暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜 作:さんめん軍曹
こんばんわ、さんめん軍曹です!
お久しぶりの投稿となり、何ヶ月も皆様をお待たせしまって申し訳ございませんでした…
私事ではありますが、ようやく内定先の企業が決まり、だいぶ落ち着いてきたのでスランプも無くなってやっとの続話でございます。
今回は姉御と遠征筆頭の2人が出てきます。
では、お楽しみください!
北上が悩み続けている頃、獠も執務室のソファーで寝っ転がりながらあることを考えていた。
「獠ちーん」
「お?」
「そんなに悩んでどうしたのさ。それじゃ体がもたないよ?」
「うーむ」
それでもまだ何か考え続けようとする獠。そんな彼の前にコトリとティーカップが置かれた。
「ほれ、鈴谷特製のチャイです!コレ飲んでリラックスリラックスぅ」
「悪いな。いただくぜ」
そして紅茶を一口啜ると、口の中には独特の香りと味が広がった。
「インドの本格的なやつだな。なかなかやるじゃないか」
「へっへーん、あったり前ー!いつになっても鈴谷は褒められて伸びるタイプなんです!くまのんにゃ負けないよぅ」
「くまのん?」
「そっ。鈴谷の妹で、お嬢様なんだーっ」
「お前とは対照的だな」
「むー、なにさっ。褒めたと思ったら貶してー!」
「貶しちゃいないさ。どっちも魅力的だぞ?…特に鈴谷の場合はその胸だな」
「えっ、なっ…ヘンタイ!」
直後、彼の頭には鈴谷の10t級パンチが振り下ろされる。
「いでぇーっ!正直に言っただけだろ!」
「その一言が余計だっつーの!アンタは女をその目でしか見れないのか!」
「なにを言うか!もっこり喰わぬは男の恥だぞ!」
「なんで?!」
「本来、男ってのはそう言うもんさ。それをどう表現して行くかによって印象が変わる」
「…え?どゆこと?」
「ブラック提督がいい例さ。影でコソコソ金と女に夢中になってるから嫌われるんだ。俺は金には興味ないし、目の前のもっこり美人ちゃんには堂々とアタックをかける。そこが奴らとの違いだ」
「なんか言い負かされてる気がしないでもないけど…。って、それってもしかして鈴谷の事を美人って言ってくれてんの?獠ちんマジ見る目あるねぇ」
「ばーか。んな訳あるか。胸のことしか言ってないぞ俺は」
「…なんかひっど。鈴谷傷ついたんですけど!ふん!!」
えらく怒ったらしい鈴谷は、それからそっぽを向いてしまった。
それから数日後のことである。
「あれから口も聞いてもらえないが…相当怒らせちまったようだなぁ」
「獠、今回ばかりはさすがに謝らないとだな」
「わーってるよ。だが中々話しかけづらくてな…」
「なに、機会は訪れるものさ。時間が経てば寂しくなって向こうから来る」
「槇村。お前、妙に詳しいんだな」
「妹がいるからな。俺もちょっとした事でよく喧嘩したもんだ」
「あー香だっけか。なかなかお転婆な性格だもんな」
「アレでも結構乙女なところがあるんだぞ?かわいいもんさ」
「へー」
場所は変わり、ここは提督室。今は提督ともう1人の少女がいた。
「不知火です。ご指導ご鞭撻、よろしくです」
「うむ。しかしまあ、今の時期に大本営から艦娘か…」
提督がそう思うのも無理はない。先程の襲撃に加え、その直後に怪しさムンムンの艦娘が着任したのだから。
「なんでしょうか?不知火に落ち度でも?」
「いや、こっちの事だ。なんでもないよ」
「そうですか。では早速ですが、荷物を整理したいので自室へ戻らせていただきます」
わかった、と提督がうなづくと彼女はくるりと背を向け、そのまま出て行った。
彼女を見送り、部屋を出たのを確認した提督は、傍の受話器を取りある人物を呼び出した。
同じ頃、正門の前。
「…獠ちんのバカ。おっぱいなんかよりもっと鈴谷のことを見て欲しいのに…」
先日、獠に対してかなり激しく怒った鈴谷であるが、日が経つにつれてそれは薄まるどころか反対に後悔の念が沸いてきていたのだ。しかし、そんな事も知らず彼女の後ろでは不穏な影が2つほど動めいていた。
「なぁ摩耶。本当にやるのか?」
「当たり前だ。うちの提督が胡散臭いのは否定しねぇ。だけどな、艦娘として、上がどんなやつであれ命令には逆らえねぇんだよ」
「気がすすまねーが…まぁやるよ」
「あら、何をやるのかしら??」
「何って…そりゃオメー、アレだ。ここから鈴谷をかっさらって来いって命令されてんだよ」
「へぇ。面白そうだから私も混ぜてもらってもいいかしら?」
「おぉ、人数が増えりゃ心づよ…え?」
摩耶が振り向くと、ぐるぐる目を回して倒れている天龍と艤装の全砲門をこちらに向けている叢雲がいた。
「アンタ、任意同行って知ってるわよね?」
悪魔の笑みを浮かべる叢雲を前に摩耶は、自身の身体からみるみる血の気が失せて行くのを感じたのだった。
「で、不届き者を連れてきたと」
「ええそうよ。感謝しなさい」
執務室には提督と叢雲、それに鈴谷や槇村と床にふん縛られた例の2人組がいた。獠は調べ物があると言って、今は資料室にいる。
「鈴谷全然気づかなかったよ!おかげで助かりました!ありがとくもちん!」
「ふん。どうって事ないわ」
「さてと、そこのお二人さんには聞きたいことがある」
ちょうどいい頃合いを見計らった槇村が、天龍と摩耶に質問をする。
「なんだよ」
「そんなに肩肘張りなさんな。なにも拷問するってわけじゃあない」
槇村のそのセリフを聞いて2人は顔を見合わせた。
「…はい。今のところは…。はい、調査を続け…」
「なんの調査を続けるんだ?不知火ちゃん」
その声にドキリとした不知火。ぐるんと振り向くと、そこにはシティーハンターと呼ばれている男が立っていた。
「貴方に答える義務はありません」
「ほう?連れないなぁ。ここに来てから数日、コソコソと動き回ってるから怪しいと踏んでみたら、まさかこんな真似をしてたとはね」
「っ…不知火は…」
「バレないようにしているつもりでも、さっきの時点でとっくに気づかれてたぞ?それもここの提督に」
「?!」
予想だにしていなかった事実を突きつけられ、不知火の瞳には動揺の色が浮かんだ。
「おかしいと思わないか?普通なら着任するとここの人間に挨拶回りに行くもんだ。だけど不知火ちゃんはそのまますぐ自室に帰ったろ?」
「なっ、なぜそこまで…」
「伊達にシティーハンターを名乗っちゃいないさ。あの後すぐに提督から知らせが来たんだ。だからずっと君の動きを見させてもらっていた」
「なるほど、お見通しと言うわけですか。…わかりました、それでは全てをお話しさせていただきます」
そう言って諦めたように両手を挙げた彼女は、なぜ自分がここに来たのかを話し始めた。
「なに?うちが伊168をさらっただと?」
「おう。アタシらはアイツの言うことは信じちゃいないが、うちの鎮守府でそれを信じちまった艦娘がいるんだ」
「待て、それはこないだ狙撃してきた潜水艦たちか?」
「そう言う事さ」
最初は槇村の質問に対して頑なに口を閉ざしていた二人だったが、天龍の視線は槇村のベルトに挿してあったコルト・ローマンがチラリと見えてから釘付けになり、それに気づいた彼が触りたいかと尋ねたところ、アッサリと話すようになったのである。
2人の拘束を解き、天龍が初めて触る拳銃に夢中になっている間に仕方なく摩耶が話していると言った状況だ。
「だがしかし彼女は…」
「わかってるさ。アタシらはただこの目で本当かどうか見たかっただけだ。だけどよ、うちの司令が言うに、あの2人を止めるには鈴谷を連れて来るしかないと言い張るもんだからよ、仕方なく命令に従ってただけだ」
そこで摩耶は一息置く。彼女の目を見るに、どうやら嘘を言っているようには見えない。
しばし悩んでいた槇村たちだったが、ふと見るといつのまにか戻っていた天龍と共に頭を下げていた2人を見て驚いた。
「な、なになに?!ちょ、どーしたのさ!」
「すまねぇ鈴谷!そして他のみんな!俺らのせいで余計な手間をかけさせちまった!」
「なっ…」
「許してくれとは言わねぇ。ただ、現時刻をもってアタシらはアンタたちに寝返るぜ。必要なことは話す」
「いいのか?」
「あぁ構わねえ。よくよく考えてみりゃアイツは裏で胡散臭ェことを沢山やってるからな」
「例えば?」
「捨て艦戦法。それで居なくなった艦娘を裏取引で補充してる」
「人身売買ってわけか…」
提督がぼそりと呟いた、そのあまりの言葉に全員が息を飲んだ。
「それで、不知火ちゃんは大本営からその調査をしにここに来たってわけか」
「はい。大将が冴羽さんをお雇いになられたのは存じております。しかし、事実無根ではありますが、大本営にはあの鎮守府の司令からこちらの鎮守府が伊168を誘拐したとの報告も入っております」
「なるほど。その確認を名目に、ここを拠点にしようってことね」
「そうです」
その時、執務室からの内線が鳴った。
いかがでしたか?
怪しげな3人組、実は彼女たちだったんです!w
それぞれのファーストコンタクトを書くにあたって、個人的に似合いそうな役割を当ててみました^_^
ちなみに大将とは現在の元帥でございます。
前話で槇村が元帥と言っていたな?
…あれは嘘だ()
次回から事態は急展開する予定です。
では、またお会いしましょう!!