無職転生ールーデウス来たら本気だすー   作:つーふー

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前回のあらすじ。

リベラル「やっぱり、家族と会えるのは楽しみですか?」
ゼニス「……(こんなことになっちゃったから、パウロは責任を感じて一人で抱え込んでると思うの。だから、私があの人を支えてあげなくっちゃ!)」
リベラル「……ゼニス様、必ず治しますから、少し、少しだけ待っていて下さい」

投稿までの期間が開きすぎて、プロットを忘れてしまう始末。原作から大きく解離させる予定だった気がするのに、全然出来てない…。
毎回の恒例となってしまってますが、大変お待たせして申し訳ございません……少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


5話 『後悔先に立たず』

 

 

 

 ミリス神聖国、首都ミリシオン。

 この世界で最も美しいとされる都市の光景に、馬車の中から眺めていたルーデウスは感嘆の溜め息を吐く。

 側にいたエリスとルイジェルドもまた、その光景に驚いた表情を浮かべていた。

 

「すげえだろ?」

 

 と、ここまで彼らを案内していたサル顔の男――ギースは自慢気にそう告げた。

 

「凄いですけど、あんな大きな湖じゃあ、雨期は大変なんじゃないですか?」

「そりゃ昔は大変だったらしいが、今はあの七つの魔術塔が水を完璧にコントロールしてる。だから安心して湖の真ん中に城が立つってわけだ。城壁もねえだろ?そりゃあ、あの塔が常に結界を張ってるからよ」

「なるほど、つまりミリス神聖国を攻め落としたければ、まずあの塔をなんとかする所からってことですか」

「物騒な事言うなよ、冗談でも聖騎士連中に聞かれたら捕まるぜ?」

「……気をつけましょう」

 

 そんな会話を繰り広げながら、彼らは都市へと入っていった。

 

 

 ――ルーデウスたちがギースと出会ったのは、ウェンポートである。

 ルイジェルドを渡航することを裏業者の人に依頼したものの、結局断られてしまったルーデウスは、誕生日にリベラルから貰ったナイフを売ることにした。

 しかし、そこに待ったを掛けた人物が現れる。それがギースであった。

 偶然その場にいた彼は、ルーデウスにナイフの価値を説いたのだ。本来の価値に比べて、とんでもない安値で買い取られそうになっていることを教えたのである。

 

 もちろん、最初はギースのことを懐疑的に見ていたし、あまり信用していなかった。

 だが、彼が元『黒狼の牙』――即ち、パウロの仲間であったことが判明してからは、その疑いも徐々になくなっていった。

 ギース自身の対人能力の高さもあったのだろう。皆と仲良くなるのに、さほど時間は掛からなかった。 

 

 結局、ギースはパウロと再会出来るであろうミリス神聖国まで同行することになった。

 彼自身が地理に詳しかったこともあり、そのまま案内役を買って出たのだ。手始めにルーデウスが失敗した裏業者との交渉を成功させ、ザントポートへと渡航する。

 大森林を移動中は、雨季の影響で長耳族の住み処に寄ったり、そこで聖獣と呼ばれる存在になつかれたり、なんてこともあったりした。

 その際、森の中で獣族を誘拐しにきた密輸人に襲われたりしたものの、近くにエリスがいたこともあり、危なげなく撃退できた。

 時間は掛かったものの、それ以外は特にトラブルもなく大森林から青竜山脈を越え、そのままミリス神聖国まで辿り着いたのである。

 

「はやく行きましょうよ!」

「……エリス、準備を済ませれば冒険者ギルドに寄りましょう。伝言通りであれば、父様やリベラルさんと合流出来る筈です」

 

 街の景色を見てソワソワとしているエリスを宥めつつ、ルーデウスは目的地を告げる。

 彼としても、早急に皆と会いたかった。リベラルの残した伝言により、フィットア領で何が起きたのか把握はしたものの、そのことに対して上手く頭が働くことはなかった。

 

 ミリシオンの町は四つの地区に分けられており、彼らが向かうのは南側にある『冒険者区』だ。

 冒険者たちが集まる場所であり、冒険者ギルドの本部を中心に、冒険者向けの店や宿屋などが揃っている。冒険者崩れの住むスラム街や、賭博場もあるが……今の彼らにとってはどうでもいいことだ。

 他の地区のことは知らないものの、特に見所もなかったので観光は後回しにして、まずは宿を探す。

 

「さてと、俺はアテがあるから、ここらで一度失礼するぜ」

 

 そのタイミングで、ギースはそう切り出した。

 

「同じ宿には来ないのですか?」

「俺みたいな奴にゃ、適度にごまをする必要のある相手がいるってこった」

「はあ……」

「冒険者ギルドにはいるから安心しろって」

 

 その言い方では、彼はまだ皆と別れるつもりがないようだったので、ルーデウスはいまいち要領の得られない返事となる。

 取り敢えず、パウロと再会出来るまでは面倒をみてくれるらしい。態々別れる必要があるのだろうかと思いつつも、彼の言葉を受け入れた。

 

 ギースが一時離脱したものの、滞りなく宿を決めたルーデウスたちは荷物を整理し、準備を進めていく。

 装備の手入れと、補充すべき消耗品をメモ。ベッドを乾燥に掛け、シーツも洗濯、ついでに掃除。既にルーチンワークと化したそれらは、手早くこなされてこなされていった。

 そして、やるべきことが終わると三人で車座に座り、顔を突き合わせる。

 

「それでは、チーム『デッドエンド』の作戦会議を始めます。司会は私、ルーデウス・グレイラットが進行します」

 

 わーぱちぱち、とふざけるのも大概にし、彼は咳払いをひとつして真剣な表情を浮かべた。

 

「さて、ようやくここまでやってまいりました。当初の予定通り、この後は冒険者ギルドに寄ろうと考えてます」

 

 このことについては元から決めていたことなので、特に異論もなく進む。むしろ、寄らない理由がない。

 

「なので、その後のことも少し考えておきましょう。フィットア領に辿り着いた時に僕が懸念しているのは――」

 

 転移事件のことは理解した。どの程度の規模で起きたものなのかも理解したが、被害までは分かっていない。

 

 フィリップの元で貴族のドロドロとした関係を観察していたルーデウスとしては、もしかしたら今回の転移事件が原因でボレアス家に何かしらの処罰が下されるのではないかと思っていた。

 生前の日本でも何か起きれば、すぐに責任をとって総理が辞任していた。

 兆候がなくても、未然に防げなくても、損失は計り知れないし、不満は大きく糾弾もされよう。

 そう、誰かが責任を取らなければならないのだ。

 流石にあり得ないとは思うが、それでもエリスに飛び火するのであれば、フィットア領に帰るのは止めるべきだろう。

 

 己の考えを告げたルーデウスは、二人へと視線を向ける。

 

「帰るわよ」

 

 しかし、彼女は毅然とした態度でそう告げる。

 

「私たちの故郷なんだから」

「故郷……そうですね。僕たちの故郷ですから、帰るべきでしたね」

 

 その言葉を、ルーデウスは反芻する。

 自身が転生者である関係上、フィットア領が故郷であるという実感は、他の者に比べて薄い。けれど、それでもあの地で過ごした思い出は沢山ある。

 エリスの言葉に、少しだけ揺らいでいた気持ちがハッキリと定まった。

 

「ルイジェルドさんはどう思いますか?」

「危険ならばと思ったが……今の話を聞いた以上、止めようとは思わんな」

 

 そう答えた彼に、まあそうなるに決まってるかと内心で苦笑する。家族を失い、故郷すらもなくなってしまったルイジェルドが、エリスの言葉を聞いて止める訳がないだろう。

 

「分かりました。改めますが、僕たちの目的はフィットア領への帰還。それでいいですね?」

 

 その台詞に、二人は頷いた。

 

 

――――

 

 

 

 日も沈み始めた頃、準備を終えたルーデウスは冒険者ギルドへと向かう。付いてくるのはエリスだ。

 ルイジェルドは親子の再会になる可能性を考慮し、近くで待っているという話になった。

 彼のことなので、見付からない場所から見守っているのだろうと考える。

 

 

「…………」

「ルーデウス、父親は見付かった?」

「いえ、今この場には居なさそうですね……」

 

 冒険者ギルドの中に入ったルーデウスはキョロキョロと辺りを見回し、パウロらしき人物がいないかを探す。しかし、残念ながら見当たらなかった。

 仕方がないのでそのまま奥の方へと歩いて行き、伝言がないかを確認していく。

 

 掲示板にはフィットア領で起きた詳細が記載されていた。そしてそこには、多くの「死亡者」と「行方不明者」の名前が載っている。

 その隣には家族への伝言が書かれていたり、情報を求むことが書かれていた。

 

「死亡者と行方不明者が具体的に分かっている、と言うことは……」

 

 フィットア領からミリス神聖国まで、かなりの距離がある。転移事件のことは伝わっていても、具体的な被害者までは分からない筈だろう。

 だが、これだけの数の被害者が判明しているのならば、それだけの情報を持っている人物がこの国へ既に訪れていることになる。

 

 ――間違いない。パウロはこの国にいる。

 

 ウェンポートにて、ミリス神聖国で合流出来そうだという伝言は確認している。

 魔大陸に伝言が届けられたこともあり、リベラルだけは既に来ていると思ったが、この伝言板を見る限り違うようだ。

 流石に彼女一人で、この数の情報を持ち込んだのは無理があるだろう。

 

 ルーデウスはそのまま伝言板を見つめ、自分への伝言を探していく。

 

「あった」

 

 伝言はすぐに見つかった。多くのことは書かれていない。だが、重要なことは載っていた。

 

『ゼニス以外は救出できた』

 

 その下にパウロが滞在している宿のことが記載され、捜索団としてしばらくこの地に留まることが書かれていた。

 その情報を確認出来たルーデウスの表情は、少し気難しそうなものとなる。母親だけが見付かっていないため、素直に喜ぶことが出来なかった。

 だが、続けてシルフィエットの名前を探し、そちらが無事であることが分かるとホッと一息吐く。

 

「エリス、どうやら僕の家族は母様以外は無事なようです」

「…………」

「……エリス?」

 

 ふと、ルーデウスは隣にいるエリスの様子が可笑しいことに気付いた。彼女はこちらの話に反応することなく、ずっと伝言板を見続けていたのだ。

 よく観察してみれば、握りこぶしを作り体を微かに震わせている。そしてその視線の先を辿り、ルーデウスはようやく理解した。

 

『ヒルダ・ボレアス・グレイラット』

『サウロス・ボレアス・グレイラット』

 そのふたつの名前が、死亡者の欄に並んでいたのだ。

 

 自分のことばかりに気を取られ、エリスに対する配慮を欠いてしまった己を恥じる。

 フィットア領全体で転移が起きたのだ。エリスの家族が亡くなっている可能性も配慮すべきだった。

 今世では親しい人を亡くしていないし、前世でも家族の死にすら無頓着であった。だからこそ、彼女の悲しみに気付けなかった。

 

「…………」

「エリス」

 

 掛けるべき言葉が分からなかった。

 けれど、今まで本気で生きてこなければ、きっと前世で見ていた漫画やアニメのクサイ台詞でも言っていただろう。

 しかし、そんな借り物の言葉では駄目だ。それでは意味がない。

 

 ここまで共に歩んできたエリスが、一体どのような気持ちを抱いていたのかは理解できる。

 ルーデウスは静かに彼女の手を取り、自分の言葉で語り掛けた。

 

「大丈夫です。僕がいますよ」

 

 まるで自身に依存させるかのような甘言。かつてシルフィエットを己に依存させてしまったことを思い出させる。

 周囲からまるで洗脳のようだ、と思われてしまったことにより離れ離れとなったが、これではまた同じことを繰り返してしまいそうにも思える。

 

 けれど、そんな心配をルーデウスはしていなかった。

 ここまで歩んできた旅路で、エリスから頼られることはあれど、依存されたことはない。少なくとも、ルーデウスが何もしなくても自分で自主的に活動していた。

 

 エリスは自分の手の震えを彼に隠すこともせず、静かに口を開く。

 

「ルーデウスは……」

「はい、なんですか」

「ルーデウスは、家族と会えるのはやっぱり楽しみよね……?」

 

 予想外の質問に、ルーデウスは少し戸惑ってしまう。何でそんなことを、なんて思った。

 どう答えても彼女を傷付けてしまうようにしか思えない。けれど、ずっと黙っている訳にもいかず、質問に答える。

 

「そうですね、楽しみですよ。妹も生まれたのに、一度も顔を見たことがありませんから」

「私も、お祖父(じい)様とお母様に会いたかったわ」

「…………」

 

 その言葉には、流石のルーデウスも閉口した。今の彼には、まだ大切な人を亡くしてしまうということが分からない。

 親の葬式も放置して、ずっと部屋に篭っていたくらいだ。分かる訳がない。

 

「すこし……一人にさせて」

「……分かりました」

 

 いつもの快活さもなく、エリスのしおれた声を聞いたルーデウスは、握っていた手を離す。どう声を掛ければいいのか、分からなくなったのだ。

 身動きが取れるようになった彼女は無言でルーデウスの元から離れ、そのままギルドから出ていった。

 落ち込んだ状態のエリスを一人にさせるのには不安はあったが、外にはルイジェルドがいる。誰かに襲われる心配はないだろう。

 

 結局、ルーデウスは自分の掛けた言葉が正解だったのか分からないままだった。エリスの悲しみを少しでも和らげようとしたが、余計なお節介だったかもしれない、とも思ってしまう。

 今のルーデウスとエリスでは、状況が違いすぎる。彼女の悲しみを理解したつもりだったが、もしかしたらそれは同情でしかなかったのかも知れない。

 

「……なんで、転移事件が起きたんだろ」

 

 ポツリと呟かれる、素朴な疑問。

 

 転移に関する知識はほとんどないため、事件が意図的なものなのか偶発的なものなのかも分からない。

 けれど、間違いなく人生の分岐点(ターニングポイント)であったことだけは分かる。

 無駄な想像でしかないが、もし転移事件が起きずに過ごしていたら……きっと、今とは違った人生を歩んでいただろう。

 

 あのままエリスと結婚してアスラ王国の貴族になっていたかも知れないし、出奔して今のようにエリスと冒険していたかも知れない。

 パウロやフィリップと普通にやり取りしてたかも知れないし、サウロスを義祖父様、ヒルダを義母様なんて呼んでいたかも知れない。

 だが――それも今となってはあり得ぬ未来だ。

 

 サウロスとヒルダは、もうこの世にいない。

 

「……俺、あの二人に何も返せてないな」

 

 そう考えると、ふつふつと悲しみが込み上がる。

 

 

 ――だが、習っていないと開き直らず、自分に出来る限りの礼儀を尽くそうという姿勢は良い! この館への滞在を許す!

 

 エリスの誕生日にあったダンスパーティー。あの日、サウロスが走りこんできて、二人を肩の上に乗せ、嬉しそうに笑いながら中庭を走り回った。

 元気なお爺さんだな、なんて思ったりした。

 

 ――大丈夫よルーデウス、安心していいの。あなたはもうウチの子よ!

 

 実子を養子として取り上げられながら、我が物顔でボレアス家にいたルーデウスを気に入らなかったヒルダ。けれど、いつしかその努力を認め、彼女は抱き締めながらそう言った。

 あの時は嫌われてると思っていたから、困惑して何も返事出来なかった。

 

 約3年。それがボレアス家にいた時間だ。

 上手くいかずに辛い思いもしたし、空回りもした。不安もあったし、やり残したこともある。

 

 

 ――思い返せば思い返す程に、後悔が溢れ出す。

 

 

「……あれ?」

 

 自分が想像以上に悲しんでいたことに、ルーデウスは驚きの声をあげる。

 前世では親の死に悲しみすらせず、葬式にすら出なかった。それはきっと、自分以外の世界をどうでもいいと拒絶していたからだ。

 もしかしたら自分は、他人のことで悲しむことが出来ないのではないかと思っていた。自分のことでしか後悔出来ないんじゃないかと思っていた。

 けれど、そんなことはなかった。

 

 ルーデウスは今、サウロスとヒルダの死に悲しみを感じていた。

 二人にもっと色んなことをしてあげれば良かったと、そんな後悔が浮かび上がる。

 

 けれど、何をどこまでしていれば後悔しなかっただろうか。そのことをいくら考えても、答えなど見つかる訳もなかった。

 結局、何をしていても後悔したのだ。

 

「…………」

 

 思い返せば、ルーデウスは家族とまともな別れ方をしていない。ブエナ村でパウロに叩きのめされて以来、彼らとは一度も会っていないのだ。

 手紙でやり取りしていたので、ある程度の近況は知っているが、それだけだ。そう考えると、無性に家族と会いたくなってくる。

 

(家族か……俺はパウロたちを、ちゃんと家族として見れてるのかな……)

 

 前世の記憶などを持っているが故に、普通の人に比べてその意識は薄くなっているだろう。

 それに、ブエナ村を離れてから一度も顔を合わせてないのだ。最後に顔を見たのは何年前だ、と聞かれれば即答出来ない。

 

 パウロたちはきっと、サウロスが亡くなったことを知った今の自分と、似たような気持ちを抱いている筈だ。

 ちゃんと向き合わなくてはならない。

 今までは何となくであったが、このままではまた後悔することになる。

 

「宿の場所は……『門の夜明け亭』か」

 

 伝言を再び確認したルーデウスは、家族と会うためにギルドから出ていった。

 

 

――――

 

 

 宿の前にいた捜索団の人に事情を話すと、彼らは驚いた様子を見せてパウロたちへと伝えにいった。

 しばらくすると捜索団の一人に部屋の前まで案内され、入るように促される。

 

「あ……」

 

 中には、家族がいた。

 パウロにリーリャ、そして恐らく妹たちであろうノルンとアイシャ。

 

 パウロは疲れた様子を見せており、目に隈が出来ている。記憶に残っているよりもやつれていた。

 そしてその後ろに隠れるようにして、パウロによく似た鼻立ちと、ゼニスによく似た金色の髪をした少女がいる。一目見て、彼女がノルンであると分かった。

 メイド服を着ているリーリャはパウロ同様に疲れた様子を見せていたが、目が合うと顔を綻ばせて一礼する。

 彼女の隣には、リーリャと同じメイド服を着た少女が、ニコニコと笑顔を浮かべて見ている。

 

 そんな中、パウロが一歩前に出た。

 

「ルディ……」

 

 先程までのやつれた表情から一転し、安堵の表情を浮かべる。

 

「父様」

 

 ルーデウスはパウロの傍へと歩み寄り、静かに胸に抱き付く。

 最初は戸惑った様子を見せていたが、抱き締め続けるルーデウスに対し、彼も抱き締め返した。

 

「父様、無事でよかったです」

「る、ルディ……お前も無事でよかった……。優秀だからって、何もしてやれなくて……もし会えなければって、怖かったんだ……」

 

 泣き声でそう語るパウロに、ルディは優しく背中を擦る。

 

 ――やっぱり、俺はこんなにも想われているんだ。

 

 ルーデウスとしてこの世に誕生してから、パウロには何も返せていない。

 いつも自分のことばかりで、周りに目を向けることが出来ていなかった。自分は本気で生きてきたつもりだったが、そんなことはなかったのだ。

 稽古中に欠伸をして落ち込ませたり、口喧嘩で大人気なく勝ったりと、パウロを喜ばせることを全くしていない。

 だが、今回の転移事件のように、前触れもなく理不尽に日常が崩れ去ることもあるのだ。

 

 ――自分は後悔しないように、本気で生きていけてるのだろうか?

 

 そんな不安に駆られながらも、ルーデウスはパウロの肩に顎を乗せて温もりを感じる。とても温かく、懐かしい感覚だった。

 亡くなってからでは遅いのだ。己はまだ、家族に何も恩返しを出来ていない。

 けれど、皆に無事な姿を見せることが出来たのは、きっとこれまで本気で生きてきたからなのだろう。

 

「ごめんな……今まで、父親らしいこと出来なくて……」

「こちらこそ、今まで何も出来ずに、すいませんでした……」

 

 パウロの嗚咽を聞きながら、ルーデウスは生きて会えた喜びを分かち合った。




Q.ギースに対するルディの口調。
A.牢屋で会ってない上、詐欺られそうだったところを助けて貰った恩人なので丁寧に喋ってます。先輩呼びさせたぃぃ。

Q.聖獣とルディ普通に遭遇してない?
A.聖獣が拐われる前であったため、普通に接触し、かつ雨季前に誘拐にきた密輸人たちに勝利した。襲撃には北聖ガルス・クリーナーもいたものの、強化されたルディの前に敗北したらしい。後ほど閑話で戦闘シーン書きます。

Q.回想の中のヒルダの台詞、時期的に言ってなくなくなくない?
A.ルディの誕生日パーティーは行われてませんが、原作よりもちょっと凄くなったのでヒルダがちょっと早い時期にデレました。

Q.リーリャとアイシャいるやん。
A.そうですね、無事に助け出せたみたいですね。その話も書こうとしたのですが上手く書けなかったので、パウロからどんな感じだったのか軽く説明するだけになります。

今回は原作キャラの視点+原作に似た流れとなっていたので、もうちょっと捻れよ、なんて思われてる方もいると思います。
オリ主視点をメインにし過ぎると、原作とどういうところが変わってるのか細かく分からない為に書いてるのですが…もう今回のような話ではキャラクターに軽く説明させるだけの方がいいのでしょうか?
もしくは何かいい感じに頑張って纏めるとか…出来たらいいんですけどね…。

その辺りについて意見してくださると助かります。

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