約1時間かけてようやく1人でフレンジーボアなるイノシシを1人で倒せるようになったカイトは、かなり疲れていた。
「はぁ、オルカ、ようやく1人で倒せたよ。」
「おお!よく頑張ったな!最初はどうなることやらと思っていたが、なかなかやるようになったじゃないか。」
最初はエンカウントして正面切って戦おうとして吹っ飛ばされてただ剣振り回しての繰り返しだったが、後ろに回り込んだり回避をしたりソードスキルを使ったりしながらようやく戦えるプレーヤーとなったのだ。
「んー、疲れた。今日はもうやめて明日頑張ろうかな。」
「この場合の明日頑張るはたいていやらないパターンだぞ。」
「いや、ゲームだからやらなくても死なないよ。」
「それもそうか!」
そんなどうでもいい話をする。
「じゃぁ、僕はやめるね。」
「あぁ、そうだカイト、こういう時は落ちるって言うといいぞ。」
「そうなの?」
「やめるより落ちるの方が聞こえいいだろ。やめるだとゲームやめるに聞こえるし。」
「そうだね、あ、そうだ。このゲームってどうやったらやめられるの?」
「あのなぁお前、大丈夫か?いろいろ。いいか、メインメニュー開いて、ログアウトボタンを押すんだ。ここにある・・・・はずなんだがな。あれ?」
おかしい、いつもの場所にあるはずのログアウトボタンがない。
「どうしたの?」
「いやな、ログアウトのボタンがないんだよ。」
「え!?それって一生ゲームの中ってこと!?」
一生ゲームの中。それはそれで悪くない気がする。そんなことをこの時のオルカは思っていた。
「まぁ、すぐに運営がなんとかするだろ。その間までもう少しやろうぜ?」
「んー、まぁ仕方ないか。もう少しだけやろうかな。」
そんな話をしていると、急に2人の体が鮮やかなブルーの粒子に包まれる。
「あれ?なんだこれ。強制的にログアウトされるのかな?」
「いや、ちがうな。これは多分強制転移だ。集めて事情説明でもするんじゃないのか?」
そして彼らは始まりの街というところへ転移した。
〜はじまりの街〜
僕には何が起こったのかさっぱりわからなかった。
目の前が青くなったと思ったら、またはじまりの街に来ていた。そして空が真っ赤になったと思ったら空から血が滲み出して来て、そして大きなローブを着た顔のない何かになって
『プレーヤー諸君、私の世界にようこそ。』
ローブから低く落ち着いたよく通る男の声が降り注ぐ。
『私は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。』
私の世界?この世界をコントロールできる?そうか、これはゲームの不具合の説明会みたいなものか。カイトは隣にいるオルカに話しかける。
「ねぇオルカ。これって何かのイベントだよね。これでログアウトできるね。」
オルカは黙り込んでいる。何かを必死で考えているようだ。
『プレーヤー諸君はすでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。ゲームの不具合ではなく《ソードアートオンライン》本来の仕様である。』
「仕様?ログアウトできないのが?」
何を言っているのか理解できないカイト。そして何かに気づいて苦虫を噛み潰したような顔をするオルカ。
「なぁカイト、俺はもしかしたらとんでもないゲームにお前を誘ってしまったのかもしれない。」
「え?どういうこと?」
その答えはローブが先に言った。
『諸君は今後、このゲームから自発的にログアウトできない。また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除もあり得ない。もしそれが試みられた場合ー』
わずかな間
カイトを含む10000人が息を詰めた、途方もなく重苦しい静寂の中その言葉はゆっくりと発せられた。
『ーナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる。』
カイトは「何を言っているのかさっぱりわからない」という顔をしている。オルカは「最悪だ」という顔をしている。
数秒間の静かなる間の後、ざわざわと集団のあちこちがさざめく。それはカイトとオルカも同じだった。
「マ、マイクロウェーブ?電子レンジのあれ?」
「そうだ。あれだ。」
「そんな危ないもの頭につけてるんだっけ。僕たちって。」
カイトはナーヴギアを単なるゲーム機器として見ていたため、そんな細かいことは気にしていなかった。最先端のゲーム機。ただそれだけだと思っていた。
「あぁ、まぁ普段はセーフティーが働いてるから脳なんて焼き切られないが。」
数秒間2人は黙り込む
「・・・・もし、そのセーフティーってやつが消えたらどうなるの?」
恐る恐るカイトは質問する。少しの間の後、重い口を開いきオルカは答える。
「・・・・・脳はナーヴギアって名前の電子レンジに蒸し焼きにされる、ついでに言うと電源コード引っ張っても多分無駄だ。このゲーム機の重さの3割はバッテリーだからな。だから・・・」
「・・・・・」
2人を静寂が支配する。そして上空から茅場のアナウンスが再開された。
この後の言葉はあまりよく覚えていない。すでにたくさんのプレーヤーがゲームからも現実からも退場してしまったこと。体の心配はいらず、今頃僕の体は病院へと搬送されたであろうこと。そして、僕たちはこれから最上階まで行ってラスボスを倒さないといけないこと。それだけが頭の中に断片的に残った。
「おい!おいカイト!しっかりしろ!」
「ん?あぁ、オルカ。どうしたの?」
僕は放心状態になっていた。この現実を受け入れられず、頭の中がボーッとしている。
「カイト!大丈夫だ!何があってもお前だけはこの俺が守ってやる!このゲームに誘っちまったのは俺だ!だから!」
オルカは、ヤスヒコはこの時、心の底から後悔していた。自分が誘ったばっかりにカイトをこんな目に合わせてしまった。そんな罪悪感がこみ上げてくる。
「ああ、でも気にしないでくれヤスヒコ。僕は君のことを恨んだりしないよ。僕は僕の意思でゲームを始めたんだ。だから、僕に構わずご自分の道を進んでくれ。僕は僕で色々と試してみるよ。」
「カイト!」
カイトは放心状態だったのが半分自暴自棄になっている。正直このままのカイトを放っておくのは危険だ。バルムンクに事情を説明して3人で行動しよう。何があってもカイトだけは守ろう。オルカはその時固く心に誓った。
『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給へ』
そんなことしてる場合じゃない!今のオルカにとっての最優先事項はカイトを正気に戻すことだった。だからアイテムストレージにあるものを確認しなかった。
しかし突然カイトのアバターを白い光が包む。そして周りも白い光に包まれ、気がつくとオルカも白い光に包まれた。
そして、その光がやむと
「カイト!?!?」
「え?や、ヤスヒコ!?」
見知った顔がそこにはあった。さっきまでのイカツイ男、オルカはそこにはおらず、いつも中学校で見ている自分の親友、ヤスヒコがそこにはいた。
長くなってしまいました。すみません。
友達に誘われて始めたゲームが死んだらリアルでも死ぬデスゲーム。
普通の人ならその友達恨みますよね。
でもたぶんカイト君はそんなことしないんじゃないかなーって。そんなこと思いながら書きました。
こんな駄文を読んでいただいてありがとうございました。
間違いや誤字脱字が多いかもしれませんが生暖かい目で見守っていただけたら嬉しいです。