暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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こんばんは、さんめん軍曹です。
スランプから脱したと思いきや、そのままの勢いでスピンオフまで書いてしまいました()
なるべく本編に影響のないように進めて行く所存です…()

ではでは、本編に行きましょう!!



それぞれの想い 迷える娘に救いの手を

 

 

 

(そんな…伊勢は味方に撃たれたというのか…)

 

鎮守府の中庭の端にあるベンチで、日向は愕然としていた。

 

(しかし誰が、一体何のために…)

 

落ち着こうと何回も深呼吸をするが、うまく思考がまとまらない。

 

「くそっ!」

 

ベンチの座面に拳を打ち付ける。

こんなことしたって何の解決にもなりはしないが、ものに当たらないと自分がどうにかなってしまいそうなのだ。

 

「あれ、日向っち。こんなところにいたんだ」

 

声をかけてきたのは球磨型姉妹の三女、北上だ。

 

「冴羽っちたちが探してたよ。何があったの?」

「実は…。冴羽達が伊勢について話してたのを聞いてしまってな…。なんでも背後から撃たれたらしい。しかも味方に」

「ふうん。許せないねえ」

 

そう言うと北上は手に持っていたココア缶をカコンと開け、啜るように飲んだ。

 

「北上は何を許せないんだ?伊勢の背中を撃った味方か?」

「いんや、そのもっと後ろ。艦娘を撃つように命じた司令官と、その裏で操ってる何か」

「私には分からない…。私達艦娘は、ただ深海棲艦と戦ってるだけではないのか…!」

 

日向は膝の上に置いた拳をぎゅっと握りしめる。

 

「なぜだ…。なぜなんだ…!なぜ、私達艦娘は深海棲艦と戦うためにもう一度この世に生まれてきたと言うのに、なぜ、守るべき人間達から利用されなければならないんだ…!」

「ほい、これあげる」

 

北上は懐からもう一本ココア缶を取り出すと、日向に差し出した。

 

「私は…!」

「いいからこれ飲んで少し落ち着きなよ。あたしゃそういうどーでもいい辛気臭い話は嫌いなタチなんだ」

 

日向は差し出されたココア缶を受け取るが、しばらく沈黙が流れる。

日向はばつが悪そうに缶を手の中で転がすが、タブを開けると意を決したように一気に煽った。

 

「…日向っちは、冴羽っちの事をどう思う?」

「え?どうって…」

「まあまだここに来たばかりだから分からないか。あたしゃね、冴羽っちの事は誰よりも信頼している自信があるんだ」

「だが奴は…」

「そう。冴羽っちも人間だよ。でもね、あの人はそんじょそこらの人間とは違う」

「というと?」

「マリーから聞いてないの?冴羽っちがここに来た理由」

「それは…」

「それはあたし達艦娘を脅かす存在から守る為。何があろうと、どんな事が起きようともね」

 

缶を持った北上は、そのまま星空を見上げる。

 

「あたしもあの人に助けられたのさ。突然この世に生まれて、何にも分からないまま敵に襲われてるところをね」

 

唇を指で撫でた北上の頬は、少し赤くなってるように見える。

 

「まあ何が言いたいかって言うとさ、少なくとも冴羽っちは敵じゃない。日向っちは今色んなことがいっぺんに起きすぎて思考がまとまらないんだろうけど、彼のことは信じてあげなよ。多分今頃、いろんなツテを使って伊勢っちの事について調べ回ってると思うよ」

「だが、なぜ北方棲姫がここにいるんだ…!奴こそ…」

「そうね。確かにあいつは今回の大規模作戦の標的だよ。でも、冴羽っちがここに置いてるって言うことはそれなりの理由があるんだと思う。あたしも最初はこれでもかってくらいびびったけどさ」

 

そう言うと北上はココアを一気に飲んで立ち上がり、目の前のゴミ箱に缶を投げ入れた。

 

「あたしゃもう行くよ。大井っちが待ってるからね」

「…ありがとう北上。お陰で少し落ち着けたようだ」

「ん、いいってことよ。じゃーね」

 

そう言うと彼女は手をふりふりと振りながら建物の中へ入っていった。

 

「……とりあえず、伊勢の回復を待ってみるか」

 

そう呟いた日向もまた医療棟へ入って行く。

そして、近くの木陰には獠の姿があった。

 

 

「ん〜」

「ド、ドウシタノ…?」

 

香は獠に頼まれて北方棲姫の面倒を見ているが、彼女は先程からじっと目の前の深海棲艦を凝視している。

 

「いや、やっぱり考えらんないわ…」

「?」

「あなたみたいなちっちゃくて可愛い子が深海棲艦だなんて…」

「ナッ?!カワッ…」

 

香は、突然の言葉にドギマギする北方棲姫の手をそっと優しく持った。

 

「冷たい…。でも、あなたの心は人間と同じくらいの温かさを持ってる」

「人間ハミナ冷タインジャナイノ?私ハ姉カラソウ聞イタ」

「もちろん冷たい奴もいるわ。でもね、あたしも獠も、そしてここの提督さんや艦娘達は皆そういうのが嫌いなの」

「…」

「あなたは優しい。敵であるはずの艦娘を助けて、もう戦いたくないって、誰も傷つくのを見たくないって、そう言ってるんだもの」

「私ハタダ…」

「理由なんて後からいくらでも言えるわ。とにかく、どんな存在であれ目の前で助けを求められると放っとかずにはいられない。それがあなたであり、私達よ」

「…………ト」

「ん?なんて言ったの?」

「エックス、ワイ、ゼット…」

「!…どうしてそれを?」

「冴羽カラ聞イタ。コレヲ言エバドンナ悩ミヲ解決デキル、魔法ノ言葉ダッテ」

 

あいつめ、キザな真似をするなあ。

香はそう思った。

 

「ハハハ…。魔法かどうかは分からないけど、合言葉ってやつね」

「アイコトバ…」

「まっ、安心しなさい?あたしも獠も力になってあげるから」

「…アリガトウ」

 

ふふっと笑う香。だが、平和な時間は突如鳴り響くアラートによって消えてしまった。

ベッドから飛び起きたり慌ただしく走る艦娘達だが、皆この後の出来事を知る由などなかった。






いかがでしたか?
個人的には日向と北上様のやりとりが結構好きですw

さて、急展開を迎えましたが、このあと一体何が待ってるやら…
次回もご期待ください!
それでは!!
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