暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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こんばんは、さんめん軍曹です。

大変お待たせしてしまいましたorz
2人の北上の邂逅。そして始まる戦い…。
このあとの展開に目が離せません!

それでは本編どうぞ!



艦隊決戦 2人の北上と大井の涙【後編】

深海棲艦達は騒然としていた。

なぜなら彼女らの常識ではあり得ない事が目の前で立て続けに起こっていたからである。

それは砲声を聞いて駆けつけた七駆の駆逐艦も同じ事だ。曙は急いで北上へ武装を渡そうとするが、チ級に制止されてしまう。

 

「何するのよ!」

「待テ。今アソコへ入レバ、オ前モ沈メラレルゾ」

「で、でも…!」

「チ級の言う通りだよぼのたん。私達が巻き込まれないようにする為には、ここは黙って見守るしかないよ」

「くっ…!」

 

曙の視線の先には、中破状態でありながらなんとか立ち上がる北上の姿があった。

 

「不意打ちとは随分と姑息な手を使うじゃないか…。今のは流石に効いたよ」

 

彼女は血の塊を吐く。そして、両手で軽く拳を作ると、顔の前に構えた。

 

「ん、なんの真似だい?」

「あんたら相手にゃこれで充分ってことさ」

「面白い。なら、存分にかかってきな」

 

横須賀の北上は、その脚にありったけの力を込めて前へ走る。そして、目の前のドッペルゲンガーとも言える姿の艦娘に殴りかかろうとした。

 

しかし。

 

相手はするりと避けると、カウンターを北上の腹にぶち込む。

拳が大きく腹にめり込み、彼女はあばらが折れて腑に刺さる感覚を味わってしまう。

 

「がはっ…!」

 

声が漏れた直後、大量の血が口から溢れ出した。そこへ容赦なく単装砲を連射される。

多量の砲弾と強烈なパンチをまともに喰らってしまったからか、腹部からもドクドクと赤い液体が流れ出す。

 

ついに北上は、頭からうつ伏せに倒れた。

そして特別艦隊の北上は、足元に膝をついて倒れた横須賀の北上の髪を掴んで顔を無理矢理上げさせる。

 

「さっきまでの威勢はどうした?あたしゃまだ1ミリもダメージ喰らってないんだけど」

「はっ…はあ…っ!…ぐっ」

「北上さん!!」

 

ちょうどそこへ、獠が操縦するボートが到着した。

 

「ん、大井っち。それはどっちの北上を呼んでいるんだい?」

 

掴んでいた髪を離し、今度はその手を首へと切り替える。

 

「う…」

「もう少し骨のある奴だと思ったんだけどね。これでしまいだよ」

「北上いいいぃぃぃぃ!!!」

 

もはや横須賀の北上の命は風前の灯だった。

だがここで事態は急展開を迎える。

 

なんと、特別艦隊の下で水柱が何箇所も炸裂したのだ。

その内何発かが、艦隊の副艦を務めている戦艦にも命中する。

 

「Ouch!」

 

彼女らの水面下で何発もの魚雷が着弾した反動で、旗艦の北上もうっかり手を離してしまう。

そこへ、横須賀の艦隊の無線から大きな声が聞こえてきた。

 

『イク達が気を引いてる間に、北上ちゃんをボートに引き上げるの!早く!!』

 

声の主は、特別艦隊を尾行していた伊19からだった。

彼女が喋り終わらないうちに、大井が反射的にボートを飛び出す。

そして旗艦の北上をタックルで突き飛ばすと、その下で倒れている、姉であり長年の相棒を引きずっていった。

だが相手も一筋縄ではいかない。敵艦はその様子にいち早く我に返ると、艤装を大井に向けようとした。

だが、脚に取り付けてある魚雷発射器が突如爆発する。

 

「ちぃっ!今度は何さ!」

 

原因を突き止めようと周りを見ると、ちょうど死角だった場所に1人の戦艦が立っていた。

 

「艦娘に通常兵器は効かない。だけどこの銃は特別なの。これ以上は妖精さんも本意ではないだろうから、お互い攻撃するのはナシよ」

 

そこには、コルト・パイソン357マグナムを片手で構えた陸奥の姿があった。

 

 

「北上さん!北上さん!!ねえ、返事して!!」

「北上!」

 

半開きの北上の眼の奥は、光が消えかかっている。

 

「いや…そんな…!駄目、沈んだら駄目よ北上さん!!」

 

大井は悲鳴に近い声を上げる。特別艦隊の北上は、自分に向いている銃口(パイソン)を気にしつつも彼女に問うた。

 

「…大井っちはなぜそいつにこだわるんだい?そいつ以外にも北上はいるじゃあないか」

 

ピタリと大井の動作が止まる。

 

「…」

「そいつが今ここで沈んだって、また建造なりドロップなりして補充したらいいじゃん」

「うるさい…」

「あたしらは兵器であり、消耗品だ。そんなのは分かっ」

「黙れ!!!!」

 

腹の底から叫んだ。それまでざわめいていた深海棲艦も、あちこちに上がっていた水柱も、吹きつける風も、何もかもが止まる。

顔を上げた大井の視線は、目の前の艦娘を射抜くように鋭かった。

 

「お前に…お前なんかに、私達の何が分かる…?」

「…」

「確かに"北上さん"は建造できる。そんなのは分かりきっているわよ。でも、深海棲艦に追われて沈む寸前だった事も、2人で頑張って雷巡になった事も、冴羽さんが鎮守府へ来て喜んだ事も、何もかも…」

 

冴羽さんが好きという一途な想いも、と大井は心の中で付け加えた。

 

「例えあんたや新しくやってきた子は"北上さん"でも、この子が過ごした記憶は持っていない。私や、姉さん達…そして他の子達と一緒に横須賀鎮守府で過ごした思い出は…全部この子だけの物なのよ!!」

 

溢れる涙を止めずに続ける。

 

「…何が同型艦よ。みんなと過ごした時間が自動で共有できるのなら苦労なんてしないわ…。私達は普通の人とは違ってても、魂がある時点で人間と変わらない!例え姿形は似通ってても、この子とあんたは全くの別人だ!!!」

「…」

 

特別艦隊の旗艦はもう反論しなかった。

 

ここで獠は、ある変化に気づく。

ジャケットのポケットが激しく輝き始めたからだ。

 

「な、なんだ…?」

「あら?あらあら?」

 

陸奥が構えていたパイソン、そして彼女の胸の谷間にいた妖精も同じように煌めいていた。

 

「どうした…何が起きてるんだ…?」

「…!」

 

大井は気付く。冴羽さんのポケットの中には…

 

「冴羽さん!今すぐ箱の中身を北上さんの指に嵌めて!!」

「なっ、どういう…」

「いいから早く!左手の薬指よ!!」

 

彼はポケットから箱を取り出し、蓋を開ける。

中には2組の指輪がピッタリと収まっていた。

 

「これを嵌めれば良いんだな…?」

「そうよ!あなたはもうひとつを…」

 

ここで大井の頭の中に、香の顔が一瞬よぎった。

 

「もうひとつを強く握って!」

「こ、こうか?」

「目を閉じて…願って!!」

 

獠は大井の言う通りに眼を閉じる。

すると、彼の握られた左手から強い光が差した。

光はあっという間に周りを包んでいく。

 

 

そして夜明けを迎えた。

 

 

「まぁ、なんてーの?そうねぇ…良い感じじゃん?」

 

強い光がなくなると、そこには再び立ち上がっていた北上の姿があった。

 

「北上…さん?」

「全部聴こえてたよ大井っち。泣かせるセリフをありがとね。…さて」

 

赤面する大井を軽く微笑みながら見た後、彼女はゆっくりと相手の北上を見る。

 

「第二ラウンドだよ、そっくりさん。次は平等に殴り合おうじゃあないか」

 

構えた両手のうち、右手の人差し指をクイクイと動かす。

 

「…面白い事言うね。受けて立つよ」

 

旗艦の北上もそれに応え、武装を全て解除した。

お互いゆっくりと前へ歩み始める。

 

「おいそっくりさん。あんたは何の為に戦うんだい」

「日本を深海棲艦から守る為さ」

「そんな大義名分を聞いているんじゃないんだよ。あんたくらいの立場なら、黒澤が何をしてるか知ってんだろ」

「ん、否定はしないよ。だが艦娘が深海棲艦とツルんでるのを放っては置けないのも事実さね」

「これもあのクソ提督を潰すためだよ。利害が一致している以上は敵味方も関係ないんだ」

「なら…」

 

旗艦の北上は拳を握る。

 

「あんたは何の為に戦う?」

「あたしは…」

 

同じく横須賀の北上も拳を握る。

 

「あたしは…あたしである為に戦う!」

 

2人が同時に飛び上がれば、拳がぶつかり衝撃波が周りへ飛んでいく。

そこからは熾烈な殴り合いと化していた。

フック、カウンター、下段回し蹴り、防御など、あらゆる格闘技を駆使しての戦い。

互いの身体の一部が接触する度に激しく波が立つ。

 

「ははっ、さっきまでの勢いはどうした?あたしを轟沈寸前まで追い込んだにしちゃあ弱いじゃないか」

「ぐっ…言ってなよ。これでも練度はカンストしてるんだ」

「そこが"今のあたしとの差"だよ」

「なっ…」

 

"そっくりさん"が生んだ一瞬の隙。そこを突いた北上は、自分と瓜二つの顔にストレートを叩き込む。

 

そこで決着がついた。

 

北上の渾身の右ストレートをもろに喰らった旗艦は、そのまま後ろへ倒れていった。

 

「ーーー勝負アリだね」

「ぐっ…くそっ…」

 

北上は倒れている艦娘に近づく。互いのつま先がくっつきそうな距離まで来ると、その歩みを止めた。

 

「…なんだよ。沈めるならはやくやっておくれ」

「…」

 

少し前屈みになり、北上は手を伸ばした。

 

「…なんの真似だい?」

「考えてもみりゃ、艦娘同士が戦うなんて前代未聞じゃないか。それこそ沈めたら後味が悪いってもんだよ。それが自分と瓜二つの艦娘なら尚更」

「…」

「だから、ほれ…。最初はあんたが勝って、次はあたし。ここで手を取って喧嘩両成敗といこうじゃないか」

「………ちぇっ。これじゃ特別艦隊旗艦としての立場が無いじゃないのさ」

 

こうして、旗艦の北上は差し出された手を取り立ち上がった。

すると、どこからかパチ、パチと拍手が聞こえてきた。やがてその音は大きくなり、深海棲艦までもが、その咆哮でもって応えていく。

 

「や、や、どうもどうも」

「非常ニ、興味深イ戦イヲ見セテモラッタワ」

 

その声に気がついて後ろを向くと、いつの間にか中枢棲姫が立っていた。

 

「何カヲ護リ抜ク為ノ信念…。戦イハ、攻メルダケデハナイ。私タチモシッカリト学バセテ貰ッタ」

「黙って見ててくれて恩にきるよ。で、どうする?今度はあんたと戦うのかい?」

「ソウネ、ソレモ悪クハナイ。…デモ」

 

中枢は、港湾と北方を見る。

 

「ココデアナタヲ沈メテシマッタラ、コノ2人ヤ、ヨコスカノ怒リヲ買ウ事ニナルカラ、ソレハマタノ機会ニシテオクワ」

「おぉう、ゾッとしないねえ。さすが深海棲艦の中で最強と言われるだけあるね」

「フフ…。震エテ待ツガイイワ。…ソレヨリ」

 

今度は獠へ向く。

 

「アナタノ艦隊、トテモ良イワネ」

「お褒めにあずかり光栄だよ。君が中枢棲姫かい?」

「ソウ呼バレテイル」

「俺は提督の冴羽獠だ。ほっぽちゃんから依頼を受けて、今回の仕事をしていた。よろしくな」

「ホッポチャン…?依頼…?」

 

中枢棲姫は不思議そうに北方を見る。

その視線を受けた彼女は姉の後ろに隠れつつも、もじもじしながら答えた。

 

「ソ、ソノ…。悪イ奴カラ、オ姉チャンヲ守ッテホシイ、ッテ…」

 

ポカンとする中枢棲姫。恥ずかしそうにして姉の後ろに完璧に隠れる北方棲姫を見ていたら、不思議と笑いが込み上げてきた。

 

「アッハ!アハハハハッ!!敵デアルハズノ、深海棲艦ノ願イヲ聞イタト言ウノカ!ヨコスカノ提督ハ!!」

 

どうやら心底可笑しいらしい。だが、それを見た獠もまた、少しだけ笑みを浮かべていた。

 

「まあ、あまりに真剣なこの子を見てね。…心が震えたのさ」

「心…。心、ネエ…」

 

中枢棲姫は獠をまじまじと見つめる。

 

「な、なんだよ」

「サエバ、リョウト言ッタナ。アナタノ名前、覚エテオクワ」

「…ありがとさん」

「ソレカラ…アナタガ追ッテイル組織ノ事ヲ聞イタ。奴ラノ船ヲ見ツケタラ、片ッ端カラ沈メテアゲル」

「…その気持ちはありがたいが、どうしてそこまでしてくれるんだ?」

「簡単ヨ。私タチニモ流儀トイウ物ハアル。敵デアル人間ト取引ヲシテマデ、戦力ヲ補充スル事ハ、ソノ流儀ニ反スルノダ。ソノ愚行ヲ犯シタ深海棲艦モ、見ツケ次第処分スルツモリダ」

 

中枢棲姫の目からオーラが光る。どうやら本気で怒っているらしい。

 

「沈めるにしても、手当たり次第と言うのは提督として納得できないな」

「ホウ…ドウシテ?」

「その中には、もしかしたら艦娘やおたくらの同胞、それになんの罪もない民間人が乗せられている可能性があるからさ」

「フウン…。マア、ソレモソウカモネ」

 

彼女は腕を組むと、しばし考えるそぶりを見せた。

 

「ジャア、コウシマショウ。モシ、ソチラ側ノ人員ガイル情報ヲ掴ンダラ、使イトシテ北方棲姫ヲ寄越ス。アトハ、アナタ達ノ好キニスルトイイ」

「随分と豪勢だ。なぜ、そこまでサービスしてくれるんだい?」

「コノ事案デ、対話ヲ学ンダダケヨ。別ニ、北方棲姫ノ友ダカラ、トイウ訳デハナイカラネ!」

 

ここで中枢はぷいと横を向いてしまった。

 

「「素直じゃないなあ」」

 

2人の北上のひとことで、全員が笑う。

 

「何はともあれ、これでMission completeね!」

「ムッ!もっこりセンサー反応!」

 

獠は声のした方へぐりんと首を向ける。

すると、服からはち切れんばかりの巨乳に星条旗をあしらったニーソックスを履いている艦娘と目が合った。

 

「ぬほほぉ!金髪もっこりちゃんだ!!獠ちゃんとケッコンしてえぇーーーー!!」

「What the…?!」

 

脊椎反射で獠がボートから飛び上がる。だが、あと一歩抱きつこうとした所で、彼女はひらりと避けた。そして獠はそのまま海へとダイブしたのだった。

 

 





いかがでしたか?
最後はシティーハンター らしいオチでしたね(ダイブだけに)

そういえば、ルパン三世の新作が公開されましたね。
銭形と2人のルパン、そして劇場版の不死身の血族…
どちらも観ましたが、とてもいい作品でした。

観に行ってない方はぜひ!(なんの宣伝だ)

さて、大規模作戦編、あとちょっとだけ続きます。
次回もお楽しみに!
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