暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜 作:さんめん軍曹
こんばんは、さんめん軍曹です。
前回から間が空いてしまい申し訳ございません()
ここから事態は大きく動きます。
それでは本編どうぞ!!
「どうしたの?!」
大井が司令室の扉をバンと開け、北上もその後に続く。
室内には緊迫した様子の獠に艦娘達や提督、そして海坊主がいた。
「緊急事態です!レーダーに大数の深海棲艦の感あり!!」
「総数は?」
「詳しい数は分かりませんが…百は超えています!」
「くそっ!こっちの数じゃ歯が立たないぜ…」
獠達がどう動こうかと考えていたその時、どこからか通信が入った。
『ヨコスカ二告グ。今スグ北方棲姫ヲ返セ。サモナクバ貴様ラノイル一帯ガ焦土ト化ス』
どうやら敵からの通信らしい。
獠はマイクをONにすると、あくまで冷静に返事をした。
「こちらは横須賀鎮守府の提督、冴羽獠だ。確かに北方棲姫はこっちで預かっている。だが安心してくれ。危害は一切加えていない」
『コチラノ準備ハ整ッテイル。今スグ返セバコチラモ手ヲ出サナイト約束スル』
「ああ。約束しよう」
ここで一旦区切りがついたと判断した獠は、ちらと青葉に目配せをする。
彼女は逆探知に成功した印として親指を立てると、プリンターから排出されたA4用紙の束を獠に渡した。
彼は素早くデータを読んでいく。
港湾棲姫。
陸上型の深海棲艦であり両の手には鋭い鉤爪が装備されている。
深海棲艦のボスの1人とされているが、その存在は謎に包まれたままだ。
戦いの場にはあまり出てこないことから、一部ではあまり好戦的ではないとの話もあるらしい。
紙束にはそのような事がつらつらと書かれていた。
今回の大規模作戦の対象には含まれていないようであるが、北方棲姫奪還の為にこれだけの兵力を動員していることから彼女となんらかの関係があると見ていいだろう。
もう一度最初に戻り、今度はクリップで留められた写真を眺めてみた。
どうやら偵察機が撮影できた唯一のものらしい。構図が遠くてあまり見えないが、1番上のページにはそこから解析したとされる港湾棲姫の図が印刷されていた。
「う〜ん…悩ましい」
「何がです?」
「この服から溢れんばかりのもっこりバストに非常に艶かしいクビレ。そして見えそうで見えない太ももちゃんが…う~ん敵ながら実に惜しい…!」
獠が思ったことを無意識に口に出した途端、その場にいる全員からの冷たい視線を浴びることに。
「冴羽さん…」
「わわっ!明石ちゃんストップ!!そのハンマーはシャレにならないから!!香の100tハンマーより危険だから!!」
片手でスレッジハンマーを持った明石がゆらりと近づくが、我に返った獠は慌てて制止した。
「まったく。一度あなたの頭の中身を見てみたいですよ」
「ははは…。ボクちゃんシリアスは性に合わないの」
ここでもう一度通信が入ったことを知らせるブザーがなる。
『何ヲシテイル。早ク引キ渡スンダ』
「オ姉チャン!」
いつの間にか来ていた北方棲姫がマイクと獠の間に割り込んできた。
彼女から発せられた一言に全員が驚く。
『愛スル妹ヨ。無事カシラ?今助ケルワ』
「聞イテオ姉チャン!コノ人タチハ悪クナイノ!」
『…ドウイウコト?』
「実ハ…」
北方棲姫が言い終わらないうちに、突如陸上から多数の砲声といくつもの閃光が海に向かって走る。
司令室にいる全員がすぐ窓へ駆け寄ると、海上が炎に包まれていた。
「なんてこった…」
「そんな…嘘でしょ…」
両手で口を覆う大井。
暗闇の中の真っ赤な光を目の当たりにした北方棲姫は、目の前の光景がとても信じられなかった。
「オ…オ、ネエ…チャン…」
その時、また新たに通信が入った。
それにいち早く気づいた獠は、マイクへ再び駆け寄る。
『こちらは大本営特別艦隊だ。横須賀鎮守府応答せよ』
「冴羽獠だ」
『冴羽獠、貴様には艦娘を背後から撃ち、深海棲艦を匿った容疑がかけられている。よって貴様の指揮権は剥奪し軍法会議へかけるのですぐに出頭せよ。横須賀鎮守府の指揮権は、只今よりこの大本営特別艦隊指揮官である黒澤逸夫に移管される』
司令室のスピーカーから淡々と伝えられた言葉を聞いて、全員の手が止まる。
「…俺は容疑者ってことか?」
『言葉に気をつけろ若造。同じことを二度言わせるな。すぐに出頭しなければこの場で鎮守府ごと爆破処分する』
どうやら考えている暇はなさそうだ。
全員の注目を浴びる中、獠はひとつため息をつくと
「どうやら四の五の言っている場合じゃなさそう。獠ちゃん行ってくるわ」
と言いながらホルスターからパイソンを取り出してそばにいた陸奥に渡した。
「ちょっと…!」
「なぁにすぐ戻ってくるよ。その間俺の銃を持っといてくれ、むっちゃん」
そう言って手を振りながら扉へ向かう獠。
「誰がむっちゃんよ…」
「獠、お前…」
海坊主が何か言いたげに声をかけるが、彼はそれを制す。
「海坊主。俺がいない間ここは任せた」
「わかった」
「…サ、サエバ…!」
「どうした?ほっぽちゃん」
「必ズ戻ッテキテ…!」
北方棲姫の真剣な眼差しを受け取った獠。
彼はフッと薄く笑いながら扉の向こうへ消えていった。
「…篠原」
「…ああ。お前も同じ事を考えているのか、海坊主」
「もちろんだ」
「そうか。それなら用意するか」
「あの…」
翔鶴と瑞鶴は2人に声をかける。
「どうした?」
「お話があるので、あとで提督室へ来ていただけませんか?」
「ここでは話せない事か?」
「いや、話せないってわけじゃないけど…まずはお2人に聞いて欲しいんです」
「わかった。あとで海坊主と行く」
そう言うと提督は、とある作戦の準備に入った。
同じ頃、正門に向かって廊下を静かに歩く獠。
その後ろを香と日向が追ってきていた。
「獠!」
「どうした香」
「…本当に行くの?」
「ああ。どうやら向こうも本腰を入れ始めたらしい」
「……わかったわ」
「冴羽!私にはどう言うことかさっぱりわからない!」
「日向。おかしいと思わないか?」
「どういうことだ?」
「北方棲姫がここにいる事は俺たちしか知らないはずだ。そして、なぜあんなにタイミングよく深海棲艦に砲撃をすることができたか」
「…!!まさか」
「まだ確証はない。…それから」
「?」
「伊勢ちゃんが最後に所属していた艦隊。それは大本営特別艦隊だ」
「なんだって?!」
「詳しくは篠原達に聞くといい。俺はもう行くよ」
「ま、待ってくれ冴羽!」
獠を追おうとする日向だが、香は彼女の肩に手を乗せそれを制止した。
「離してくれないか香殿!これは敵の罠かもしれないんだぞ!」
「それを承知で乗り込んでいくのが獠よ。大丈夫、ここはあいつに任せて私達はできる事をしましょ」
「くっ…」
遠くで憲兵に手錠をかけられる獠の姿を日向達は黙って見ることしかできない。
そんな2人の様子を、暗闇から見つめる人影があった。
ほんの少し後、深海棲艦が砲撃を受けたあたりの海上。
血だらけの港湾棲姫は朦朧とする意識の中で、まだ息のある仲間を探そうとする。しかし思うように身体が動かない。
「クッ、不覚ダワ。私達ガココマデヤラレルナンテ…」
ふらふらと歩き回っていた彼女だが、ついに海面へ倒れこむ。
「愛スル妹ヨ…。アナタヲ守レナクテゴメンナサイ…」
傷ついたボスが意識を失う直前に見た最後の光景は、自分に近づいてくるクリーム色のセーラー服の艦娘だった。
「それで?話というのはなんだ」
「提督さんはこのマークを知っていますか?」
瑞鶴と翔鶴の2人は、自身の着ている服の上腕部辺りに編み込まれた刺繍を見せた。
それが何を意味するのか知っていた提督は目を見開いた。
「これは…!」
「そうです。私達五航戦は大本営特別艦隊にいたんです」
「伊勢がいた艦隊と同じだな…」
「そう。あの子の制服にも同じマークがあるはずです」
「ああ。俺と獠はそれを見て、彼女の所属を調べたんだ…」
ここで海坊主が口を挟む。
「その特別艦隊というのはなんなんだ」
「大規模作戦の時に特別に編成される艦隊の事です」
「普段は大本営で執務を手伝うなどをしているのですが、作戦が始まる時には召集がかけられます」
「彼女らは大本営の中でもトップクラスの腕を誇るエリート達だ。全員が最高練度や改二で編成されているんだ」
「まるで特殊部隊だな」
腕を組みながら、海坊主がフンと鼻を鳴らす。
「艦隊の管理者は元帥ですが、実際の指揮は別の方が行なっています」
「それがさっき名乗ってた黒澤大佐なんです」
「なるほどな」
「それから、特別艦隊からもう1人、ここに移籍しています」
「ほう」
「それは…」
「また会えて嬉しいよ。五航戦」
全員が振り向くと、そこには手下を従えた件の大佐が立っていた。
「私の知らないところで内緒話をされては困るんだがね」
「ハッ!これは失礼しました大佐殿!」
提督は自身の正体がバレないよう、憲兵のフリをする。
「先程も申した通りここは今から私の指揮下に入る。諸君、これより勝手な行動は許さんぞ」
特別艦隊の大佐はニヤリと笑みを浮かべた。
さて、いかがでしたか?
獠が拘束され、鎮守府が突如現れた人物の指揮下に入りと大混乱が予想されます。
物語の鍵は大本営特別艦隊にあるようですね…
それでは次回をお楽しみに!