暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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どうも、お久しぶりません。さんめん軍曹です。

ちょっと早めの休み時間に入ったので、続きを投稿します(土曜出勤)
週休1日とか、体ぶっ壊しコースですね。
熱中症には(ry


本編です!!





艦娘の純情恋心 涙と心(ハート)は嘘をつかない

 

 

 

「…懐かしいな。思えばアタシら艦娘と冴羽達が初めて出会った事件だもんな」

「そうだな。あの時と比べてお前は改二に成長した」

「そんな摩耶ちゃんがこうして会いに来てくれてるんだもん。アニキもきっと喜んでるわよ」

「…そうだといいな」

 

話は現在に戻る。獠や鈴谷たちから槇村が死んだ事を聞いた摩耶は、彼の墓を一目見たいと希望した。獠や香はもちろん快諾したので、こうして墓参りにやってきたのだ。

 

「…なあ冴羽、香」

「どうしたの?」

「しばらく1人にしてくれないか。槇村のアニキと話がしたい」

「…いいぜ。ゆっくりしてきな」

 

フッと笑った獠は、香を連れてその場を離れていった。

 

「…なんだよ、見ないうちにこんな石の塊になっちまって。せっかくこの摩耶様の改二姿を拝ませてやろうと思ったのによ」

「冴羽から話は聞いたんだ。なんでも、香と冴羽を守るために敵の組織に殺されたんだろ?」

 

摩耶は、暮石に刻まれた槇村の文字にそっと触れた。目からは大粒の雫が次々と溢れるが、彼女に気づいた様子はない。

 

「…っ、なんだよっ!なんでだよっ!!なんで逝っちまうんだよ!!自分の仕事は果たせたかも知んねえけど、アタシはっ!アタシらはどうなるんだよ!!」

「もっとアンタと話したかった!もっとアタシのことを知って欲しかった!」

「ただの艦としてだけじゃない。人間としての摩耶様を!もっと、色々…」

 

とめどなく溢れる涙を抑えず、膝から崩れ落ちて縋り付く。

 

「なあ、槇村のアニキ。アタシ、あれから素直になれるように努力した。その結果、改二になれたんだよ」

「だから、1つ言わせてくれ」

「アタシは、アンタの事が好きだった。惚れちまったんだ」

「特に助けられたわけでも、ずっと一緒だった訳でもない。少し話しただけで胸が熱くなったんだ」

「あの時アタシの性格を受け入れてくれたアンタがとにかく好きだった。アンタを想ってずっと戦ってきた!」

「なのにっ!なのに何でっ!!死ななくちゃいけねえんだよ!そんな事でっ…!ちっ…ちくしょうっ!!」

「ああっ…!うああああああっっ!!!」

 

なおも泣きながら摩耶は槇村の暮石をドンドンと叩く。彼女の悲痛な叫びは周りにこだましており、それは木の陰に隠れていた獠や香にもしっかりと聴こえていた。その香もまた、摩耶からの貰い泣きをしている。

 

「そうだったのか…」

「うぐっ…摩耶ちゃん…」

「あの時、俺が依頼を受けに行っていればまた、結果が違ったかも知れん…」

「え?」

「時々思うんだ。ああすれば良かった、こうすればあいつは今も生きていたんじゃないか、とな」

「でもそれは…」

「それはもう後の祭りで、ただの後悔でしかないさ。それに今はこうして槇村の代わりをしっかり勤めてるやつもいる」

「あ…」

「これからもお前は俺のパートナーだ。しっかり頼むぜ」

「…うん」

 

獠の言葉に少し照れくささを覚えた香。彼女はつい目を逸らしてしまったが、次の瞬間、衝撃的な光景を目にした。

 

「なっ、なんだ!離しやがれクソ野郎!!」

 

見るとそこには、数人の男に掴まれた摩耶の姿があった。2人はとっさに走ろうとするが、獠が香りの肩を掴んで止めた。

 

「何するのっ!摩耶ちゃんが!」

「待て香!今動けば俺らは蜂の巣になる…!」

「じゃあ、このまま黙って見てろっていうの?!」

「今はそうするしかない。残念ながら…」

「助けろ冴羽!こういう時のボディーガードだろうがっ!おい!」

 

そうしていくうちに、だんだんと摩耶の姿が遠くなっていく。

 

「やめろ!離せ!!離せよ!!!冴羽!!助けてくれよ獠!!!りょーーう!!」

 

そのうち彼女は、車に押し込められ何処かへ行ってしまった。

 

「獠!これからどうするのよ!りょっ…!」

「…」

 

長年連れ添ってきた香でも黙ってしまうほど、今の彼は怒り狂っていた。そう、あの時と同じ。伊168が連れ去られた状況を2度も作ってしまった。

こうなると流石の彼女でも獠は止められない。

 

しばらく黙った状態のまま、2人はミニクーパーへと戻る。が、しかし乗り込んだのは獠1人だけだった。

 

「香、お前は鎮守府に戻って皆に知らせてこい。俺は行く」

「…わかったわ」

 

香の返事を聞いた獠は、ギアをローに入れて発進していった。

 

「…さて、帰りはどうやって帰ろうかしらね」

 

 

 

「それは本当か?」

「うん。獠、ものすごく怒ってた」

「迂闊だったわ。私がもっと早く知らせてれば…」

 

どうにかして鎮守府に帰ってきた香。すぐに報告をしようと執務室へ直行すると、そこには提督や海坊主と共に冴子の姿があった。

 

「まさかあいつが釈放されるとはな」

「理由はわからない。だけど1つ言えることがあるとすれば、あの鎮守府と関わりの深い5人が危ないって事ね」

「摩耶、天龍、伊19、伊58、伊168か」

「そう。そして今日、摩耶さんが連れ去られた」

「となると、残りは…」

 

香がそう言いかけた時、廊下で短い叫び声が聞こえた。

すぐ全員が廊下へ飛び出すと、そこには両膝をつき、普段は両方留めてあるはずの髪が片方だけになっている伊19の姿があった。

 

「イク!大丈夫か?!」

「や、やられたの…躓いたら、髪留めがいきなり弾けて…」

「落ち着け。とりあえずお前も執務室に来い」

 

 

一同が執務室へ引き返すと、提督は一斉放送のスイッチを入れた。

 

「全艦娘に告ぐ。緊急事態が発生した。冴羽は不在なので俺が代わりに指示を出す。現時刻を持って厳戒態勢に入れ。これから呼ぶ艦娘は出撃準備が整い次第、直ぐに執務室に来るように。…以上だ」

 

やがて、執務室には準備万端の天龍以下、伊19、伊58、高雄、大井、北上、那智、隼鷹、飛鷹、蒼龍、飛龍、金剛の総勢12名で編成された連合艦隊が集まっていた。

香から事情を聞いた艦娘達はもちろん全力を尽くすと言う。

 

「…提督」

「どうした、イク」

「今回の作戦、イクに任せて欲しいのね」

「…わかった。いいだろう」

 

直ぐに作戦が練られ、出撃をした一同。

海上を航行していると、天龍がぽつりと呟いた。

 

「まさかあいつが出て来るとは…」

「私はあいつの命令を犬のように聞いていた。あいつが正しいと思っていたからだ。だが、今はそんな私ではない。過去にケリをつけようではないか」

「イク、大丈夫でちか?」

「うん。髪留めを撃たれただけだから、傷はないの」

 

しかし、どこか浮かばない表情の伊19。それもそのはず、自身に狙撃の極意を教え込んだのは、紛れもなく司令官だったからだ。

 

「過去にケリ、なのね…」

「大丈夫よイクちゃん!飛龍なんかいっつも冴羽さんに蹴りを入れてるんだから!」

「ちょっ蒼龍?!それはあいつがあんたにもっこりしてるからでしょーが!それに蹴りは蹴りでも意味が違うでしょっ!!」

 

暗い雰囲気を察してか、明るく振る舞う蒼龍。飛龍を巻き込んだその会話に、さらにギャラリーが入って来る。

 

「極め付けは後部甲板をズドンだもんねー。香っちのハンマーみたいな」

「なっ?!」

「なんだなんだぁ??もしかしてヤキモチかい??ひーちゃんってば蒼ちゃんにベッタリだもんねぇ?飛鷹ったら照れちゃうから羨ましい限りだぜっ!」

「なっ、何いってるのよ!恥ずかしいじゃない!」

「隼鷹まで!なんなのさ皆してもー!!」

 

プンスカ怒る飛龍を見て、一行は和やかな雰囲気に包まれる。だが、それも長くは続かなかった。

 

「見えてきたわ。あれじゃない?」

 

前方には半島が見えて来る。香に付けられている発信機から獠の車を逆探知、割り出したのが鎮守府からそう遠くはないこの場所だったのだ。

 

「アレが敵の根城デスか。腕が鳴るデース」

「うふふ…あの時私をタコ殴りにした報い、きちんと受けてもらわないとね…」

 

島の先に複数の建物が並んでいるが、どれも普段ある姿と様子が違っているように見える。建物のあちこちから煙が上がっているのだ。

 

「あれは…」

「どう見ても冴羽っちの仕業でしょ」

「冴羽さんって、何者なんだろう…」

「1人でここまで…もはや私達なんて要らないんじゃ…」

 

蒼龍と飛龍に関しては、獠の戦闘を直接見るのはこれが最初だ。2人がそう思う中、大井の表情は違っていた。

 

「いえ…なんだか嫌な予感がするわ。行きましょう」

 

 

 

 

「くそっ!マズった。まさかとは思ったが…」

 

車を追ってきたは良いものの、既に敵に読まれていた獠。門をくぐるなり車を蜂の巣にされ、すぐにパイソンで応戦していたが、とうとう弾薬が尽きてしまった。

敵はRPGを構え、こちらに砲撃する。ロケット弾は逸れたが、側にある柱に命中してしまった。

 

「ーーーー!しまっ…」

 

崩れ落ちて来るそれに対し、彼は成す術が無い。もはやこれまでかと思われたその時、柱が途中で止まったのである。

 

「うぐぁっ…!」

 

見ればそこには、1人で倒れた柱を抑え込む大井の姿があった。

 

「大井!」

「なんのっ…!これがっ…球磨型巡洋艦のォ!力だァっ!!!」

 

飛んで行ったそれは、見事に相手の頭上へ飛んで行き、敵兵たちを下敷きにした。

その後も片っ端から砲弾の嵐が降る。

しばらくして敵は全滅したのか、艦娘たちが顔を出した。

 

「冴羽さん!大丈夫ですか?!」

「すまない。大井くん、助かっーーー」

 

何も無い空間に響く乾いた音。

大井は獠の頬に力一杯のビンタを喰らわしていた。

 

「バッカじゃないの…」

「…」

「見損なったわ!なんで私達に相談しなかったのよ!なんで1人で行っちゃうのよ!」

「お、大井っち…」

 

大井の目からはいくつもの筋が流れる。

 

「いつもいつも私達を守ってばかり…あなたも槇村さんも!なんでよ!私達だって戦えるのよ!私達は守られるだけの存在じゃない!戦うためにこの世に生まれたの!守られてるだけじゃ意味はないのよ!」

「しかし俺は…」

「言い訳しないで!依頼がなんだって言うの!あなたは提督で、私達を守るのは邪悪な存在からでしょ!?代わりに戦えとは言われてないじゃない!」

「う…」

「それとも何?あなた1人で深海棲艦と戦うって言うの?拳銃一丁で!?笑わせないでよ!いくら裏の世界のトップでも深海棲艦には敵わない!やつらに対してのプロが私達よ!」

「…」

「私達は戦える。だからあなたと一緒に立ち向かったっていいじゃない…」

「!」

「それにあなたまで死んでしまったら、悲しむ人は大勢いるわ…香さんに北上さん。摩耶さんも…みんな、あなたの帰りを待ってる」

「…そうだよ冴羽っち…」

「私、もう自分には嘘をつきません。さあ、提督として私達艦娘に命令を下して!」

「ぐっ…だが…」

「何よ!この期に及んでまだ甘ったれるつもり?!」

「…………大井以下、連合艦隊に告ぐ」

「そうよ!それでいいの!」

 

覚悟を決めた獠。彼は艦娘達を見回し、淡々と告げた。

 

「摩耶を救出。敵に艦娘はいない。抵抗する者全てを始末しろ」

 

 

 

 

 






さて、いかがでしたか?
何を隠そう今回のヒロインは、大井と摩耶でございます。
イクかと思ったな?アレは嘘だ()
素直になりきれない2人、という事で取り上げて見ました。
彼女らの成長をとくとご覧ください。


では次回、お会いしましょう!


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