暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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おはようございます。さんめん軍曹です。
超今更ですが、シティーハンターの劇場版でとうとうパンドラの箱が開かれましたね。
そこで弊小説もその流れに合わせて、触れては来なかった部分に触れて行きます。

それでは本編をどうぞ!



大規模作戦の表と裏!ブラック提督のシナリオをぶち壊せ【その10】

 

横須賀鎮守府の一同が黒澤へ反撃中と時を同じくして、東京湾沖。

北上を先頭に、北方姉妹を挟んでしんがりは潮が務めていた。ここで彼女は耳元のインカムへ手を伸ばす。

 

「こ、こちら潮です。七駆のみんな、聞こえますか?」

 

しばらく待ったが応答はない。潮はもう一度だけ七駆に呼びかける。

すると、朧から返答が来た。

 

『こちら朧。しおちゃん無事?』

「朧ちゃん!」

『元気そうだね。よかったよ。今は何してるの?』

「じ、実はね…」

 

ここで潮は一連の流れを説明する。そして朧からも現在の鎮守府の状況が伝えられた。

 

『…と言うわけなんだけど、こっちはなんとかなりそう。朧たちもそっちに行こうか?』

「うん。来てくれたら、嬉しいなって…」

『わかった。ドックは使用不能だからちょっとだけ時間かかるかもだけど、合流するね』

 

しばらくして、朧を先頭に七駆の面々が合流する。

北方棲姫もさることながら、港湾棲姫が纏うオーラに朧達は未だ警戒を解かずーー背中にびっしりと冷や汗をかきながらーーその場に立っていた。

 

「この2人が深海棲艦の中でも大物、か…」

「しおたん、本当にこの2人が味方、なの…?」

 

漣が疑問視するのも無理はない。通常なら艦娘の隣に深海棲艦がいることなどあり得ないのだ。その中でも、特に曙は警戒心を隠さず、艤装を深海棲艦達に向けていた。

 

「私タチハ真実ガ知リタイ。我々トヨコスカノ間ニハ、タダ戦ウダケデハ済マナイ何カガアルト思ッテイル」

 

北方棲姫がそう発言するが、曙に艤装を向けられてしまったので困ったような表情になっていた。

 

「潮の友達っても信じられるわけないじゃない…。鎮守府に入った時点で暴れ出すかもしれないんだから」

「今ハソンナ事ヲ言ッテイル状況ジャナイ。我ガ部隊ヲ壊滅サセタ司令官ガ、今度ハアナタ達ノ鎮守府マデ手ヲ出ソウトシテイル。コノ時点デ敵味方関係ナシニ、利害ハ一致シテイルト思ウワ」

「…なぜ、あんたらはそこまでしてうちらに構うの?」

 

朧の投げかけた質問に港湾は少しだけ考えるそぶりを見せるが、彼女は迷いなく答えた。

 

「ソウネ…。誰カノ言葉ヲ借リルナラ、私タチモ借リヲ作ラナイ主義。例エ敵デアッテモ、全テガ攻撃スベキ対象デハナイ。今回ノ事案デソウ学ンダ」

 

横で北上がポリポリと頬を掻く。

 

「ソレニ…」

 

港湾は言いながら北方と潮を交互に見て、僅かに微笑んだ。

 

「妹ヤソノ友達ガ困ッテイルノナラバ、姉トシテハ放ッテオケナイ」

「な、なによそれ…」

 

ずっと戦ってきたはずの深海棲艦からの意外な言葉に毒気を抜かれた曙は、ようやくその艤装を下ろした。

 

「さて、今後の動きを説明するよ」

 

北上のひと声で我に返った一同が反応する。

 

「とりあえずは、この艦隊で深海棲艦の群れへ乗り込む。そして…」

 

呆気に取られている潮以外の七駆を見ながらも、さらに言葉を続ける。

 

「あたしと港湾達でやつらを率いている中枢棲姫の元に突っ込んで、話をつける。その間あたしの酸素魚雷はあんたらに預ける」

「はぁ?!正気なの!?」

「正気なんて物はこの場に必要ないんだよ。やるか殺られるか、どっちかの二択さ」

 

普段は飄々として掴みどころのない北上の大胆な発言に、朧達は息を呑むしかなかった。

 

「この2人もいるわけだし、いきなりズドンはあり得ないとあたしゃ思う。そこに賭けるんだ」

「北上さんって大胆だね…」

 

朧が漏らした言葉に、北上は腕を組んで鼻を鳴らす。

 

「あたしは冴羽っちの考えそうな事を実践するだけだよ。これでも球磨型の三女だしさ」

 

 

その頃、陸奥達は近くの山から双眼鏡で鎮守府の様子を見守っていた。

 

「あーあ…篠原くんったら、こんなに派手にやっちゃって…」

「どうするにゃ?このタイミングで正面から乗り込むのは愚策でしかないと思うにゃ」

 

当初は鎮守府の正面から乗り込もうと息巻いていた彼女らだったが、残りわずかな距離で突如目の前に現れた多摩に止められ手前の山中で偵察をすることになったのだ。

 

「そうね。中の状況もイマイチ把握できてるとは言い難いし…」

「多摩ちゃん、冴羽さんもこっちに向かってるんでしょ?」

 

美樹の問いかけに、多摩が頷く。

 

「混乱に乗じて脱走しかけてたところを川内が回収したにゃ。乗り込むなら、あの2人が来たタイミングがいいにゃ」

 

その時、燃えているドックからさほど離れていない場所から沖へ向かって、いくつかの筋が流れていった。

 

「なに?あれ」

「…不味いにゃ!」

 

何かを察知した多摩は、すぐにインカムへ手を伸ばす。

 

「イク、聞こえるかにゃ?」

『はーい、なの!』

「さっきの潮の通信聞いてたかにゃ?」

『バッチリ聞いてたのね!…何かあったの?』

「あの子、通常のチャンネルで通話してたにゃ。それを敵に聞かれた可能性があるにゃ」

『…イク達はどうすれば良いのね?』

「深海棲艦に向かって艦隊が出航したにゃ。恐らく…」

『特別艦隊。わかったの、イク達も後を尾けるのね』

「よろしくにゃ」

 

通信を切り、再び鎮守府へ目を向ける。

すると、一台のバイクが正門へと突進しているところだった。

 

 

「川内!どうするつもりなんだ!?」

「このまま突っ込む!」

「ゲートは閉じてるぜ!」

「わかってるわよ!どうしよ…あっ!」

 

彼女の視線の先には、大型の積載車がロードプレートを傾斜状態にさせて止まっていた。

 

「あれだわ。しっかり掴まっててよね!!」

 

アクセルを捻り猛烈に加速。そして、ローダーをジャンプ台代わりにして一気に飛び上がった。

 

「「いぃーーーーーーやっほぉーーーう!!!」」

 

そのまま壁を越えようとするが、後輪が有刺鉄線に引っかかってしまう。

そのせいでタイヤはパンクし、2人はバランスを崩しながら着地した。

 

「川内、大丈夫か?」

「あ、ありがとう。私は平気」

「そりゃあよかった。さて…」

 

獠が咄嗟に川内を守ったおかげで、彼女は傷ひとつついていない。

2人が起き上がると、敵兵が周りを囲み始めていた。

 

「どうやら素直に通してはくれなさそうね」

「上等さ。かかって来い!」

 

敵のうち1人が撃ち始めると同時に彼らは行動を起こす。

川内は前へ飛び、片っ端から格闘で倒していく。

そして獠は後ろの腰に挟んでいたコンバット・マグナムを抜いて次々とピンホールショットで銃を壊していった。

やがてその場の敵を全て倒すと、川内は相手が唯一落とした64式自動小銃を拾い点検する。

 

「この後はどうするんだ?」

「通信によれば一航戦と明石さんが工廠で黒澤を抑えているわ。あなたはそこへ向かって。私は門を開けて多摩ちゃん達を中へ入れる」

 

 

やがて、川内と多摩の手引きで鎮守府へと舞い戻った陸奥達は提督と海坊主に合流した。

 

「篠原くん!」

「陸奥!無事だったか」

「無事だったか、じゃないわよもう。私達の拠点をこんなにしちゃって…」

「ファルコンも大暴れしたみたいね」

「す、すまん…」

 

美樹の目線の先には、縛り上げられた敵兵達がまとめて転がされていた。

 

「多摩ちゃんありがとね」

「なんて事ないにゃ。そっちもうまく行ってるようでよかったにゃ」

「流石私の一番弟子。これが終わったら間宮アイスでもご馳走したげる」

「それは死亡フラグだにゃ、川内」

 

 

川内と離れた獠は工廠へと乗り込み、弓を構えている一航戦を見つけるとすぐに声をかけた。

 

「赤城、加賀!」

「あら冴羽さん。やっと来ましたね」

「少々遅刻ですよ」

「すまない、道が混んでいてね。黒澤は押さえているんだろう?」

「明石さんとあそこに」

 

加賀の目線の先には、手錠をかけられた黒澤にベレッタを向けている明石がいた。

 

「よう大将。手錠で繋がれた気分はどうだ」

「威勢がいいのも今のうちだ。艦隊を深海棲艦へと向かわせた。もうすぐ大規模な戦闘が始まるだろう」

「さあて、そう簡単に行くかな?」

「驚かないんですか?」

 

冷静さを崩さない獠に対して、明石は率直な疑問を投げかけた。

 

「まあね。状況はこっちの耳にも入ってるよ」

 

そう答えながら、彼は黒澤と目線を合わせるためにしゃがみ込む。

 

「なあ黒澤さんよ。おたく、どうして俺らをここまで狙う?」

「答えが欲しいか若造。なら応じてやろう」

 

目の前の男は獠を睨みつけながら語った。

 

「艦娘は兵器だ。兵器ということは、それなりの相手にそれなりの取引をすれば金を産む。今まで上手く行っていた私の計画を、貴様らは邪魔をした」

「赤いペガサスか?」

「そうだとも。…いや、正確にはその元締めと言うべき組織にも、だ」

「…!まさか…」

「君は随分と察しがいいようだ。そう、私は鎮守府を乗っ取り、練度の高い艦娘達を赤いペガサスを通じてある組織へと売り渡していたのだ。その組織の名は…"ユニオン・テオーペ"」

 

獠を頬を一筋の汗が伝っていく。

ユニオン・テオーペは世界を股にかける麻薬組織だ。その組織と獠は、とある因縁があった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()かの組織が世界中で活躍するには、深海棲艦の脅威も考えなければならない。そこで…」

()()にも、艦娘を渡していたわけだな…?」

「その通り。そこで絶妙に保たれていたバランスを、ある日のこのことやって来た貴様らは崩したんだ。苦労して各鎮守府に入り込ませていた私の配下を、お前は赤子の手を捻るが如く潰していった…!」

 

黒澤の目には怒りの炎が灯っていた。

 

「貴様らさえいなければこの計画は上手くいっていたものを…!そこで私はここを再び乗っ取り、深海棲艦への取引の拠点とする為に来たと言うわけだ」

「残念ながらお前の計画は、ここで終わりだ」

「いいや、切り札というものは最後まで取っておくものだよ。あと数時間もしないうちに大規模な戦闘が始まる」

 

獠はここで立ち上がると、出口に向かって歩き出した。

 

「もはや貴様でももう止められるまい。横須賀が業火に包まれる様を、黙ってその目に焼き付けるがいい!」

 

彼は一度止まって肩越しにブラック提督を一瞥すると、もう一度前へと進む。

一航戦とすれ違った時、赤城が声をかける。

 

「…行くのですね」

「ああ。もはや猶予はない。体当たりしてでも特別艦隊を止めに行く」

「そんな事をしたら香さんが泣いてしまいますよ。…まあ、冴羽さんなら大丈夫だと思いますけどね」

「ここは任せる」

「承知しました」

 

工廠を出た獠。彼は迷う事なく、ドックとは別の場所のモーターボートが係留してある場所へと向かう。

その場所へ辿り着けば、1人の雷巡が立っていた。

 

「…冴羽さん」

「北上が心配かい?」

「はい。あなたが何と言おうと、私はついて行きますから」

「どうやら本気らしいな。…いいだろう。乗りなよ」

「私は自分の脚で行きます」

「今回はいつもとは違う。燃料は節約するんだ」

「でも…」

「ま、いいからいいから」

 

そう言って大井を半ば無理矢理ボートに乗せた獠は、ボートのエンジンをかけて沖へと向かおうとする。

 

「待てよ獠」

 

彼が振り向くと、提督がこちらへと近づいてきているところだった。

 

「行くんだろ?ならこれを持って行け。いざという時に役に立つはずだ」

 

そう言って小さな箱を獠へ渡した。

 

「これは…」

「おおっと、中身について質問するのは野暮ってもんだ。開けてびっくり玉手箱、ってな。さあ、行ってこい」

「…ありがとな、篠原」

「いいってことよ」

 

こうして獠と大井は北上達へ合流すべく出航していった。

 

その頃北上を旗艦とした即席の艦隊は、深海棲艦の目前へと迫っていた。

 

 





いかがでしたか?
ブラ提シリーズ10話目、通算56話にしてユニオン・テオーペへと触れました。次回もパンドラの箱を開けていきます。

また、次回からはやっと(?)題名も変わります。

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それでは次回、お会いしましょう!!
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