ルーデウス「後悔しないよう生きるために剣神と戦って勝利した」
ガル「魔術師に負けて銀緑にもボコられたけど何か伝授された」
アリエル「アスラ王国に帰ってきました」
お待たせしました。
アスラ王国は似たような展開が多いので巻き気味ではありますが、お付き合いしてくださると幸いです。
別邸へと入り最初に出迎えたのは、燃えるかのような真っ赤な髪をした女性だった。
女にしては背が高く、姿勢もいい。
皮の上着に、動きやすそうな黒のインナーとズボン。
傍からみても十分に鍛え上げられているとわかる肢体を包み込んでいる。
――エリスだ。
彼女は顔も五年前と比べると幼さが抜け、キリリとした美人の顔立ちになっている。
スタイルも成長し、体型も出るとこは出て、引き締まっているところは引き締まっていた。
ルーデウスは一瞬見惚れてしまっていた。
「ルーデウス!」
けれど、彼女は腕を組んで仁王立ちし、口をへの字に曲げて、あごをくっとあげている。
昔と変わらぬその姿にホッとしつつ、同時に鋭い眼光に胸がドキドキし、気付いたら目線をそらしてしまう。
これは恋? などと逸れた思考をしつつ、何と声を掛ければいいか分からず口籠ってしまうのだった。
「おい、ルディ。女を待たすもんじゃねえぞ」
と、そこでパウロに背中を叩かれてしまうのだった。
その衝撃で一歩前に出たルーデウスは、意を決して口を開いた。
「えっと、久し振りエリス。その、随分と綺麗になったね」
「……ルーデウスも、昔よりずっと格好良くなったわ」
エリスは普通に返答したが、その挙動は傍から見て明らかに喜んでいることが分かる。
獣族ではないのに、尻尾を振ってる幻影が見えるほど彼女はソワソワしていた。
その姿に、彼は何故か安心感を覚える。
「……どうして来たのよ?」
少しばかりツンとした言葉に、ルーデウスはキョトンとした表情を浮かべる。
エリスは元々、自分が原因でルーデウスの選択肢を狭めたくないと思い、詳しい事情を伝えず離れたのだ。
再び対面出来たことを喜びつつも、自分のせいで選択を歪めてしまったことに悲しく思っていた。
フィットア領が転移事件で消滅した時、エリスはルーデウスに頼ってきた。
ルイジェルドに怯えていたのを宥められ、道中の指針も任せっきりで、そしてずっと守られてきた。
だからエリスはルーデウスの足手まといになりたくなくて、置いていかれたくなくて強くなろうとした。
別れ際には、自分のワガママで家族を優先して離れてしまった。
エリスはルーデウスに何も返すことが出来ていない。
今だからこそ分かるのだ。当時の自分は迷惑ばかり掛けていたことを。
そして、今回もまたエリスは決着を付ける前にルーデウスに助けられようとしている。
横に並び立ちたいのに、守られてばかりなのが辛かったのだ。
そんなエリスに対して、彼はなんてことないように答えた。
「今更ですよエリス。気にしなくていいんです。俺は俺の意思でここにいるからさ」
アスラ王国にやって来たのは、ヒトガミの布石を潰すためだ。
だが、その目的がなくてもルーデウスは向かっていただろう。
そもそも本来の歴史と違い、彼は誤解などしていないのである。
エリスへの好感度は高いままだし、純粋に好意を抱いている特別な人なのだ。
彼女を助けるためにも、ルーデウスはここまでやって来た。
「手紙でも伝えた通りです。俺はエリスを迎えに来たんです」
「……本当に?」
「エリスは俺のことを褒めてくれるけど、俺はやっぱり1人だと失敗することもあります」
「そんなことないわ。ルーデウスはすごいんだから」
「そんなことあるんです。だからエリスには俺のことを支えて欲しいんです」
そこでルーデウスは一度言葉を区切り、照れくさそうな表情をして告げる。
「だからその、まあ……さっさとこの戦いを終わらせて結婚しましょう」
陳腐な台詞だ。
けれど、誤魔化すことなく真っ直ぐに想いを伝えた。
それで十分だった。
その場にいた皆にも、ルーデウスの意思は伝わった。
「…………」
すぐに気付いたのだ。
ルーデウスはすごい。
そんな彼に自分は置いていかれるかも知れないという不安があった。
けれど、彼は優しいのだ。
先に進んだとしても、ルーデウスは待っていてくれる。
家庭教師の時から、ずっとそうだった。
ワガママで分からず屋で、憤りを当たり散らしていたにも関わらず手を差し伸べ続けてくれた。
昔と一緒なのだ。
今の自分ではまだ相応しくないかも知れないけれど。
それは今すぐでなくていいのだ。
ひとつひとつ、並び立てるように出来ることをやっていけばいい。
「……仕方ないわね! 結婚してあげるわ!」
エリスは嬉しそうに返答した。
――――
「やれやれ、遂に2人が結婚か。長い道のりだったね」
公開プロポーズに、フィリップは表情を緩めながら呟く。
手紙のお陰で結婚の意思があることは分かっていたが、やはりちゃんと言葉として聞くと安心出来るだろう。
「そして、本当の意味で君と家族になるとはね。パウロ」
「うるせえよフィリップ。そのことを考えずにいたのに現実を突き付けるんじゃねえ」
「おやおや、随分と嫌われたものだね。恩返しも全然されていないのに」
「……それを言われると弱いな」
「まあ、いいさ。パウロ、久し振りに会えて嬉しいよ」
「……ああ、オレもだ。こうしてまた会えるとは思ってなかったよ」
フッと笑い合う2人。
そこへアリエルは近付くと、フィリップは右手を胸に当て、少しだけ頭を下げた。
「ご健在でいらっしゃり何よりですアリエル様」
「いえ、貴方の尽力が有ってこその結果です。ここまでよく繋いでくれました」
アスラ王国に入ってから、ここまでの道中で遣いを送る貴族は多かった。
フィリップの根回しにより、第一王子派からアリエルの派閥に寝返ったものが多数いたのだ。
力の失った彼が一体どうやって協力を取り付けたのか不思議かも知れないが、種明かしは簡単である。
リベラルが借りパクしていた甲龍王の紋章を渡していたのだった。
それによってフィリップは、貴族たちの説得に成功していたのだ。
ペルギウスがそのことを知ればガミガミ怒るだろうが、まあいいかとリベラルは能天気に流していた。
どのみち協力してるのに変わりないのだから。
「ここでは人の目に付きます。中へ入りましょうアリエル様」
「そうですね」
そうして別邸の中へと移動し、今後の動きについて話し合う。
状況はこちらに有利とは言え、最後まで油断は禁物だ。
「ダリウスの動きは掴めていますか?」
「剣客として剣神と私の息子のアレクを雇ったようです」
シャンドルの言葉にやはりかと思いつつ、アリエルはその情報に捕捉を付け加える。
「剣神は既に対処済みですので、残るは北神ですね」
「それは……流石です」
一体いつの間にと言わんばかりのシャンドル。
彼は元七大列強であり、ガルの強さを知っているのだ。
だが、アリエル側にリベラルやオルステッドという強者がいるため納得する。
実際に倒したのはルーデウスであると知ると驚愕するが、それはまた別のお話だ。
「こちらが現在寝返っている貴族のリストです。それと、各所にいる味方への連絡は既に済んでいます」
フィリップから報告書を受け取ったアリエルは、デリックと共に中身を確認していく。
今しがた告げられた貴族のリストだけでなく、寝返っている貴族たちの動きまで簡易的に記載されていた。
ご丁寧に寝返った理由まで調べられている始末だ。
脅迫や人質という手段で寝返った者もいれば、単純に賄賂や時勢を読むことの出来ぬボンクラの情報まで選り取り見取りである。
それはアリエルが求めていた情報だけでなく、アリエルが王になった後にも有用な情報だった。
そのことを理解した彼女は目を見開く。
隣にいたデリックも、感嘆のため息を溢していた。
「我々はつくづく味方に恵まれましたな」
「本当ですね。彼が敵でなくて良かったです」
そして一緒に記事を見ていたルークだったが、とある名前を見て少しばかり安心した様子を浮かべる。
その男の名はピレモン・ノトス・グレイラット。
ルークの父親であり、パウロの弟だ。
本来の歴史ではピレモンはダリウス大臣へと寝返ってしまうのだが、ここでは違った。
元々はアリエルがラノア王国への逃亡に失敗したという偽の情報を掴まされたことが原因だったが、フィリップが本当の情報を教えることでその未来はなくなったのだ。
寝返ることもなく、ずっとアリエルの味方のままだった。
その事実に、ルークは安心したのである。
「へぇ、あいつ裏切らなかったのか。意外だな」
ボソッと呟かれたパウロの言葉に、ルークはちょっと嫌な気持ちになるのだった。
「では、後は『場』を整えるだけですか」
「そうですね。そちらはアリエル様に動いてもらわなければどうしようも出来ませんのでお願いします」
場というのは、ダリウス上級大臣を失脚させるための舞台だ。
ペルギウスの要望でもある演出に必要なものである。
場さえ整えば、失脚させるだけの情報と手段をこちらは持ち合わせているのだ。
既に王手飛車取りであり、後一手で詰みのところまで来ている。
ダリウス側がどこまで情報を掴んでいるのか不明だが、こちらがそれを成すだけの手段を持ち合わせていることは理解しているだろう。
場が整うまでの間に総力戦を仕掛けてくることも考えられた。
と、そこでフィリップが一歩前に歩み出て、アリエルの前にしゃがみ込んだ。
「アリエル様、ひとつお願いがあります」
「何でしょうか?」
「アリエル様が王位継承権を獲得した際に、褒美を頂ければ……」
今のフィリップは転移事件の責任を負わされたことにより、全てを失った状態だ。
ボレアスという立場も名ばかりとなり、他の親族や貴族たちに責任を擦り付けられてしまった。
だが、リベラルからの誘いにより、こうしてアリエルを王にするために活動している。
それは全て、かつての権威を取り戻すためなのだ。
だからこそ、ここでアリエル本人から確約が欲しかったのである。
そして彼女はその考えを理解していた。
フィリップが何のために尽力していたかなど、誰にでも分かることだろう。
故に、アリエルはその要求に快く頷くのだった。
「その時には、元の立場以上のものを約束しましょう。この場にいる皆様やペルギウス様の名に誓って」
「――ありがとうございます」
転移事件から既に長い年月が過ぎた。
リベラルの誘いに乗ってから、アスラ王国で息を潜め続けた。
苛烈な戦いや暗殺者にも襲われたし、満足にご飯を食べることの出来ない日もあった。
フィットア領があった頃には、考えたこともない生活を強いられることになった。
とても苦しい時間だった。
けれど、それももうすぐ終わりを迎える。
アリエルの言葉を受け取ったフィリップは後ろへと下がり、傍にいた者たちに顔を向けた。
「エリス、ギレーヌ。後もう少しだけ力を貸して欲しい」
「当然よ」
「当然だ」
嬉しそうでいて、どこか獰猛さを感じさせる表情で2人は頷く。
彼女たちも、ここまで長い間戦い続けたのだ。
フィリップを元の地位に戻すために尽力していた。
ゴールが見えたのだから、気合も入るだろう。
「シャンドルとドーガも、よろしく頼むよ」
「ハハハ、ここまで来たんですから最後までお供しますよ」
「……うす」
気楽な様子で返答する彼らに、フィリップは頼もしさを感じつつ安心する。
ここまで事を上手く運べたのも、この2人がいたことが大きい。
まだ未熟だったエリスを教えつつ、幾度も襲撃を跳ね返したシャンドルの存在は特に重要だった。
彼がいなければ北帝ドーガもこちらに来なかったし、そもそも活動も出来なかっただろう。
口にはしなかったが、深く感謝していた。
「さて、話は以上でよろしかったですか?」
「はい」
「それでは今後の対応について纏めていきましょう」
アリエルの言葉に、皆が視線を向ける。
先ほど言ったように、王手飛車取りの状態から詰みへと持っていくための場の用意から始める必要がある。
第二王女アリエルが、第一王子グラーヴェルを慰労する名目のパーティだ。
それによって全ての貴族を引きずり出すことが出来るだろう。
そしてリベラルが懸念していた王国の騎士と敵対する可能性だが、そちらはあまり心配ないとのことだった。
現時点のアリエルは、何も反逆していないという状態である。
国賊扱いされ騎士が差し向けられることはない。
水帝だとか、水王が出張ってくる可能性は低かった。
「ですので、やはり敵はダリウス上級大臣の刺客でしょう」
北王ナックルガード、北神カールマン。
そしてダリウスを守るであろう水神レイダ。
警戒すべき相手はやはり変わらなかった。
「その戦力だと、パーティ中に総力戦になりますかね?」
ルーデウスの言葉に、アリエルは思案げな表情を浮かべる。
「それは、何とも言えませんね」
「相手はパーティを始められたら不味いと思ってるだろう。フィリップ様が甲龍王の紋章を見せてることを把握しているだろうからな」
「とは言え、レイダ殿が積極的に暗殺者の真似事をするとは思えませぬ。こちらの戦力を考えると、パーティで仕掛けてくる可能性も否めませんな」
ダリウス側も、アリエル陣営の戦力を把握しているだろう。
龍神、銀緑、元北神、北帝、剣王と剣王クラスが1人、獅子王。
ハッキリ言ってまともに戦おうとするのは馬鹿だけである。
この戦力を相手に暗殺出来ると思わないだろう。
こちらの戦力が過剰すぎるため、逆に相手の動きを予測出来なくなっていた。
「でしたら、オルステッド様からの伝言をお伝えしますよ」
と、そこでリベラルが口を開く。
オルステッドとのやり取りを皆に伝えるのだった。
『――北神カールマンは俺が相手をしよう』
『それは構いませんが……因みに理由は?』
『あの男がパーティ会場に現れたら、周囲の損害を考えない可能性があるからだ』
『……つまり、どこか別の場所に誘き出すということですか』
『そうだ。その間、オーベールやウィ・ターはシャンドルに監視してもらうといい』
『もし北神だけでなく闘神が現れたりしても大丈夫ですか?』
『――安心しろ。俺は負けん』
ということだった。
北神が周囲を気にせず暴れ回ることに関して、父親であるシャンドルは否定することが出来なかった。
そのため、仕方ない様子で監視の役割を交代することに同意する。
「北神をどうやって誘き出しますか?」
「あの愚息は果たし状でも叩き付ければ喜んで飛び込んで来ますよ」
「……そうですか」
父親から地味に馬鹿扱いされているが、そういうことらしい。
確かにリベラルの知るカールマンも、結構盲目的な面があったのでそれで問題ないように思うのだった。
「よし、それならギース頼んだぞ」
「おいおい、なにが頼んだぞだ」
「お前なら北神の場所調べて届けられるだろ」
「無茶言うんじゃねえ」
呆れた表情を浮かべるギースに、隣にいたゼニスが口を開く。
「出来る、でしょ、ギース」
「いやいや、乗ってくんなよゼニス」
「出来る、でしょ?」
「……チッ、仕方ねぇな。天才の俺様に出来ねぇ訳ねぇだろ」
「なんだよ、出来るのかよ」
「うるせえ」
とのことで、ギースが北神を誘い出すことになった。
北神を削ることが出来れば、最早ダリウスは出来ることもなくなるだろう。
レイダが暗殺に動くことがない以上、北王1人で何とかすることは出来ない。
戦力でどうすることも出来ないため、パーティ会場で仕掛けるしか選択肢はないのだ。
もしくはパーティを開かれないように工作するかだが……それはアリエルやフィリップの仕事である。
フィリップの仕事のお陰で、味方は既に多くいる以上パーティを開くことは簡単だった。
そうして、こちらの方針が決まるのだった。
――――
パーティ会場の設置は本来の歴史通り、10日ほどが目処となった。
アリエルとフィリップはそれぞれ動き、会場の準備と貴族たちの引き込みを行っていく。
それによって戦力も分散するのだが、元の戦力が過剰なため問題なく経過する。
悪足掻きのように暗殺者が送り込まれたりしていたが、残念ながらこちらの戦力を突破するに至ってなかった。
ルーデウスはどう思ってるか不明だが、少なくとも剣王以上の者からすれば暗殺者は弱い部類だった。
エリスたちは手慣れたように撃退し、パウロたちも問題なく撃退する。
ヒトガミから情報をもらったのかトリスティーナを狙ったり、彼女の実家を狙うようなこともあったが、そちらも対処されてしまう。
ダリウス陣営が刻々と追い詰められているのがよく分かる光景だった。
因みに、捕虜となっていたオーベールたちはもう割り切ったのかシャンドルと談笑しているのであった。
「まあ、某は元々雇われの身ですからなぁ。この状況から巻き返そうとするほどの執念はあらぬよ」
「我もいい加減諦めた。師匠もいることだからな……」
「ハッハッハ、それで良いのですよ2人とも。生きていればいくらでもやり直す機会はありますよ」
腕は封印されているが、とても気楽そうな様子である。
オーベールに至っては、知らぬ間にエリスと多少は話す仲になっているのだった。
ルーデウスもたまに会話しているが「……と…ゆだんさせといて…ばかめ…死ね!!!」というような不意打ちを警戒してビクビクしていた。
その光景をパウロに馬鹿にされるのだった。
そんな調子で5日ほど経過した時、ようやくギースから報告があるのだった。
「北神に果たし状を渡してきたぜ」
「おう……本当に渡せたのかよ。すまん無理だと思ってたわ」
「俺様を見くびるんじゃねえ。この程度余裕だぜ」
「そうかそうか」
サル顔でドヤ顔するギースはそのまま放置され、パウロはリベラルへと顔を向ける。
「果たし状は無事に届けたぞ」
「ありがとうございますパウロ様、手柄ですね。では、ギース様はそのことをオルステッド様に伝えて下さい。お願いします」
「それはいいけど何だよ今の下り。俺の手柄じゃねえのかよ?」
「気のせい、よ、ギース」
「いや、気のせいじゃねえだろ」
「気のせい、よ」
「…………」
どこか釈然としない様子のギースだったが、結局オルステッドへと報告に向かうのだった。
――――
報告を受けてから次の日、オルステッドは町外れの場所にいた。
リベラルたちにも告げたように、北神と戦うためにこの場に来たのだ。
もちろん、北神がノコノコと1人でやってくる確証はないものの、来なかったところで問題もない。
その時は戦いの場が別の場所になるだけである。
逆に他の戦力を連れてくる可能性も勿論あったが、並大抵の戦力ではオルステッドの呪いの前に立ちはだかることすら出来ないだろう。
そうして待つことしばらくして、遠方から1人の男が歩いてくることを視認する。
背中に一本の大剣を背負った、一人の少年。
北神カールマン三世。
アレクサンダー・ライバック。
彼はゆっくりと歩み寄り、オルステッドとの距離を空けると背中に背負っていた剣を引き抜き口上をあげた。
「我が名は北神カールマン三世! 呪われし悪神、オルステッドを倒し、英雄となる者だ!」
「…………」
予想はしていたが、本当に1人でやってきた北神に呆れつつ、オルステッドは冷静に彼を見据える。
その上で、過去のループでの情報と今の彼の情報を擦り合わせていた。
(……今の北神ならば、問題はないか)
オルステッドは本来、戦いの場に出ないようにする必要がある。
ループの代償に、魔力の回復速度がほぼ無いに等しいからだ。
そのため、魔力を使用した戦闘は避けなければならない。
それでも彼が北神との戦いの場に来たのは、“魔力を使用せずに勝てる“と考えたからだ。
北神の持つ大剣――王竜剣カジャクト。
それを相手に、オルステッドは素手で勝つつもりだった。
もちろん、リベラルも反対した。
得られるメリットが少ないからだ。
しかし、オルステッドはここで北神を叩き潰し、彼を屈伏させる道を選んだ。
結局、リベラルはその決定に従うのだった。
それは何故か。
彼女は誰よりも知っているからだ。
龍神オルステッドが――最強であることを。
そして、戦いが始まる。
本来の歴史では語られることのなかった、北神との対決。
そしてそれは、北神カールマン三世アレクサンダー・ライバックに圧倒的な絶望を齎すことになるのだった。
誤字報告、評価、感想、いつもありがとうございます。
Q.エリス。
A.原作通り結婚。形は少しばかり違えど、ルーデウスの運命によって決まっていました。特に誤解もないのでスムーズです。
Q.ギース。
A.優秀な人材を貶していたヒトガミはアホだった。
Q.ダリウス。
A.無理だよこんなのぉ!勝てるわけないんだ!
Q.オーベール。
A.義理堅いので約束は果たします。ここから逆転負けでもしない限り味方になることが確定した。ついでにヴィ・ターも。
Q.アレクサンダー北神くん。
A.銀緑か龍神、どちらかと戦うことを望んでいたため、ホイホイ釣られた。原作同様、英雄だった父親を超えることに妄執しており、固執していたためサシで戦えることに喜んでいる。なお。
Q.オルステッド。
A.絶対強者。