リベラル「にっちもさっちも行かへん、どないしょ」
ロステリーナ「家族会議したらええやん」
リベラル「流石やな!ほなそうしよか!」
ラプラス「感想欄の丸パクりじゃねーか。横着すんなし」
予定より早いですが、改訂前の作品を別の場所に移しました。改訂前の作品を見たい! という方は、私のページから行ける…のでしょうか?
その辺りのことはよく分かりませんが、チラシ裏に投稿してますので、チラシ裏から原作を検索すれば見れると思います。
互いのことを話し合おうと決めてから、リベラルはタイミングを計ることにした。
人は誰しも、一人になりたい時というものがある。あまり変なタイミングでラプラスの元に行っても、追い出されてしまうかも知れないだろう。今のラプラスはナイーブなので、あまり近寄らない方がいいかも知れない。
そう考え、機を合わせることにしたのだが、
「何言ってるのですか! そんなことをしていたら、ずっと話せないままお婆ちゃんになりますよ!」
なんてことをロステリーナに言われ、背中を押されながら無理矢理外へと引っ張り出された。
とは言え、彼女の言ってることはもっともだ。正にその通りである。大袈裟だとは思うけど。
機会を計ると言いながら、ズルズルと意味のない言い訳をし、結局顔を合わせることすらしない。リベラルがへたれる可能性は、残念なことに十分あった。
「ラプラス様の好きな食べ物や好きなことを教えますから! リベラル様はちゃんと仲直りしてください!」
「あ、はい」
「今からここにラプラス様を呼んできますから、リベラル様は絶対に逃げないで下さいね!」
「あ、はい」
「絶対ですよ!」
「あ、はい」
世話焼きっ子だ。将来はいいお嫁さんになるな。
てか、何で娘の私より父親のことを把握してるんだ。
リベラルがそんな場違いな感想を抱かれてるとは露知らず、ロステリーナは元気よく家の中へと駆け出して行った。
それから少しすると、先程のリベラルのように、背中を押されながらラプラスが外へと出て来た。
「早く早く! こっちですラプラス様!」
「どうしたのだいロステリーナ? 理由も告げずに外に出て欲しいとは……」
目が合った。
「…………」
「…………」
互いに言葉はない。
嫌な沈黙が場を包み込む。
けれど、その空気を読まず、ロステリーナはニコニコと明るい笑顔を浮かべ、
「では、仲直りしてくださいね!」
なんてことを言い、ない胸を張りながらその場で止まっていた。
その様子を見たラプラスは、溜め息を溢す。まるで、余計なお節介を、と言いたげな表情だ。
「ロステリーナ。少し席を外してくれないかい?」
「えー、でも…」
「君がどういう意図でここに連れてきたのかはよく分かったよ。ここまでお膳立てしてくれたんだ。しっかり話すとも。だから、リベラルと二人きりにしてくれないかい?」
「むぅ…分かりました。でも、仲直りはしてくださいよ?」
「もちろんだとも」
ロステリーナは少しションボリした様子を見せながらも、ラプラスの言葉に従い家の中へと戻って行った。
それからラプラスは、リベラルへと視線を向ける。
「さてと……」
「…………」
「…………」
先程まで円滑に口を開いていたラプラスは、そこで言葉を詰まらせた。何を話せばいいのか、分からなくなったのだ。
リベラルもリベラルで一言も話さず、再び沈黙が場を支配した。
「……少し、散歩でもしようか」
「……そうですね」
結局、交わした言葉はそれだけだった。
――――
龍鳴山は人の住む地ではない。数多くのレッドドラゴンが棲息し、通行するだけでも命懸けになるからだ。当然ながら、例外も存在するが今は関係ない。
従って、人が通るための舗装された道と言うものはほとんどない。精々、家の周りが少し整備されてる程度である。散歩するにしても、出掛けられる範囲は狭い。
ラプラスとリベラルは、家から出てすぐの場所で立ち止まっていた。
「……こうしてリベラルと話をするのは何時ぶりだろうね」
「まともに話をした回数は少ないですよね…多分、数年はしてませんよ?」
「ふむ、ならば言うほど昔でもないか…。とは言え、面と向かい合うこと自体が少なかったようだね」
やはり、時間感覚に違いがあるようで、さらりとそう告げたラプラスに、リベラルは眉を顰める。彼女にとってはとても長い時間でも、彼にとっては大した時間ではないのだ。
転生者とは言え、リベラルはまだ百年も生きていない。そんな若者と、数万年も生きてきたラプラスとでは、根本的に年月の感覚が違った。
だが、そんなこと今は関係のないことである。リベラルはすぐにその思考を消し去り、
大きく息を吸い、意を決して口を開く。
「……ラプラス様は、私が
いきなり、核心を突く質問だった。
機会を得るために繋ぎの会話をしていては、ロステリーナに言われた通り、延々と問題が解決しないと思ったのだ。うじうじとしていたが、リベラルは既に覚悟を決めていた。
どのような結果になろうとも、もう後悔はしない、と。
「…そう、だね……」
ラプラスはその時の想いを思い出すかのように、静かに目を瞑った。
「私は……君を殺したくないと思ってしまったのだよ」
「……何故ですか?」
「そりゃあ、君が最初から
「それだけですか?」
「いいや、まだあるとも。君がリベラルとして生まれたことを、後悔していたからだよ」
情けなく泣き出し、懇願していた。
今まで涙を見せなかった娘が。
ただ、そうなってしまったことを謝罪して。
ラプラスは、その光景を今でも鮮明に思い出すことが出来た。曲がりなりにも、娘として共に過ごしてきた存在だ。
いくら過ごした時間が短かろうが、大切な存在だった。そんな娘が泣いてる姿など、親としても見たいものではないだろう。
「確かに私は使命のために生きてるけれど――心まで捨てたつもりはないからね」
ラプラスは五龍将だ。今は『龍神』の名を名乗っているが、彼の根底は『魔龍王』である。
人神を殺すことを目的としているが、それと同時に、龍族としての誇りも残っているのだ。故に、龍神様と五龍将の誇りを踏みにじった人神のような外道にだけは、絶対にならないと誓っていた。
冷酷な判断を下すことはある。
けれど、非道な判断を下すことはない。
それが、ラプラスに残っていたちっぽけな誇り。
使命に囚われたラプラスが掲げる、唯一の自由。
「…そう、ですか……」
リベラルは口を閉ざす。結局、ラプラスは
どれほど残酷に振る舞おうが、心を切り捨てることをしない優しき者だ。
だからこそ、リベラルが転生者であったことに怒ったのだ。
だからこそ、リベラルが転生者であっても殺さなかったのだ。
「ラプラス様…私は、私がリベラルとして生きていても…構わないのですか…?」
「
「それは…私を家族として認めてくれてるのですか…?」
「……今まで過ごしてきた時間は本物なのだろう?」
「そうですけど…」
力なく返事するリベラルに、ラプラスはハッキリと告げる。
「ならば、リベラルは私の娘だとも」
結局、彼がどれほど思い悩んだところで、その事実が変わることはないのだ。だから、必要なのはその事実を受け入れる心。ほんの僅かな優しさだ。
心の何処かにあったわだかまりは、その一言を告げただけで決壊していた。ラプラスに足りなかったのは、ただ己の想いを言葉にすることだけだったのだ。
「……ズルいですよ。何で今更そんなこと言うのですか…こんなの卑怯ですよラプラス樣…」
リベラルは、ラプラスが嫌いだった。
鍛練ばかりを要求してくるから。いつもボロ雑巾になるまでしごくから。そして――家族の温もりを与えてくれなかったから。
リベラルとして生まれてから、ずっと強くなることを求められた。十年以上も鍛練を続けていたのに、ラプラスはちっとも優しさを見せない。ずっと辛かった。
なのに、陰で呪いを抑える魔道具を作っていたり、突然このようなこっぱずかしい台詞を言ったり。
「……リベラル。またこの前のように、私を父と呼んでくれないか?」
「うぅ、ぐす……本当に、卑怯ですよ…私がラプラス様と呼ぶのは、本当の家族ではないと戒めるためでしたのに…」
「ならば、その必要はもうないようだね」
涙ぐんで話すリベラルを、ラプラスは優しく抱き寄せる。静かに頭を撫で、娘をあやす。
二人に足りなかったのは、言葉だった。
たった一言告げるだけで、そのすれ違いは回避できたのだ。
「…お父様……」
「うん、私はリベラルのお父様だ」
「……ぐす…すいません…しばらく胸を貸してくださいお父様…」
「構わないよ。それが父親として出来ることだからね」
リベラルは胸に顔を埋め、嗚咽を押し殺した。
彼女が泣き止むまでの間、ずっと。
――――
その日、二人は一日中話し合った。大した話でもない他愛ない話だ。
今まで鍛練が辛かった、とか。厳しすぎるから優しくして欲しかった、とか。
どちらかと言えば、リベラルが愚痴を溢していたような感じだったが、ラプラスはそれを黙って聞き続けた。
「そうか…私としては普通だと感じていたのだけどね…」
因みに、これは愚痴を聞いたラプラスの溢した台詞である。それを聞いたリベラルは心外であったが、大昔に過酷な生活を送っていたラプラスにとっては、大したものではなかった。
二人の認識の違いを埋めるには、一日中話し合うだけでは到底足りなかったのである。
「アトーフェラトーフェ様にも言ったのですが、私は痛い目に遭うのも危ない目に遭うのも嫌いなのです」
「そうだったのか?」
「そうだったのです」
むしろ、それが常人としての感覚である。大抵の人は、そもそもそんな力を求めないものだ。戦士が一番を目指すのは分かるが、リベラルの心は戦士ではない。
どちらかと言えば怠け者に近いだろう。ある程度の自衛能力を欲しても、最強の座など狙ってなどいない。そんなものに興味などなかった。平和が一番。ラブ&ピースである。
「もっと早くに言って欲しかったよ…」
「申し訳御座いません」
ガックリ項垂れるラプラスに、リベラルも反省して謝った。
「…なら、引き続き『龍神の神玉』の研究に励みなさい」
リベラルの望んでいることが判明した以上、彼は無理強いすることはない。強制的に協力させるのは、ラプラスのやり方ではないからだ。
もしも己の娘に裏切られなどすれば、もはやどうすればいいのか分からない。未来への希望で紡いできた心が、完膚なきまで壊れてしまいそうだ。
だったら、彼女のやりたいことから協力して貰えばいいだろう。幸いなことに、リベラルには魔術の才があるのだから。
魔術の方面では、ラプラスに匹敵するとまでは言わずとも、それに近しい実力を兼ね備えている。ならば、その才能を磨いて貰えばいい。
「…………」
リベラルは不意に、言葉を途切らせる。
「ん? どうしたんだいリベラル?」
その様子に、ラプラスは不思議そうに声を掛けた。
「……少しだけ、考える時間をください」
リベラルは受け入れられたが、まだ己のことを知ってもらった訳ではないのだ。抱えているものが、あるのだ。
リベラルは未来の知識という情報を持ち得ている。そして、ラプラスがこの後どうなるのかを知っている。
――言ってもいいのだろうか?
そんな漠然とした思いが、渦巻いていた。
もしも、ラプラスが助かるようなことがあれば、歴史は大きく変わることになるだろう。その後も人神の手から逃れられるとは限らないが、変わることは間違いないだろう。
ラプラスの存在は、人神を倒すためのキーマンだ。彼が死んだ時の保険として、『五龍将の秘宝』を各地にいる五龍将たちに渡した。その結果が、龍神に殺されるものだと言うのに。だからこそ、詰んでしまうという事態は回避出来るのだが。
故に、もしも彼が生き延びれば、人神を打倒する目的は容易く果たされることだろう。それに、人神が今この場を覗いてる可能性もある。下手なことを言うわけにいかない。
そして、ひとつ疑問があるとすれば、オルステッドだ。
もしも過去が大きく改変されれば、オルステッドがどうなるのか分からないのだ。彼はループをしている。しかし、ラプラスが生き残った歴史に改竄してしまえば、オルステッドのループがどうなるのか不明なのだ。
特に過去の影響を受けず、ループしたままのオルステッドが現れるのか。それとも、過去の影響を受けて新しいオルステッドという存在が形成されるのか。
本来、未来というのは不確定なものである。だが、強い“運命”と言うのは存在する。
過程がどれほど変化しようが、ひとつの結末に収束されてしまう。それを変化させるには……決定的に違う結末が必要だ。そうすれば、世界線が変化し、別の運命へと世界は切り替わる。
もしもラプラスが生き残れば、世界は切り替わるだろう。そうなれば、オルステッドがどのような存在になってるのかが不明になってしまう。
龍神の施した、世界の理から外れる力がどれほどのものか分からないが、少なくとも楽観していいものではないだろう。運命はあっても、未来はまだ不確定なのだから。安直に物事を進めてはならない。
それに、未来が変化してしまえば――。
「リベラル」
ゴチャゴチャと悩んでいた彼女に、ラプラスは一声掛けた。
「私はリベラルの全てを受け入れよう」
ただ、静かにそう告げた。
視線を逸らさず、力強い意思を見せて。
「……ああ、そうですね…そうですよね…」
ストンと、納得した。
今まで思い悩んできた気持ちが嘘のように霧散し、素直な気持ちが沸き出す。
元々は、ラプラスを見捨てようと考えていた。幸いなことに、鍛練と称して娘をいたぶる鬼畜野郎と言い訳が出来たから。
でも、ラプラスとは和解してしまったのだ。その優しさに触れてしまった。最早、言い訳など残されていない。自分の父親が死に行くのを黙って眺めるほど、リベラルの心は非道ではない。冷たくはない。
ラプラスと同じように――リベラルは心を捨ててなどないのだ。
目の前の人を見捨てるほど、リベラルは冷酷になれない。どんな目的を掲げていようとも、ゆらりふらりと揺れ動く、天秤のような人らしい心を持っていた。
結局なところ、リベラルは人なのだ。日本という生温い世界で過ごし、道徳心を切り捨てることなど出来やしない。非情になりきることなど無理だった。
「お父様…私は、未来の知識を持っています…」
「……何?」
だから、リベラルは話す。
どれほどの言い訳をしたところで、目の前にいる
一度でもそう思ってしまえば、後は底無し沼のように沈み行くだけ。心に嘘を吐くことは出来ないのだ。
リベラルは語った。
未来でどんなことがあるのか。
どんな歴史を歩んだのか。
人神が覗いてる可能性を考慮し、言葉を選びつつ。
そして――ラプラスがどうなったのか。
全てを、話した。
「……そうか。私のしてきたことは無駄ではなかったか…そうか、そうだったか……」
リベラルの話を聞き終えたラプラスは、噛み締めるように溢す。
「そのことが知れただけでも、私は救われたよ…教えてくれてありがとう、リベラル…私の娘よ」
感慨深く頷き、ラプラスは自分のしてきたことが無駄ではなかったことを喜ぶ。己の全てを捧げてまでなし得ようとしてるのだ。嬉しくない訳がない。
故に、彼は問わなければならない。そのような知識を持っている娘が、何を目指しているのか。本当に、味方となりうる存在なのか。
見極めなくてはならない。
「教えて欲しいリベラル。……君が何者なのかを」
だからこそ、全てを話す。
「そうですね…至極単純なものです。私は、私が目指してる目的は――」
――――
「……ふむ」
一人机に座ったラプラスは、龍族の技術を書物に書き記していた。
「…無駄にならなくて良かった……このまま進めば、使命は果たせるのだね」
未来の情報を知り、ラプラスは順調に人神打倒へと近付いてることを小さく喜ぶ。とは言え、オルステッドの前に立ちはだかる最大の壁になるのは不本意だ。
差し当たり、まず己が為すべきことは第二次人魔大戦とやらだろう。ここで敗北すれば、人神の策略により、魂を二分されてしまう。
「……難しいか」
だが、第二次人魔大戦でされなくとも、敗北すれば同じような結末を辿ることになるのは、想像に難しくない。即ち、最終的に魔神と技神と呼ばれてしまう可能性は高いのだ。
「未来は無限であり、けれど縛られている、か…」
当然ながら、ラプラスは敗北するつもりなど更々ない。リベラルの言うオルステッド様の可能性に関しては、現時点では何とも言えないし、結局は不明なのだ。
龍神様によって施された術式を垣間見たとは言え、ラプラスとてその全てを理解出来てる訳ではない。不測の事態とは、いついかなる時でもあり得ることだ。備えあれば憂いなしだ。
ラプラスの使命は、未来に繋ぐことである。
己がどうなるにせよ、それだけは必ずなし得なければならない。
最悪、リベラルがいるのだ。彼女は敵ではない。ラプラスの使命を引き継ぐことを嫌がるだろうが、それでも必要なことはしてくれるだろう。
ならば、安心して後のことを任せられる。
「私は、死ぬつもりなどないさ」
第二次人魔大戦とやらは、人神が裏から糸を引くことによって起きるだろう。そして、ラプラスはそれに参戦することになる。
関与しなければ、人神の布石を潰すことが出来ないからだ。そうしなければ、後々オルステッド様が詰んでしまう。
その結末がどうなるのであれ、ラプラスは出来ることを行ない、未来に繋げるだけだ。
その結果として、彼が生きるか死ぬかなど、その時にならなくては分からないことである。
次回は番外編を投稿します。
なんかよく分からん感じにロステリーナとラプラスにふざけたりする内容ですね。
まあ、期待せずに待っていて下さい。