無職転生ールーデウス来たら本気だすー   作:つーふー

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前回のあらすじ。

ルディ「パウロを許してやろう」
ギレーヌ「さんはいらん」
リベラル「不採用言い渡されました」

大変お待たせしました。書く時間が思ったよりもなかった&細かい話の流れが思い付かなかったことで、更新が遅れ……え?言い訳はいらない?
す、すいませんでした……申し訳ないです……。


10話 『失敗続き』

 

 

 

 不採用を言い渡される数十分前。

 

 自信満々なリベラルが室内に入った時、そこにはフィットア領の領主であるサウロス・ボレアス・グレイラットがいた。

 何故か用意されてる椅子に座っておらず、腕を組んで、顎をそらして、上から目線で、睨み付けていた。厳しい表情だ。その視線は、リベラルの頭へと向いている。

 

「……ふん!」

 

 鼻息をひとつ。

 どうやら、リベラルの髪に緑色が混じっていることが気に入らないらしい。ラプラス戦役にて『銀緑』の話が出回ってるとは言え、それはスペルド族に掛けられた呪いを覆すほどの効力はないのだ。『銀緑』の正体がハッキリしてないことも拍車を掛けている。

 

 が、リベラルの頭に装着されてる猫耳と尻尾を視認し、サウロスの表情は和らぐ。

 

「貴様! 名を何と言う!」

「リベラルです」

「ならばよし! リベラル! 貴様をこの館の侍女として認めよう!」

「ありがとうございます」

 

 面接も何もなく即決である。

 

 本当にそれでいいのかとツッコミを入れたくなるが、とにかくリベラルは採用された。

 ボレアス家は、勘当されてるパウロに良いイメージを持っていないので、彼のコネだけで採用されるのは厳しい。なので、ここは己の交渉術が試される時だと意気込んでいたリベラルは、あまりの呆気なさに拍子抜けしてしまう。

 とは言え、楽に事を運べるのであれば、それに越したことはないのだ。

 

「こちらの館に住み込みとなりますが大丈夫ですか?」

「構わん!」

 

 滅茶苦茶である。心なしか、後方で待機している執事が、オロオロと困った仕草を見せていた。

 

「大旦那様。しかし、現在空き部屋は……」

「貴様は黙っておれ! 儂は構わんと言ったのだ!」

 

 実際は何も良くないのだろうが、サウロスに一喝されて執事は押し黙ってしまう。とんでもなくブラックな職場だった。

 このような強引な上司に恵まれて、執事(トーマス)もさぞかしやり甲斐があることだろう。きっと、サウロスの愛孫であるエリスを、どこかの変態貴族に売り渡しそうだ。

 

「お祖父様!」

 

 そこに、乱暴な足音を立てながら、更に乱暴に扉が開かれ、赤髪の少女が登場する。先程考えていたエリスが現れたのだ。

 彼女は既にルーデウスと出会って喧嘩でもしたのか、怒り心頭といった様子で顔を真っ赤にしていた。しかし、サウロスに何かを言おうとしていたエリスは、リベラルの姿を見や否や、顔色を変えてそちらを窺うのだった。

 

「おーエリスや。どうしたのだ?」

「お祖父様! 獣族よ!」

「うむ! 先程採用したばかりの新たな侍女だ!」

 

 サウロスの言葉を聞いたエリスは、嬉しそうに顔を綻ばせてリベラルへと近寄る。周囲をクルクルと周り、興味津々とばかりに尻尾を撫でたりしていた。

 

 リベラルのつけてる猫耳と尻尾は、ラプラスの残した龍族の技術から作り上げた魔導具だ。『狂龍王』カオスの技術を用いたその装飾品は、本物と変わらぬ感触を持ち、自在に動かすことが可能である。

 サワサワと尻尾を撫で回すエリスに、自分の作品で喜ばれてることに気を良くしたリベラルは、尻尾をフリフリと動かし、猫じゃらしを操るようににエリスを弄ぶ。彼女も揺れ動く尻尾に魅了され、掴まえようと手を伸ばしたりしていた。

 

「あなたの耳と尻尾、銀色に輝いていてとっても綺麗ね! 気に入ったわ! お祖父様、私が飼ってもいいかしら!」

「おぉ、エリスはこの娘が気に入ったのじゃな。もちろんおっけーじゃよ」

 

 孫にねだられ甘やかしてしまうおじいちゃんの図である。サウロスは微笑ましいものを見る目で、リベラルの飼い主になることを了承していた。

 飼う、という表現にあまりいい気のしない人も沢山いるだろうが、アスラ王国の領土である城塞都市ロアでは、獣族に対する扱いが結構キツかったりする。アスラ貴族に変態が多いことが原因なのだが。

 その辺りの事情をリベラルは理解しているので、特に文句を言うことなく受け入れた。

 

「ねぇあなた! 名前は何て言うの!」

「リベラルです」

「そう! それより尻尾触らせなさいよ!」

「畏まりました。どうぞご自由に」

 

 リベラルは尻尾を動かすことを止め、自慢の逸品を触らせることにした。すると、エリスはニマニマした笑みを浮かべ、楽しそうに尻尾を撫で回したり先端を弄ったりし始める。

 骨の形もある程度再現してるので、先端部分の軟骨っぽい感触に骨抜きとなったのだろう。リベラルが執事から雇用条件を告げられてる間も、ずっとコリコリと弄くり回していた。

 

「……では、月に支払う給与はアスラ銀貨三枚と言うことで宜しいですか?」

「はい、それで大丈夫です」

 

 そして話も纏り、後は部屋への案内となった時だ。

 全ての予定が狂う元凶となった、彼が現れたのは。

 

「彼女が新しい侍女かい?」

「はい、左様でございます」

 

 新たに部屋へと入ってきたのは、この城塞都市ロアの現町長であるフィリップ・ボレアス・グレイラットだ。彼はリベラルへと値踏みするかのような視線を投げ掛け、しばらく見つめる。

 やがて、「うん?」と訝しむような声を上げ、

 

「少し、失礼するよ」

 

 唐突に、リベラルのお尻へと触れてきたのであった。

 

「んひゃ!」

「動かないで。じっとして欲しい」

 

 エリスと一緒にお尻へと集り、親子揃って尻尾を撫で回し始める。いきなり何なんだと思いつつも、そんなに尻尾が気になるのかとリベラルは考え、素直に触らせることにした。

 だが、不意にお尻からスルリとした音を聞き、彼女はギョっとした表情を見せる。

 

「やっぱり……贋物だったか」

 

 フィリップの手には、何とリベラルの尻尾が握られていたのだ。その事実に、周りの者たちは動揺して口々に驚愕の反応を見せる。

 

「……そ、そんな……嘘でしょ……!?」

 

 見るからに焦燥し、顔色を悪くしながら涙を溢すエリス。獣族という種族が、それほどまでに好きだったのだろう。アイデンティティである尻尾が千切れてしまったように見えたのか、死ぬほど悲しんでるようだった。

 エリスがこのような姿を見せるとは、思いもしなかった。彼女の普段を知ってる訳ではないが、リベラルの知る気丈なエリスからは想像もつかない泣き顔だ。

 そして、尻尾が取れたという事実に、近くにいたサウロスも狼狽していた。この世の全てに絶望したかのような、深い悲しみに満ちた表情を見せている。

 

 リベラルとしては、高々尻尾のひとつでここまで大袈裟な事態になるとは思わず、呆然とその光景を眺めてしまう。……が、それは判断ミスであった。

 一人冷静であった執事が、フィリップの持つ尻尾と、リベラルのお尻を交互に眺めながら、何が起きたのかを把握してしまったのだ。ケモナーというものを、リベラルは理解していなかった。

 

「大旦那様。どうやらこれは装飾品のようです」

「なんだと!」

 

 深い悲しみから一転して、驚愕に満ちた声を上げるサウロス。ギロリと、その視線がリベラルへと向いた。

 

「貴様! よくも儂に獣族だと嘘を吐いたな!」

「……へ?」

 

 怒り狂うサウロスを前に、リベラルは思わずキョトンとしてしまう。無理もないだろう。彼女は一言も自分が獣族だと騙っていないし、そもそもパウロの送った手紙にリベラルが獣族でないことは記載されてる筈なのだ。

 完全に詭弁であるのだが、最初から猫耳と尻尾を装着していたが故に、手紙の情報は間違いだと思ったのだ。つまり、サウロスはリベラルが獣族なのだと勘違いしていた。

 

 そして、怒りに任せたまま、サウロスは告げる。

 

 

「――貴様の雇用は無しだ! 二度とその顔を見せるな!」

 

 

 装飾品の脆さ、フィリップの観察眼、情報の錯綜などなど。

 以上の様々な要因はあるものの、リベラルにとって最大の誤算は、ボレアス家の獣族愛だろう。

 

 獣族好きに獣族であると騙るのは(騙ってないけど)、ボレアス家にとって最大級の侮辱であった。

 

 

――――

 

 

「――と言うことがありまして、戻ってきました」

 

 テーブルにつき、出された食事をはふはふしながら食べていたリベラルは、しみじみとその時のことを語る。

 

「そうでしたか」

「大変だったのねぇ」

「お前は何してんだよ……」

 

 そんな彼女の向かいには、リーリャとゼニス、そしてパウロが、それぞれの感情を浮かべながら話を聞いていた。

 数時間前に送り出した友人が、そのままとんぼ返りしてきたのだ。何と声を掛ければいいのか分からないのも無理はない。

 

「いえ、だって、手紙で私のことが獣族でないことは伝えた筈ですよね?」

「……まあ、確かに伝えたな」

「なのに、態々ボレアス家の趣向に合わせて恥ずかしい格好をしていたのに、この仕打ちはあんまりですよ……」

「可哀想にねぇ。リベラルちゃんよしよし」

 

 落ち込むリベラルを、ゼニスがあやすように慰める。彼女もそれを素直に受け入れ、抱き付いてゼニスのおっぱいを堪能していく。

 

 正直、今回の件に関しては完全に誤算であった。以前あった家庭教師の時のような、間抜けを演じた訳でもない。

 リベラルの予定では、侍女として採用されるのは当然のことであった。当然のことであったのだが、この様である。アッサリと予定外の事態へと逸れていった。

 慢心していたのはルーデウスではなく、リベラルの方だったのだろう。

 

「それで、どうするんだ? 金欠と言ってたが当てはあるのか?」

「金欠に関してはどうとでもなります。贅沢は出来ませんが、自給自足すればいいだけなので」

 

 生きていくだけならば、リベラルはこの世界の何処へと裸で放り出されても死ぬことはない。最低限の布と木の槍でもあれば、部族ゴッコくらい出来る。ドラゴンが相手でも狩ってみせよう。元モンスターハンターなのだから。

 だが、やはり彼女も人なのだ。多少の娯楽は欲しかった。そんな野生的な生活など求めてなかった。

 

「私個人のコネを使えば仕事もすぐに見つかると思うのですが……後々面倒なことになるんですよ」

 

 ペルギウスという繋がりを見せれば、金なんて幾らでも手に入るだろう。だが、そうなれば今度は、貴族関係のしがらみに捕らわれることになる。

 ペルギウス本人も王族や貴族との関わり合いに嫌気が差し、空中城塞に引きこもってしまった。それくらいドロドロとした世界なのだ。

 彼の名を使うのにメリットはあるものの、デメリットも少なからずある。

 

 ボレアス家へと雇用されたければ、いつでも雇用されることは可能だろう。

 しかし、リベラルはそこまでして働きたい訳でもない。どちらかと言えば、楽に過ごしたかった。

 

「とは言え、ボレアス家には用事があるんですよねー…」

「用事、ですか?」

「まあ、ただの私用なのでいいんですけど」

 

 リーリャの疑問に適当な返事をし、リベラルはフィットア領で起こる転移事件のことを考える。

 

 結論から言えば、リベラルは転移事件を止めるつもりがない。むしろ、起きて欲しいと思ってる。七星 静香の存在は、リベラルにとって必要なものだからだ。

 しかし、リベラルとて冷血無比ではない。実際に転移場所を変えられるかはさておき、哀れな被害者を減らせるのであれば、減らすべきだと考えている。それくらいの道徳心は持ち合わせていた。

 転移事件による被害者がいなければ、本来の歴史と大きな齟齬が起きるだろうが、オルステッドがちゃんとループしているのであれば問題ない。むしろ、オルステッドとしてはその方が事を運びやすいだろう。ルーデウスの行動に関しても、リベラルが把握出来るので大丈夫だ。

 

 なんて色々考えていたのだが、ボレアス家の侍女として雇用されなかったのでどうしようもない。今更な話である。

 過去のことよりも、これからのことを考えなくてはならない。

 

「ごちそうさまでした。ご飯、美味しかったです。ありがとうございます」

「ふふ、構わないわよ。今まで貰った分を考えれば、こんなの全然お返しの内に入らないしね」

「では、遠慮なくまた来ますね」

 

 そうしてグレイラット家から出ていったリベラルは、空を見上げながら一息吐く。状況の整理をしたかった。

 

 そもそもボレアス家へ行きたかったのは、先程挙げた転移場所を変えられるかどうか調べたかったのと、単純にボレアス家に出現する『赤い珠』を見たかったのだ。

 エリスの強化合宿も考えていた。ルーデウスやシルフィエットのように、不足の事態に備えて成長させられるだけ成長させる。

 まあ、それはもう出来ないのだが。リベラルとしても、先程言ったように絶対にしたいと考えていた訳ではない。エリスに関しては、ギレーヌと成長したルーデウスがいるので、元の歴史よりもきっと強くなるだろう。

 赤い珠に関しては、一応ながら見るだけなら可能だ。近い内にボレアス家へと忍び込んで見ようと考えている。それに、手紙のやり取りは禁じられてない。

 リベラルが皆の手紙を直接届ければ、合法的にボレアス家に行ける上、お金も貰えて一石二鳥だろう。

 

「予定外なことは起こりましたが、今のところは特に問題もありません。……ま、大丈夫でしょう」

 

 どのみち、ヒトガミを倒すのに一番肝心なのはオルステッドだ。ボレアス家でのイベントは、絶対に必要だとは考えてない。

 リベラルは気軽な気持ちで、以前借りていた家へと戻っていった。

 

 

――――

 

 

 再び家を借りて戻っている最中、リベラルはとある少女を見掛けて歩を止める。

 緑色の髪をした少女――シルフィエットが、丘の上にある木の下で一人座っていたのだ。それを見たリベラルは、帰路から外れて彼女の元へと歩み寄った。

 

「こんなところで黄昏て、どうしたのですか?」

「ひゃっ…! リ、リベラルさん…?」

 

 リベラルに声を掛けられてからようやく気付いたのか、シルフィエットは驚いた様子を見せる。だが、すぐに暗い表情を浮かべ、そっぽ向いてしまう。

 

「ルディ様と離れ離れになったことが辛いのですか?」

 

 しかし、リベラルの言葉にビクリとからだを震わせ、シルフィエットは再び彼女へと視線を向ける。

 

「だって、ボクね。ルディのことが好きだったのに、いきなりこんな、酷いよ……」

 

 ポツリと力なく呟くシルフィエットは、ルーデウスと無理やり距離を取らされたことに、納得出来てなかった。

 今までずっとルーデウスと一緒に過ごし、当たり前の存在となっていた。朝はルーデウスの鍛練を眺め、昼は一緒に魔術の勉強を行ない、夕方まで一緒に遊んで。

 このままずっと一緒に過ごしていくと思ってたのに、このような形で引き離され、納得出来る訳がなかった。

 

「ロールズ様から何か言われませんでしたか?」

「お父さんは、ルディを助けられるくらい……支えられるくらい強くなりなさいって……でも、無理だよぉ…」

 

 シルフィエットは嗚咽まじりな声で項垂れ、悲壮感を漂わせる。しかし、すぐにリベラルを恨むかのように睨み付けた。

 

「どうして、あの時邪魔したの…?」

「シルフィエット様の為ですよ」

「お父さんも、お母さんも、ボクの為だって言ってくれた……でも、ボクはそんなこと望んでないもん……」

「…………」

 

 リベラルは言葉を返さず、沈黙する。元より、彼女はこうなることを知っていながら、ルーデウスに教師役としてシルフィエットの面倒を見させたのだ。そして、自分のエゴでルーデウスを彼女の元から離れさせた。

 リベラルは浅慮だったと反省しながら、シルフィエットを真っ直ぐと見つめる。

 

「シルフィエット様は、ルディ様以外と関り合いたくないのですか?」

「村の皆は、ボクの髪色のことバカにするもん。今でもボクのこと、無視するし……」

「ふむ」

「ルディと会いたい……寂しいよ。一人はつまらないもん……」

「…………」

 

 大好きな人と離れ離れとなり、独りぼっちになってしまった。リベラルはその悲しみが分かるし、辛さを知っている。リベラル自身も経験したことがあるからだ。

 だからこそ、このままではいけないことを、リベラルは知っているのだ。殻に閉じ籠り、自分だけの世界で完結していては、永遠に前へ進むことが出来ない。

 

 故に、彼女は心を鬼にし、発破を掛けねばならぬ。かつてサレヤクトがしたように、停滞させてはならないのだ。

 

「そのままでは一生会えませんよ」

「えっ……」

「きっとルディ様のことなので、知らない地で彼女でも作り、ラブラブに過ごすんじゃないですか?」

 

 エリスの存在を考えれば、間違いなくそうなるだろう。事実、本来の歴史で起きる転移事件後のルーデウスは、シルフィエットよりもエリスのことを大切に思っていた。

 

「そ、そんなことないもん!」

「いえいえ、このままだとそうなっても不思議じゃないですよ」

「で、でも……ルディはそんなことしないもん!」

 

 尚も否定しようとするシルフィエットに、リベラルは露骨な溜め息を見せる。

 

「外の世界を知らぬ貴方が幾ら否定したところで、意味などありません。この世界に今のシルフィエット様より素敵な女性なんて、腐るほどいるのですから」

「そんなことないもん!」

「……では、貴方はずっとルディ様に守られながら生きるつもりですか?」

 

 辛辣な言葉に、シルフィエットは悔しさから涙を溢し始める。けれど、リベラルはそこで止めずに話しを続けた。

 

「もしルディ様が病気で倒れたらどうするのですか? 貴方はそれでも行動を起こさず、現実を否定し続けるだけですか?」

「ルディは倒れないもん!」

「……矛盾した台詞ですが、この世に絶対というのは絶対ないのです。もしかしたらルディ様は次の日に死ぬかもしれませんし、もしかしたら次の日にはこの村が消えるかもしれません」

「知らない! ボク、そんなこと知らないもん!」

 

 駄々をこねるように叫ぶシルフィエット。その姿は子供らしい反応だ。

 けれど、いつまでも子供ではいられないのだ。いずれは現実へと向き合い、理想から離れなくてはならない。夢から覚めるときは必ずくる。

 その時に子供から成長してなければ、現実は一気に過酷な世界となってしまう。ずっと今のままではいけないのだ。

 

「シルフィエット様。世界は広いのです。いつまでも自分の世界に引きこもっていては、ルディ様が手の届かぬ場所に行ってしまいますよ……」

「知らない! リベラルなんて大っ嫌いだ!」

 

 立ち上がったシルフィエットは、感情のままに吐き捨て、その場から走り去ってしまう。

 取り残されたリベラルは、その後ろ姿を見送りながら再び溜め息を溢した。

 

「ハァ……人の心とは難しいですね。パウロ様も、こんな気持ちでルディ様と向き合っていたのでしょうか……」

 

 元々、こうなった原因のひとつがリベラルだ。本心からシルフィエットの為を思って言ったものの、あまり説得力を感じられなかった。

 打算ばかりにかまけ、相手の気持ちを蔑ろにしてしまった報いだろうか。今回は上手くいかないことばかりで、リベラルも少しばかり参ってしまう。

 だが、弱音を吐いてばかりもいられない。シルフィエットのことを思ってるのは確かなのだ。誠実に何度も言葉を投げ掛け、どうにか納得してもらうしかないだろう。

 

 木の根本にもたれ掛かり、リベラルは静かに遠くを眺めた。




Q.あれ?シルフィエット何でこんなことになってるの?
A.リベラル介入による改変の1つです。本来ならばロールズの言葉で強くなろうとしますが、この世界線ではなりませんでした。だから、リベラルもちょっと焦ってます。

Q.ケモナー……。
A.私見ですが、ボレアス家で一番の獣好きってフィリップだと思うんです。まあ、個人的なものなので深く考える必要もないかと。ケモ耳万歳!
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