無職転生ールーデウス来たら本気だすー   作:つーふー

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前回のあらすじ。

ノルン「すっごーい! 君はとっても強いフレンズなんだね!」
山賊「俺たちがヒトガミの使徒な訳がない!」
リベラル「今頃慌てるとかwwwwwお前バカだろwwwww?」

お待たせしました。書こう書こうと思いながら空き時間はずっとゲームしてました。申し訳ない……。因みに、現在クリア出来てないのはアルマゲドンだけです(唐突)
まあ、モンストの話はさておき、これは不味い兆候ですね……こうして徐々にゲームにかまけ、投稿が遅れる……なんてことにならないようにしなければ。


3話 『背負いし罪』

 

 

 

 十分な休息を取れたリベラルとノルンは、再び移動を開始した。リベラルは今回の失敗を反省し、もっとこまめに休憩を挟むことにより、極力ノルンの体力を消耗させないことを選んだ。

 急がば回れ。焦って先に進むよりは、確実に物事を進めた方が、効率がよくなる。それに、龍鳴山からは既に下りられたので、強行軍をする必要もない。

 

 だが、商人などの馬車に乗せてもらうという選択肢は選べなかった。

 単純な話である。紛争地帯での商いは困難であり、金目の物を奪おうとする襲撃者が多いからだ。そもそも、この辺りに商人自体ほとんどいない。

 結局、他者の手を借りることは出来なかった。

 

「ノルン様、手を離さないように気を付けてください」

「うん」

 

 転移してからのノルンは、比較的大人しくリベラルの言うことを聞いていた。

 赤竜の群れを屠ってみせたからか、はたまた、この知らない地でリベラルしか頼れる存在がいないからか。しがみつくかのように寄り添い、幼子とは思えぬほどリベラルに忠実だった。

 とはいえ、変に反抗されるよりかはずっとマシだろう。リベラルも特に何も言わず、大人しく付き従うノルンを受け入れていた。

 

 世話などに関しては、多少手を焼いた部分はある。単純な粗相の後始末であったり、食事を一人で満足に取れなかったり。その都度どうすればいいのか分からず、慌てたりしたものの、何だかんだで上手くいっていた。

 

 もっとも、それより厄介な問題もある。

 

 

「貴殿がリベラルであるな?」

 

 二人の道行く先に、何人もの男たちが立ち塞がる。みすぼらしい格好であったり、まともな姿をしている者は少ない。だが、彼等のギラつく瞳からは、欲望を感じさせた。

 見たところ盗賊の類いであるが、リーダー格らしき男だけは、明確な意思を感じさせる。

 

「とある者より、貴殿に高額な懸賞首が掛かっていると聞いた。女子供である貴殿らには申し訳ないが、我らも生きるためだ……死んでくれ!」

 

 ヒトガミの使徒だ。

 彼らが、道行く先に現れるようになった。

 

 襲い掛かる理由は様々だ。彼のようにデタラメを吹き込まれ、あることないことで彼女へと立ち向かってくる。当然、リベラルは賞金首など掛けられてないし、そのような理由で今まで襲われたこともない。

 貧相な格好の彼らを見れば、希望にすがりついているだけだろうに、その先が全くの無駄だと知っているリベラルには、憐れみを抱くことしか出来ない。

 ヒトガミの持つ『信頼される呪い』は、何とも厄介なことだろう。あのような邪悪が持つ力ではないのだ。

 

「……因みに、そのとある者って、夢に出てきたりとかしますか?」

「ほお、知っておるか……だが、容赦はせぬ!」

 

 大勢で寄って集ろうとする彼らに、リベラルは溜め息をひとつ溢し、己の隣を見下ろす。

 

「ノルン様、私の背後に」

「おねえさん……またこわいひとたちがあらわれたの……?」

「そうみたいですが、大丈夫ですよ。パウロ様の元に辿り着くまでは、必ず私が守りますから。ですので、眼を瞑っていてください」

 

 リベラルへと襲い掛かった者たちの結末は、言うまでもないだろう。全員、死以外の結末などありはせぬ。

 

 ヒトガミの使徒であろうとなかろうと、襲い掛かった時点で明確な敵なのだ。その後に芽を咲かせぬよう、キッチリと摘み取る。

 それは、厄介というよりは、面倒さが大きい。もちろん、余程な大物でもない限り、リベラルの敵ではないからだ。少し腕が立つ程度の相手ならば、基本的に一撃で決着がつく。

 だが、襲撃者である彼らは、ヒトガミに何を吹き込まれたのかは不明であるが、積極的にノルンを狙うことが多かった。それも、当然のことだろう。幼子(ノルン)という分かりやすい弱点が傍にいるのだ。

 リベラルを直接殺そうとするよりも、ノルンなどを人質に取った方が可能性は高いだろう。もっとも、そんなことを許す彼女ではないが。

 

「まだ眼を瞑ったままですかノルン様?」

「……うん」

「では、私が楽しい話でもしましょう。そうすればきっと、怖さなんて吹き飛びますよ」

「たのしい、おはなし……?」

「ええ、あなたのご家族……パウロ様やゼニス様のお話です。聞きますか?」

「うん……ききたい」

 

 小さく震えるノルンを抱き抱えたリベラルは、旅路を続ける。

 

 ヒトガミの使徒に何度も襲われたことにより、フィットア領に辿り着いたのは大体二ヶ月後のことだった。予定通りと言えば予定通りだが、やはり邪魔がなければもっと早くに辿り着けただろう。

 それに、ノルンが思いの外大人しく、世話に手を焼くことが少なかった。我が儘も大したことがなく、精々、寝るときに傍にいて欲しい、などと可愛らしいものだった。

 

 

――――

 

 

 フィットア領に辿り着いたリベラルは、何もない『草原』の前で息を飲んでいた。

 

 フィットア領にある街道は、石畳の道で整えられ、馬車などの通行に最適とも言える状態だった。それが、都市の端から端まで敷かれていたのだ。

 しかし、とある境界線から石畳は綺麗に消え去っている。その先に続くのは、最果てまで続く『草原』のみ。

 

 繁栄していた町や村の面影は、跡形もなく消え去っていた。

 

「リベラルおねえさん、おとうさんとおかあさん……どこ……? おうち、まだなの……?」

「…………」

 

 隣で不安そうに呟いたノルンに、リベラルは何も言葉を返せなかった。これほどの規模の災害だということは知っていたが、それでも“知っていただけ”なのだ。

 実際に被害の規模を目にし、その凄惨さを認識する。そして、自分が“フィットア領を見捨てた”という事実を、改めて叩き付けられた。

 リベラルは転移事件を引き起こす『赤い珠』を、別の場所に移そうと試みるも、それは無理だとすぐに諦めた。もっと根気よく様々なことを試しても、きっと出来なかっただろう。

 

 だから、それは仕方のないことだった。

 そう割り切ることが出来た。

 

 しかし、リベラルは転移事件自体は起こそうとしていた。そのために、態々なるべく本来の歴史からずれぬよう、生きてきたのだ。

 知っていながらも、止める努力をしなかった。むしろ、引き起こす努力をしたのだ。

 

 それは――首謀者と何ら大差ない。

 

 

「おねえさん……おとうさんとおかあさんは……? おうちは……?」

「…………」

 

 隣にいたノルンが、泣きそうな表情で再び問い掛ける。けれど、リベラルはそれに何も答えない。答えられない。

 そのまま沈黙は続き、やがてノルンは不安に耐えきれず、泣き出してしまう。

 

「おとうさん……おかあさん……どこ……? おうちは? おうちはどこなの……?」

「……ノルン様、大丈夫です。すぐにパウロ様とゼニス様に会える筈です」

「でも……さっきとうちゃくしたって……」

「そう、ですね……確かに、到着はしましたね……」

 

 ノルンがその言葉の意味を理解したのかは分からない。けれど、家も家族もここにないことだけは、理解したのだろう。

 涙をポロポロと溢し、不安を爆発させる。

 

「やあぁぁああ! はやくおうちかえるの! おとうさんおかあさんどこなの!」

 

 きっと、リベラル一人でフィットア領の光景を見ていれば、そこまで大きく心は揺らがなかった。

 簡単に割り切ることが出来た。だが、親しい存在(ノルン)の悲痛な叫びに、魂が大きく揺さぶられる。

 彼らと親密になるべきではなかったと後悔し、けれど村で過ごした穏やかな日々が脳裏を過った。

 

 せめて、親密となった者たちだけでも、あらかじめ避難させるべきだったのかと思う。しかし、それは無理だと首を振る。

 転移事件のことを伝える訳にいかなかった。パウロやゼニスがそのことを信じた時、きっと村人全員に呼び掛け避難するだろう。そうすれば、ヒトガミに転移事件のことを気付かれたかも知れない。それだと大きく動きすぎなのだ。

 かといって、親密な人だけを避難させる都合のいい理由も思い付かなかった。否、もしかしたら都合のいい理由もあったかも知れないが、リベラルには思い付かなかった。彼女だけでは限界があった。

 

「えぅ……あぅぅ……! かえりたい……おとうさん、おかあさん……うぇぇぇん!」

「ノルン様……」

 

 慰めや励ましのつもりで頭を撫でようとし、けれどその手を引っ込める。リベラルに、そのようなことは出来なかった。

 

 彼女が何も語らず黙り続ければ、きっと転移事件を傍観したことに誰も気付かないだろう。ペルギウスには前以て伝えているものの、きっと彼は何も言うことはない。

 だが、この事実はリベラルの中でずっと残り続けるのだ。

 もしも、転移事件を引き起こしたことを知られれば、皆は糾弾するだろう。怒りをぶつけるだろう。見放すだろう。蔑むだろう。

 それだけの罪が、彼女にはある。

 

(ああ……ほんと、私には重荷ですよ……今にも潰れてしまいそうです……)

 

 長年生き続けた中で、似たようなことがなかった訳ではない。規模は違えど、敢えて見殺しにしたこともあるし、逆に積極的に潰しに掛かったこともある。

 戦争も経験したのだから、その程度のことは何度もあった。長年生きてるのだから、あって当然だ。

 今回の件は、積み重ねてきた罪のひとつに過ぎない。今までも、そしてこれからも、リベラルは自分の引き起こした罪を背負い、前へと進まなければならないのだ。

 

 過ちも後悔も、全てを受け入れてきた。 彼らの嘆きを、叫びを、無駄にしないためにも、彼らの命を踏み台にするのだ。

 だから――立ち止まることは決して許されない。彼らの命に、報いるためにも。

 

 

 それが、リベラルの背負いしもの。

 忘れてはならぬ責務だ。

 

 

「…………」

 

 天を仰いだリベラルは、目を瞑り大きく深呼吸をする。そして、目の前の現実を受け入れた。

 

「ノルン様、必ずパウロ様とゼニス様に会えます。リーリャ様とアイシャ様にも会えます。そして、あなたのお兄様であるルディ様にも会えます」

「でも……でも……もう、おうちも……!」

「だから、泣かないでください……それまで、私が守りますから……!」

 

 この先に起きるであろう全てを理解した上で、リベラルはノルンの頭を撫でたのだ。

 安心させるために笑顔を浮かべ、そして、心の奥底で謝罪を繰り返して。

 

 きっと、リベラルは許されないだろう。

 それでも、彼女にはそうすることしか出来なかった。

 

 

――――

 

 

 転移事件の影響により、人も物も全てが転移して草原となったフィットア領だが、当然ながら放置などされない。復興のために、アスラの本国からある程度の人材や資材は届けられるし、近場に転移した人物たちも戻って来ている。

 けれど、圧倒的に人手が足りていない。難民キャンプの設営自体は出来ていたが、ただそれだけでしかなかった。

 どうやら、転移によって行方不明になった被害者を探す捜索団も出来ていないようで、試練がまだまだ始まりに過ぎないことを窺わせる。

 

「……やはり、一人では限界がありますね……」

 

 泣き疲れたのか、寝入ってしまったノルンを背負ったリベラルは、現場の情報収集に勤しんでいた。ナナホシの情報、グレイラット家の情報、ボレアス家の情報。

 それ以外にも必要かも知れない情報も収集し、フィットア領の状況を整理していくリベラルは、ここからどうするべきか悩んだ。

 

 七星 静香の情報に関しては、一切手に入ることがなかった。この世界では一風変わった姿の少女を見た人もいなければ、そのような痕跡を見た人もいない。この場では、お手上げと言わざるを得ない結果だった。

 そして、現段階でパウロはまだここに辿り着いておらず、行方不明のままだった。彼の家族にしても、同様に行方不明だ。

 シルフィエットの家族は、死亡したらしい。父親のロールズも、母親の方も、確認が取れていた。

 

「…………」

 

 一応、シルフィエットの家族である彼らにも、フィリップに渡した魔道具と同じ代物を渡していた。だが、無敵になれる代物ではない。

 単純に、防御出来る耐久力を越えてしまったからかもしれないし、被害にあった時点で身から離していた可能性もある。どちらにせよ、対策をしていたにも関わらず、シルフィエットの家族が死んだのは事実なのだ。

 

(転移場所が変わった際の対策として、リーリャ様やゼニス様にも指輪は渡しておりますが……最悪の可能性も視野に入れなければならないのですか……)

 

 転移の時期が早まった影響で、転移先が変化しているかも知れない。だが、リベラルは一人であり、全てに手が回らない以上、可能性の高いものから優先して対策をしている。

 実際に転移先が変わっているとして、どこに飛ばされるかまで分かるわけないだろう。故に、魔大陸などの危険地帯に飛ばされていた場合は、生存率が非常に低いものとなる。

 

 無理に決まってるだろう。頭が回りきらない。分かっていたとしても、対処しきれない。

 そもそもな話、リベラルの目的は被害者を助けることではない。ヒトガミを殺すことだ。

 そのために必要な存在が、

 

 『七星 静香』。

 『ロキシー・ミグルディア』。

 『オルステッド』。

 『ルーデウス・グレイラット』。

 

 極端な話をすれば、上記の存在がいれば、恐らくヒトガミ討伐は可能なのだ。もしかしたら、彼らがいなくても倒せるかも知れないが、リベラルは彼らに縋り付くしかない。

 その存在を信じて、今までやってきたのだから。今更、必要ないなどと割り切ることなど無理だった。

 

 ナナホシは転移術を研究し、地球と六面世界を繋ぐ者だ。研究の果てに、もしかしたら『五龍将の秘宝』を必要とせず、人神のいる『無の世界』に至れるかも知れない。……もっとも、リベラルは彼女にそんなことをさせる気は毛頭ないが。

 ロキシーは将来、救世主を産む者だ。それだけではパッとしないかも知れないが、人神はそれを阻止する為だけに何重もの策を施していた。間違いなく、彼女の子供は人神討伐の鍵となりうる。

 オルステッドは言うまでもない。世界最強の実力を持ち、人神に至るまで何が必要なのか全て把握しているのだ。皮肉なことに、ループし続けたことが、彼を最強たらしめている。

 ルーデウスは、運命を覆す存在だ。彼と関わり合った者は大半が味方となり、未来に大きな変化をもたらす。

 

 長々と説明したが、とにかく、彼らがいれば最悪の状況からでも巻き返すことは出来る。故に、優先しなければならないのだが――。

 

「本当に、私は甘いですね……」

 

 背中に背負っているノルンを見て、溜め息を溢す。せめて、家族の誰かには引き渡すべきだろう。「それまで私が守りますから」と言ってしまった以上、吐いた唾を飲む気にはなれない。

 とりあえず、オルステッドは心配する必要はない。ナナホシも確認さえ出来れば心配はない。ルーデウスはこのために強くした。ロキシーは強固な運命に守られてるらしいので、簡単には死なないだろう。

 人神曰く、「運命の力が弱まる妊婦の時にしか手出し出来なかった」ほどだ。彼女を殺そうと必死に頑張ってる人神の御墨付なのだから、恐らく大丈夫だろう。

 だからと言って、気を抜くつもりもなかったが。

 

 とにかく、最優先の対象には、ある程度の余裕がある筈なのだ。ならば、幼子の面倒くらい、少しばかり見ても大丈夫だろう。

 

「問題は、ボレアス家ですね」

 

 リベラルが情報収集をしている際、ボレアス家の執事であったアルフォンスと再会した。何度も顔は合わせていたので、面識はあったのだ。

 チラリと手を見たとき、フィリップに幾つか渡した指輪の魔道具を、彼はつけていた。実際に使用したのかはさておき、渡した意味はあったのだろう。

 それはさておき、彼はリベラルの正体など何も知らない。なので、協力要請もされずに事情だけを説明された。アルフォンスの視点からすれば、リベラルは幼子を抱えた女性なのだから、協力を頼まないのも当然だろう。

 

 ボレアス家の被害も、甚大なものだったらしい。エリス、フィリップ、ヒルダ、サウロスは現時点で行方不明であり、ギレーヌもまだ音沙汰無しだ。

 指輪の効果が絶対ではないことが証明されている以上、楽観は何一つ出来ない。転移の時期が変わった関係で、エリスが一人の可能性もある。問題だらけだ。

 更に、本来の歴史通りフィリップの兄弟が領主をしているらしいが、転移事件の責任を取らされ、今にも失脚寸前のようだ。このままいけば、サウロスが無事であっても彼の処刑は免れないだろう。

 

 そもそも、ボレアス家に関しては、転移事件がフィットア領で起きた時点で詰んでいる。

 資金も何もかも文字通り吹っ飛んでおり、全てを失ってしまったのだ。そこから追撃のように責任を擦り付けられ、何かしらの処罰も下ることが確定している。太い横の繋がりもあるだろうが、死に体のボレアスを庇ってくれるとは思えない。

 

「正に、問題だらけと言う訳ですか」

 

 ボレアス家に関して、リベラルの打てる手はほとんどない。彼女が王家との繋がりがあったのは、ガウニス王が存命の頃――即ち、四百年ほど前のことだ。

 残念ながら、現在リベラルのことを知る者はほぼ存在しないだろう。リベラルの存在を隠蔽したことによる弊害だ。自分の存在を隠したことによって、後世に何者なのか伝わりきっていなかった。

 フィリップがリベラルを引き込もうと画策した際、彼は『銀緑』の持つ権力に警戒していたものの、実際には何も警戒するものなどなかったのだ。ただの虚栄である。

 

(まあ……いいでしょう。フィットア領の現状確認は出来ました。次の場所に向かうとしましょうか)

 

 長考していたリベラルは、やがてフィットア領を後にした。

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