暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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こんばんは、さんめん軍曹です。
今回は、触れてはこなかったパンドラの箱part2を開けていきたいと思います。

本編更新と並行して、今までに投稿した話を順に改稿(pixiv版に合わせる形で)しておりますので、そちらも合わせてご案内させていただきます。

それでは本編どうぞ!



艦隊決戦 2人の北上と大井の涙【前編】

 

「はっ…はあ…っ!…ぐっ」

「北上さん!!」

 

ボロボロの艤装、口いっぱいに広がる鉄の味、止まらない腹部からの出血。

ああ、目が回りそうだ。

 

「ん、大井っち。それは()()()()()()を呼んでいるんだい?」

 

そして目の前には、もう1人の…

 

「もう少し骨のある奴だと思ったんだけどね。これでしまいだよ」

 

片手で首を掴まれる。徐々に力を込められ、喉を通る空気が薄くなっていく。

 

あーあ、ここまでか。

 

視界がだんだん黒くぼやける。あたしに抵抗できる力はもうない。来世は重巡…いや、戦艦になりたいね。

 

「北上いいいぃぃぃぃ!!!」

 

あたしが愛した人の声。

ごめん、想いは告げられそうにないや。

あと頼んだよ。

 

 

 

 

少し前に遡る。

 

北上は武装を解除して朧に預けると、港湾姉妹を連れて深海棲艦の前に立った。

 

「中枢棲姫のとこへ通しな。話がある」

「貴様、カンムスカ!」

 

途端に四方から主砲を向けられる。

ある程度予想していたとはいえ、武闘派と言われる球磨型姉妹の北上でも、そこらじゅうのフラッグシップ級の深海棲艦から武器を向けられたら、それはぞっとしない光景だった。

 

「おいおい。ここであたしを撃つのは構わんけどさ、そしたら後ろのお仲間に当たっちゃうんじゃないの?」

 

そう言って港湾姉妹を親指で指し示す。

 

「コッ…港湾サマ?!」

「生キテオラレタノデスカ!!」

「北方サママデ…。コレハイッタイドウイウコトダ…?」

 

ざわめきは徐々に広がっていく。その中にいる歴戦の深海棲艦でも、この事態には流石に動揺していた。

 

「私カラモ中枢棲姫ニ話ガアル。ココヲ通シテ欲シイ」

「オ姉チャンハコノカンムス、名ハ、キタカミ…ニ助ケラレタノ。ソシテ今カラ起キヨウトシテイル事案ニツイテ、中枢サンニ話ヲスル必要ガアルワ」

「シ、シカシ…」

「心配シナイデ。コノカンムスハ、今ハ丸腰。我々ニ害ヲモタラス様ナラ、コノ場デ沈メレバイイ。随伴モ駆逐艦ダ。容易イダロウ」

 

おっかないこと言うじゃんか。そんな気なんてない癖に。

北上は心の中で苦笑した。

 

「ソ、ソウデスネ…。ソレデハ、コチラヘドウゾ」

 

おずおずと深海棲艦に案内された先には、flagship級の戦艦に囲まれ艤装の上に腰掛けた中枢棲姫の姿があった。

その佇まいは、北上がこれまで出会った深海棲艦よりも一際違っていた。

 

「港湾…。アノ砲撃カラ、ヨク生キ延ビタワネ」

「アノ状況デハ、私モ轟沈ヲ覚悟シテイタ」

「ソレデ…ドウシテ此処ニカンムスヲ連レテキタノカシラ?」

 

中枢棲姫は単身乗り込んできた北上に対して、警戒は解かずとも興味があるように尋ねてきた。

 

「ソレハ私ノ…」

「待った。あたしが喋るよ。…中枢棲姫、あんたはあたしの話を聞いてくれるかい?」

 

北上の言葉に、中枢棲姫はしばし考え込む様子を見せた。

 

「話…。話トキタカ。ナゼ私ガ、今マデ戦イ続ケテキタ敵デアルオ前ノ話ヲ、聞ク必要ガアル?」

「質問に質問で返すんじゃないよ。話を聞くか聞かないか、どっちなんだい。聞かないのなら今すぐその強そうな艤装でもって、あたしを沈めておくれ。あんたに会うためにあたしは武装を捨ててまで、覚悟を決めてきてるんだ」

 

北上は中枢棲姫を睨む。

本音を言えば流石の彼女でも、気を抜けば脚がすくみそうなくらい中枢棲姫のオーラに気圧されていた。

それでもしっかりと相手の目を見て話をする。

 

「ヘエ…。面白イカンムスネ。…イイワ。興味ガ湧イタカラ、少シダケナラ聞イテアゲル」

 

その言葉を聞いた北上は少し安堵しながらも、それを悟られないようにしてこれまでの経緯を話し始めた。

 

「まず港湾の部隊を攻撃した艦隊。あれは横須賀の艦隊じゃあないんだよ」

「フウン…。ソレデ?」

「いま、あたしらの鎮守府は裏切り者に乗っ取られようとしてるんだ。あの攻撃はその為の布石。あたしらはそれを止めるべく、まずは港湾を救助した」

 

その言葉を聞いた周りの深海棲艦はざわめく。戦うべき相手を救助するなど前代未聞のことなのだ。

 

「私タチニ恩ヲ売ロウトシテイルノカシラ?」

「違う、そうじゃない。…実はうちの駆逐艦の1人が、あんたらんとこの北方棲姫と友達になっていた」

「…ドウシテ?」

 

そして北上は、今回の大規模作戦の標的が北方棲姫であること、彼女が伊勢を手当てしていたこと、作戦の指揮は黒澤が執っていること、伊勢は黒澤の指令で同士討ちをされたこと、濡れ衣で獠が捕えられたことなどを包み隠さず全て話した。

 

「…ヘエ。ソレト私タチトドンナ関係ガアルノカシラ?」

「まだ分からんのかい?あんたらを沈めようとする奴がいて、そいつがあたしらをも飯の種に利用しようとしている。()()()()()()()()()()()()()()、今までみたいにドンパチやってる暇はないんだよ」

 

中枢棲姫は考え込む。

 

「アナタ達ハ、ソレデ何ヲ得ルノ?」

「…どういう意味さ」

「繰シ返シニナルケド、話ヲ聞イテレバ、アナタハ私達ニ恩ヲ売ロウトシテイルヨウニ聞コエルノダケド?ソレデモ構ワナイケド、ソレハ無駄トイウモノ。容赦ハシナイワヨ」

 

中枢棲姫の言葉を聞いた北上は、腕を組みつつ鼻で笑う。

 

「ハッ。あたしがここまで来た理由はそんなちゃっちいもんじゃないよ。心配せずとも、これが終わったらガン首揃えてかかってきな。それ相応の出迎えはしてやるよ。それに…」

「ナニカシラ?」

「恩を売るならわざわざこんなことしない。あんたらを全滅させることも仕事の内さ。だけど、()()()()()()()()()()()()()()、あたしも()()もそう信じてるんだ」

 

北上が喋り終わると、その場は静粛に包まれる。

何秒が過ぎただろうか。互いに睨み合っているうちに、中枢棲姫の肩が震え始めた。

 

「フッ…フフッ…」

「……」

「フフフッ…アハハハハハ!!!!!」

 

彼女は周りを気にせずに大笑いする。

まるで面白いおもちゃを見つけた子供のように。

 

「チ、中枢サン…?」

「フフ…ゴメンナサイネ。久々ニ愉快ナモノヲミタ」

「お気に召したようで何よりだよ。…で、答えはどうなんだい」

「アア。気ニ入ッタ。ソノ馬鹿サ加減ヲ買ッテアゲル。タダシ…」

「何さ」

「私タチハコノ場ヲ観戦スルダケ。手ハ出サナイ代ワリニ、アナタガコノ件ヲ解決シナサイ」

「あいよ。わかってるとも」

 

北上は力強くうなづく。港湾棲姫もどこかほっとした様子だ。

そんな2人の間から北方棲姫が前へ出てくると、ぺこりとお辞儀をした。

 

「中枢サン、アリガトウ」

「別ニ、オ礼ヲ言ワレル程ノ事デハナイワ。アナタノ優シサヲ、無駄ニシタクナイダケヨ」

 

中枢棲姫はそっぽを向く。

案外、彼女もそこまで冷徹ではないのでは?と思う北上だった。

 

その刹那。その場にいた全員のーーー艦娘も深海棲艦もーーー気配が鋭いものに変わった。

最初に行動を起こしたのは北上だ。

彼女は北方棲姫を突き飛ばし、次いで屈んだ姿勢から後ろへ飛んで背中で港湾棲姫を押し退ける。

そして飛んできた砲弾は、北上に直撃したのだ。

そのままの勢いで吹っ飛ばされる彼女。何度か海面をバウンドし、勢いが弱まるとゴロゴロと転がっていった。

 

「ん。格好良く啖呵を切ったね。やるじゃないか」

 

パチ、パチとゆっくり拍手をしながら硝煙の中から影が浮かび上がる。

その声は、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「う…ぐ…っ」

「あたしゃ感動したよ。手引きがあったとはいえ、よくぞ深海棲艦最強と言われた中枢棲姫の元に乗り込んだね」

 

北上はなんとか顔を上げる。

目の前には、見覚えのあるシルエットが自分を見下ろしていた。

硝煙は徐々に晴れていく。

 

「だが、艦娘が深海棲艦と手を組むとあっちゃ、流石のあたしも黙ってられないよ。うん」

 

北上は驚愕のあまり目を見開いた。

目の前にはなんと、()()()()()()()()()()()()()()()が立っていたからだ。

 

「やあ横須賀の北上。あたしは、()()()()()()()()()の北上だよ」

 

2人の間を、強めの風が吹き抜けていった。

 





いかがでしたか?
艦これを取り扱ううえで、同型艦の存在を語る事は避けては通れぬ道と考えておりました。
第1話を投稿した時点で、どのタイミングにしようかと考えた結果、今回から触れていこうと思います。

それでは次回もご期待ください!

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