位置まで来ると、板を外す。怪盗を生業としている彼女の目はある程度の暗闇には慣れており、多少曇ってはいるが月明かりの差すこの部屋であれば暗視スコープ無しでも充分見えているのだった。

 

「あの子ね…」

 

そう呟いた彼女は、早速作業を始めるのであった。

 

明くる日。一晩中潮を観察していたかすみは、そのまま獠の執務室へ直行して状況を伝える。

 

「冴羽さん。問題のあの子だけど、冴羽さんの予想通りだったわ」

「ほう。どれくらいだった?」

「もう相当よ。聞いてるこっちが辛くなるくらい」

「成る程な。音声はあるか?」

「あるわよ。はいこれ」

「さんきゅう。んじゃ、天龍達と聴いて来るわ」

 

獠はその台詞を残して立ち去ろうとするが、その必要はなかった。

 

「りょーう。来たわよー」

「おーっす」

「おう、今ちょうどお前らを呼ぼうと思ってたとこなんだ」

「私が呼んじゃった。ここで聴いた方が早いでしょ?」

「そりゃ助かる。じゃ、早速だが再生するぞ」

「おう」

 

そう言うなり獠は再生ボタンを押す。

 

『…提督、今日も出撃ですか…』

『…えっ、傷ついたやつは見捨てろ…そんなこと出来ません…』

 

夢で会話しているのだろうか。しかし、その内容からも決して穏やかなものではないことがわかる。

 

 

 

 

 

 

 

『ひっ…!』

『また、今日もですか…わかりました…』

 

しばらく無言が続き、急に潮の様子がおかしくなる。

 

『ひ…やっ!提督…やめてください…』

『…痛い…やめっ、やめてっ』

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで耐えかねた獠は停止ボタンを押した。

執務室内を沈黙が包み込む。

 

「…」

「さ、冴羽さん…」

 

天龍は拳を力強く握っていた。今すぐにでもそこら中のものを叩き壊したいが、それをぐっと堪える。

 

「…クソが」

「潮ちゃんが回復しない限り、この問題は終わらないわ」

「いや、回復するのは難しいだろう。そうでなかったとしても、一生あの子の心に残り続ける。俺らはそれをカバーしなくちゃならん」

「そうね」

 

ここで獠は立つと、2人を見つめこう言った。

 

「香、天龍。すまないが、あの子のことを頼んだぞ」

「おっけい、任せて」

「ああ、オレもやってみるよ」

 

そして、2人は部屋を出て行った。

 

 

「とは言うものの、一体どうしましょ」

「ああ、そう言えば一度だけあいつが浜辺にいるのを見たぞ」

「え、いつ?」

「まだ日が昇る前さ。オレが獲物を探しに外に出たら、ポツンと座ってた」

「そう…」

 

天龍はそこでしまったと思った。

夜間の無断外出は普通なら懲罰ものだからだ。

 

「な、なぁ姉御」

「ん、どした?」

「オレが夜中に外に出たの、聞かなかったことにしてくれないか?」

「どうしてよ」

「いや、ほら、懲罰房に入れられるのだけはごめんだ」

 

それを聞いた香はぷっと笑った。

 

「な、なんかおかしかったか?」

「いや、気にし過ぎよ。だいいち獠がそんなことをするわけないじゃない」

「そうなのか?」

「当たり前よ。そんな事で懲罰房に入れるほど獠の心は狭くないし、それに、結果的には天龍ちゃんがそうやって見回りしてるから安全なんでしょ?」

 

香はニコッと笑う。

 

「へ、へぇ…そうなんだな」

「そうよ。それに、獠はその事を知ってるわよ」

「なにぃっ?!」

「あいつが珍しく褒めてたわよ。『天龍はみんなの為に気を遣ってくれてる』って。それで体調を崩す様な奴でもないし、だからこそ信頼も置けるってね」

 

それを聞いた天龍は照れ臭くなったのか、頬をぽりぽりを掻きながら

 

「ふ、ふんっ。この天龍様に目をつけるなんざ、いい目してるじゃねえか」

 

と言った。

そして香もまた、その様子を見てクスッと笑うのであった。

 

 

その夜。

香はこっそり浜辺に出てみると、そこには天龍の言う通り潮が座っていた。そこで香は彼女を驚かせない様にとわざと鼻歌を歌いながら近づく。

 

「…?」

 

思った通りだ。潮は誰なのか気になったらしく、こちらを向いた。

 

「やっほ。初めまして。私は槇村香、ここの提督のパートナーよ。あなたは?」

「は、初めまして…私は特型駆逐艦…綾波型の潮です」

「そう、潮ちゃんね。よろしく!」

 

香の自己紹介に対して彼女も辿々しく答えるが、またそっぽを向いてしまった。

 

「ここの浜辺、綺麗でしょ」

「はい…」

「この綺麗な景色を守る為に…あなた達は戦ってるのよね」

「そうです…」

「私も獠も、そんなあなた達を守る為にここに来たのよ」

「…?」

 

また、潮はこちらを向く。

 

「実はね、私達の本当の仕事はあなた達艦娘を引っ張って行く事じゃなくて、街にいる悪党達を掃除するのが役目なの」

「えっ?」

「そうね…私達がここにいる理由。それは、元帥からの依頼でブラック提督達を排除する事なのよね」

「!」

 

香の発したブラック提督、と言う単語に反応する潮。

 

「やっぱり。あなた達の鎮守府を襲撃したのも…」

「それ以上言わないで!」

 

いきなりの大声に、さすがの香も少したじろいでしまった。

 

「あなた達が助けてくれたのはわかってます…でも、でも潮は…もう…」

 

彼女は目に涙を溜めて、自分を否定しようとした。しかし、香もそれ以上言わすまいと何か言葉を探していた時、海から突如深海棲艦が現れてしまった。

 

「な、何よあなた達!」

「ツレテイケ」

「はっ…離せこの!獠ぉぉぉぉぉぉ!」

 

 

「…!」

 

執務を終え、叢雲と廊下を歩いていた獠は香の叫び声を聴いた気がした。

 

「冴羽、一体どうしたの?」

「今、香が呼んでいた気がする」

「まさか…気のせいでしょ」

「いいや、確かに聴こえた。嫌な予感がするぜ」

 

獠の言葉が的中したかの様に、ドタドタと走る音が聞こえて来た。

 

「さ、冴羽ーーーっ!大変だ!」

「香か?」

「そ、そうだ!すまん、オレが気付くのが遅かった…潮も一緒に深海棲艦に連れ去られた!」

「なんだって?!」

「オレは今から後を追う!アンタも準備してすぐに来てくれ!」

「わかった!叢雲、行くぞ!」

「仕方ないわねぇ!わかったわよ!」

 

 

「ナンダコイツハ?」

「離せー!バッキャロー!!」

「コイツハオトコジャナイカ…カンムスジャナイ奴ニハヨウハナイ」

「だーれーが男だーーーー!!あたしゃ女だーーーーーっ!!」

「か、香さんっ!!」

 

連れ去られてて行く香。そんな彼女に潮は声をかけることしかできなかった。

 

「心配しないで!獠は必ず来る!あたしもそう簡単にやられはしないわ!」

「…!」

 

どうすることもできず、潮はただその場にぺたんと座り込んでしまった。

 

「オマエハコッチニコイ」

「え、そんなっ、いやっ、いやあああああああっ!!!!」

 

「おっと、待ちな」

 

その声に深海棲艦は振り向く。思わぬ侵入者に対して迎撃態勢を取ろうとするが下半身に妙な違和感を感じた。

リ級は気がつくのが少し遅かった。

自分の感じた違和感の正体はなんと、鋭い刃物で上下を両断されていたのだった。

 

「仲間に手を出すようなやつァ…オレが、この天龍様が叩っ斬ってやる!!」

 

その啖呵と共に、次々と敵を斬る天龍。

あっという間に全滅させた彼女は、潮に歩み寄る。

 

「大丈夫か?何もされてねえな?」

「は、はい」

「みんなが待ってる。行くぞ」

「あっ…」

 

天龍は潮の手を引いて走り出した。しばらく走っていると、また目の前に敵が現れる。

 

「チィッ!なんでこうウジャウジャと湧いて来やがんだ畜生!!」

 

邪魔者はどんどんなぎ倒して行くが、流石の彼女でも疲労の色は隠せなった。

 

「ハッ…ハァッ…」

「だ、大丈夫ですか?」

「くっそ…次から次へと…少しは休ませろってんだ…」

「あっ!後ろ!」

 

天龍はすぐに振り向くが、遅かった。

目の前に砲を突きつけられていたのである。

 

「くっ!ここまでかっ…!」

 

覚悟を決めた彼女は目を瞑るが、発射音が少し小さかった。

 

「…?」

 

そっと目を開けてみると、敵は時が止まったように動かない。そう思った矢先、ドサリと崩れ落ちた。そして、銃声の正体はその後ろにいた冴羽獠だったのである。

 

「間に合ったようだな」

「冴羽…!助かった!!」

「礼を言うのはまだ早い。香はどこへ行った?」

「姉御ならこの後ろへ連れ去られた!艦娘じゃなければ用はないと言っていたから、時間がないぞ!」

「わかった、ありがとよ。…君が潮ちゃんかい?」

「そ、そうです…」

「安心しな。外には頼りになる艦娘たちがいる。この先は粗方倒したし、誰も通しゃしない」

「……」

「時間がない。後でゆっくり話そう。叢雲!」

「OK。後ろは任せなさい!」

 

獠はフッと笑うと、叢雲と共に香を救うため走り出した。

 

「あの人が…冴羽さん…」

「そう。オレらの自慢の提督、冴羽獠だ。さっ、行こう」

 

獠が去っていった方向を見ながらも、天龍と一緒に脱出を再開する潮であった。

 

「なあ、叢雲」

「どうしたの?」

「なーんか引っかかる点があってよ」

「なによ?」

「タイミング良すぎやしないか?潮だけになった時に狙うなんて…」

「そうね。しかも私達の鎮守府も知っていた」

「こりゃ、なんか裏があるぞ」

「冴羽の言う通り…あっ」

叢雲が何かを発見したようなので、前を見る。

すると、そこには扉がひとつあった。

 

「ここに香がいるのか」

「どうやらそうみたいね」

「よーし」

 

扉の錠前に向かってパイソンを構えると、そのまま発砲。弾が当たったそれは見事に砕け、獠たちは扉の向こう側へと飛び込んだ。

 

「獠っ!!」

 

今まさに殺される所だった香だが、信じていた助けがやって来て喜ぶ彼女。

その場にいた深海棲艦たちは一斉に振り向くが、一体だけを残して全員が始末された。

 

「おおっと動くな。お前には聞きたいことがある。なぜ潮と香を誘拐した?」

「フン!ソンナモノニコタエルカ!」

「いいか?俺はマジなんだ。次はないと思え。なぜこんな事をした?」

 

獠の鋭い眼光と向けられた銃口からの威圧に耐えられなくなったカ級は、渋々と答えた。

 

「人身売買デ金ヲ儲ケテルヤツガイル」

「何だと?」

「特二艦娘ドモハ売レル…ソレデワケマエトシテシゲンヲモラッテイル…」

「…」

 

驚く2人。

叢雲はふと足元を見ると、まだ完全に死んでいなかった深海棲艦がこちらに砲を向けていた。

 

「獠!危ない!!」

「うわっ!」

 

そのまま彼を突き飛ばして転ばす。

その直後に放たれた砲弾が、叢雲を直撃した。

 

「があっ…!!」

「叢雲!」

「叢雲ちゃん!!」

 

衣服がボロボロになった彼女はそのまま倒れこむ。しかし、まだ意識はあった。

獠は死に損ないの敵をパイソンで始末する。

 

「や、やだ…ありえない…」

 

それをチャンスと見たカ級は、そのまま叢雲を抱えて人質にした。

 

「コイツハ今、大破状態ダ。アト一発デ轟沈スルゾ。ソレガ嫌ナラコイツヲイタダイテイク」

「り、獠…たす…けて…」

 

成す術なしか…くそっ!

それでも諦めまいとしていた彼らだったが、敵の背後の扉から影が現れたのに気がついた。

 

「…お前、気がついてないのか?」

「ナニ?」

「あたしらに夢中になってるあまり、自分の背中がガラ空きだってこと」

「ナッ」

 

カ級が振り向くと、そこには曙がいた。

 

「バッカじゃないの?これでも喰らって爆ぜろ!!」

 

そう言うなり、カ級の口に爆雷をねじ込む。

そして獠は側にあった叢雲の槍を投げると、そのまま敵の腹を貫通する。

獠が敵の動きを止め、その片手が叢雲から離れた瞬間を狙って曙は彼女に覆いかぶさった。

 

「今よ!!」

 

その声を合図に自らも香に同じことをし、カ級の口に捻じ込まれた爆雷に向かって一発叩き込んだ。その瞬間、派手に爆発を起こして敵は木っ端微塵になったのだ。

 

「叢雲、立てる?」

「な、なんて事ないわよ…これくらい…」

「無理しないで。アンタは今轟沈寸前なんだから」

「うん…」

 

曙はそのまま叢雲に肩を貸すと、2人で歩き出した。

 

「おい?」

「要らないわ。傷ついた姉を助けるのはアタシの仕事よ」

 

やっぱり叢雲が2人いるみたいだ。

彼女らの様子を見た獠と香は、顔を見合わせるとフフッと笑ったのだった。

 

 

「おーい、冴羽っちー!」

「他の皆さんもお揃いですね。良かったわ」

 

手をふりふりと振る北上と、胸を撫で下ろす大井。彼女らは任務が終わり、たまたま近くを通ったので白雪や漣達と合流。そのまま周りを警備していたのだった。

 

「おお、お前ら。外はどうだった?」

「比較的弱い駆逐艦がうようよいましたが…私達でやっつけました!」

「ご主人様達も見事に作戦成功のようですね!メシウマですわー」

 

そこで獠は後頭部をボリボリと掻く。

 

「んあー、漣ちゃん?」

「なんでしょうか?」

「そ、そのー、ご主人様って呼び方をー、ね…」

「あー、コレは漣のアイデンティティですので!今更変えられません!」

「マジか…すっげぇ誤解を招きそうなんだが…」

 

2人のやりとりを見た一同は大笑いをした。

特に曙と叢雲が1番笑っている。

 

「あっ!あのクソスイーパーがっ!!照れてる照れてるっ!!」

「漣に振り回されてる獠もっ、見ものだわねっ。…くっくくっ!」

 

言いたいようにされていた獠だったが、先程から気がついていたことを指摘する。

 

「おーや叢雲さぁん。僕ちんへの呼び方が変わってるわよ〜」

「なっ?!あっ!こっこれはその…言葉のあやよ!」

「ほぉーん。んでもって曙も同じ事をしてたしな?」

「ハッ!アタシはそんなこと……あっ!…ぅうるさいうるさいこのクソスイーパーッ!!」

「そうよ!このスケべで女ったらし!!」

「何だとツンデレシスターズ!!」

 

ギャーギャーと騒ぐ獠達を潮は横から見ており、彼女の顔からは自然と笑みが溢れるのだった。

 

「ねっ?あたしの言った通りでしょ?」

 

彼女が振り向くと、香と天龍が立っている。

 

「そう、ですね…!」

「あぁ。俺らも姉御や冴羽が来るまではブラック鎮守府のひとつだったんだ」

「そ、そうなんですか?!」

「おう。でも、2人やその仲間達が来てくれたおかげでまた叢雲や北上たちにも笑顔が戻ったんだ。辛い過去やトラウマは一生ついて回るが、それを乗り越えるともっと楽しいことがあるぞ?」

 

そう言ってニッと笑う天龍。潮はなぜか、ずっとこのままここにいたいと思ったのだ。

 

「だいたいお前らはなぁ…!!」

「なによ!そっちこそ!!」

「そうだそうだクソスイーパー!!」

 

まだ言い争う3人に対して、見るに見かねた北上が止めに入っていく。

 

「はいストップストーップ!ウザいからおしまーい!!じゃないと北上様がギッタギッタにしちゃうよ〜!!」

 

曙が獠の頬を引っ張り、反対に彼は叢雲の頬を押していた。

ちなみに叢雲の頭の横に浮かんでいる触覚ともウサギの耳とも取れるそれは、ピンク色に光っている。

 

呆れた香達が空を見ると、東の方向がうっすらと明るい。

 

「夜明けか…」

 

それは7駆の新たな門出を祝うかのように、だんだんと空高く登っていくのだった。

 

 

 

 






いかがでしたか?
最後は喧嘩で終わるのもまた、シティーハンターの要素だと思いますw
平和が戻った、っていうのがよくわかる演出で筆者は好きでございます。

叢雲と曙のツンデレタッグ、書いててなかなか面白かったですw
そして天龍さんかっこいい…!!

さてさて、平和が戻ったところで次回はなんの話になるのでしょうか…(まだ決めてない)


では、次回またお会いしましょう!




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