無職転生ールーデウス来たら本気だすー   作:つーふー

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前回のあらすじ。

闘神鎧「(粉砕!玉砕!大喝采!)」
みんな「闘神強すぎるけどリベラルを信じよう」
リベラル「感謝しますよ、貴方の強さが私に進化を齎した」

これにて本編終了です。長い間お付き合い頂きありがとうございました。
話数に対して完結までの期間があまりにも長すぎますが、皆様のお陰で何とか終えられました。蛇足予定はありますが、そちらはのんびり書きますので気長にお待ちください。


最終話 『未来へと続くお話』

 

 

 リベラルとバーディガーディとの決着から、数ヶ月が経過した。

 龍族としての強靭な肉体もあったお陰か、リベラルの回復自体は比較的すぐに終わった。

 どちらかと言えば、彼女本人よりもそれ以外のことで時間を取られることか多かったのである。

 

 というのも、決戦の余波によって世界中に戦いの影響が起きたのだ。

 具体的に言えば、地震や津波である。

 2人のもたらした衝突は、各国の街を多くを倒壊させ、そして津波による被害を与えた。

 それによってオルステッドの施した、幾つかの布石が台無しになったりもしている。

 そのため、リベラルは世界各国に奔走し再興の手伝いに勤しんでいた。

 自業自得と言えばそれまでだが、黙って闘神にやられる訳にもいかないだろう。

 流石に人手が足りないため、ルーデウスたちも協力してくれるのだった。

 もちろん、オルステッドコーポレーションの宣伝も忘れない。

 

 因みにパウロはその状況に「自演じゃねえか」などとツッコんでいた。

 間違いではない。しかしヒトガミを倒すならば、それくらいの強かさは必要だろう。

 むしろ娘であるアイシャがここぞとばかりにその能力を活かし、ルード傭兵団の規模を更に拡大していた。

 

「ほうかほうか。やはりそれほどの影響があったのじゃな」

 

 串についた肉を食べながら、事の顛末を聞いていたキシリカ。

 現在のリベラルは、魔大陸へと足を運んでいたのだった。

 時間にルーズな種族であるため後回しにしていたが、復興の方に一段落ついたため報告しに来ていたのである。

 キシリカはジョッキに入ったお酒を一気に飲み干すと、「プハーっ!」と声をあげながらチラリと隣を見るのだった。

 

「ずいぶん派手にやったのおーーバーディよ」

 

「フハハハ!! 闘神鎧を身に纏い戦ったのだ! むしろその程度で済んで良かったであろう!」

 

 隣にいたのはバーディガーディである。

 彼の姿は以前のような巨漢ではなく、キシリカと並ぶほどに身体が小さくなっていた。

 戦いの影響で肉体の一部が消滅したため、身体も小さくなってしまったのである。

 

 決戦の後、リベラルは彼を殺さなかった。

 キシリカと交わした約束のこともある。

 第二次人魔大戦のことも、全てヒトガミが悪いということでリベラルは納得したのだ。

 再びヒトガミ陣営につかれる可能性もあるが、決戦装備である闘神鎧は空中城塞に封印されている。

 肉体の大半を消失し弱体化した上、闘神鎧もない。その状態のバーディガーディならそこまで脅威がないと判断したのだった。

 もちろん、オルステッドたちからの許可も貰っている。

 

「銀録よ、貴様も飲むがよい。吾輩の持つ秘蔵の酒である!」

「あ、どうも」

 

 渡されたコップに、波々とお酒を注がれる。

 リベラルは素直にそれを一気に飲み干し、ほのかな辛みと甘みに「ふぅ」と一息吐くのだった。

 

「これ、貴重なお酒じゃないんですか?」

「うむ、これは我が父ネクロスラクロスの残した秘酒である! どうだ、美味いだろう! フハハハ!!」

「おぉう、そんな貴重なものを……」

「構わぬ! これは吾輩なりの友好の証と思えばいい!」

 

 今まで敵対していたと思えないほどのフレンドリーさにたじろぎつつ、しかしと彼の好意を受け取る。

 

 決戦の後のバーディガーディは、今のように友好的ではなかった。

 ただ自身の敗北を受け入れ、神妙に処遇が決まるのを静かに待っていたのだ。

 その間は特に会話と言うほどのやり取りもなかった。

 ただ一度だけ、リベラルが語り掛けただけである。

 

『同じ台詞ではありますが、今の貴方に言うのは初めてですかね』

 

 かつて未来で告げた言葉だ。

 

『……いつまで龍族と魔族というしがらみに囚われているのですか? 私もキシリカ様も、既に乗り越えてますよ』

 

 バーディガーディは返事もせずに、それを黙って聞くだけだった。

 正直、龍神陣営に付いてくれるとは思っていなかった。

 元々は穏やかな性格であり、戦いを好まない魔王なのだ。

 中立にさえなってくれれば、それでいいと思っていた。

 けれどバーディガーディは、己の意思でこちらの味方になることを決めたのである。

 

「リベラルよ、感謝しておるぞ」

「どうしたんですか突然?」

「お主は妾との約束を守ってくれたからの」

 

 キシリカの言葉に、リベラルは苦笑する。

 どちらかが死ぬという結末を回避出来たのは、運が良かったということもある。

 因縁を終わらせたいという思いもあり、約束を守るつもりはあった。だが、闘神鎧の強さを考えればとても困難な約束だ。

 あの場面で奥の手に匹敵する手札を作り出せなければ、どちらかが絶命するまで戦いは続いていただろう。

 

「構いませんよ。私と貴方の仲じゃないですか」

 

 そう言いつつ、テーブルの上で仁王立ちしていたキシリカの太ももをペロリと舐める。彼女は「うひゃあ! ばっちいのお!」と言いながら服でゴシゴシ拭き取った。

 因みに汗臭くてしょっぱい味だった。

 バーディガーディはそれを見て愉快そうに笑っている。

 

「そう言えば、バーディ陛下は何故こちらの味方になってくれたのですか?」

「ふむ、吾輩が負けたからということもあるが……うむ、そうだな。馬鹿馬鹿しくなったのだ」

「馬鹿馬鹿しく、ですか」

 

 その言葉に、彼は大きく頷く。

 

「過去のことを気にしていたのは吾輩だけだったのだ。アトーフェもキシリカも、そして亡き父ネクロスラクロスも。誰も龍族に確執を持っている者はいなかった」

 

 アトーフェはペルギウスと因縁があるものの、好き嫌いの範疇に収まっている。そして龍族全体のことに関しては、最早認識すらしていない状態だ。

 キシリカは言うまでもないだろう。リベラルとよく分からないじゃれ合いをしている程だ。邪険にし合っているのも見たことがない。

 ネクロスラクロスも、ラプラスのことを良き友人と語っていた。本気で争ったのも、ラプラスが龍神に拾われる前の遥か昔のことである。

 魔族全体で見ても、龍族が嫌いなどと言っている者は皆無だ。

 そのことを考えれば、己一人だけが龍族だとか魔族だとかに固執しているのも馬鹿みたいに思うだろう。

 

「どちらかと言えば、中立になると思ってました」

「吾輩もそれは考えた。ヒトガミと関わってもロクなことにならぬからな」

「では何故?」

「リベラルのことを友人と認識したからである」

 

 とても端的で分かりやすい理由だ。

 友であろうとも敵対するときは敵対する男だが、今回ばかりは訳が違った。

 

「そうであるな……ならば吾輩に願うといい。一生に一度の願いならば、聞き入れんこともない」

 

 ニヤリと笑みを浮かべる彼に、リベラルもまたフッと笑うのだった。

 

「バーディ陛下、一生に一度だけの頼みがあります。ヒトガミを倒すまでの間、私と協力してくれませんか?」

「フハハハ!! 良かろう! 一生に一度ならば仕方あるまい!」

 

 そうして、バーディガーディは正式に仲間となった。

 

 長寿であることを考えれば、一生に一度の頼みというのは地味に痛いものではある。

 しかしヒトガミさえ倒せれば、もはやいがみ合う必要もないのだ。

 もちろんヒトガミを倒した先の遠い未来で、関係が拗れて敵対する可能性もあるだろう。

 だがそれはそれ、これはこれだ。

 それはその時に考えれば良い話である。

 

「そう言えば、最後にヒトガミは何か言ってましたか?」

「うむ、最後に見たヒトガミの姿は口では説明しにくいが、まさに敗北者の姿であった。もう貴様を狙うことはないだろう」

「……? 私を狙わない?」

 

 バーディガーディの言葉に、リベラルは疑問符を浮かべる。

 彼女は人族と違い長寿だ。

 放って置いても勝手に死ぬことはないし、最後の決戦にも参加することになるだろう。

 オルステッドさえも、ときおり使徒に襲われるのだ。

 だというのにも関わらず、その発言に至った意味が分からなかった。

 

「そうであるな……詳しく教えようではないか。ヒトガミの言葉を」

 

 

ーーーー

 

 

 真っ白な空間の中で、モザイクの掛かったような男ーーヒトガミは、今までにない以上に怒りを露わにしていた。

 

「ふざけるなよ」

 

 端的に告げられた言葉には、怒気が込められていた。

 

「何でこうなるんだよ。意味が分からないよ。何なんだよアイツは」

 

 癇癪を起こしたかのように、ヒトガミは頭を掻きむしる。

 

「お前が、お前がアイツを殺していればこうならなかったのにさあ……!!」

 

 バーディガーディは何とか宥めようとしたが、無駄だった。

 

「龍鳴山で殺しておけよ! 何で放置したんだ? あの時のお前はアイツの生殺与奪を握っていただろうにさ!」

 

 もちろん第二次人魔大戦の当時は、ヒトガミはそのような指示を出していない。

 後に起きる転移事件以降の未来が消失していたことに興味を持ったヒトガミが、敢えてリベラルを放置するように告げたのだ。

 その結果が現在に至るのだが、もはやその事実すら忘れて怒り狂う。

 

「もういいや、リベラルにはもう関わらないのが正解だ。あーあ、反則じゃないかあんなの」

 

 投げやりとも言える程度になるヒトガミ。

 一体どういうことなのか分からなかったバーディガーディは、そのことについて尋ねた。

 

「アイツ……一体何が原因か知らないけど、強敵と戦うたびに進化するようになったんだよ。

 君に見せたあのよく分からない変身も、元々は僕との戦いで編み出すものだった。

 けど、君との戦いで編み出されてしまった。それと同時に僕の未来にも変化が生じたよ。

 僕と戦う時に『龍神の神玉』から力を引き出す『龍神〈オルステッド〉』の重ね合わせも編み出すんだ。

 君と戦った時の倍は強くなっててさ、本来の未来の倍以上は強くなってるんだ。もう訳が分からないよ」

 

 つまり、リベラルは今後強敵と戦うたびに全力を尽くしーーその度に新たな極地に至るようになっているらしい。

 死線を乗り越えるたびに必殺技を増やすような、まさに物語の主人公のような覚醒を繰り返すのだ。

 強敵をあてがう度にその力を増すのであれば、放置する以外ないだろう。

 

「それにアイツ、『龍神の神玉』以外の力で僕らの領域を足に踏み入れたからね。

 ペルギウスの奴も知らない間に強化されるし、『五龍将の秘宝』もなく無の世界に来られる方法を作り出すし……もうめちゃくちゃだよ」

 

 諦観に近い呟きだった。

 排除出来なかったときのリスクが大きすぎたのだ。

 

「戦いから遠ざけるのが一番かな……。いや、ハニートラップ……は流石に無理か。それならラプラスを利用すれば……」

 

 ブツブツと呟き、そんな姿を見ながら白い世界は閉ざされるのだった。

 

 結局、リベラルはヒトガミの想定を超えることが出来たのだ。

 その結果として、今後狙われることがなくなる。

 それによってどうなるのかは、その時になるまで分からないだろう。

 

 

ーーーー

 

 

 魔大陸での用件を済ませたリベラルは、久し振りにラノアへと戻ることになった。

 まずはオルステッドの元へ行き、バーディガーディのことについて報告するのだ。

 事務室の中に入りそのことを伝えると、オルステッドはいつもより柔らかい雰囲気となる。

 

「そうか、良くやった」

「ふっ、当然です。もっと褒めて下さっても構いませんよ」

「しかしヒトガミはもう、リベラルを狙わないと言ったのか……」

 

 彼女の言葉は綺麗にスルーしつつ、オルステッドは最後に出会ったヒトガミのことに触れた。

 

「恐らく嘘ではないだろうな」

「経験則ですか」

「ああ、俺も剣神と北神、そして魔王の3人と戦った後は直接的な攻撃はなくなった。今の時代に俺たちをどうにか出来る存在は、もういない」

 

 確かにその通りだ。

 七大列強の大半が、文字通りこちらの戦力と化したのだ。

 技神は味方に引き込む予定はないが、敵対することもない。

 闘神鎧は空中城塞に封印中だが、バーディガーディは味方となった。

 死神は中立だ。王竜王国の問題が全て片付けば、仲間になってくれる約束はしている。

 北神はオルステッドの忠実な下僕と化している。

 オルステッドも含めれば、五大列強である。安心感が凄まじいだろう。

 仲間外れになったのは魔神と剣神だけである。

 剣神はパワーアップして襲ってくる可能性があるものの、そこにヒトガミの意思はない。

 魔神も復活位置の固定化には成功してるので、ラプラス戦役も起きることがない。

 

 リベラルがヒトガミの立場なら、一度諦める。その上で先を見据えた布石を打つことにするだろう。

 それが有効になるかは分からないが、少なくともそれ以外に手段がないのだ。

 

「恐らく周囲の戦力を削る方向になるだろう」

「つまり、今までとあまり変わらないということですね」

「そうだな。ルーデウス辺りが狙われる可能性もあるが、奴なら大丈夫だろう」

「そうですね」

 

 あっけらかんとそう告げたオルステッドだが、実はリベラルも同様に思っていた。

 本人が聞けば否定するだろうが、ルーデウスの実力は世界有数の域に到達している。

 魔術だけならば、リベラルとも渡り合えるだろう。

 というか、彼は既に剣神ガルを単独撃破してるのだ。

 そんなことを出来る存在は、この世界にほとんどいない。

 実質七大列強の六位になっていると言っても差し支えないだろう。

 

「しかしルディも強くなりましたよね。魔導鎧も使えば私たちとも戦いになるでしょうからね」

「…………」

「これからも研鑽を続ければ、魔神に匹敵する実力もつけそうですね」

「…………」

「人族の身体では神級魔術に耐え切れないので限界を迎えるでしょうが、それも私の『龍之怒(ヴリトラ)』のような肉体変化の術を使えば解消しますし」

「…………」

「魂の方も、転生体であることを考えれば耐えれるでしょう。ルディは本当に伸び代しかないので先が楽しみですね」

「…………」

 

 楽しそうにルーデウスのことを話すリベラルに対し、オルステッドは沈黙を続けていた。

 途中でそのことに気付いた彼女は言葉を止め、彼の様子を窺うのだった。

 

「……リベラル」

「どうしましたか?」

 

 神妙な表情で名前を呼ぶオルステッド。

 そのことに彼女は疑問に思いつつ、返事をする。

 

「ーー感謝する」

「えっ?」

「ヒトガミとの戦いで、ここまで順調に進められたのは初めてだ」

「…………」

「リベラルがいなければ、こうはならなかっただろう」

 

 感謝を口にした彼は、僅かに頰を緩めていた。

 今までに見たことのない表情だ。 

 普段の表情からは考えられないほどに、今のオルステッドは優しい顔をしていた。

 

「闘神は倒すことが出来た。ラプラスの復活位置も固定出来た。そして……今の俺には仲間がいる」

 

 これらは彼一人では成し遂げられなかったことだ。

 闘神は今までにいない敵だったが、ラプラスは必ず立ちはだかる難敵である。

 

「呪いの克服も出来た。魔力を回復する手段も確保出来つつある。これ以上の結果を、俺は知らないーー今回こそ、ヒトガミに勝つことが出来る」

 

 今まで数え切れないほど失敗を繰り返して来た。

 本来の歴史との相違点を探し、最善の未来を掴むために何度も転生した。

 今回は一番上手く事が進んでいる世界だろう。

 そしてそれは、紛れもなくリベラルが居たからこそ生まれた結果だった。

 

「……ふふ、そうですか」

 

 にんまりと笑みを浮かべた彼女は、そそくさと移動しオルステッドの背中を押す。

 彼は何事かと思いつつも抵抗せず受け入れ、そのまま外へと押し出されるのだった。

 

「ほらほら、ボーっとしてないで皆の場所に行きましょう」

「……何故だ?」

「一人で引きこもってても仕方ないでしょう。そういうのは仲間とともに分かち合うものですよ」

 

 そう促され、オルステッドは皆の元へと引きずり出される。

 ザノバやジュリ、ジンジャー、クリフやエリナリーゼ、アイシャやノルン、パウロにゼニス、そしてリーリャ。

 シルフィ、ロキシー、エリス、ルーデウス。

 ペルギウスの元にも行った。彼は愉快そうに受け入れた。

 誰もオルステッドを拒絶したりなんかしない。

 仲間として彼を受け入れ歓迎する。

 改めて、その事実を噛みしめるのだった。

 

「社長……いえ、オルステッドの時間は皆と違うかも知れません。けど、今歩んでいる時間は確かに一緒なんです」

「そう、だな……」

「私たちの戦いはこれからです。それでも今はこの時間を共有しましょう」

 

 そこでリベラルは「あっ」と声を上げ、オルステッドの方へと向き直る。

 

「そう言えばさっき私に感謝してるって言いましたよね? 私が言った時にはガン無視したのに。それじゃあ感謝の気持ちを見せてもらうためにまずは私の靴でも舐めてもらいましょうか。ほらほら私のお陰で今いい感じなんですよねえ? それくらいしてもバチは当たりませんよ?」

「黙れ」

 

 ボスっと彼女の頭を掴めば、オルステッドはそのまま彼女の髪の毛をグチャグチャに掻き乱す。

 寝癖のように髪の毛が乱れたリベラルは必死に髪型を整え、その間に彼は先へと進んでいくのだった。

 

「ああ! 待って下さい社長! 今夜はルディの家で私が料理を振る舞う予定なんです! 今から一緒に行きましょうよ!」

「……はぁ、仕方ないな」

「やったぁ」

 

 そうして、2人はルーデウスの家へと再度向かうのだった。

 その日のオルステッドはとても上機嫌だった。

 

 

 

 

 終章 ”それが私の物語“ 完

 

 

 

 

 これから先、私たちの戦いはどうなるか分からない。

 確かにラプラスの復活位置は固定したし、オルステッドは仲間を得た。そして呪いも克服しつつある。

 ヒトガミを相手に王手を掛けたと言えるだろう。ほとんど詰みと言っても過言ではない。

 けれど未来がどうなるかなんて分からないのだ。

 オルステッドにも分からないし、未来を見てるヒトガミだって確実なことまでは分からない。

 彼らは互いに未来を決めるために戦っているのだから。

 

 もしかしたら、ここから巻き返される可能性もあるだろう。

 絶対ということは、絶対にないのだ。

 未来は、無数に存在する。

 

 

 

 

『ーー勝ったと、本気で思っていたのかい? 僕が諦めると、本気で思っていたのかい?』

 

 真っ白な世界の中、人族の神は憎悪を剥き出しに言った。

 まだ終わっていないと。この程度では終わらないと。

 戦いは、これからが本番だと。

 

 

『ーー人族を滅する。それこそが我が使命。私に残された断片だ』

 

 魔族の頂点に立つ魔神。

 ヒトを憎悪する魔龍王の片割れ。

 それは思いもよらぬ形でこの世に降り立つこととなった。

 

 

『うるさい! 誰も私を認めてくれない! なのにどうしてこれ以上頑張れって言うの! 努力を求めるのよ!』

 

 ヒトガミを倒す希望として集まったルーデウスの子どもたち。

 けれどそれは、彼らに、彼女らに過酷な使命を背負わせることとなった。

 

 

『ーー私は、今度こそ忘れない。今度こそ離さない。そのために戻ってきたんだ』

 

 カミを打倒せんとする魔龍王の片割れ。

 記憶を失ってなお、彼は父親であろうとした。

 

 

『思い出しましたわ。わたくしは……いえ、私は龍鳴山で眠り、使命を忘れていたんですね』

 

 耳長族の少女は、その使命を思い出した。

 ずっと1人にしてしまっていた家族のことを思い出し、優しく抱擁する。

 

 

『フハハハ!! 一生に一度の頼みであろう! 吾輩がここは受け持とう!』

 

 金色の鎧を身に付けた魔王は、約束を果たさんと戦場に姿を現した。

 最強の鎧を身に纏い、かつての伝説がその地に舞い降りるのだった。

 

 

『ーーよかろう。我も黙って殺られるつもりはない』

 

 その身に秘宝を宿す甲龍は、獰猛な笑みを浮かべて立ちはだかる。

 互いの使命を掛け、五龍将はぶつかり合う。

 

 

『ーー約束、忘れなかったわよ』

 

 異世界へと帰還した、前世からの親友。

 身も心もボロボロとなっていた私は、その姿に堪え切れず涙を流してしまうのだった。

 

 

『君の父親であることを誇りに思うよーーありがとう』

 

 復活した魔龍王。

 その姿は昔と変わらず、ずっと優しい父親のままだった。

 

 

『ーー決着をつけよう、ヒトガミ』

 

 世界最強の龍神と、六大神ヒトガミ。

 幾度となく世界を繰り返した果てに、辿り着いた。

 物語の終わりを告げる最後の戦いが、始まる。

 

 

 

 

 どれこれも、起こり得る未来だ。

 けれどどんなことが起きようとも、決して私は立ち止まらないだろう。

 何故なら私はーー。

 

「ーールーデウスが来たら本気出す、ですからね」

 

 そう誓ったのだ。

 だからこそ、前に進み続けよう。

 

「えっ? リベラルさんなんて言いました?」

「ふふ、何でもないです。ルディに影響を受けちゃっただけですよ」




くぅ疲。これにて終了です。
長らくありがとうございました。
蛇足編に関しては幾つか考えています。
パウロのお話(本来の歴史のことを知り、改めて家族を大切に思う話)。
ゼニスのお話(ゼニスの優雅な一日)
ナナホシのお話(日本に帰還した後のお話)
老デウスのお話(長編予定で老デウス時空を救うお話)
お嫁さんズのお話(シルフィ、ロキシー、エリスとの交流をあまり書けてなかったので、そのお話)
ガルのお話(剣神のその後のお話)
ルイジェルドのお話(ルーデウスとエリスを連れて遊びに行くお話)
まあ、多すぎるので全部書くかは不明です。ふんわり頭に浮かんでいるだけで構想とかは全然決まっていませんので。
Q&Aはなしです。気になることは感想欄で質問されれば答えると思います。
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