無職転生ールーデウス来たら本気だすー   作:つーふー

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前回のあらすじ。

リベラル「ヒャッハー!約束果たして最高にハイだぜぇ!」
ルーデウス「鍛錬でボコボコにされた」
オルステッド「手合わせで一撃入れられたけど勝ち越した」

本編で読んでも探している描写が見つからない時、ウィキの方を頼ることがあるんですけど、ウィキが間違えてたら悲惨なことになりますよね…。
今回は平和なお話です。


2話 『研究成果と今後』

 

 

 

 とある研究室。

 そこにリベラルはやってきていた。

 コンコン、と扉をノックする。

 しばらくすると、奥から声が響くのだった。

 

「入って構わないぞ」

「では、失礼します」

 

 扉の中へと入れば、そこにいるのはクリフだった。

 彼の研究室は比較的整頓されており、特に散らかっている様子はない。

 パッと見でどこに何があるのか分かるほどだ。

 クリフは椅子に座りながら、リベラルの方へと向いていた。

 

「相変わらず綺麗にしてますね。私も見習うべきではあるんですけど」

「資料を探したり、試作品を失くしたりしたくないからな。整理しておく方がいいだろう」

「あはは、ごもっともです。私は作ったものを失くしたことがあるのでぐうの音も出ませんよ」

 

 クリフと会話をしながら、彼の研究室へと入る。

 この場にエリナリーゼはいない。

 彼女は生まれてきた子ども<クライブ>の子育ての真っ最中だ。

 リベラルと違い何人もの子どもを生んで育てた実績のあるエリナリーゼなら、1人でも問題なく出来るだろう。

 なのでここではクリフと2人っきりとなるのだった。

 

「ふふ、2人きりだね」

「誤解を招くような言い方は止めろ。それに後からルーデウスとザノバも来るだろう」

「そんな、4人でなんて……恥ずかしいです」

「以前と比べて吹っ切れすぎだろ!?」

 

 もちろん、リベラルにその気はないし仮にそんな雰囲気になったら撤退する。

 流石の彼女もエリナリーゼを怒らせる真似はしない。

 

 今回クリフの研究室へとやって来たのは、お互いの研究に対する成果の報告と助言が目的だ。

 クリフはエリナリーゼの呪いに対して。リベラルはオルステッドの呪いに対して。ルーデウスとザノバは魔導鎧に対してである。

 本来の歴史通り、彼らはリベラルが何かを言わなくても順調に制作しており、前回の報告時では特に問題はなかった。

 なのでリベラルとしても別に緊張する必要もなく、比較的リラックスしながら傾聴出来るものだった。

 

「どうします? 先に初めておきますか?」

「そうだな。履き心地についての意見だけ先に聞いておこうか」

 

 そうして渡されるのはオムツだ。

 これはクリフの趣味とかそういうのではない。

 エリナリーゼの呪いを抑えるために作っていた魔導具である。

 エリナリーゼの呪いは、体の中に魔力がたまり、それを男の精を受けることで結晶化させる。もし男の精を受けなければ、魔力が肥大化しすぎて死んでしまうというものだ。

 より具体的に言えば、排卵された卵子が魔力として溜まり、月経として外に排出することが出来なくなる。

 オムツの効能は、魔力化した卵子の中和である。

 それによって魔力が溜まることを防ぐ仕様なのだ。

 

 とは言え、オムツを常日頃から履くのは色々と不便だろう。

 蒸れやすいしゴワゴワしているし、なによりダサい。それに数も少ないし不衛生になりやすいだろう。

 そのため、呪いだけでなく純粋な機能性もクリフは高めていたのである。

 今回はその履き心地を確認するため、リベラルが装着することになった。

 

「では、少し失礼します」

「ああ」

 

 別室に移り、彼女は下着の上にオムツを装着する。

 そうしてクリフの前へと戻って部屋の中を歩き回るのだった。

 

「んー……以前よりも通気性が高まってるので暑い日は少しマシになりそうですね。ただやはり動くと股が擦れて痛くなりそうです」

「そうか。大きさや生地に関してはしばらく課題になりそうだな……ありがとう、助かった」

「いえいえ、こちらこそエリナリーゼのことをいつもありがとうございます」

 

 そんな会話をしつつ、リベラルはしばらくオムツを装着したまま過ごす。

 時間経過しても特に不快感を感じることもなかったため、その感想を伝えたところでルーデウスとザノバがやって来るのだった。

 

「お待たせしましたクリフ先輩」

「気にしなくていい。こちらはこちらで進めていたから問題はないぞ」

「やっほー、ルディ、ザノバ、調子はどうですか?」

「中々好調ですぞ。ジュリの方も順調に教育が進んでおりますし、魔導鎧だけでなく自動人形の方にも手が伸びておりますな。はっはっは」

 

 言葉通り、普段より上機嫌な様子のザノバ。

 仕事だけでなく、趣味も充実してるのならば何よりだろう。

 リベラルとしても、彼の手掛ける自動人形には興味のあることだ。

 なにせ、彼女もまだ深く学ぶことの出来てない分野である。

 狂龍王カオスの技術を独学で辿っているザノバは、間違いなくその分野に対しての才能を持ち合わせているだろう。

 新たなる後継者と言っても過言ではない。

 

「人形の方はどんな感じなのですか?」

「今はボディの方の仕組みも解明出来ましてな。後もう少し研究を進めれば自動人形の作成が出来そうでございます!」

「それは……楽しみですね。余裕があれば私もお手伝いしてもいいですか?」

「おお、先生の力を借りれるのならば研究も飛躍しそうですな!」

「ふふ、あまり期待しないで下さいね?」

 

 ザノバの自動人形に関しての話は、一度そこで打ち切る。

 彼の人形は今回の話の主旨ではないからだ。

 

「と、ちょっと待ってて下さいね」

 

 タイミングを見て別室へと離席したリベラルは、履いていたオムツをいい加減に脱ぐ。

 少しだけ蒸れてきて不快感があったため、そろそろ返品したくなったのだ。

 戻った彼女は、オムツをクリフへと渡すのだった。

 

「ク、クリフ先輩、絵面やばいですって……」

「エリナリーゼに見られたらキレられちゃいそうですね」

「いや、どうだろ……あの人なら逆に誘って来そうな気もするけど」

「それ以上は止めろ! オムツはもちろん処分するに決まってるだろ!」

「まあまあ、そんなに焦らないで下さいよ。別に直履きした訳でもないので好きにしてもらって構いませんよ?」

「好きにする訳ないだろ! 僕は敬虔なるミリス教徒だぞ!」

 

 少しおちょくると、クリフは叫びながらオムツをゴミ箱へと投げ捨てるのだった。

 オムツに刻まれた魔法陣は再利用出来るのに、それに気付かぬほど必死の拒否である。

 ゴミ箱に捨てられたオムツを見て、それはそれで複雑な気持ちになるリベラルであった。

 

(それにしても、リベラルはリニアみたいになってきたな……)

 

 そして楽しく笑いつつも、ルーデウスにそのように思われているとはつゆ知らず。

 彼の中では、リベラルとリニアの行動は同程度に認識されるという不名誉なことになっているのであった。

 

「まあ、気を取り直して……クリフのオムツは既に相応の効果があるんじゃないですか?」

 

 コホンと咳払いをひとつし、リベラルは完成状況について尋ねる。

 履き心地はともかく、実際に刻まれていた魔法陣を確認していた彼女は、その完成度の目安も把握出来ていた。

 実際に履いた上で魔眼を使用し自身の体内を確認したのだが、間違いなく卵巣などの生殖器への影響を与えていたのだ。

 魔力の流れも確認したところ、不自然になり害を与える様子もなかった。

 

「ああ、リーゼに履いてもらってるけど、魔力の補給もなく1ヶ月以上呪いの効果が見られていない。今も記録を更新中だ」

「流石ですねクリフ先輩。それはもう実質完成したと言っても過言じゃないのでは?」

「いや、耐久面の問題もあるからな。リベラルから指摘されたけど、やっぱり衛生面の問題もあるからコストカットした上で量産出来るようにしたい」

「魔法陣をスタンプのようにオムツ以外のものに写生は出来ないのですか?」

「オムツである必要は確かにないんだが、腹部に密着していないと十分な効果が得られないんだ」

「となると、やはり履くものが望ましそうですな」

 

 話としては上記のものが挙がっていた。

 とは言え、効果に関してはほぼ呪いの無力化までは漕ぎ着けている段階である。

 自身でどうにかすると宣言したクリフは、見事に有言実行したのだ。

 リベラルは素直に関心し、彼の能力を称賛するのだった。

 

「魔導鎧の方はどうでしょうか」

「既に小型化に成功している『二式』を改良し、クリフ先輩も着用出来るほど使用魔力量の削減には成功してますよ」

「おお!」

「ですが、やはり魔物を相手するのがやっとでしょうな。余が殴れば数発程度しか持ちませんでした」

「まあ、ザノバが神子であることを差し引いても、剣神流とかの一撃には耐えられそうにないです」

「んー、まだまだ課題がありそうですね」

 

 クリフとは違い、魔導鎧は本来の歴史よりも作成が遅れている状況だった。

 原因は純粋に魔導鎧を活用する場面が少ないからだ。

 オルステッドやリベラルも有用性を告げているが、今のところ魔導鎧を必要とするレベルの敵と遭遇していない。

 それに、オルステッド曰く今の時代の敵はほぼ片付いているため、今後も使う可能性が低いのだった。

 そのため、決戦用の『零式』ももちろん作られていなかった。

 

「少し行き詰まっているところがありましてな……」

 

 と、ザノバは持ってきていた魔導鎧二式を目の前に置き、皆に助言を求める。

 クリフやリベラルは解体され術式の刻まれた部品を見て、それぞれ意見を出し合うのだった。

 そうしてそれなりの時間を掛け、問題点を整理して改善すべき点をまとめ上げた。

 ザノバは嬉しそうに表情を柔らかくし、それらの内容をメモしていく。

 

「やっぱり他の意見もあると捗りますね」

「まあ、そのためにもこの場を設けていますからね。分からないことはじゃんじゃん聞いていきましょう」

「では、リベラルさんのパンツの色を教えてもらえれば……」

「今日は黒ですよ」

「……なるほど、中々大人っぽいのを履いてますね!」

「うっふん」

 

 セクシーポーズを見せるリベラルに対し、やっぱりリニアみたいになってきたな、とルーデウスは思うのだった。

 

「以前に話していた零式にも手を付けるべきですかな?」

「今のところは最初期のものである一式で十分でしょう。流石に闘神とかと戦うのは不安がありますけど、七大列強の下位陣と戦うなら問題ないです」

「それ、毎回思うんですけど本当に言ってます?」

「状況によって勝敗が傾くことがあるので絶対に勝てるとは言いませんが、拮抗する程度には戦いになるでしょう」

 

 リベラルの発言に、彼は微妙な表情を浮かべる。

 実際に七大列強<アレクサンダー>と手合わせを何度もしているが、今のところルーデウスは負け越しているのだ。

 確かに勝負になっているが、それだけという印象を拭えなかった。

 

「そもそもルディは魔導鎧も無しに剣神を退けてるじゃないですか」

「いやまあ、それはそうなんですけど……あれは偶々というか運が良かっただけですって」

「偶々だろうが貴方は生死を掛けた戦いに勝利した――それが結果ですよ」

 

 リベラルとしては、逆に自身を過小評価し過ぎなんじゃないかと思っていた。

 剣士殺しとも言える魔術を初見で使ったとは言え、ルーデウスは完全に剣神の生殺与奪権を握ったのだ。

 この世界でそれを出来る存在なんて、数えられる程度しかいないだろう。

 傲慢になれとは言わないが、せめて自信を持って欲しかった。

 自信があるのは精神的にも安定し、勝敗を上げることに繋がるのだとリベラルは考えているからだ。

 手合わせとはまた違うシチュエーションであれば、魔導鎧を装着したルーデウスはきっとアレクサンダーにも劣らぬだろうと思っていた。

 

「取りあえず、いつでも召喚出来るようにしておけば窮地は切り抜けられるでしょう」

「……分かりました。リベラルさんを信じてますので負けたら恨みますね」

「構いませんよ。そんなことにはならないでしょうし」

 

 そんなこんなで、魔導鎧に関しての発表は以上となる。

 そもそも今のルーデウスは、魔術師として魔神ラプラスの次に強いとも言える練度に至っているのだ。

 彼が窮地に陥ることは、リベラルだけでなくオルステッドも無いだろうと太鼓判を押していた。

 

 因みに、本来の歴史で登場したガトリング砲についても搭載済である。ショットガンの方も搭載しているし、吸魔石も装備されている。

 

「じゃあ、最後の報告は私ですかね」

 

 リベラルの成果を見るには、彼女とルーデウス以外の人物が必要となる。

 そのため、オルステッドの呪いの影響を受けるザノバとクリフの存在は必須だった。

 彼らは立ち上がり、研究室から退出していく。

 向かう先は、当然ながらオルステッドの元だ。

 以前に少し触れたが、アイシャとリニアの手腕によりオルステッドコーポレーションは設立されている。

 そのため、既に出来上がった事務所の中へと入り、彼の部屋まで向かうのだった。

 道中ですれ違ったオーベールやアレクに挨拶をしつつ、リベラルたちはオルステッドの部屋をノックしてから入った。

 因みにオルステッドへのアポは済んでいる。

 

「来たか」

「うっ」

「むぅ……毎回慣れませんな……」

 

 中へと入れば、クリフとザノバは顔を顰めた。

 呪いの影響によって、強制的にオルステッドへの印象が塗り替えられてしまう。

 それでも暴れ出さず、何とかこの場から立ち去りたい気持ちを彼らは抑えつけた。

 

「お疲れ様です社長。試作品持ってきましたよ」

「そうか」

「自信作ですよ。3つあるので取りあえずひとつずつ着けてみて下さい」

 

 そうしてリベラルが最初に渡したのは、ゴツゴツとしたネックレスだ。

 ネックレスにはびっしりと文様が刻み込まれており、遠目から見ると呪われた代物にすら見えた。

 

「それは別の呪いが込められた装飾品です。社長の呪いを別の呪いに上書き出来ないかな、と思い作りました」

「ほう、どのような呪いが込められているのだ?」

「ブサイクになる呪いです」

「ブサ……なに?」

「嫌悪されるというワードから繋ぎ合わせました。きっと成功するでしょう」

 

 自信満々な様子のリベラルに、オルステッドは困った表情をしながらも渋々受け取る。

 そして、ネックレスを首に掛けるのだった。

 

 その効果は劇的だった。

 恐怖と何とか戦っていたであろう2人の表情は、スッと落ち着いていく。

 けれど、反応としては微妙なものだった。

 

「これは……確かに先程までの威圧感はなくなったが……」

「ふむ。余はまあ、そこまで気になりませんな」

「いやいや、これは流石に気にすべきだろう……」

 

 人形狂いであるザノバは平然とした様子だが、クリフは狼狽えた表情である。

 ルーデウスがどのように見えているのか尋ねると、彼は遠慮がちに小さな声で答えるのだった。

 

「その……太ったヒキガエルのような男に見える……それも脂でギトギトな感じだ……」

「ヒキガエル……そうか……」

 

 オルステッドはめちゃくちゃ嫌そうだった。

 恐れられることに慣れていても、気持ち悪がられることには慣れていないらしい。

 リベラルは堪え笑いしながらオルステッドの肩を叩いている。

 彼は無言でネックレスを外し、リベラルへと渡すのだった。

 

「良いじゃないですかヒキガエル社長になれば。私やルディは気にしませんよ?」

「それはお前たちが呪いの影響を受けないからだろう……」

「ふふ、じゃあ次は先ほど同様に嫌悪から繋いで作った、臭くなるネックレスを……」

「もういい。どうなるのか結果は分かった」

 

 素気無く断るオルステッドに、彼女は残念そうにしながらも大人しく引き下がる。

 嫌悪という呪いを引き剥がすには、同様のワードから関連させる方が容易に塗り潰せるのだ。

 元の呪いの力が強すぎたため、別の呪いに転換させても影響が強すぎるようだった。

 そのためこの方面からのアプローチは無理そうだな、とリベラルは考える。

 

「では、最後に本命のこちらをどうぞ」

 

 彼女は3つ目の試作品として、自身が着けてるものと似た腕輪を渡す。

 

「……これはどういったものだ?」

「オルステッド社長の呪いは、魔力を認知することで影響を与えるものです。なのでこれは、魔力そのものを薄める効果のものになります」

「魔力を薄める? それは戦闘には影響はないのか?」

「薄めると言うのは比喩みたいなものです。厳密に言えば、体外に出た魔力を洗浄するだけですよ」

 

 例えるなら、空気清浄機のようなものだ。

 リベラルが説明したように、排出された魔力を綺麗にする効果を持っている。

 完全に呪いを打ち消せなくても、これならば十分な効果を得られるだろうと考えていた。

 

 説明を聞いたオルステッドは、取りあえず先ほどのようなことにはならないと判断して装着した。

 

「おっ……凄いな。オルステッド……様の印象が凄く変わったぞ」

「確かに……先ほどまでは恐ろしい怪物に見えてましたが、今はそのように感じられなくなりましたな」

 

 効果はかなりのものだった。

 呪いにより緊張していた2人は、一気に肩の力が抜けた様子となる。

 先ほどのようにマイナス面の影響もなく、今のところは上々な成果と言えよう。

 

「俺は分からないんですけど、何か問題点はありそうですか?」

「ああ、顔がちょっと怖いくらいだな」

「……クリフ先輩、オルステッド様の顔が怖いのは元からです」

「なに、そうなのか? す、すまない、眼光が鋭かったからつい……」

「睨んでる訳ではないらしいので、気を悪くしないで下さいね」

「…………」

 

 クリフの言葉に、オルステッドはどこかションボリした様子だった。

 

 それからしばらく効果の確認をしたが、日常生活はほぼ支障なく過ごせることが確認出来るのだった。

 クリフの発言通り、周囲に少しだけ威圧感を与えている程度だ。

 現代で例えるなら、街中で刺青の入った厳つい男を見かけたくらいの反応だろうか。ちょっと避けたくなる感じだ。

 一度オルステッドと共に街を周ってみたが、呪いの影響によって恐怖まで至る者は皆無だった。

 街の人々やオルステッドコーポレーションの社員と会話している時の彼は、今まで見たことがないほど穏やかな表情を見せていた。

 

 もちろん良いことだけでなく、問題点もある。

 彼が僅かでも龍聖闘気を纏うと、呪いの影響が出てしまうのだ。

 魔力の出力が上がることで、魔力清浄の機能が追い付かなくなるらしい。

 闘気は魔力で身体を覆い身体能力を爆発的に上昇させる技術であるため、僅かながら魔力の消費をしてしまう。

 そのため、魔力を節約するため彼は常日頃から龍聖闘気を纏っている訳ではなかった。

 それによって呪いの影響がないタイミングは、オルステッドが無防備であることを示してしまうという問題が発生したのだ。

 

「この程度なら問題あるまい」

 

 オルステッドはそう言うが、リベラルとしてはもう少し改善したいところだった。

 

 ひとまず、彼の呪いに関しては以上の結果となる。

 十分すぎるほどの成果だろう。

 リベラルは後ほど制作方法を記した資料を渡すのだった。

 互いの研究内容の意見や共有も満足できる結果であり、そのままクリフとザノバは解散することとなった。

 

 残されたのはオルステッドとリベラル、ルーデウスの3人だ。

 ルーデウスが残ったのには理由がある。

 彼はヒトガミと戦う者として、今後のことについて気になっていたのだ。

 

「最近は大したことはしてませんけど、嵐の前の静けさだったりしますか?」

 

 ルーデウスは将来の布石のために行動していたが、アスラ王国の一件以来は特に活動をしていなかった。

 彼にはあまり危険なことをさせない話になっているが、リベラルも活動している様子がなかったのだ。

 だからこそ、オルステッドの呪いをどうにかする道具を作ったり、鍛錬に身を費やす時間があったのである。

 最近布石のために動いているのは、オルステッドだけなのだった。

 

「安心するといい。ラプラスの復活位置を固定できたことで、布石の多くが必要なくなっただけだ」

「それならいいんですけど……」

 

 オルステッドがヒトガミを倒す上で一番障害になるのは、魔神ラプラスの存在である。

 しかし復活位置を特定出来る状態にしたことで、その心配はなくなった。

 もちろん念のための布石を敷いてはいるが、現状はオルステッドだけで手が足りるのだった。

 

「俺がもうひとつ気になってるのは、闘神のことです」

 

 オルステッドの話では、今の時代の脅威はほぼいないとのことだった。

 だが、リベラルから未来で起こり得た出来事の共有はされている。

 2人がいないタイミングで闘神が現れたとき、ルーデウスは対処出来るのかという不安があったのだ。

 

 それに対し、オルステッドは難しそうな表情を浮かべる。

 

「闘神については未知数だ。奴が動いたのは今回が初めてだからな」

「……では、後手にまわらざるを得ないということですか?」

「否、そういう訳でもない」

 

 それはどういうことなのかと尋ねる前に、隣にいたリベラルが口を開く。

 

「闘神バーディガーディは私が対処する予定です」

「リベラルさんがですか?」

「ええ、あの男とは因縁がありますからね。私が戦いたいんです」

 

 そう告げる彼女だが、ルーデウスはそれだけで納得する訳でもない。

 聞きたいことは他にもあるのだ。

 

「でも、どこにいるのか分かりませんよね?」

「そうですね、どこにいるのかは分かりません」

「じゃあ……」

 

「ですが――どこに現れるのかは分かります」

 

 その言葉に、ルーデウスは口を噤んだ。

 

「バーディ陛下との付き合いは長いですからね。だから、何となく分かるんですよ」

「経験則ですか」

「あの時……第二次人魔大戦と同じです。今のバーディガーディは、闘神鎧の浸食に堪えながら身を潜めている」

 

 ヒトガミは現状、駒のほとんどを失っている。

 逆転の一手は覆され、更に北神やギースという手駒は寝返ってしまった。剣神もどこかに立ち去った。

 闘神を無意味に失うことを恐れ、動かすことも出来ていないのだろう。

 結果としてバーディガーディは誰とも戦うことなく、闘神鎧という正気を蝕まれる装備と戦うハメになっている。

 不死魔族や魔眼が効かないという特性もあり、長期間正気を保っているが……それも時間の問題だ。

 

 バーディガーディは、第二次人魔大戦にて正気を失い恋人であるキシリカを自らの手で殺めているのだから。 

 

 

「バーディガーディが正気を失う時――彼はきっとキシリカの元に向かうでしょう」

 

 

 それがヒトガミの元についた魔王の末路だった。

 誰とも戦うことなく、鎧に意識を乗っ取られて恋人を再び殺める。

 酷い話だろう。利用されるだけされて、そして捨てられてしまうのだ。

 

「じゃあ、キシリカのところに行けばいずれやって来るってことですか」

「そうなります」

 

 結局なところ、ルーデウスの心配は無用なものだった。

 今のバーディガーディに、こちらを襲撃する余裕はないのだ。

 キシリカは魔大陸から出られないため、決戦の場は彼女の元になるだろう。

 

「……リベラル」

 

 そこで声を掛けるのは、オルステッドだった。

 彼は事務所に保管していた大剣――王竜剣カジャクトを示しながら、問い掛ける。

 

「必要か?」

「いえ、不要です。その剣は強すぎます」

「……ふっ、そうか。目的を変えるつもりはないということだな」

「そうですね、私たちの目的はあくまでもヒトガミです。闘神ではありませんから」

 

 かの剣ならば、リベラルの呪いを上回り破損することもないだろう。

 だが、王竜剣カジャクトは言葉通り強すぎるのだ。

 恐らく彼女が使えば、労することなく闘神に勝てるだろう。

 しかし彼女は魔龍王の娘であり、ヒトガミに勝つための技術を研鑽し、模索していくことが役目なのだ。

 王竜剣に使用して戦うのは、ヒトガミとの決戦か全ての限界まで行き着いた時でしかない。

 

 

「――闘神に勝てるか?」

 

 

 故に、オルステッドはその質問をした。

 彼らは共有してるのだ。

 過去にバーディガーディに敗北し、そして未来でも闘神に敗北した。

 2度の戦いを得て、リベラルはまだ勝利していない。

 あまりにも苦い事実だ。

 

 彼女の脳内に、過去の記憶が蘇る。

 

『私は…もう負けませんから……だから、許して下さいお父様』

『――今度こそ勝ちましょう』

 

 ぎゅっと、自然と力が入る。

 必ず誓いを守らんと、リベラルは宣言した。

 

 

「――勝ちます」

 

 

 そのために、彼女は生きていたのだから。




推敲、見直し無しです。誤字あったらすみません。

Q.研究成果。
A.作中通りの進行速度。本編の時期で言えば、ザノバ編くらいです。子どもが生まれる時期とかも色々ズレてますが、特に影響のない範囲で収まってる。

Q.ルーデウスの魔導鎧。
A.今回では過剰戦力となりつつある。ガチガチに対策されたときの切り札で使うかなぁ、くらい出番がない。ルディの素の実力が老デウスと良い勝負出来るくらいになっているため。

Q.オルステッドの呪い。
A.呪いのスペシャリスト、リベラルの手によって本編よりもずっと呪いの効果が薄くなった。仮にここから失敗しても、オルステッドは呪いに悩むことはなくなる。

Q.バーディガーディ。
A.独自設定。本編で明言された気がしたが探しても見つからなかったので、wikiとか解説動画頼ってみた。結果、バーディガーディは正気を失ってキシリカを殺したということと、正気を失いつつも想い人を考えることでキシリカの元に行ってしまうという感じになった。
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