暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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こんにちは、さんめん軍曹です。
日々、熱中症になりかけながら仕事しております。
なんだよ35度って…

さて、今回から非常に重要な局面でございます。


では、本編どうぞ!




摩耶よ永遠に 復讐の横須賀鎮守府【その1】

 

 

 

 

その頃、伊19と伊58は配置につきながら、獠の言葉をしっかりと聞き取っていた。

 

「獠ちゃん、ついに言ったのね」

「そうでち。陸と海では違うけど、ゴーヤ達だってその気になればどこでも戦えるんだから」

 

背中に背負ったバッグを下ろし、チャキチャキとライフルの準備を進める。この銃を引っ張り出すのは何年振りだろうか。伊19はそんなことを考えていた。

 

「あー、イクってばまた浮かない顔してるでち」

「うん…」

「あの時を思い出すでちか?」

「正確には、それ以前のことも、なのね」

 

ハッとする伊58。

 

「…あまりいい思い出ではないでちね」

「イクはこの1発に賭けてるの。今まで手にかけた人達には償っても償えるものじゃないけど、それでも断ち切るきっかけにしたい、なのね」

 

伊58は知っていた。彼女の言葉の重みを。伊19が今までしてきた事を。そして、司令官から狙撃を教え込まれた理由を。だっていつも、その瞬間には自分が立ち会っていたのだから。

 

「…今はじっと待つのね。その時まで」

 

 

 

 

「冴羽はん!大丈夫でっか?!」

「お前は…」

「八戒組の藤原申します!この娘らから冴羽さんがピンチと聞きまして、すっ飛んできました!」

 

藤原と名乗る若頭の背後には、組長を含めた全員が整列していた。

 

「お前ら…」

「あなたに死なれてはこちらもメンツが立ちませんでな。わしも久々に現場に出れて血が騒いでおりますわ」

「おやっさん、あんた歳なんだから無理せんといて」

「じゃかあしい!恩義を晴らす為や!スピード違反信号無視黄線カットがなんぼのもんじゃい!」

「真っ先に免取ですよねそれ…てか組長の運転怖い」

「あとで冴子さんに言ってチャラにしてもらいましょ」

「動くn」

 

敵が言い終わらないうちに銃弾の雨を降らす組員達。その容赦なさすぎる攻撃は、登場時とは比べ物にならないほどの戦闘力を表していた。

 

「へっ。雑魚が」

「容赦無いわね…」

「冴羽さん、あんたに報告がある」

「どうした」

「わしらと冴子さんの調べによれば、どうやら敵さんは赤いペガサスと関係があるらしい」

「!」

 

全身が総毛立った。

ーー赤いペガサス。相棒の槇村を殺した組織。しばらく大人しくしていたと思ったら、また現れたか。しかも今度は艦娘を狙って。

 

「また現れたか。懲りない奴らだ」

「冴羽…やるのか?」

「ああ」

「赤い…ペガサス。槇村さんを殺した組織…」

「私たちも手伝いますわ」

「そうだな。この誇り高き艦娘をいいように利用してくれた罪、きちんと償ってもらおう」

 

槇村を手にかけた組織として、赤いペガサスの名は艦娘たちにも知れ渡っていた。彼女らは当然、仇を打とうと決意する。

 

「ところでな、冴羽はんと大井はんのやりとり、わてらも聞いてたで」

「あの冴羽はんに一撃とは、あんたもやるやないか」

 

途端に赤面する大井。軽快なやり取りではあるが、彼ら八戒組の眼にもしっかりと闘志が燃えていた。

 

「お遊びはここまでや。全員、武器は持っとるな?冴羽さん、わしらの任務は艦娘のお嬢ちゃんと一緒に敵をブッ殺す事でええか?」

「ああ、任せるぜ。組長さん」

「よっしゃあ!聞いたなお前ら!遠慮なく暴れまわってこいや!」

 

組長が声をかければ、全員が雄叫びを上げながらトカレフやMP40、長ドスなど各々の武器を天へ掲げた。

 

「うおおおぉぉぉぉ!!」

「っしゃあ!ヤクザの力思い知らせたる!」

「流石に気分が高揚してくるぜぃ!!」

「アホ!そら加賀さんやんけ!!!」

「ヒャッハー!!!隼ちゃん聞こえるうううう???」

 

やいのやいのと騒ぎながら、彼ら一同は散り散りになって走っていった。

 

 

 

「ギャハハハ!!!聞いたかい!?あいつらあたしの真似してるぜ!!こりゃあいいや!ひーーっひっひっ!!」

「隼鷹ったら笑いすぎよ…」

「いつもああなの?」

「ま、まあまあ飛龍」

「いやー、アイツらの陽気さにゃ敵わないねえ。なーんでこんな重い空気をブッ飛ばせるんだろうな?秘訣を教えて欲しいね」

『それはなお嬢さん!わしらがバカだから!…っとぉ甘いで!』

「うぉっ聞こえてたんかい!こうなりゃあたしも負けてらんないね!ほら勅令だよっ!!」

 

隼鷹の手がぼんやりと光る。彼女は式神を用いて艦載機を召喚しているのだ。飛鷹もそれに倣い、蒼龍・飛龍は矢を放ち艦載機を飛ばしたのだった。

 

「おや?あれは…」

 

目線の先には、緑の戦闘機に混じって、なんとC-47輸送機がフラフラと飛んでいたのだ。

 

 

 

「おい篠原!なんでよりによってこの機体なんだ!ハーキュリーズはどうした?!」

「あいにくハーキュリーズは修理中だ!陸奥が触ったらエンジンが火を吹いた!あと作者の趣味だそうだ!」

「陸奥なら仕方ねえ!!」

 

 

「へくしっ!」

「どうした?陸奥」

「また私の事をネタにされた気がしたわ…」

 

 

「旦那ァ!悠長にに構えてる時間はありやせんぜ!レッド・ランプ(降下準備)!」

「フックをかけろぉ!」

「へっ!わかってる!」

 

2人がレールにフックをかけた数秒後、機内が緑一色に染まった。

 

グリーン・ランプ(降下せよ)!ゴー、ゴー、ゴー!!」

 

掛け声とともに2人は降下口に向かって駆け出す。そしてそのまま空中へと飛び出していった。

 

「うひょおおおおおおおおお!やっぱバンジーじゃ味わえねえなこのスリル!傭兵やってた時以来だぜ!」

「るせぇ!さっさとパラシュート開きやがれ!」

「わーかっ…ぐぉああああなんてこった!」

 

海坊主のパラシュートは無事に開いたが、なんだか提督の様子がおかしい。

 

「何してる!早く開け!」

「うおおおお!開かねえええええあ!!!」

 

どんどん速度が上がっていく提督。パラシュートの代わりに海坊主との距離が開きつつある。

 

「くそおおあおおおお!先に行って待ってるぜええええぇぇぇぇ…」

 

提督の姿が次第に小さくなり、やがて建物の屋上から彼が激突したらしき煙が上がった。

 

「これが普通の人間ならとっくに死んでるぞ…」

 

 

「今、提督がダイナミックエントリーしたのね」

「は?」

「その双眼鏡は何のためについてるのね?よく見てみるの」

 

伊58は、煙が上がっている方向を双眼鏡でじっと見つめた。

 

「…ほんとでち」

 

 

「あいててて…くそ、あとでメーカーにクレーム入れてやる。ちくしょう…」

 

提督は爆薬を使わずに、数人をクッションがわりに巻き添えにして見事侵入(?)に成功した。

 

 

「悪運の男…やはり噂通りだな」

 

煙が晴れてくる。それと同時に、周りの状況もはっきりしてきた。

今ので見張りは全滅であろう。正面には敵のボスと思しき男。そして隣には…

 

「ングッ!ムウウウウウッ!!」

 

椅子に拘束され、猿轡を噛まされた重巡の姿があった。

 

 

「なにっ?!それは本当か!?」

『ゴーヤは嘘なんてつかないでち。早く行ってあげるでち』

「わかった!」

「聞いたかオメーら!一点突破だ、道を開くぞ!!」

「「「「「押忍!!!」」」」」

 

天龍の一声と共に、敵をなぎ倒して道を開く八戒組。

 

「天龍はん!後ろは任せいや!わしが長ドスで叩っ斬ったる!」

「よっしゃあ!同じ刀使いだ!派手にブッた切ろうぜっ!!!」

「冴羽さん!艦娘の嬢ちゃん!はよ行けい!ここはわしらが食い止めたる!行くんじゃ!」

 

天龍や八戒組が切り開いてくれた道を無駄にするわけにはいかない。獠たちは執務室へ走り出した。

 

「ここか!」

「どいて下さい。ここはワタシに任せるデース。…セイッ!!」

 

パンチ1発で扉を粉砕する金剛。一同は突入するが、すぐに止まってしまった。

 

「動くな!」

 

声の先には、摩耶の首元へ日本刀を突きつける司令官の姿が。

 

「てめえ…やっぱり」

「フン。部下を使えば、刑務所から出る事くらいわけはない。少しでも動けばこの娘の首は飛ぶ」

「…赤いペガサスと関係あるのは本当なの?」

「ああ。本当だとも。摩耶の愛する槇村くんをあの世へ送るよう、ガルシアへ指示したのも私だ」

 

それを聞いた摩耶の目は、憎悪に満ちて行った。

 

「それじゃあ、俺たちに近づいたのは…」

「そうさ。殺しの依頼なぞハナから嘘だ。私は君らに鎮守府を潰された時から、復讐をすることしか頭になかったのでね」

「…そうかよ。そいつは良かったな」

 

声をした方に振り向くと、いつの間にか拘束を破っている摩耶の姿があった。彼女の手首からはおびただしい量の血液が流れている。

 

「なっ…?!」

 

刹那、彼女は目に見えないほどの速さで右ストレートを喰らわす。

そしてつかつかと歩み寄り、ボロボロの手で吹っ飛んだ相手の胸ぐらを掴んだ。

 

「なあ。ケンカっつうのはよ、正面切ってタイマンで張るもんじゃねえのかよ」

「摩耶っち…」

「裏でコソコソやって、自分の手を汚さず人の大事なもん奪いやがって。情けねえと思わねえのかよ、あ?」

「…なら」

「なんだ…っ?!」

「私の手で、君を愛する者の元へ送ってやろう」

 

胸に強い衝撃が走る。そこを見れば、ナイフが深々と突き刺さっていた。

 

「がっ!……はぁっ……」

 

自分の顎と制服を真っ赤に染めながら、彼女の意識は遠のいて行く。最後に重巡摩耶が聞いたのは、誰かの叫び声と何発かの銃声だった。

 

 

 

 

 

 






いかがでしたか?
前半はコミカルですが、衝撃のラストですね。
まさかの赤いペガサス登場です。
次回、摩耶の運命はどうなってしまうのでしょうか…?
果たしてイクは過去と決別することができるのでしょうか?

では、またお会いしましょう!



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