暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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おこんばんは、さんめん軍曹です。
昨日に続きまして更新ですb

やっと暖かくなりましたね…
もう寒いのは勘弁して欲しいですorz

それでは本編、どうぞ!!



大規模作戦の表と裏!ブラック提督のシナリオをぶち壊せ【その6】

 

大通りを様々な車種のパトカーが行き交う。

通常のものから、昇降機がないもの、覆面、捜査車両、事故処理車、果ては機動隊のバスまでサイレンを鳴らしながら慌ただしく走行している。

そんな光景を収監されている房の中から見ている男がいた。そう、冴羽獠である。

 

「それで…どんな用だい?わざわざここまで来るとはね」

 

彼が向いていた窓から向き直ると、ベッドには川内が腰掛けていた。

 

「大したことじゃないわ。陸奥さんが例の彼の車で脱走した」

「ほう?」

「他に4人連れている。最も、オービスで確認できたのは作戦の対象も含めた3人だけだけど」

「じゃ、あと1人はどこにいるんだ?」

「だいたい見当がつくでしょ?」

 

ここで獠は腕を組み、壁にもたれかかった。

 

「君はなぜ、ここに来たんだ?」

「ここは私の遊び場。気づかれずに入ることくらい訳ないよ」

「流石は精鋭の中の精鋭だな。…質問を変えよう、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

川内は太腿の上に肘を乗せ、頬杖をつくと軽くため息をついた。

 

「今はあんたが私の提督でしょ?なら、こうでもしなきゃあとで夜戦に出してもらえないじゃん」

 

 

その頃、首都高湾岸線では熾烈なカーチェイスが繰り広げられていた。

 

「んもう、しつっこい!」

 

左側の車が体当たりを仕掛けてくる。衝撃で一瞬車体が右に振られるが、陸奥はすぐに体勢を整え直してオーバードライブスイッチを切ると、車が一瞬減速を始めた。

 

「運転で私に勝とうだなんて…100年早いわ!」

 

そのまま相手車両の斜め後ろについたクラウン。仕返しとばかりにアクセルを踏んでエンジンを回しながらPITマニューバで相手の体制を崩して、そのままインターの分岐の壁に激突させた。

PITマニューバとは、映画などのカーチェイスで警察車両が斜め後ろに体当たりをするあの技である。アメリカでは何日も訓練を重ねた有資格者のみが出来る技法であるが、彼女はそれを難なくやってのけた。

それでもまだ右側と後ろには車が付いてきていた。

 

「ほんと嫌な奴ら…。潮ちゃん、バッグの中から何か適当に取ってくれる?」

「わ、わかりました」

 

そして潮は鞄の中からある荷物を取り出すと、それを陸奥に手渡す。

 

「ありがとう。さて…」

 

彼女はパワーウインドウのスイッチを操作して窓を全開にすると、片手でS&W M500を相手のエンジンめがけてブッ放した。

発射の勢いそのままにフェンダーから突入した.500S&Wマグナム弾は、その威力で中のエンジンをめちゃくちゃに引き裂くと、瞬く間に走行不能に陥らせた。

 

「くっ…やっぱり片手だと無理があるわね…」

 

彼女は左手でも銃を撃てるスイッチハンダーだが、流石の戦艦でも.50口径のマグナム弾は反動が大きかったようだ。

 

「あとは後ろの奴らだけ…」

 

美樹がそう呟いたとき、車の無線に通信が入る。

 

「どなたかしら?」

『あなた達の切り札と言ったところね。そろそろ窮屈になってきたから、トランクを開けてくれる?』

 

相手は謎のままではあれど、どこかで聞いた事のあるような声の主だったので彼女は一か八か賭けてみることにした。ハンドルの右下あたりに手を伸ばしてレバーを引っ張る。

トランクのロックが解除され、その中に新鮮な空気が送り込まれていく。

金髪の美女は片手でトランクリッドを押し上げながら、その肺にいっぱいの空気を吸い込んだ。

 

「ムツさん。あなた運転が荒いわよ」

『あら。それならトランクの中じゃなくてリムジンにでも乗ればよかったんじゃない?』

「今度からそうするわ。それならあなたももっと丁寧な運転になるでしょ?」

『あらあら』

「さてと…」

 

体勢を立て直しながら、彼女は両手で大きな武器を起こした。

Mk.19自動擲弾銃。その名の通り弾丸の代わりに擲弾を連射できる機関銃である。

本来なら人が乗った状態のトランクに収まるか怪しい大きさであるが、やはり工廠の2人組の手によって、可能な限り小型化されていた。

 

「そろそろ追いかけっこはおしまい」

 

両手でチャージングハンドルを引きながら、まずは最も近い車に照準を当てる。

トランクの中の存在に気がついた追っ手はブレーキをかけるが、少し遅かった。

 

「Bye-bye」

 

引き金にかけていた両手の親指に力を込めると、ベルトリンクが動いてグレネード弾が次々と発射されていった。

擲弾の直撃を受けた車はガソリンへと引火して大爆発。

彼女の射撃は正確そのものであり、あっという間に後方の車両群を壊滅させてしまった。

 

『貴女はいったい…』

「あら、もうお忘れ?私はブラッディ・マリィよ」

『マリィさん!てっきりアメリカへ帰ったのかと思いました』

「元気そうねウシオ。ほんとはそうしようかと思ってたんだけど…出番のないまま帰るのもなんだし、途中で撃沈でもされたらひとたまりもないわ」

『ありがとうございます…!』

 

マリィが次の言葉を発しようとしたその時、周囲の路面が突如炸裂した。

 

『今度は何?!』

「装甲車よ!なりふり構ってられなくなったって事ね…!」

 

いつの間にか途中のインターより合流してきた87式装甲車が、こちらを狙って機関砲を連射してきていた。

マリィも応戦するが、一般車と比べ分厚い鉄板に覆われているので分が悪かった。

さらに擲弾銃が弾切れを起こしてしまう。

 

「しまった!」

 

もはやこれまでかと思われた。だがここでまたもう1台の黒塗りの車がリヤを滑らせながら一般道から合流してくる。

30型のセルシオのサンルーフが開くと、RPG-7を構えた黒スーツの男が身を乗り出した。

 

「ごっつデカい花火を打ち上げたるで!たーまやーーー!!!」

 

弾頭は発射され、真っ直ぐと装甲車の前面に直撃する。が、しかし当たりどころが良かったのか大きく凹んだ程度で済んでいた。

 

「チッ。もう1発や!次はもっと強力なのをお見舞いするで!!」

 

そう言いながら発射器に新しく弾頭を装填する。次に使用する弾頭はPG-7VRという、戦車を破壊するのに必要な成形炸薬を2個搭載した、相手の標的を確実に破壊しうるものだ。

 

「お次は…かーーーぎやーーーー!!!」

 

同じ箇所へ2度目の命中。今度こそ榴弾は炸裂し、その威力で砲塔を上へと打ち上げた。

 

「へっへっへ。見事なもんじゃい」

『支援ありがとう。あなた達は?』

「八戒組のモンです。目的地まで護衛させていただきやす」

『心強いわ。新宿までお願いできるかしら?』

「お安い御用で。後ろは任せてください」

 

 

ー横須賀鎮守府近海。

 

「中枢棲姫サマ。準備ガ整イマシタ」

「ワカッタ。…ソレデハコレヨリ、ヨコスカヲ壊滅サセニイクゾ!総員進軍セヨ!!」

 

様々な艦種の深海棲艦が進撃を開始する。彼らの目線の先には、横須賀の灯りが見えていた。

 

 

横須賀港周辺。夜もそろそろ更けようかといった時間に、ここへ勤務している職員が仕事を終えて外へ出る。街は静けさに包まれていたが、彼は妙な胸騒ぎを覚えて水平線を見つめる。すると、いつもと違い黒い点がぽつぽつと見えていた。

 

「ありゃなんだ…」

 

たまたま携帯していた双眼鏡でさらに拡大する。

そこにはなんと、ニュースで目にした事のある深海棲艦達が数えきれないほどおり、こちらへ向かって進んでいるように見えていた。

 

「たっ、たた大変だ…!!」

 

彼は走った。

 

 

程なくして、街にあるすべての防災無線からサイレンが鳴り響く。政府が最近導入しているJ-Alertの無機質な音声によって、住民への避難命令が指示されている。

その様子を眺めていた黒澤は神通を呼んだ。

 

「ここまでの数は史上初になります。我々ではとても…」

「大本営から応援を呼ぶのだ。…それまでの時間稼ぎとして、この鎮守府の艦娘を出撃させる」

 

その後に黒澤が続けた言葉を聞いて、彼女は耳を疑った。

 

「装備はすべて12cm単装砲一門のみとする」

「しかしそれでは艦娘達が…!」

 

目の前にいるブラック提督は、邪悪な笑みを浮かべた。

 

「構わん。沈んでくれた方がこちらも都合がいいというものだ」

 

自身の提督が本性を表したのを目の当たりにした神通は、なるべく表情に出ないよう歯を食いしばった。

 

 

J-Alertのサイレンは地下にも届いている。

 

「奴らが近づいてきたか」

「そのようだ。…どれ、俺らも動くとしますかね」

 

提督は立ち上がると、ベッドの薄っぺらいマットレスをまさぐった。

 

「提督よ。いったいどうやってここから出ようというのだ?」

「おいおい。ここは俺の鎮守府だぜ?乗っ取られたとき用のバックアップぐらい…おっと見つけた」

 

目的のものを探り当てた彼はマットレスを剥がすと、そこにはツルハシが入っていた。

 

「ツルハシなんかどうする気だ?」

「アメリカ映画の真似だよ…そらっ!」

 

提督は持っていたツルハシで足元のコンクリートを砕き始める。

しばらく打ち続けていると、次第に金庫の扉のようなものが見えてきた。

ある程度のところで掘るのをやめ、今度は番号を打ち込む。扉を開ければそこにはいくつかの武器と弾薬が入っていた。

 

「これ以上あいつに好き勝手やらせてたまるかよ。ほれ」

 

彼は海坊主にM1911を、長門にはH&K MP5SD5、そして自身はステンMk.II・サプレッサー仕様にワルサーP.99で武装した。

 

「備えあれば憂いなしってな。…ん?」

 

外から人の気配がしたので振り向くと、そこには神通が立っていた。

 

「どうした神通」

「ご存知の通り、鎮守府近海から深海棲艦の大部隊が侵攻中です」

「それで?」

「黒澤提督は、それに乗じてここの艦娘を全て轟沈させる気でいます」

「…なんだと?」

 

提督は苦虫を噛み潰したような表情になる。それを見た神通もまた、悔しそうな顔をした。

 

「フン、口封じだな」

「あンの野郎…ぜってえ叩き潰す」

 

長門は驚愕しつつも少し考え込んでいるような仕草をしながら神通に質問した。

 

「神通。貴様はなぜここにやってきた」

「…」

「答えろ。返事によっては貴様は海ではなくここで沈む事になる」

 

MP5の銃口を向ける。

神通はほんの少しだけ俯くと、また長門へ目線を合わせしっかりと答えた。

 

「あの方の命令には納得がいかなかったからです。いくら私の直属の上司の命でも、かつて共に戦った仲間達を見捨てる事なんて…私には出来ない…!」

 

鬼の目にも涙とはこの事か。普段は大本営でかなり厳しい訓練を指導している彼女もまた、感情を持つ1人の少女なのだ。

 

「神通。俺んとこに戻ってこいよ」

 

提督はまた、たばこに火をつける。

 

「歓迎するぜ。…だが戻る前にケジメはつけろ。俺らも手伝ってやるが、最後はお前がキメてやれ」

「てい…とく…!」

 

彼は笑みを浮かべながらもうひと吸いして吸い殻を便器に投げると、トイレットペーパーのホルダーを横へずらした。

 

「さて…ひと暴れしようぜお前ら」

 

振り向くと提督の手には、ひとつの鍵が握られていた。





いかがでしたか?
やっと軌道に載せることができて、自分の事ながら嬉しく思います…!

設定等を思い出すために自分でもよく読み直したりするのですが、マリィさんをすっかり忘れていた事に気づいたのでここでオイシイ役をこなしていただきました。

さて、事態は動き始めました。彼らはどう切り抜けるのか…!
それでは、次回もおたのしみに!!
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