みんな「勝ってこいリベラル」
バーディ「これも宿命か……」
リベラル「タイマンでよろ」
お待たせしました。最終決戦その1です。独自設定もりもりです。
空中城塞ケイオスブレイカー。
その客間にて、彼らはリベラルとバーディガーディの場面を鑑賞していた。
全員が固唾を呑んで見守る中、ペルギウスだけは紅茶を飲みながら眺める余裕があった。
「そろそろ始まりそうだな」
「そうだな」
端的な返事をするオルステッドに、ルーデウスは疑問に思っていた事を口にする。
「どちらが勝ちますかね」
その言葉に、ペルギウスはハッと小さく笑う。
「決まっているであろう、リベラルだ。奴の強さは我がよく知っている」
「とは言っても、闘神の強さは誰も知らないのでは?」
「確かにそうだが、我は本物の七大列強を知っている」
今の時代にある七大列強は上位陣が行方不明だったり封印をされていたりと、もはや形を成していない形式的なものとなっていた。
それはラプラス戦役にて何人かの七大列強が戦死したからであり、繰り上げになった下位の者が名を連ねているからである。
第四位の魔神ラプラスと第五位の死神ランドルフの間には超えられない壁があり、四位以上は人知の及ばぬ本当の化け物として知られている。
そしてラプラス戦役を経験しているペルギウスは、本物の七大列強がどれほどのものか知っている。
そこから考えれば、闘神がどれほどのものかおおよその目処はつくだろう。
その上で彼は、リベラルが勝つと断言したのだ。
「リベラルの強さは、ラプラス戦役の頃から群を抜いていた。ラプラスとの決戦に奴がいれば、労することなく勝利出来たであろう」
「なるほど」
「それに、リベラルが敗北すると思っている者などこの中にはおらんだろう」
周りを見渡すペルギウスの視線に、その場にいた者は全員首を縦に振った。
「そうですな。余は戦いに秀でてはおりませんが、リベラル殿の強さは知っております。負けるとは思えませぬな」
「知識量も段違いだからな」
戦いが得意ではないザノバとクリフから見ても、リベラルの強さは想像もできないほどである。
仮に戦闘力で劣っていたとしても、それをカバーするだけの知識があるとも思っていた。
「とはいえ、リベラルさんは闘神鎧の防御力を突破出来ないと言ってました」
「そうなのロキシー?」
「ええ、シルフィはあまりパウロさんたちとの鍛錬に顔を出していませんでしたね。そこでどうするべきか悩んでましたので」
疑問に答えるロキシー。因みに、彼女は魔族であるがリベラルの友人であることと、ルーデウスの妻であることで何とか空中城塞への立ち入りを許可されていた。
なお、アレクサンダー・ライバックは関係性が複雑なためこの場には来られなかった。アトーフェの身内だけは死んでも招きたくなかったらしい。
伝説とも言える戦いの観戦を出来ないアレクは、それでも諦めきれず単身魔大陸へと向かってしまったのは余談だろう。
「それは大丈夫よ。既に打開策を編み出しているわ」
「ああ、凄かったぜ。もう俺たちには手の付けられない状態になりやがったからな」
未来で敗北したことを知っているリベラルは、当然ながら何の対策もせず闘神に挑んだりしない。
事前に闘神の防御力を突破するための手段を持って挑んでいた。
未来の日記を同じく読んでいたオルステッドも、これならば問題なく勝てると判断するほどだ。
「リベラルなら大丈夫だろう」
「そうですね……どのみち、俺たちは信じて待つことしか出来ませんし」
「仮に負けそうならば、俺が出張るから問題ない」
オルステッドの頼もしい言葉に、ルーデウスも安心して映像を眺める。
保険として、ペルギウスがいつでも空中城塞にリベラルを召喚出来るようにもしているのだ。
不安となる要素もないだろう。リベラルなら即死するような心配も少ない。
そうして全員が満場一致で、リベラルの勝利を予想していた。
しかし、この場にもしもキシリカ・キシリスがいれば違う意見が出たであろう。
彼女が勝敗の予想をするのならば、こう言っていた。
『決まっておろうーー勝つのはバーディじゃ』
それは婚約者という贔屓目で予想した訳ではない。
『妾は両者の戦いを実際に見ているからのお』
『リベラルは確かに凄まじかった。アルデバランに匹敵する実力じゃった』
『厳しい鍛錬を積み重ねたのじゃろう。アトーフェの奴が子ども扱いじゃったからな』
『じゃが、闘神となったバーディはもっと凄かった』
『アルデバランとの決戦……今も覚えておる。不死魔王たちを一撃で屠るあのバケモノの前に現れた姿のことを』
『殺されると思った。じゃがそんな予想を裏切るかのように、劣勢だったバーディは食らいつき、そして最終的には互角以上に渡り合ってみせたのじゃ』
『神々の領域とは、まさにあの事を言っておった』
『じゃから妾はリベラルに伝えたーー死ぬでないぞ、と』
『妾はリベラルのことを……良き友人と思っておるからの』
それは、かつての魔神の娘の本心の言葉だった。
ーーーー
リベラルとバーディガーディ。
睨み合っていた両者だが、先に動いたのはリベラルだった。
目にも止まらぬ歩法で距離を詰めた彼女は、最初から出し惜しみせず最大火力を叩き込むことにしていた。
『龍門解放』によって光り輝く龍気を身に纏ったまま、闘神の土手っ腹に正拳突きを放つ。
闘神は反応することも叶わず、身体をくの字にして吹き飛んで行くのだった。
鎧は剥がれ、彼の腹部は大きく欠損する。
けれど地面に衝突するまでの間に再生し、何事もなかったかのように立ち上がるのだった。
「ハァァ!!」
次は装甲のの薄そうな関節部分に無数の手刀を放つが、僅かにヘコませるだけに留まる。
追撃されないよう彼女は再度『龍門解放』による魔力を纏いながら、腹部を蹴り上げ闘神を弾き飛ばす。
何度か説明しているように、リベラルの火力は魔術ありきの面がある。
魔術だけならばこの世界で頂点を目指せるが、闘神鎧は神級未満の魔術を無効化するのだ。
龍神の神玉により『武器を振るえない呪子』となっている彼女は、素手で戦うしかない。しかし龍聖闘気を習得していないため、光の太刀を無手で放つことも出来ないのだ。
「『
バチッと音がした瞬間、閃光がバーディガーディを襲う。
鎧を身に纏った状態であれば、全身を電撃が貫きしばらく動けなくなるだろう。
だが、魔眼を開かなくとも彼女には見えた。
闘神鎧がその強大な魔力によって、魔術をレジストする姿を。
「なるほど……確かに未来の私が手詰まりになる訳です」
魔術をレジストする、といってもそれには幾つかの種類がある。
例えば、本来の歴史にてルーデウスとムーアが戦った場面。火に水を掛けるかのように、対となる魔術で的確な対処をするパターン。
もうひとつはルーデウスとオルステッドが戦った場面。不意打ちによる魔術を“魔力によって軽減“するパターン。
魔力の放出とは色も形もない空気の放出のようなものだが、実際には魔術の威力を緩和する効果があったりする。あくまで威力の減退なので、闘気による高い防御力がなければ無意味だが。
膨大な魔力により自我すら持つ闘神鎧には、それで十分過ぎる効果ではある。
その他にも『吸魔石』の使用や『乱魔』も該当するだろう。
だが、魔力によるレジストなら使える魔術も色々ある。
「『
「ぬ、ぉ……!?」
闘神の足元に先端を平たくした土槍を発生させる。
そうすることで、闘神は人間大砲のように空中へと射出されるのだった。
もちろん威力は低下しているが、それでも数十メートルは浮き上がっただろう。
時間に猶予の出来たリベラルは、その間にふと疑問に思ったことを考える。
(ヒトガミの正体は死亡した創造神の魔力によるものと私は予想してましたが……闘神鎧の魔力も創造神の残骸のようなものだったりするんですかね……?
もし予想が当たっているなら、闘神鎧の自我は創造神の残り滓みたいなものだったりして)
ただの想像なので、創造神が関係しているかは分からない。
しかしリベラルはこの世の魔力は創造神が残したものだと予想しており、闘神鎧がその影響をもろに受けた物体だと考えている。
だとしたら、ラプラスにすらどうすることも出来なかった強力な呪いがあることにも納得は出来るだろう。
「その龍はただ忠義にのみ生きる。
両の爪は長く、鋭く、決して拳を握れない。
かの龍が怒りしとき、拳は握られん。
爪は折れ、牙は抜け、しかし思い知るだろう。
忠義を握りし龍が、いかなる思いで忠義を捨てたかを。
三番目に死んだ龍。
最も鋭き瞳を持つ、白銀鱗の龍将。
甲龍王ペルギウスの名を以って召喚するーー」
バーディガーディが地面に着地するまでの間に、彼女は詠唱を続けていく。
装飾華美な白銀色の扉と装飾華美な黄金色の扉。
それがずるずると、地面から生えるように、門は生まれ出でた。
「開け『後龍門』、招け『前龍門』」
着地したバーディガーディを囲むように現れた扉は開かれ、闘神鎧の魔力を吸収していく。
しかしそれは数瞬の間だけだった。
門にバキバキとヒビが入ったかと思えば、そのまま崩れ落ちるのだ。
闘神鎧の異質な魔力に龍門が耐えきれなかったのである。
「フハハ……無駄だ……!」
笑いながら突撃してくるバーディガーディ。
その六腕を持って、嵐のような猛攻が迫りくる。
「ーーーー!!」
バーディガーディに技術はない。手数と力を愚直に使い続ける。
単調な攻撃であるため、『
「やり辛いですね……!」
まるで振り回すかのように、それぞれの腕を彼女に叩き付けていく。
単調ではあるものの、やはりその威力と手数、そして無作為な攻撃は神経を削られる。
リベラルの闘気なら数発耐えられるが、それでも数発だけだ。とてつもない圧力が掛けられていく。
『武』を超える圧倒的な『暴力』。
それが闘神バーディガーディの強さだった。
「っ……!!」
いくつか被弾を許すが、それらは『止水』によって受け止める。
しかし威力を殺し切ることが出来ず、彼女の顔や身体から流血が見られるのだった。
「その程度か……銀緑よ……!」
「まさか! そんな訳ないでしょう!」
バーディガーディの猛攻の中、リベラルは力の流れを掴んでいく。
やがて被弾数は減っていき、自身のペースを掴むのだった。
右上段、左上段、かと思えば蹴り。そして中段の諸手突き。それらは見事に受け流され、バーディガーディはたたらを踏む。
流石はラプラスの娘だと彼は内心で褒めるが、この程度では倒すことなど不可能だった。
「千日手になったところで……有利なのは……吾輩だ……」
結局なところ、バーディガーディにダメージを与えられなければ勝てないのだ。
攻撃が効かない闘神と、攻撃を避けているリベラル。ジリ貧である。
このまま行けばどちらが勝利するかは言うまでもないだろう。
臆することなく闘神は拳を振り上げた。
「いいえ、三度目はありません」
だが、こうなることが分かっていたリベラルは次の一手を打つ。
「ーー『
それは彼女の切り札。
龍神と戦うために初代五龍将が編み出した肉体変化の魔術。
寿命すらも使い、事前の準備も必要な奥義だ。
けれど未来で使われたものと、少し様子が違った。
リベラルの身体は大きくならないし、顔もドラゴンのように変化もしていない。
だが彼女の四肢は一瞬にして竜のように緑鱗が覆い、鋭い鉤爪へと変化していく。
本来ならば長い詠唱を必要としていたそれは、変身を制限することで詠唱が省略されていたのだ。
振り上げられていた闘神の拳に、リベラルも合わせるように振り抜く。
「ーーぬぅ!!」
「ーーハァァ!!」
衝撃が響き、大気は震える。
ぶつかりあった銀鱗の拳と金色の拳は、互いに後方へと弾けた。
バーディガーディは他の腕で追撃するが、そこに蹴りが突き刺さり鎧と腹部を抉りながら何十メートルも吹き飛んでいった。
「……フハハ、それが切り札か」
「ええ、そうです。威力は跳ね上がったでしょう?」
「そうだな……だが……その程度では無意味だ……!」
今までの光景を蒸し返すかのように、バーディガーディと闘神は再生する。
威力は先程まで使用されていた『龍門解放』と大きな差はなかったのだ。
闘神にダメージを与えられない事実に変わりなかった。
だが、その言葉にリベラルは鼻で笑う。
「何か勘違いしてるようですが……私が『
「ほう……ならば、何を求めた……?」
「ーー私が自身の技に耐えられるようにすることです」
その瞬間、音の消えた世界で光が奔る。
それは剣神流の奥義だ。
誰にも止められない防御不能の一撃。
ーー光の太刀。
それがバーディガーディの胴体を、闘神鎧ごと真っ二つにしていた。
「な、ぬ……!?」
「これで貴方の命に手が届く」
リベラルは龍聖闘気を纏えない。
オルステッドのように光の太刀を放てば、自身の腕が持たないのだ。
そのため、無手で放てる技には制限が掛かっていた。
だが、
闘神の身体が再生していく。
けれど構わず次の技を放った。
「略奪剣界」
動くバーディガーディの身体に剣閃が走る。
肉体の太い部分を狙わず、関節の比較的細い部分を狙うことで、彼の身体は斬り飛ばされていた。
もはや何も出来ないバーディかに思われたが、再生した腕の本数を二本に減らし、他の部位に回すことで斬り飛ばされないように対策する。
「ぬ、おぉぉぉぉぉ……!!」
何とか動ける程度にダメージを抑えた彼は、雄叫びを上げながら突進した。
「『鯨波』」
「ぐ、ぬぅ……!」
強烈な振動により僅かに身体を硬直させるバーディ。
けれどすぐに復帰し、その豪腕を振り下ろした。
「やはり剣術でないと効果は薄いですか」
水神流奥義、『流』。
ぬるりと滑ったかのような感覚と共に、バーディガーディの腕は斬り飛ばされる。
今までのように受け流すのではなく、完全なるカウンターで大きなダメージを与えられるようになっていた。
それでも彼は怯むことなく突進し、リベラルを弾き飛ばした。
カウンター直後で無防備に受けてしまい、衝撃によって吐血するが、すぐさま治癒魔術で治し体勢を直す。
闘神は既に身体を再生させて再び突進していた。
「不死瑕北神流ーー『不帰』」
真正面から突撃するバーディガーディに合わせ、上段に構えたリベラルは腕を振り下ろす。
不死に消えない瑕を与える一撃だ。
ここで決着を付けるつもりだった。
「ぬおぉぉぉぉぉぉ!!」
「なっ」
が、バーディガーディは腕を一本にして巨大化させ、真っ向から一撃にぶつかりあったのだ。
あまりの威力に彼女は腕を振り切ることが出来ず、逆に押し込まれてしまう。
そのままバーディガーディの一撃は、リベラルの胴体を捉えるのだった。
「ガッ、ハ!」
胸部を陥没させ何十メートルも弾け飛ぶリベラル。
ほんの僅かに意識が途切れたがすぐに覚醒し、バーディガーディが追いつく前に治癒魔術で怪我を治すのだった。
「簡単には終わらせてくれませんか……!」
「当然……である……!」
猛スピードで迫りくる姿に、彼女は方針をひとつ変えることにする。
(勝負を焦ったらいけませんね……確実な手を打たせてもらいますよ)
深呼吸し、呼吸を整える。
明鏡止水の心を忘れず、眼前に迫った闘神を待ち構える。
再び巨大な一本の腕が振り下ろされた。
リベラルは両手を使い、受け流す。
そのまま振り向きざまに貫手を放ち、バーディガーディの心臓を貫く。
「無駄だ……!」
その程度では怯まず、二本腕に戻した彼は腕を振り下ろそうとする。
だが怯まないことは彼女とて想定していた。
「甲龍手刀『一断』」
バーディガーディの体内で貫手は光り輝き、リベラルはそれを振り下ろす。
ビクンと硬直したかと思えば、縦に体を真っ二つとする。
だが、それでもバーディガーディは動き続けた。
吹き飛ばされないように踏ん張り、半分に身体が分かれながら両手を振り下ろしていたのだ。
あまりの出鱈目さにリベラルは当然防げず。
逆に彼女が弾き飛ばされるのだった。
「強靭過ぎませんか……?」
空中を吹き飛び、地べたに叩きつけられたリベラルは、闘神の理不尽な耐久力にもはや呆れてしまう。
そこに暴走列車のように闘神が突っ込んでくるが、既に彼女は勝つための準備を終えていた。
「ぬおぉぉぉぉぉ!!」
先ほど同様にぶん殴るバーディガーディ。
リベラルはそれを防ぐこともせず、再度吹き飛ばされる。
けれど何事もなかったかのように立ち上がるのだった。
そこに再びバーディガーディは拳を振り上げる。
「ーー貴方の拳はもう十分観察しました」
ぽすっと、まるで布団を叩いたかのような気の抜けた音が響く。
バーディガーディは拳を外していない。
リベラルの胸元に確かに命中している。
だが、彼女は何事もなかったかのようにその場から動いていなかった。
「奥義『止水』。その真髄は魔術以外の攻撃を無力化することにあります」
「……ぬ、ぉぉぉぉ!!」
「魔眼を使わずとも、貴方の攻撃を見切るには十分過ぎるほど観察出来ました」
腕を再び六本に増やしたバーディガーディは、二本の腕でリベラルを拘束する。
そして残った四本の腕で、拳の雨を浴びせかけた。
右上段。止水。リベラルはダメージを受けていない。
左上段。止水。リベラルはダメージを受けていない。
右中段。止水。リベラルはダメージを受けていない。
左中段。止水。リベラルはダメージを受けていない。
『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』『止水』ーー。
「貴方の攻撃はもう私には届きません」
何十発、何百発。
一体いくつ放ったのか分からない。
けれどリベラルは、もはや血を流すことなく、その拳を受け止められるようになっていた。
いつの間にか、立場が逆転していたのである。
最初はバーディガーディの防御力を突破出来なかった。
途中からは防御力を突破出来たが、それでも対等な条件下になっただけだった。
だが最終的にリベラルは闘神から一切のダメージを受け付けず、致命傷を放てるようになっているのだった。
魔術を扱わず、純粋な肉弾戦を行うバーディガーディに、ここから勝つための術はなくなったのである。
即ちーーリベラルの勝利が確定した瞬間でもあった。
「…………銀、緑……」
「終わりにしましょう、バーディガーディ」
拘束していた腕を振り払ったリベラルは、それでも諦めず伸ばしてきた全ての手を光の太刀で斬り飛ばす。
完全に無防備になったバーディガーディの身体。
観戦していた者たちも、リベラル自身も勝利を確信しただろう。
そして上段で構えた彼女は、不死瑕北神流の奥義で終わらせようと腕を振り下ろしーー。
ーーーー
ーー違和感は初めからあった。
未来の日記により、闘神の戦い方や戦闘スタイルを知ったリベラルは、どうしても拭えない疑問があったのだ。
それは第二次人魔大戦の結末について。
黄金騎士アルデバランと魔界大帝キシリカキシリスが一騎打ちをし、最後の一撃にてリングス海が発生したとされている。
その実態は伝承とは違い、魔龍王ラプラスと闘神バーディガーディとの戦いだったのだが……そこはいいだろう。
問題は、魔龍王ラプラスが闘神に勝利出来なかったことである。
魔龍王ラプラスは、この世界にて最上位の実力を持つ。それは現在の七大列強からも分かることだろう。
闘神は確かに強い。
不利な条件下だったとは言え、リベラルも未来で負けてしまった。
対策を立てて挑んだ今回も、苦戦はした方だろう。
そう、強いのだが……果たして当時のラプラスが倒せないほど強かったのか?
答えは否だ。
ラプラスはリベラルと違い、呪いによる武力の制限を受けていない。
全ての力を使って、闘神と戦った筈なのだ。
断言出来る。
今の闘神に、ラプラスが負けることはあり得ない。
だからこそ、違和感があったのだ。
ーー闘神の実力は、本当にこの程度なのか、と。
けれど、いくつかの要素を結び合わせれば、答えは導き出される。
過去にあった魔龍王と闘神の結末。
闘神鎧の性質。
そして、考察していた創造神の魔力。
そこから導き出される答えはーー。
ーーーー
ーーリベラルは胸に穴を開け、地面に倒れていた。
地面は巨大な陥没とともに、血溜まりが出来上がっている。全て彼女の血だ。
数瞬だけ意識を失っていたため、何が起きたのかすら理解出来なかった。
気付いた時には、この有り様になっていたのである。
血反吐を溢しながら治癒魔術で治し、リベラルは足元をふらつかせながらも立ち上がる。
闘神は遠くで立ち尽くしたまま、微動だにしない。
その隙に休憩を行い、彼女は何が起きたのかをゆっくりと思い出していく。
(……そう、あれは止めの一撃を放った瞬間の出来事でしたね)
リベラルは無防備なバーディガーディに『不帰』を放ちーーポスっと気の抜けたような感覚とともに受け止められたのである。
唖然としていた隙に、今までの腕力任せではない鋭い一閃が顎に突き刺さり、そこからの記憶がなかった。
胸の穴からして、強烈な一撃を食らったのは明白だろう。
忘れる訳が無い。
あれはーー魔龍王ラプラスの技だった。
幼少期に何度も受けてきたからこそ、その事実を理解できた。
「そうですか……違和感の正体は、そういうことですか……」
緩やかに動き始めたバーディガーディは、今まであった意思を消失させていた。
そして素手であった六腕は、その戦闘スタイルに合わせて最適化された様々な武器が握り締められる。
闘神鎧。
黄金の光が帝級の魔術でも無効化し、疲れも痛みも感じず、常に最高の力で戦うことができる。
しかし、そのあまりの魔力ゆえに自我を持ち、装着したものの意識を乗っ取る。
装着者の生命力が完全に尽きるまで、脱ぐことはできない。
呪われた鎧で「最高傑作にして最狂の失敗作」と称されている。
ああ、つまり、そういうことなのだろう。
バーディガーディは意識を乗っ取られたのだ。
彼の意思は消え去り、呪われた魔力がその身を動かす。
先程の出来事でハッキリ理解した。
闘神鎧は、蓄積された武術を扱うことが出来るのだろう。
鎧があらゆる武器を錬成し、あらゆる武術を模倣し、戦況を見極め、千を超える奥義から最適なものを選び放つようになる。
これが、その正体なのか……。
「第二次人魔大戦……お父様を相打ちにまで追い詰めたのは、貴方ですかーー闘神鎧」
創造神の意思の残骸にて動く、最凶の存在。
魔龍王ラプラスを二つに分けた元凶。
七大列強三位ーー『闘神鎧』。
「……いいでしょう。私は貴方を超えて見せる」
父親の仇。父親の技。
今まで取ることのできなかったものである。
あらゆる因縁が、この場に収束していた。
闘神鎧と銀緑。
歴史に名を刻む最後の戦いが始まる。
ヴリトラ発動!
ーー伝説の闘神バーディガーディに、4200年振りの緊張が走る。
Q.ゼニスやリーリャ、それにノルンとかアイシャは?
A.空中城塞には行かずルーデウスたちの子どもの世話を買って出ました。その他にいない人達もそれぞれの事情で来ていません。ジュリはいるけど発言してないだけです。
Q.ヴリトラ。
A.部位限定による詠唱省略、更に対価である寿命を削ることもなく発動可能になった。それにより龍聖闘気に匹敵する硬さになったので、リスクなく全ての技を扱えるようになった。
Q.ヴリトラ後の闘神。
A.一番の課題である攻撃力不足が解消されたため、闘神はフルボッコ。何とか抵抗していたが結局敵わず。
Q.止水。
A.オリ技の中で実は最も凶悪だった奥義。しかし魔術には無意味なため、バーディガーディ完封用の技に昇華していた。
Q.闘神鎧の自我。
A.私なりの考察&記述通りです。一章12話にてラプラスがどうやって作成したのか分からないと答えた原因であり、世界のバグだとリベラルが思ったことの答えです。八章失伝で記述した予想を持ってこさせて貰いました。
そのため、闘神鎧は物体でありながら七大列強三位に位置するほどの力を秘めており、理性を失った際に登録された武術を自在に扱えると考察。
Q.最後の闘神鎧。
A.上記で説明した通り。元々の防御力+腕力、そこに歴代の装着者の技能と魔龍王ラプラスの技術が組み合わさり化物に進化しました。
『圧倒的暴力』と『圧倒的武術』の2つが組み合わさり最強状態です。