無職転生ールーデウス来たら本気だすー   作:つーふー

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前回のあらすじ。

ギース「キシリカ発見したぜ」
リベラル「私を殺せば今すぐヒトガミと戦うことが出来ます。どうしますか? →殺す 見逃す」
オルステッド「お前も、そしてルーデウスも仲間だ。共に戦いその先を見たい」

2話同時更新してます。3話の『龍神と銀緑』を見ていない場合はそちらを先に観覧することをおすすめします。


4話 『宿敵』

 

 

 

 発見されたキシリカは、現在オーベールが拘束しているらしい。食べ物を用意すれば労することなくその場に留めることが出来たとのことだ。

 具体的な居場所も確認したリベラルは、報告のために魔大陸から帰還したヴィ・ターへと労いの言葉を掛けつつ、自身も準備をしていく。

 といっても、既にある程度の準備は終えている。

 未来の知識により、自分の足りない部分を理解した彼女は、戦いに備えて修正すべき点は修正している。

 オルステッドやその他の仲間との協力もあり、闘神鎧を打ち破る攻撃力は獲得していた。身内との訓練では問題なく使用出来ている。

 もちろん、それだけで勝てるのかと言われれば絶対とは言えない。不確定要素もあるだろう。

 それでもリベラルは今後も見据えた展開を頭の中で思い描いていたのだった。

 

「さて、行きますか」

 

 準備を整えた彼女は、転移陣を使うために空中城塞へと出向く。ペルギウスには既に連絡済みだ。

 自分一人で行くことは出来るのだが、今回は態々アルマンフィに迎えに来てもらう。

 

「光輝のアルマンフィ。参上」

 

 いつものように瞬時に現れた彼に、リベラルは召喚に必要な媒体のバトンをぶん取りながら笑顔で応対する。

 

「流石の速さですね。さっ、次は主の元に戻るんです!」

「貴様……いつもいつも俺を足に使って……ふざけるなよ……」

「まあまあいいじゃないですか。減るものでもないですし」

「くっ……何故ペルギウス様と貴様は戦友なのだ……」

 

 ぶつくさ言いつつも光の速さでバトンのお届けに消え去ったアルマンフィ。

 それからしばらくすると、リベラルは空中城塞に召喚されるのだった。

 召喚された彼女はシルヴァリルに案内されつつ、真っ直ぐ謁見の間へと向かい、龍の模様が刻まれた大きな扉を開く。

 

 そこには、やはりいつも通りの光景が広がっている。

 大木のような柱に、大きなシャンデリア。

 人族や龍族の紋章の描かれた垂れ幕。

 赤いビロードの絨毯の両脇に立つ、仮面をつけた十二人の男女。

 玉座に座るは、銀髪の龍王。

 さらにそこにシルヴァリルが加わり完璧に……と思ったところで彼女は違和感に気付く。

 1人多いのだ。精霊の並びに1人だけ別人が混ざり込んでいる。

 

「オルステッド社長? 何やってるんですか?」

 

 かつてナナホシが着けていたのっぺりした白い仮面を装着していた彼に、リベラルは呆れた表情で声を掛ける。

 

「お前を待っていただけだ」

「はあ、そうですか」

 

 本当に深い意味はなかったのだろう。

 仮面を外したオルステッドはいつもと変わらぬ無表情で、そう告げるのだった。

 であるならば、これ以上の問答をしたところで意味もないだろう。

 そこでペルギウスから声を掛けられ、そちらへと顔を向ける。

 

「来たか、リベラルよ」

「ワガママを聞き入れてくださりありがとうございます」

「我との仲だろう。この程度構わぬ」

 

 事前に転移陣を使用することについては伝達済だ。

 転移するための準備も既にされており、彼女を待っていた。

 それならば態々謁見の間まで来てもらう必要もなかったのだが、ペルギウスとしては向かう前にリベラルと話をしたかったのである。

 そのことを理解した彼女は、彼に続きを促す。

 

「決戦に向かうと言っていたが、ふむ……どうやら死ぬ気はなさそうだな」

「死ぬつもりで戦う訳ないじゃないですか」

「だが、闘神が相手なのだろう。序列だけで言えば魔神よりも上だな」

「ええ、そして困ったことに私との相性は最悪です」

 

 やれやれと肩を竦めるリベラル。

 魔術を無効化する闘神鎧は、武器を扱えない彼女は防御力を突破出来ず天敵だ。

 未来で負けたのもまぐれではないだろう。

 そんな困った様子のリベラルに、ペルギウスはククク、と面白そうに笑う。

 

「力がほしくば貸してやろう。貴様に恩を売るのも一興だ」

「借りた恩は返さない主義ですけどいいですか?」

「ふん、相変わらずふざけた奴だ。ならば戦いに敗れて死ぬが良い」

「ああ嘘ですごめんなさい! 力をお借りしたいです! 恩は倍返ししますから!」

「初めからそう言え」

 

 冗談に対しマジレスするペルギウス。

 実際に協力を得たいと思っていた彼女は、慌てて謝罪するのだった。

 

「それで、我に何を求める?」

「闘神とは一対一で戦うので、一緒に戦って欲しい訳ではありません。ただ、私がもう負けそうだなって思ったら私に召喚魔術を使ってほしいんです」

 

 ペルギウスに協力を求めるのは、どちらかと言えば保険としての意味合いが強いのだろう。

 緊急離脱するための手段を確保が欲しいのだ。

 決戦の場にそのような保険を掛けるのは情けないと思うかも知れないが、当然の処置だった。

 リベラルが敗北し死亡すれば、オルステッド陣営に大きな痛手を与えることとなるのだから。

 

「何故一対一にこだわる?」

「そりゃあ、やろうと思えば完封も出来ますよ。事前に準備する時間はたくさんありますし。でも、それじゃ駄目なんです」

 

 正直、オルステッドやルーデウス、エリスやアレクを連れて戦えば負けることはないだろう。

 時間稼ぎさえ出来れば、彼女は奥の手を発動させて闘神を倒すことが出来る。

 なんなら、過去にて剣神を相手にやった結界魔術を用いるのもいいだろう。ペルギウスがいるので、前もって神級結界魔術を準備して誘導するのもいい。

 キシリカを餌に、神級魔術でキシリカ諸共魔大陸を消し飛ばすことも可能だ。仮にそれをしてもキシリカは復活するので問題ないだろう。

 勝てればそれでいいとは思っている。態々リスクを取る必要はないのだ。

 

 けれどその方法をリベラルは取らない。

 プライドの問題と言えば、それまでだろう。

 

 ……そう、プライドだ。

 思い返すのは、龍鳴山での対決。

 自身の弱さが、家族を失う原因となってしまった。

 そして未来での敗北によって、一度全てが失われた。

 だからこそ、何度も何度もその胸に刻み付けたのだ。

 

『強くなるのだ。

 誰にも負けないように。

 二度と後悔しないように』

 

 

「ーーそれが私の果たさなければならない誓いだからです」

 

 

 故に、バーディガーディと戦う。

 この戦いは誰にも渡さない。

 乗り越えなければならない相手なのだ。

 勝利しなければ、己はきっと前に進むことが出来ないという予感があった。

 

「その割には、保険を掛けるのだな」

「あー、うん、まあ……負けることだけは絶対に許されないので妥協した結果ですよ」

「ふっ、そうか。ならば何も言うまい」

 

 自分のわがままで全てを台無しにすることは出来ない。

 それがリベラルの許せる限界のラインだったのだ。

 ペルギウスもそれ以上は何も言わなかった。

 ラプラス戦役を戦い抜いた戦友が、命を掛けて前に進もうとしているのだ。

 言いたいことはあったが、己の矜持がそれを許さなかった。

 

「良かろう、我も可能な限り協力しよう。下僕たちを通して戦いの結末を観戦させてもらおう」

「ついでにこれも使うといいですよ。私の戦ってる姿を映し出してくれます。私のことを心配してるであろうルディたちを呼んで観戦でもしといて下さい。壁に投射すれば大画面で見れますよ」

 

 そういいつつ、リベラルはガラス玉のようなものを投げ渡した。

 それにはペルギウスも呆れた表情を浮かべるのだった。

 

「まったく貴様は……真面目にやってるのかやってないのかハッキリせんな」

「いいじゃないですか。適度にリラックスすることも大切ですから」

 

 転移したとしても、キシリカの元に着くには少しばかり時間が掛かる。そこから更に闘神が現れるまで待機するのだ。

 ルーデウスたちの見送りは必要ないし、画面越しに言葉でも交わせばいいだろう。

 用事を終えたリベラルは、早速向かおうと背中を見せた。

 しかし、ペルギウスから声を掛けられそちらに首を向けるのだった。

 

「…………リベラル」

「何ですか?」

「貴様は我に残された数少ない戦友の一人だ」

「そうですね」 

 

 どこか不安そうな表情を浮かべ、彼は告げる。

 

「…………死ぬことは許さんぞ」 

 

 珍しく弱気な発言を溢したペルギウス。

 その様子にリベラルは目を白黒させ、やがて苦笑を浮かべる。 

 

「何言ってるんですか。そこはさっさと帰ってこいとか、そんな言葉でいいんですよ」

「フッ……それもそうだな」

 

 ペルギウスは一呼吸置いた後、再びリベラルを見据えた。

 

「貴様に貸した借りは沢山ある。さっさと終わらせて帰ってくるがよい。その時は我が再び出迎えてやろう」 

 

 その言葉に、リベラルは笑みを浮かべる。

 

「でしたら、温かい飲み物でも用意して待っておいて下さい」

 

 そうして、次こそ彼女は扉から出ていく。

 そのまま転移陣へと向かい、魔大陸へと消え去るのだった。

 

 

ーーーー

 

 

 キシリカが発見されたのは、『不快の魔王』ケブラーカブラーの治める街である。

 街へと辿り着いたリベラルが見たのは、お祭りのように騒いでいる人々の姿だ。

 一体何事かと思いつつも、彼女は指定されていた場所へと人混みを抜けて向かっていく。

 到着したのは、オルステッドコーポレーション(仮)の支部である。中へと入れば屈強な男たちがそれぞれ飲み食いしているのだ。

 中にいるもの全員が虎マーク付きの黒コートを着ており、何の所属であるかを示していた。ルード傭兵団である。

 その内の1人がリベラルに気付き、近付いていく。

 

「何か用ですかね」

「ギースかオーベール、もしくはナックルガードはいますか?」

「アポは取ってますかね」

「具体的な日時は決めてませんが、取ってますよ」

「日時は決めてない……?」

 

 そんなアバウトなアポイントがある訳ねぇだろ、と言わんばかりの反応を示す。

 どうしたものかと思っていると、食事をしていた内の1人が何事かと近付いてくる。

 見たことのある顔で、アトーフェの元親衛隊の男だった。

 

「おい、どうした?」

「ああ、この人がなんか変なこと言っててよ」

「ん? おい、この人はリベラルさんだよ! 知らねぇのかよ?」

「なに? この女がうちの特攻隊長だったのか?」

「そうだ。舐めてたらぶっ殺されるぜ」

 

 そんなやり取りを間近でされ、彼女は困惑するのだった。

 知らない間にルード傭兵団の特攻隊長に任命されていたらしい。

 そもそもルード傭兵団には所属していないのだが、というツッコミは無しなのだろう。

 彼らは扱い的には部下となるので、あながち否定は出来ないところではある。

 

 とりあえず穏便に案内されることになったリベラルは、そのまま外へと連れ出され魔王城の方へと向かっていく。

 門番たちも一言二言話すだけで、後は素通しである。一応1人だけ兵士がついてきたが、それだけだ。

 

「『不快の魔王』ケブラーカブラーと仲良くなったんですか?」

「ああ、ギースのコミュニケーション能力はすげぇよな。ま、魔王ってのがみんなフレンドリーなだけかも知れないが」

 

 元アトーフェ親衛隊として、他の魔王と出会ったこともあるだろう。

 少なくともアトーフェラトーフェのように話の通じないバカでなければ、戦闘なんてそうそう起きないようだ。

 ラプラス戦役にて過激派は多く減っているので、残っている大半が穏健派と中立派である。

 無礼なことをしなければ、案外フレンドリーにやっていけるとのことだ。もちろん例外もいるのだが。

 

「ついたぜ」

 

 そうして案内されたのは大きな食堂である。

 中に入れば、キシリカが巨大なテーブルの中央で樽ごと酒を一気飲みをしていた。

 

「ファーハハハ! この程度で妾が潰れる訳もない! もっともっと持ってくるのじゃ!」

「キシリカには負けん」

 

 それに対抗するように、全身に穴の開いた球体状の物体が同じように酒を飲み干していた。

 その物体こそが『不快の魔王』ケブラーカブラーである。

 ゲロの臭いを全身の穴から発しているらしいが、換気や魔術による消臭でもしているのかあまり臭くはなかった。良いことである。

 

 そんな彼らを煽るように手を叩いている家臣たち。

 その中にギースたちも同じように手を叩きながら酒を飲んでいる姿があった。

 リベラルはそちらへと歩み寄っていく。

 

「宴会みたいになってますね。私も一杯いいですか?」

「ん? おぉリベラル殿。ようやく来られましたか」

 

 彼女の姿に気付いたオーベールは、そそくさと席を広げて座るスペースを作る。

 ありがたくそこに座ればどこからともなくナクルがジョッキを置き、ガドがそこにエールを注ぎ込んだ。

 

「あ、ありがとうございます」

「どういたしまして。ガド、次行くよ!」

「ナクル兄ちゃんもこっちも忙しいから、話はギースから聞いてね!」

 

 何故かよく分からないが、ナックルガードの2人は給仕係になっているらしい。

 息のあった動きで、空になったジョッキにエールを注ぐ旅に出ているようだ。労いの言葉を掛けたかったが、忙しいようなのでまた後でいいだろう。

 隣にいたオーベールが声を掛けてくる。

 

「ここに到着したということは、ついに決戦が始まるということであるか」

「そうなりますね。せっかくなので観戦でもしますか?」

「可能であるならば観戦したいところですな」

「まあ、戦いに巻き込まれても助けてあげられるかは分かりませんけど」

「むぅ、近くでみたいところではありますがな」

 

 圧倒的に格上同士の戦いなのだ。己のためにも是非観たいという気持ちがあった。

 オーベールは隠密行動も可能だが、隠れていることを考慮しながら戦うことは出来ない。かといって堂々とされていても、闘神の標的にされる可能性もあり得るだろう。

 遠くから頑張って観戦してもらうしかないのだった。

 

「よお、リベラルさんよ」

「ギース。キシリカの捜索ありがとうございました。まさかここまで早く見つけられるとは思いませんでしたよ」

「ヘヘッ、俺様は優秀だからな」

「フフ、仰る通り優秀です。もっと誇っていいですよ。ヒトガミのアホを後悔させてやりましょう」

 

 実際、ここまで短期間でキシリカを見付けるのは凄いことだろう。

 魔大陸は広大であり、更にキシリカはぶらぶらとあらゆる地域に向かう始末だ。

 正攻法で探すのは非常に困難だろう。

 

「どうやって見つけたんですか?」

「そりゃあ、ご飯だよ」

「ご飯ですか」

 

 ある意味予想を裏切らない回答に、リベラルは半ば呆れた様子となる。

 

「腹ペコ大帝ってことは聞いてたからな。だからどっかの魔王のとこで大きい祭りを開けば引き寄せられると思ったんだぜ」

「もしもキシリカが魔大陸の端っこにいたら流石に気付かなかったのでは?」

「おいおい、魔界大帝には魔眼があるじゃねえか」

「『万里眼』……そういうことですか。確かに可能ですね。それを思い付くギースはやっぱり優秀ですよ」

 

 別大陸にいる人物すら探し出せる魔眼。

 確かにそれがあれば、キシリカはどこにいても祭りの気配を嗅ぎつけて現れるだろう。

 魔大陸の端っこから端っこだったとしても、すぐさま現れる姿を思い浮かべられる。

 未だに酒を飲み干し、肉に丸ごと齧り付いている姿を見れば納得だ。

 

「ケブラーカブラーとはどうやって仲良く?」

「いや、直接会ってどうこうはしてないぜ。街の住民を煽って祭りを起こしただけだからな」

「その扇動力にツッコミを入れるべきですかね」

「もちろん1人でやってねえぜ。ルード傭兵団にも協力してもらったからな。最初は小規模な酒飲み勝負から始めたんだよ」

 

 小さな催しから、徐々に大きな催しに変えていったらしい。

 そうすることで街全体を祭りに巻き込んだとのことだ。

 この街の魔族たちも結構な長寿なので、一度祭りが起きれば年単位で騒ぎっぱなしとなる。

 本来の歴史でも、バーディガーディと鬼神マルタは2年間も酒を飲み交わしていたのだ。そう考えればおかしくもないだろう。

 最終的にお酒を献上して魔王とも仲良くなり、その間にキシリカがやって来て確保したとのことだ。

 ギースの手腕に感動すら覚えたリベラルは、やはり彼を仲間に取り込んで正解だったと胸を撫で下ろす。

 

「だから後は待つだけだぜ。決戦の時をな」

「……ありがとうございますギース。貴方が仲間で良かった」

「ヘッ、よせよ。照れるだろ」

 

 そう言いながら、彼は酒を一気に飲み干した。

 

「ほら、リベラルさんも飲めよ。せっかくの祭りだぜ。英気を養えばいいさ」

「そうですね。では遠慮なく」

 

 まだ一口もつけていなかったが、リベラルも一口エールを口に含む。

 キンキンに冷えてる訳ではないし、特別美味しさがある訳でもなかった。

 けれど、この騒がしい中で飲むお酒も、たまには悪くないのだった。

 

「羽目を外しすぎない程度に私も楽しませてもらいますよ」

「ああ、そうしろそうしろ」

 

 ギースはお酒のおかわりを貰いつつ、テーブルの食材に手をつけていく。

 それに釣られて彼女もおつまみに手を伸ばし、小腹を満たしていくのだった。

 

 テーブルの中央では、未だにキシリカとケブラーカブラーが一気飲み対決をしている。

 彼女と話すのもまた後でいいかと思うのだった。

 それにこの場にのこのこと来ていながらなんだが、リベラルとケブラーカブラーは別に仲が良い訳ではない。

 ラプラス戦役で敵対関係であったことを考えると、むしろ顔を合わせるのは得策ではないだろう。

 とりあえずあまり目立たないよう、隅っこでちびちびと過ごすのだった。

 

 最終的に飲み比べ対決は、ケブラーカブラーが勝利していた。

 酔い潰れたキシリカは、実に幸せそうな表情で腹を膨らませて眠ってしまっている。

 そんな彼女を触手で絡め取りながら、ケブラーカブラーは勝利宣言しているのだった。

 知らない間にキシリカは服を脱いでいたので、やばい絵面だったのは余談だろう。

 リベラルは見て見ぬふりをするのだった。

 

 

ーーーー

 

 

 それから何日か経過する。

 リベラルは流石に魔王城からは退室して街中で騒ぎを楽しむことにしていた。

 フラフラと何日も酒ばかり飲んでいる生活を続けるが、流石に潰れるほど飲むのは自重する。

 たまにはっちゃける時もあったが、動けなくなる程でもなかった。

 

 そうして何日か街中で過ごしていたのだが、いつの間にキシリカも付いてきているのだった。

 彼女はリベラルに引っ付きながら酒を常に飲みまくり、人々を煽りまくっていた。

 が、不思議と2人の間に会話はほとんどなかった。

 なんとなくこれからのことをキシリカは察していたのであろう。

 互いに過ごしているのに、よそよそしさを感じさせる状況だ。

 

 けれど、その日は違った。

 キシリカは酒を飲まずに過ごしているのだった。

 

「……今日はお酒を飲まないのですか?」

「…………」

「そうですか。まあ、そんな日もありますか」

 

 問いかけに対しても、彼女は真剣な表情なまま言葉を発しない。

 ただ歩いていくリベラルの隣に並んでいた。

 リベラルの足取りに迷いはない。

 既に向かう先は決まっている。

 

 

「ーーバーディと戦うのか」

 

 

 ようやく言葉を発したキシリカに、リベラルは苦笑してしまう。

 

「ま、お互いに死なないように善処はしますよ」

「……そうか。やはりそうなってしまうのじゃな」

「ええ、そうなってしまったんです」

「妾としては、出来ればそうならないで欲しかったのじゃがな」

「仕方ありませんよ。きっと私たちはそういう運命だったんです」

「そうか……これも天命かのう」

 

 普段の陽気な雰囲気は鳴りを潜め、真面目な表情のまま呟く。

 

「分かっているのじゃろ、今のバーディの状態を。闘神鎧を身に付けているのじゃぞ?」

「ええ、もちろんです」

「どうしても戦うのか?」

「それが私の選択ですから」

 

 キッパリと言い切ったその姿に、キシリカは瞠目する。

 やがて小さな溜め息をこぼし、リベラルの目を見据えるのだった。

 

「妾にとって龍族は因縁の相手。じゃがそれは昔の話じゃ」

「…………」

「妾はお主のことを良き友人と思っておる」

「それは……光栄です」

「だから、死ぬでないぞ」

 

 リベラルの背中をポンッと叩いたキシリカは、踵を返し街中へと戻っていった。

 これ以上の会話は必要ないらしい。

 キシリカの後ろ姿を見送ったリベラルは、グッと拳に力を込め、前へと向き直るのだった。

 

 それからは魔大陸の荒野を前に進み続ける。

 あてもなく進んでいるように見えるだろう。

 まだバーディガーディの姿は確認されていないのに何で? と思うかもしれない。

 それは根拠を持って説明できるものではない。

 けれど、感じるのだ。進む先にいる存在を。

 まるで何かに導かれるかのように、行くべき先を感じていた。

 

 きっと、これは運命なのだろう。

 避けることの出来ない戦い。

 リベラルは今までの人生を思い返しながら、先へと進んでいく。

 

 どれほど歩いたのだろうか。

 星の輝く美しい夜空を見上げ、日差しの眩しい大地を踏みしめ。

 そうして歩き続けた先で、その“黄金”もこちらへと真っ直ぐに歩んで来ていた。

 

 

 やがて、お互いの顔がハッキリ見える位置で、両者は立ち止まる。

 

 

「……銀緑か」

「そういう貴方はバーディ陛下じゃないですか。こんな荒野のど真ん中で出会うなんて奇遇ですね」

「フハハ……とても奇遇とは思えんな……」

 

 リベラルの軽口に対し、バーディガーディはいつもの明るさを感じさせない声色だった。

 そのことに対して彼女は疑問に思うことなく、そのまま言葉を続ける。

 

「ずいぶんと元気がなさそうですね。生命力も吸い取られている上に精神も侵食されているのでしょう。無理せず闘神鎧を脱がれてはどうです?」

「……脱げるものならとうに脱いでおる……ヒトガミに騙されたと……吾輩を笑いに来たか?」

「まさか。それに貴方はそれでもヒトガミを裏切らないでしょう」

 

 それは分かりきっている問い掛けだった。

 バーディガーディという存在を、彼女はちゃんと理解している。

 だからこそ、これは最後の確認だった。

 

「その通りだ銀緑よ……ヒトガミにかつての人魔大戦のことを思い出し、恩を返してくれと言われた。リベラルを殺して欲しい、とな……吾輩はそれを受け入れたのだ……ならば果たさなければならぬだろう……」

「それが貴方の流儀、だからですよね?」

「フハハ……よく分かっているではないか……銀緑よ……」

 

 そうして、互いに沈黙が訪れる。

 どちらも譲らないのは分かっていたことだ。

 バーディガーディが闘神鎧を手にした時点で、話し合いの余地などなかった。

 そしてリベラルも、和解など求めていない。

 

 両者が求めていたのは、決着だ。

 長い長い、龍族と魔族の決着。

 

 

 ーー2人には父親がいた。

 魔龍王ラプラスと、八大魔王ネクロスラクロス。

 かつて人の形をした魔物は、魔王によって追い払われた。

 だが人の形をした魔物は成長し、いつしか五龍将と呼ばれる存在となった。

 五龍将とまでなった彼は、魔王と肩を並べるようになり平和のために手を取り合った。

 そうして世界はあらゆる種族と共に繁栄していく……筈だった。

 

 ヒトガミの策略により、神々の絆は引き裂かれ戦争が起きた。

 魔龍王は龍神に付き従い世界を滅ぼし、魔王は魔神に反対し幽閉された。

 滅びゆく世界の中で、魔龍王は魔王を見逃した。

 世界は人界に収束し、2人の子どもが誕生する。

 リベラルとバーディガーディ。

 そして、人魔大戦にてバーディガーディはラプラスと相打ちとなった。

 大戦後に残されたのは、一匹の龍のみ。

 

 名も無き無力な龍は、信念もなく惰弱であった。

 故に運命に翻弄され、故に大切なものを失ってしまう。

 それでも龍は、前へと進んだ。

 

 過去に魔王に敗北した。

 未来でも魔王に敗北してしまった。

 それでもなお、2度の敗北を経験しても歩みを止めなかった。

 

 

「……我が名はリベラル。魔龍王ラプラスの娘にして、誓いを果たさんとする者!」

「我が名は……闘神バーディガーディ。ヒトガミの盟友にして、闘神の名を受け継ぎし者!」

 

 

 そしてーー現在。

 龍族と魔族の長い物語に終幕をもたらす戦いが、始まろうとしていた。

 

 

「ーー私たちの因縁に、決着をつけましょう」





残り3話で完結予定です。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。

Q.リベラル保険掛けやがった!だせえ!
A.敗北したら取り返しのつかないことになるので…(震え声)

Q.キシリカの発見方法。
A.めし!はようよこさんか!

Q.何でバーディ陛下の場所分かったん?
A.ご都合展開です。何か特別な理由がある訳でもないです。予感に従って歩いて行っただけなので、普通にすれ違う可能性もありました。
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