暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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こんばんは、さんめん軍曹です。
まず最初に、この作業を進めていたら西の方で震度5弱の地震発生のLINEニュースが2度も流れて驚きました。
最近、震度5の地震が多くなってる気がします。
そう考えると、少々不安ですね…

読者様達にも現地の方々はいるかと存じますが、できるだけ安全確保に努め、また無事にこの小説を読めるように祈っております。
もちろんそうでない方であっても、いつ来るかわからない災害に備え、直ぐに避難できるように心がけてください。

さて、今回からは過去のお話。
今まで不透明だった、獠と艦娘の関係を長編にてお送りします。

では、どうぞ本編へ!





獠達の過去編
今解き明かされる 全ての始まり、獠と艦娘達の過去


 

 

数年前。ある雨の日の夜。

 

「ゴーヤ、遅いの」

「ま、待ってよイク〜」

 

路地を走る2人の少女。2人は急いでいるのか、地面にある水溜りも気にせず駆け抜ける。

そして見晴らしのいい場所に辿り着くと、イクと呼ばれた少女はオリーブドラブのダッフルバッグを下に置くなり中身を取り出す。

彼女は手馴れているのかバラバラだったそれを組み立てると、そこに現れたのはM14のマークスマンカスタムだった。

 

「さあ、準備完了なのね」

「…ほんとにやるの?」

「やらなきゃいけないのね。…イムヤの為にも」

「…わかったでち」

 

そして2人はそれぞれスコープと双眼鏡を覗いたのだった。

 

 

さらに数日前。

新宿駅東口のの掲示板に訪れたよれよれのコートに眼鏡をかけた男。

彼はある文章を確認して、それをメモに書くと去っていった。

 

 

ーXYZ 至急面会求む。喫茶シティにて待つ

 

 

この文章が、全ての始まりだった。

数時間後。場所は変わり、同じ新宿のとあるマンション。

 

「新たな依頼だぞ」

 

先程の男性がリビングで食事をとっている水色のジャケットの男に声をかける。

 

「ほう、どんな依頼?」

「大本営からだ」

「無理!パァス!」

 

大本営。その名を聞いただけで即答した彼には、あるポリシーがあった。

 

「俺は美人の依頼しか受け付けないのは知ってるだろ?大本営と言えば男しかいないに決まってる。そんなもん、受けたくないね」

「そう言うなよ。今回の件、依頼人は男だが、守るのは艦娘だ」

「艦娘…?今最近流行りの深海棲艦から日本を守ってるって言う、あの女の子達か?」

「ああ。その艦娘達を率いている提督と言うのは知ってるな?」

「まあな」

「そいつらの一部が、艦娘に対して良からぬことをしているらしい。そこで、潰して欲しいと大本営の大将から依頼があった」

「会ったのは本人か?」

「いや、その秘書だな。艦娘にもそう言うのはいるらしい」

「美人なんだろうな?」

「…好みの問題だな」

「決めた!お前がそうやってごまかす時は美人に決まってる。早速会いに行こうじゃないか」

 

そう言って席を立つ彼だったが、相方の男が引き留める。

 

「待て、会いに行くのは大将じゃない」

「どういうこった?」

「直接鎮守府に行って、そこの提督と話をして欲しいそうだ」

「ほう。まあなんでもいいから早く行こうぜ」

 

せっかちな男は嫌われるぞ。

彼の態度を見た相方はそう思うのであった。

 

 

「よう」

「おっ、お前は…!」

 

横須賀鎮守府に辿り着いた彼らは提督直々の迎えがあったのだが、それは見覚えのある人物だった。

 

「久し振りだな。とりあえず中に入れ」

 

そう言って提督は歩き始めるのだった。

 

「ここが俺の執務室だ」

 

コンコンと提督が扉を叩くと、中から返事が聴こえた。

 

「開いてるよー!入っておいでー!」

 

中に入ると、そこには女子高生のような服を纏った少女がソファーでくつろいでいた。

 

「てーとくぅ、意外と早かったじゃん?」

「おう、客人だ」

「チーッス。アタシは鈴谷。よろしくね!」

 

 

 

そして話は現在に戻る。

彼らはここに来てから鎮守府やら艦娘の紹介を受け、その日のうちに早速艦娘を救助し、落ち着いたのを見計らって建物の中を歩き回っていた。

 

「とうとう降り出したな」

「あー、そうだな」

 

先程から降り出した雨を見ながら、男達は廊下を歩いていた。

 

「しかしまあ、ここの提督がまさか篠原だったとはな」

「こないだから何回も言っているぞ、それ」

「そうだったか?」

 

ここで2人の言葉が途切れしばらく無言で歩くが、片方の男が異変を感じたのか表情が変わる。

 

「なあ槇村」

「ん?」

「さっきから視線を感じないか?」

「流石だな獠。お前も気づいていたか」

「ああ。だが様子を見ているだけのようだ。殺気はまだ感じない」

「まさかとは思うが、昨日保護した艦娘に関係することじゃないのか?」

「さあな。保護したのは潜水艦だったっけ?」

「そうだな。名前は伊168。ある鎮守府から脱走してきて追われていたのを助けた」

「なるほどな。とすれば、今こちらを見ているのが誰なのか大体わかる」

「?」

「同じ艦種さ。あそこにいるのはあと2人だったろ?」

「うむ」

「ブラック提督とか言う奴のことだ。大方誘拐されたとかなんとか吹き込んでよこしたんだろ。それに片方は狙撃に長けてるって言うじゃないか」

 

その時、前方から艦娘が歩いてくるのが見えた。

 

「あら。冴羽さん」

「おぉ、大井ちゃん」

「気安くちゃん付けで呼ばないでくださる?」

「あらら…連れないなぁ。まあいいや、あの2人は?」

「北上さんとイムヤちゃんですか?お2人とも傷は治ったようで今は仲良く話してますよ」

「君はいいのかい?」

「北上さんが楽しそうにしてるのを見たら、なんとなく邪魔してはいけないかなって」

「そんな事ないさ。君だって仲良くなる権利はある。たまには話してみるのもいいぞ?」

「そう…ですか?」

「ああ。…!」

 

立ち止まって話していた3人だが、獠は突然険しい顔になった。

 

「冴羽さん?」

「伏せろぉっ!!!」

「きゃあっ!!」

 

そう言うが否や、大井に被さる獠。槇村も反射的に伏せた瞬間、窓ガラスにヒビが入る。

しばらくして気配が消えたのを感じた獠だが、とっさに被さった大井がわなわなと震えているのに気がついた。

 

「…何してるんですか冴羽さん」

「えっ?」

 

彼は自分の頭がどこにあるのかすぐに理解をした。彼女のその軽巡の割に豊満な胸の谷間だったのである。

 

「まっ待てっ!これは誤解やで!」

「知るか!この変態!!」

 

その直後、獠の頬には紅葉が咲いたのである。

 

 

「…彼が悪いのよ」

「まあまあ、そう言わないの大井っち」

 

どんよりとした雰囲気を纏って病室に入ってきた彼女。直前まで仲良く話していた北上と伊168だったが、気になったので質問すると先程の出来事を教えられたのである。

 

「謝れるんだったらその時にちゃんと謝ったほうがいいよー」

「まあ、北上さんが言うのなら…」

「北上ちゃんがどうってよりかも、自分の意思で決めたらどう?私も聞いたけど冴羽さんの話は知ってるでしょ?」

「そうね…。彼には感謝してます。北上さんの命の恩人ですもの」

「北上ちゃんについて行くのもいいけど、時には自分で決めなきゃいけない事だってあるんだよ?」

「はい…」

 

またさらに暗くなってしまった大井に、やれやれと北上がフォローを入れる。

 

「いきなりなのは仕方ないよ。確かに頭を置いた場所は悪かったけど、それでも結果的には大井っちの命を守ってくれたわけじゃん?冴羽っちは優しいから、それくらいのことで怒ったりしないよー」

「き、北上さぁん…!」

 

そう言って大井は北上に抱きつき頬ずりを始めた。

 

「んおおおおお大井っちー、やーめーてーよー」

「大井ちゃんて、北上ちゃんLOVEだったのね…」

 

2人のやりとりを見て、伊168は新たな事実を発見したのだった。

 

 

「襲撃された?」

「ああ。廊下で槇村と大井の3人で話してたら狙撃された」

「わお。それに気づく獠ちんもなかなかだね」

「誰がやったのかは大体予想がついてる。…もう一度ファイルを見せてくれないか?」

「ほいさ」

 

彼は鈴谷からファイルを受け取り、それをみんなに見えるよう机の上に広げた。

 

「さっき槇村には言ったが、どうやらあちらさんはイムヤを取り戻すのに躍起になっているようだな」

「ほう」

「多分撃ってきたのは同じ潜水艦のこの娘達だ。気持ちを煽りやすく、操る事も簡単なはずだしな」

 

そう言って、2人の顔写真を指差す。

そこには伊19と伊58の名前と共に、まだあどけなさが残る少女達の顔があったのだ。

 

「あちゃー。死ねばいいのに」

「そう言いなさんな。ほら、物騒なものはしまって」

 

艤装を出しつつ今にも撃ちそうな雰囲気の鈴谷を槇村が宥めた。

 

「むぅ」

「…さて、ちょっとトイレ行ってくる」

 

 

そのまま執務室を出て、廊下を1人歩く獠。彼はぴたりと立ち止まると、誰かに向かって声をかける。

 

「よう。コソコソしてないで顔を出しな。話があるんだろ?」

 

するとどうだろう。後ろの陰からピンクのショートヘアーの少女が現れた。

 

「いつから気づいていたにゃ?」

「執務室にいた時からさ。他は誤魔化せても俺の目は誤魔化せん」

「そう…」

 

獠はくるりと振り向くと、言葉を続ける。

 

「で、何の用だ?」

「忠告だにゃ。あの鎮守府には手を出さない方がいいにゃ。…命が惜しければ」

「そんな言葉、とっくに聞き飽きたね。相手が誰であろうと受けた依頼は必ず果たす。それが俺の流儀さ」

「噂通りの人間、だにゃ」

「ほう、俺の事を知ってるのか?」

「噂だけにゃ」

「なるほど?…今度は君の話を聞かせてもらおう。いったい何者だ?」

「軽巡、多摩にゃ。猫じゃないにゃ」

「そうか、多摩ね。あそこからの差し金か?」

「そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるにゃ」

「?いったい…」

 

その時、彼の後ろから声が聞こえて来る。

 

「多摩…姉さん?」

 

2人がそこに注目すると、大井が立っていたのだ。

 

「なんだって?」

「ちっ。まずいところを見られたにゃ。今日はここら辺でおさらばするにゃ」

「あっ、待って!」

 

多摩はそう言うと、大井の制止を無視して出て来た場所にまた引っ込んで行った。

獠と大井は後を追うが、既に彼女の姿はなかった。

 

「大井くんの姉ってのは…本当か?」

「はい。私たち球磨型軽巡の2番艦です」

「なるほどな。それじゃ、俺はまた執務室に戻るよ」

 

そう言って、彼は歩き出した。

 

「あっ、冴羽さん!」

「ん?」

「いえ…その…なんでもないです」

「?…そうか。またなんか用があったら声をかけてくれ」

 

折角呼び止めたものの、言いたいことが言えなかった大井は歩いていく獠をただ黙って見送ることしか出来なかったのだった。

 

 

その頃、相方の伊168が寝てしまったので何もやることがなくベッドでごろごろとしていた北上は、自分が助けられた時の出来事を思い返していた。

 

後ろから迫り来る深海棲艦たち。いきなりの事で訳もわからず必死に逃げていたが、振り向いた時に見えたのは自分に向かって直進する砲弾だった。

もちろん避けられるはずもなく、そのまま背中に直撃したのである。その後の記憶はない。

次に気がつけば、なんとあの冴羽が自分に口付けをしていたのである。そしてさらに記憶が飛び、最終的にはこのベッドに寝ていたのだった。

 

そこまで思い返し、恥ずかしさでみるみる顔が赤くなる自分がいた。

 

(んやー、いくらあたしが死にかけていたとは言え、冴羽っちに初キスあげたことになるのかなー。助けられたことも含めて何だか嬉しいような複雑なような…。でも、ちゃんとしたって訳じゃないんだよなー…。と言うことはノーカンなのかねぇ…)

 

果たして人工呼吸がキスにカウントされるのかどうか、ひたすら悩み続ける北上であった。

 

 

 

 





さて、如何でしたか?
まずは、冒頭の時点でなぜ鈴谷が獠を知っていたのか。それを紐解いてみました。
そして、イクがなぜ獠をライバル視しているのか。これを軸にこの話は進んでいきます。

北上様は甘酸っぱいなぁ。
フリーダムで表情があまり豊かではなさそうな彼女ですが、作者が思うにそれはもったいないと思います!
それが北上様の魅力でもあるのですが、感情豊かな彼女も見てみたい!そんな思いからこう言った設定にしております()

では、次回もお楽しみに!


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