無職転生ールーデウス来たら本気だすー   作:つーふー

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前回のあらすじ。

パウロ「家庭教師の応募は一人やで」
ロキシー「私が本当の家庭教師です」
リベラル「ルーデウスとロキシーの運命には勝てなかったよ…」

さて、下らないあらすじはさておきまして。

皆様に待たせて起きながらこのようなことを告げるのは大変申し訳ないのですが、今回の話、私的には「失敗」してるように感じております。
ただ、そう感じてはいるのですが、どこが悪いのか理解出来てません。単に話が陳腐なのか。それとも展開に起伏がないのか。はたまた文法がそもそもおかしいのか。話のテンポが悪いのか。
なので、敢えて投稿することにしました。皆様の意見を聞きたく思いまして。
もしかしたら、私が失敗してる、と思ってるだけで、他の人からは普通だったり、面白く感じるかも知れません。勘違いの可能性もありますからね。
宜しければ、悪い点などを指摘してくださると幸いです。

※ジーナスが無詠唱の使い手→師匠の友人の男が、無詠唱の使い手に修正しました。
※銀緑(ぎんみどり)→銀録(ぎんろく)と修正しました。


4話 『銀緑のちょっとした伝説』

 

 

 

 ルーデウスを強くしようと考えたリベラルだが、別にすぐさま強化しようと考えてる訳ではない。当面は本来の歴史通り、ロキシーから得られるものを吸収してもらうつもりだ。

 そもそもな話、ルーデウスはまだ三歳の子供である。あまり無茶をさせて、成長に異常をきたされても困るのだ。取り合えず、徐々に強くなってくれればいいや、くらいの気持ちだった。

 

「うーん……」

 

 問題の育成だが、これにはリベラルも頭を捻らせた。未来のルーデウスは、完成された魔術師となるのだから。

 膨大な魔力、無詠唱、魔術の多彩さ、技量、知識、機転……並大抵の者では、ルーデウスに敵うことがない。接近されれば地面を変化させる『泥沼』で距離を取り、帝級に匹敵する『岩砲弾』で狙撃。そのふたつを繰り返せば、ほぼ敵無しだ。必勝パターンが構築されている。

 更には『魔導鎧』なる物まで作り出し、七大列強並の実力まで手にする始末。魔術師として完成されるので、手を加える必要がほとんどないのだ。

 

「剣術と…治癒魔術ですかね」

 

 そんなルーデウスの問題点と言えば、闘気を纏えないことと、治癒魔術の無詠唱が出来ないことくらいだろう。その他にもあるが、あまり詰め込み過ぎても他が疎かになる可能性もある。

 剣術については『ラプラス因子』によって膨大な魔力量の素質を得ている代わりに、一切の闘気を纏えないのが難点だ。残念ながら、リベラルではその問題を解消することが出来ない。遺伝子に直接組み込まれているようなものなので、手の施しようがないのだ。

 治癒魔術については、メカニズムが理解出来てないから無詠唱が使えなかった筈なので、その辺りのことを教えれば済むだろう。

 基本的な方針としては、早目の段階で魔術師として完成してもらい、生存率を上げてもらう予定だ。

 

 一先ず、ロキシーの教えで水聖級魔術師になるまでは、助言程度でいいと考える。分からないことを教える感じで。

 本気で生きることを誓ったルーデウスだが、彼は人間だ。休日のない月月火水木金金のような生活では、かつてのリベラルのように癇癪を起こして、本気で生きるのを止めてしまうかも知れない。もしくは、全てが中途半端になってしまったり。

 

「…………あ」

 

 そうして、時おり助言でも与えようと考えていたリベラルだったが、ひとつの問題に気付く。

 

「どうやってルーデウス様にお会いしましょうか……」

 

 ルーデウスは、ロキシーの卒業試験である2年後まで、一度たりとも外に出ることがない。魔術の実践のため、庭までは出てくるが、それ以上は外に踏み出さないのだ。

 

 彼は生前、よく夢を見ていた。

 日本がいきなり戦争に巻き込まれたら。ある日、突然美少女の居候ができたら。

 そんな起こり得ない非日常を妄想し、その中でのルーデウスは、超人のように全てが上手くいくのだ。

 しかし、妄想は妄想。現実が変わることはない。彼は後悔にまみれた絶望の日々に戻ってしまうことを、恐れていた。

 

 もしかしたら、これは夢なのではないかと。自分はまた妄想をしているだけじゃないのかと。一歩でも外へと踏み出せば、現実に戻ってしまうのではないかと、恐怖している。

 もちろん、これが夢であってたまるかと、自分に言い聞かせたりしているが、それでも踏み出せないのだ。

 どれほど本気になると誓っても、身体は決して付いてこない。

 

「……ロキシー様は偉大ですね」

 

 そんな彼を外に連れ出すのが、ロキシー・ミグルディアだ。だからこそ、ルーデウスは彼女を尊敬する。

 そしてそんな関係を、リベラルは見たかった。

 

 

――――

 

 

 1週間後のことである。

 

「――フンッ! ハァ!」

 

 早朝のグレイラット家の庭で、一人の男が木剣を手に素振りをしていた。言うまでもないが、パウロである。

 彼はS級冒険パーティー『黒狼の牙』の元メンバーであり、三大流派の剣術を上級まで修めた、天才剣士と呼ばれた男だ。隠居後も、こうして鍛練を怠らず、腕を研き続けていた。

 

 そんなパウロは、鍛練を一通り終え、滴る汗を拭いながら、庭の外へと顔を向ける。その視線の先には、食材を抱えたリベラルがいるのであった。

 

「や、やあリベラルさん」

 

 リベラルの存在に気付いたのは、鍛練を始めてから数十分後である。そこから鍛練が終わるまでの間、リベラルはずっと庭の外からパウロのことを見つめていたのだ。

 気を使われていたのか、終わるまで声を掛けられなかったので、無視をする訳にもいかず、ようやく彼女へと反応して近寄るのだった。

 

「おはようございます、パウロ様。朝から精が出ますね」

「……まぁ、曲がりなりにもこの村の騎士だからな。修練を怠る訳にはいかないさ」

「確かに、見事な太刀筋でした。流石は元“黒狼の牙”のリーダーですね」

「おまっ、知ってたのか……ああ、だからこんな辺境地まで来たのか」

 

 家庭教師の応募を出す際、当たり前だがある程度の個人情報を記載しなければならない。でなければ、依頼を受ける者なんて一生見付からないだろう。

 リベラルがどうして依頼の受理を確認することなく、いきなり現地に赴いたのかパウロは疑問であったが、ようやく府に落ちた。要は、有名人を一目見たいミーハーな気持ちがあったのだろう、と。

 まさか、自分がそこまで有名になってたとはな、とパウロは内心で照れる。

 

「しかし、この1週間どうしてたんだ? 何もしてやれなかったが、大丈夫だったのか?」

「フフン。こう見えて、腕に自信はありますからね。空き家を借りて、狩りや採取で凌いでますよ」

「それは…何かすまないな」

 

 実際にはパウロは何も悪くないのだが、この地に来てもらったのに、家庭教師として採用してやれなかったことに罪悪感を感じてしまう。

 だからと言って採用する訳にもいかないので、顔を逸らしながら謝った。

 

「いえいえ、元々はここで小銭を稼いでまた旅でもしようと考えてましたが…のどかでいいところではないですか。なので、しばらくはこの辺りでゆっくり過ごそうかと思いまして」

「そうか。この村のことは俺も気に入ってる……そう言ってくれるなら嬉しいもんだ」

「ですので、ロキシー様がいなくなってからでもいいので、家庭教師をやりますよ?」

 

 あっけらかんと言い放ったリベラルの言葉に、パウロは呆れた表情を見せる。

 

「なんだ、まだ諦めてなかったのか?」

「意地みたいなものですね。何十日も掛けて態々ここまで来たのに、何もせず帰るなんて嫌ですよ」

「とは言ってもな。それは君の自業自得だぞ?」

「だからこそですよ。それとも、パウロ様の剣術でも見て上げましょうか? 今なら三大流派の何れかが神級クラスになれるスパルタンコースで、金貨百枚! お得ですよっ!」

「嘘を言うな嘘を。それにそんな金持ってねぇよ。無理に決まってんだろ」

「そうですか…残念です」

 

 シュン、と落ち込むリベラル。

 当然の結果であった。

 

 パウロは冗談だと思い、軽く受け流してしまったが、実際には本気(ガチ)であった。もしも頷いていれば、リベラルは本気で彼を鍛えようと考えていたのだ。

 金貨百枚や神級は流石に無理かも知れないが、三大流派の何れかを聖級か王級なら可能だと考えていた。伊達に天才剣士と呼ばれてないだろうし、実際に彼の太刀筋を見た上での判断である。

 パウロを死なせないようにしたいなら、本人に強くなってもらうのが一番なのだから。それと、魔龍王の娘として、技術の伝授の意味も込めて。

 

 もっともそうなった場合は、無理やり鍛えたところで成果が出る訳もないので、本人にやる気を出してもらわなければならないのだが。

 

「まあ、いいでしょう。ところで、こちらに伺った用件なのですが……実は大量に食材が手に入ったので、お裾分けしようと思いまして。よろしければどうぞ」

 

 すると、リベラルは手に持っていた食材を幾つか渡そうとしてきた。パウロは目を丸くしながら、彼女へと視線を合わせる。

 

「こんなに沢山いいのか?」

「むしろ、私一人でこんなに食べきれるとでも?」

「……それもそうだな」

 

 女性一人で食べる量ではないな、と思い、パウロは素直に受けとることにした。

 既に解体されてる動物の肉や山菜、食用のキノコや燻製された魚と、選り取り見取りである。これほど集めるのは、それなりに苦労したことだろう。

 何かしらのお返しをしなければいけないな、とパウロは考え、まだ食事をしていなかったことを思い出す。

 

「折角だ。うちで朝食でも取っていくか? この食材のお礼代わりと言っては何だがな」

「では、遠慮なくお邪魔させてもらいます。……一人で食べるご飯は、寂しいですからね…」

 

 何処か影のあるその仕草に、パウロの食指が僅かに動いた。

 

「お、おう」

 

 かつて、女を節操なく食い荒らしていた男であり、それが原因でパーティーまで解散しているのだ。

 リベラルが美人と言うこともあり、妻子持ちにも関わらずドキッとしていた。見境がないのである。

 

「…………」

「あの、何か?」

「いや、何でもない」

 

 しかし、リベラルの全くない胸を見て、「ちっさ、やっぱないわ」と思うのであった。

 

 

――――

 

 

 ロキシー・ミグルディアが家庭教師となってから、1週間が経過した。住み込みとなったグレイラット家の寝室にも、慣れてきた頃である。

 まだまだ短期間であるが、彼女は先生としてルーデウスのことを見てきて、驚きの連続であった。

 まず、ルーデウスは無詠唱で魔術を行使するのだ。無詠唱の使い手は、ロキシーの知る限り、師匠の友人の男しか知らない。自分にも出来ないことをするのだ。探せば他にもいるだろうが、3歳の子供が既に使いこなしてるのは、どう考えても異常である。

 それと、要領の良さだ。ロキシーが教えたことを全て吸収し、とてつもない勢いで成長している。あまりの成長っぷりに、ルーデウスの将来に恐怖を抱くほどだった。

 

「ジーナスさんもこんな気持ちだったのでしょうか……」

 

 ロキシーは、かつて喧嘩別れしてしまった師匠のことを思い出す。互いの顕示欲の強さが、ぶつかり合ってしまったのだ。ロキシーは師匠のことを越えたと傲慢になり、師匠はそんな彼女にあれこれと口出しし、喧嘩になった。

 いずれ、自分もルーデウスのことを罵るような人になってしまうのだろうか、という漠然な気持ちを抱き、思わず顔を顰めてしまう。弟子に越されるかもしれない焦燥を感じていたのだ。

 

 それから顔を洗ったロキシーは、もうすぐで朝食が出来るとゼニスに呼ばれ、居間へと向かう。

 今日はルーデウスにどのようなことを教えようかと考えながら、居間への扉を開けば、そこにはいつもとは違う顔ぶれが、ひとつ増えていた。

 

「おはようございます、ロキシー様。じっとりした表情と相まって、とても眠そうな顔をしてますね」

「……リベラルさん?」

 

 思わぬ人物がいたことに驚き、ロキシーは隣に座っていたゼニスとパウロへと視線を向ける。そのことに気付いた二人は、笑顔を浮かべ、

 

「ああ、お裾分けにって食糧をもらってな。折角だから朝食に招待したんだ」

「そうねぇ、結構良いものが一杯だったから、私も腕によりをかけて作っちゃったわ!」

 

 純粋に嬉しそうな様子で、事情を語ってくれた。二人の食卓事情のことをロキシーは何も知らないが、やはり食糧を貰えるのはありがたいのだろう。ロキシーだって、貰えれば普通に喜ぶ。

 

「てっきり帰ったかと思ってました…」

「帰っても良かったのですけど、折角ここまで来たのでのんびり過ごそうかと。それに……」

 

 そこまで告げたリベラルであったが、唐突にロキシーに近付き、耳元へと口を寄せる。

 

「パウロ様ってグレイラット家の者じゃないですか。なので、どうにかここでコネを作り、次の職探しに口添えしてもらおうかと思いまして」

「……なるほど。そういうことですか」

 

 パウロは既に貴族としての爵位を失ってるが、ノトスの血を引いている。元S級冒険者であり、元貴族でもあるのだ。それに、このブエナ村では、下級騎士としての身分もある。

 確かにリベラルの言う通り、パウロとの繋りはコネにならない訳でもない。彼が口添えすれば、仕事にもよるが有利に事が進むことだろう。

 

「…………」

 

 ロキシーはリベラルのことをじっと見つめる。何となく、彼女の髪色のことが気になったのだ。

 この時代ではラプラス戦役であった、スベルド族の見境ない暴走の名残で、緑髪に近い種族は凶暴で危険と言われてしまっている。

 ロキシーの髪色は目が醒めるような水色だが、光加減によっては緑に見えなくもない。そのことが原因で、いらぬトラブルを招いたこともあるのだ。

 しかし、リベラルは銀髪がほとんどだが、完全に緑髪が混じっていた。

 

「……ん? どうかしましたか?」

「リベラルさんの髪は、銀緑色ですね」

 

 ロキシーの言葉を聞いたリベラルは、どこか感慨深そうな表情を浮かべ、前髪をクルクルと弄る。

 

「今は緑髪がどうこう言われてますが、私は私の髪色を気に入ってます。だって、父親と同じですからね」

「父親ですか?」

「ええ、父親と違う部分はありますが、お揃いですよ」

 

 リベラルはそれ以上は言う気がないのか、口を閉じて黙ってしまう。ロキシーとしても、何となく言葉にしただけなので、追及はしなかった。

 

「“銀緑”と言えば、確か『ペルギウスの伝説』に登場したな」

 

 そこに、黙って話を聞いていたパウロが口を挟んでくる。

 ロキシーもその人物のことは伝承で聞いたことがあるので、頷くことで同意した。

 

「魔神ラプラスの騎竜であった、赤竜王サレヤクトを討伐した人物として出てきましたね」

「ああ、そうだったな。名が広まってない代わりに、“銀録(ぎんろく)”と表現されてたんだったか」

「はい。七人の英雄の友と呼ばれ、最終決戦前に魔神と赤竜王を切り離したとされてます」

 

 パウロと情報の確認を取れたロキシーは、本で読んだことを思い出す。“銀録(ぎんろく)”と呼ばれる存在は、地方によって様々な正体になっているのだ。

 曰く、架空の人物。ウルペンの恋人。魔族の裏切り者。魔神の娘。龍神の後継者。人族と魔族の二重スパイ……それ以外にも、正体は数多く呼ばれていた。

 地方による正体が、あまりにも多すぎるのだ。そのため、恐らく偽の情報が意図的にばらまかれてるのではないかと言われている。情報が錯綜し過ぎて、実は男だとかいう話や、最終決戦で相討ちしたと言われてる始末だ。

 

 ラプラス戦役の生き残りはそれなりに存在する筈なのに、正確な情報が出回ってないことは、伝承内の不思議として扱われている。

 

「……まあまあ、今はそんな話どうでもいいじゃないですか。私としては、ここでの家庭教師のお話をお聞きしたいですよ」

 

 そんな考察を続けていたロキシーであったが、リベラルの言葉で現実へと引き戻された。

 

「ルディのですか?」

「ええ、私も元々はルーデウス様の家庭教師になるために来たのです。そりゃあ、気になりますよ」

「俺も気になるな。元々剣術だけを教えるつもりだったが……ルディには魔術師としての才能がある。是非とも君の率直な意見を聞きたいな」

「私も気になるわね。水聖級魔術師としてのロキシーちゃんから、ルディがどう見えるのか聞きたいわ」

 

 3人から一気に訊ねられ、ロキシーは答えに詰まってしまう。食卓に来る前に抱いていた、ルーデウスへの嫉妬心を素直に話すのは、流石に嫌だったのだ。

 なので、先生としての観点で考え、話す内容を整理していく。

 

「とても3歳の少年とは思えない、と言うのが、率直な感想ですね。あの歳で中級魔術を使いこなすだけではなく、無詠唱まで扱うのですから……天才と呼ばざるを得ないでしょう」

「そうよね! やっぱりウチのルディちゃんは優秀よね!」

「ゼニスさんには、ここに来た当初に『ウチの息子は優秀だから大丈夫』と言われましたが、確かにその通りでした。正直、大したことないだろうって思ってましたよ」

 

 とは言え、ロキシーの思いも当然のことだ。どこの世界に「3歳児の息子だけど、優秀だから大丈夫」と告げた親の台詞を、鵜呑みにする馬鹿がいるか。

 どう考えても、親バカとしか思わないだろう。そうでないにしても、3歳児の”中では”優秀と考えるだろう。

 

「とは言え、驕慢になられても困ります。確かにルディは優秀ですが、世界は広いですからね」

「そうだな。慢心しても良いことなんてひとつもない。その辺りのことは俺からも教えるつもりだが、君からも頼むよ」

「はい。任せてください。先生としてしっかり教育しますので」

 

 無い胸を張るロキシーに、パウロとゼニスは満足げな表情を浮かべた。愛する息子は、確かに才能に満ち溢れているが、まだ子供なのだ。精神的に未熟な筈だし、力に溺れる可能性は十分あり得る。

 もしも、ルーデウスが大した訳もなく他人を傷付けるようになれば、パウロは容赦なく怒り、間違いを認めさせる腹づもりだ。

 

「おはようございます父さま、母さま。それに先生」

 

 と、そこにリーリャに連れられたルーデウスが現れる。

 

「おお、ルディ。おはよう」

「おはようルディ。お寝坊さんね」

「おはようございますルディ」

 

 ルーデウスは三者三様な挨拶を交わした後、もう1人食卓に座っていた人物へと顔を向けた。そして、少し考えるような仕草を見せ、口を開く。

 

「えっと……リベラルさん、でしたっけ? おはようございます」

「覚えてくれてたのですね。おはようございます、ルーデウス様」

 

 名前を覚えられていたことに、リベラルは意外そうな、そして嬉しそうな表情を浮かべ、挨拶を交わす。

 心なしか、ニマニマした笑みが、隠しきれてなかった。

 

 

――――

 

 

「リベラルさんって冒険者なのですか?」

「いえ、違いますよ。旅人です」

「…なんだそりゃ。お金とかどうやって稼いでるんだ?」

「主に魔物の素材ですね。食事も魔物がほとんどです。なので、常に金欠ですよ」

「馬車はどうしたのですか? ここに来た際に乗ってましたが」

「売りました。愛馬のヤクトは、それなりの値段になりましたね」

「そ、そうか……」

 

 それからは、リーリャによって運ばれてきた朝食を食べながら、軽い雑談を交わしていく。まるで転校生が現れたかのように、皆がリベラルへの質問をしていたため、彼女から何かを話すことは少なかった。

 朝食を終えれば、ルーデウスとロキシーは勉強をするし、パウロは騎士としての仕事がある。リーリャは家事があるし、ゼニスも一緒に手伝いをするのだ。

 故に、一方的な質問ばかりで、ろくに会話をすることが出来なかったリベラルは、そのままグレイラット家を後にするのだった。

 とは言え、そのことに関して、リベラルは不満など感じていない。ここに至るまでに、とても長い時間を待ち続けたのだ。一方的であろうと、彼らと言葉を交わせただけで、十分嬉しかった。

 

 今はこれでいいのだ。無理やり輪の中に入ろうとしても、乱れるだけだ。ゆっくり、徐々に馴染んでいけばいい。

 何気ない日常は、宝物である。ささやかな幸せを噛み締め、謳歌するのだ。彼らの生活は、ラプラスと過ごしていた頃を思い出す。

 

「時間は、まだまだたっぷりありますからね」

 

 リベラルは上機嫌な様子で、ブエナ村を歩いて行った。




このネガティブ思考をどうにかしたい…。
全てが駄目に見えるよ…。
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