カルデアにワラキアの夜が召喚される話。 作:赤城@54100
ゲーム本編での会話を大半カットしていますが、地の文で補足できていたらな、と。気になる人は買おう(ダイマ)。
シュライン、最上階。朱い月が空に輝くその場所で、彼らは向き合っていた。
学生服を着た青年、遠野志貴。紫色を主体にした特徴的な服を着た少女、シオン・エルトナム・アトラシア。二人とも全身傷だらけであり、満身創痍といった姿。
そして、もう一人――既にその身は崩壊を始め、首から下は血液を垂れ流しながら崩れていっている死徒――ワラキアの夜……ズェピア・エルトナム・オベローン。
何のことはない。一人の死徒がもたらした、幻影に塗れた夏、虚言の夜が終わろうとしている。それだけのこと。
あとは死徒、ワラキアの消滅を待てばそれでいい。そして新しい朝を迎え、平和な日常に帰ればいい。そのはず、なのに。
「ワラキア、貴方は何故、吸血鬼になったのですか?」
それは、ずっと抱き続けていた疑問。
自分の先祖であるズェピア・エルトナムは、当時のアトラス院の院長を務めた天才錬金術師であった。少なくとも、今の自分より遥かに優れた人物であることは間違いない。
故に。そんな彼が、何故わざわざ吸血鬼などという人類の敵になったのか。
だが、答えなどあるはずもない。彼は、気が触れている。今だって、理解できていないのか不思議なものを見る目でこちらを見つめ返しているだけ。
愚かなことをしたと、自嘲気味に言葉を吐き捨てる。そうだ、彼から、答えなんて聞けるはずが――――
「――――――――それはね、シオン。答えを見たからだよ」
「え?」
優しく、まるで父が子に言い聞かせるかのような声で、彼は言った。
優れた錬金術師ならば、誰でもたどり着ける答え。変えようのない、終わり。未来に避けられない滅びがある――語るにつれて、徐々にまた狂気を帯びていく。
だがきっと、それは彼がそれだけその行いに。滅びを回避すべく対抗策を練り上げ、世界を運営するという目的のために、必死だったということの表れなのだろう。
狂ったように考え続けた。そして、本当に狂ってしまった。
笑い声をあげるワラキア。意味があるのか、それともないのかも分からない言葉を叫び、ゆったりとそれが落ち着いていく。限界が近いというのは、見て取れた。
「ひ、ひひひ、あははははははは! ソウダ、ワタシ、ワタしハ」
そう、限界が近い。だからこそ。
「そウ――計算しきれぬ未来こそガ、欲しかった――――」
その言葉が、偽りないものだと分かって。酷く、痛々しく、悲しかった。
これが、彼の終わり。その後に再演を強制され、脚本を奪われて役者として舞台に上がりこそしたものの、ここで既に終わりを迎えている。
それは決して英雄としてのものではない、打倒されるべき悪のものであった。しかし、彼をただの悪であると断ずるのはまた違うと、世界がそう認識した。本来であればありえなかったその認識が、一つの奇跡を引き起こす。
――人理継続保障機関フィニス・カルデア、その一室である英霊を召喚するためのシステムが用意された部屋にて。
「……それでは、どうぞ先輩」
薄紫色の髪、片目が隠れながらも眼鏡をつけている少女が隣に立つ少女に声をかける。
白を基調とした服に身を包んだ、赤毛の少女が握っていた3つの石を部屋の中央にある魔法陣に設置する。
少女――藤丸立香は、現存している人類最後のマスターであり、未来を取り戻すためにと歴史の歪み――特異点を修復するために活動しなくてはならない。
だが、それには危険が付き纏う。立香の隣にいる少女、マシュ・キリエライトや、一番最初にレイシフトで移動した冬木市において召喚したサーヴァントの二名だけでは心許ない。
そこで、彼女は冬木市にて手に入れた召喚のためのアイテムを利用し、戦力を増やそうと試みている。
願うのはもちろん強者。しかし、同時に、心の支えになってくれるような人であれば、とも思う。
当然だ、素人魔術師である自分に、人類の未来がかかっている。臆するつもりはないし、動かないわけもない。しかし、全く心が揺るがないわけではない。
だから、この戦いに挑む私を支えてくれるような人を――。
「……先輩! 反応、これはサーヴァントで確定です……いえ、これは、それどころか……!」
マシュの言葉に反応し、無意識のうちに閉じていた目を開き、祈る様に組まれていた手をほどく。
バチバチと激しい音をたて、虹色に輝く魔法陣。これは、確か強いサーヴァントが召喚されるときの合図だったかと思い出す。
次いで、更に強い発光が視界を眩ませる。召喚された瞬間の、この魔力が放たれる感覚。一度目に呼び出した彼女よりも強いように感じ、期待のままに回復していく視界にそれをとらえた。
「――キャスター、ズェピア・エルトナム・オベローン。ワラキアの夜、ともタタリとも、君の好きなように呼びたまえ」
バサリと羽織っているマントを翻し、閉じているように思える目をこちらに向けて口を開いた男性。金髪に、やや白いように思える肌。美人、といってもいい系統の顔立ち。華奢ながらも高い身長。そして、耳触りの良い声。
呆然としているように思ったのだろう、彼がフムと一言おいてこちらに近付いてくる。
「さて、君の名を伺いたいのだが。まさか名無しの、というわけでもないだろう?」
フッ、とどこか嘲るような、試すような笑みを浮かべている。ゆっくりと手を伸ばし、彼がこちらに仰々しく伸ばしていた手を掴む。
「藤丸立香、カルデアのマスターで」
そのまま――ガバリと彼の胸元へ飛び込む。
「あなたの未来のお嫁さんです!!」
「先輩!?」
胸元に顔を擦り付ける。かなり良い生地なのだろう、貴族風でもあるその服装はかなり心地の良いものだ。
マシュが叫びをあげているが、気にすることなく続行する。何を隠そう――私は、声フェチであり、どストライクだったのだ。
「――リテイク、やり直したまえ」
なぜか既に満身創痍にでもなったかのような声で、ズェピア・エルトナムが呟いたが――現状の私は動く気などなく、この状況は彼が私を引き剥がす30秒後まで続いた。
シリアスが長続きしない作者です。
うちのぐだ子こと、藤丸立香は残念系です、ええやん残念な子かわええやん。甘やかしたい。