エリス「お祖父様、お母様……」
ルディ「俺は…本当に本気で生きれてるのかな…?」
パウロ「ルディ…ダメな父親でごめんな…」
やばい…投稿に時間開きすぎて作中の時間がどうなってるのか訳ワカメになってしまった……。そもそもルディ今何歳なんだ…原作とほぼ同じなんだけど、旅の途中でのイベントとの時差が本当に分からなくなっちゃった…。
……あまりそこに突っ込まずにスルーして下さると助かります。
――ルーデウスがパウロと再会してから約半月後。
ミリス神聖国へと、アルマジロの魔獣が引く車がやって来た。
それを誘導するように、フードを被り顔を隠した人物が前を歩いていく。当然ながら、その人物はリベラルである。
「ハァ……全く、相変わらず面倒な国ですねここは」
溜め息を溢す彼女は、疲れた表情を浮かべ一人愚痴る。
ラプラス戦役が原因で、ミリス神聖国は魔族に対して排他的となっている。そのため、髪色の問題もあり彼女は魔族として見られてしまうのだ。
なので、リベラルがミリス神聖国に訪れる際は、基本的にトラブルを避けるために顔が分かりにくいようにしていた。とは言え、既に面倒事が何度も発生している。
入国時には高い入国料(金貨一枚)を取られ、更にはゼニスの姿を見た衛兵にあらぬ疑いを掛けられ捕縛されそうになったり。そこで無駄に時間を取られたかと思えば、冒険者ギルドの位置を街の誰も教えてくれないので、虱潰しに探し回ったり。
その途中で再び衛兵に捕まったりと、余計なことばかり起きていたのだ。
溜め息の溢すのも仕方のないことだろう。
「…………」
「ゼニス様には敵いませんね」
いつの間にか側にいたゼニスが、慰めるかのように頭をポンポンと撫でている。
嬉しいがそれ以上に恥ずかしいこともあり、リベラルはそそくさと歩みを速めた。
既にギルドの場所も確認できた彼女は、一度アルマジロを宿に預けてからギルドへと向かう。
ゼニスがはぐれないように手を繋ぎ、歩調を合わせながらギルドにたどり着いたリベラルは、そのまま中へと入った。そのまま奥へと進んで伝言板を確認し、現在の状況を把握する。
内容は、リーリャとアイシャのこと、ルーデウスと合流出来たことや、現在は奴隷を解放していることが記載されていた。
その内容に、彼女はホッと胸を撫で下ろす。
「ゼニス様、どうやら家族は無事のようですよ」
「…………」
リベラルの言葉に、ゼニスは反応しない。けれど、魔眼によってある程度の思考を読める彼女の目には、とても喜んでいる姿が映っていた。
「場所も確認出来たことですし、早速向かいましょうか」
「…………」
「後は……ゼニス様の容態の説明ですね」
「…………」
リベラルの言葉に、ゼニスは『私に任せなさい!』なんて反応を示しているが、それが周りの者に伝わることはない。
けれど、その頼もしい心意気にリベラルは笑顔を浮かべ、そのままパウロたちの元へと向かった。
――――
パウロたちの泊まる宿へとたどり着いたリベラルは、近くにいた捜査団の者へと事情を説明する。
生憎と現在パウロは奴隷解放のために席を外しており、帰るのは何時になるか不明らしい。けれど、リーリャたちはいるようなので、彼女たちと先に会うことになった。
部屋までの案内中、団員たちが気の毒そうにゼニスを見ていたが、それを無視しておく。やがて、部屋の前へとたどり着きノックをする
「どうぞ」
返事を聞いて中に入れば、リーリャ、ノルン、アイシャの三人がそこにいた。訪れたことを先に聞いていたのであろう三人は、並んで出迎えてくれた。
ゼニスの顔を見たリーリャは喜びを隠しきれずに破顔するも、すぐに表情を取り繕いリベラルへと一礼する。
「リベラル様、奥様を救って頂きありがとうございます」
「いえ、別にかま――」
彼女はその言葉に返事をしようと口を開くが、その途中でノルンが飛び出す。
「おねえさん! おかあさん!」
再び会えたことに喜び、ノルンは涙声で二人に抱きつく。転移事件でリベラルと共に転移したこともあり、彼女はとてもリベラルのことを慕っていたのだ。
当時は幼かったこともあり、ドラゴンの群れを追い払う姿や、パウロの元まで届けてくれたことも鮮明に覚えている訳ではない。しかし、長いこと一緒にいて助けてくれたことは覚えていた。
だからこそ、ゼニスよりも先にリベラルのことを呼ぶほどに、信頼が寄せられていたのだろう。
その後ろで様子を窺うようにしていたアイシャであったが、彼女もタイミングを見計らうかのようにして飛び付く。
「私も二人に会いたかった!」
悪戯っぽく笑顔を浮かべながら抱き着いてきたアイシャに、リベラルも合わせて抱き止める。
アイシャと関わった時間はあまり多くない筈なのだが、喜び方が少し大袈裟なように感じられた。
その証拠に、抱きつきながらもチラチラと様子を窺っている。昔から幼子とは思えないほどに頭が良かったことを考えると、空気を読んでそうしているだけのようにも見えた。
が、そこはあまり気にすることではないだろう。リベラルは素直にその配慮を受け入れた。
そこでリーリャも歩み寄り、ゼニスの目の前へと来る。
「奥様、よくぞご無事で……」
「…………」
「……奥様?」
ゼニスは問い掛けに対し、何も反応を示さない。それどころか、表情も何一つ変わらないのだ。
思い返せば、ノルンとアイシャが抱き付いた時ですら、何も反応がなかった。
その事に気付いたリーリャは、怪訝な顔をリベラルへと向ける。
「……申し訳ございません。私の力が至りませんでした」
「それは、どういう……」
「……ゼニス様の現在の状態について説明します」
最初から誤魔化す気などなかった彼女は、ゆっくりと口を開く。
転移事件で転移迷宮に飛ばされていたこと。その最奥の魔力結晶に囚われていたこと。そして――人間性を失ってしまったことを。
包み隠すことなく、全てを話した。
「…………」
リーリャは、それを黙って聞いていた。固く口を閉ざし、決して表情を変えることなく最後まで聞き続けた。
「――……そして今、ここまで辿り着きました。私の力が至らず、申し訳ございません」
「……何故、謝られるのですか。リベラル様は何も……。ここまで、奥様を連れて来て下さったではないですか」
ゼニスを迷宮にいることを発見したのも、そこから助け出したのも全部リベラルのしたことだ。だからこそ、リーリャはそのことに感謝し、それ以外の感情を抱きようがない。
そもそもな話、リベラルが転移事件が起きることを知っていようが知ってなかろうが、防ぐことなど結局は出来ないのだ。
転移時期がずれたにも関わらず、ゼニスは転移迷宮に囚われてしまった事実に揺らぎはない。
ゼニスの容態のことで、リベラルを恨むなどお門違いである。
「……おかあさん?」
「かあ……ゼニス様……?」
「…………」
そんな二人の隣で、ゼニスはノルンとアイシャの頭を撫でていた。緩慢な動きで表情に変化もなかったが、二人のことを認識して愛情表現をしていたのだ。
そのことに何か感じるものがあったのか、ノルンは悲しそうな顔を浮かべる。アイシャは事情をきちんと理解したのか、暗くなっていた。
「奥様……」
その次に、ゼニスはリーリャの目の前に立つ。何かをするわけでもなく、しばらくそこに佇んだ。
そしてずっと顔を見つめられているリーリャは、戸惑った様子を見せている。
「…………」
そんな彼女に、ゼニスは優しく抱擁した。まるで再会を喜ぶかのように、穏やかな雰囲気で。
「……っ」
リーリャは何かを堪えるかのように、凛とした表情を僅かに崩した。
そして抱き付かれたまま、時間だけが緩やかに過ぎていく。
――私に、この方に抱擁される権利はあるのだろうか。
ふと、リーリャの頭にそんな考えが過った。自分はゼニスと気軽に接するべきではないだろうと。
己は侍女として後ろで控えるべきであり、このような抱擁をされるべき存在ではない。
むしろ、リーリャよりも実子であるノルンにこそされるべきだろう。自分はとんでもない過ちを犯した存在なのだから。
「奥様、いけません。私よりもノルン様に……」
「…………」
けれど、それでもゼニスはリーリャから離れなかった。
状態が状態なだけに、決して力強い訳ではない。離れようと思えばいつでも離れられるだろう。
だが、無理に離れようとする訳にもいかず、ただただ時間だけが過ぎていく。
「……リーリャ様、大丈夫です」
そこで、リベラルが口を開いた。
いつの間にか魔眼を開いていた彼女は、ゼニスの想いをしっかりと理解し、それを代弁する。
「ゼニス様は、貴方のことをちゃんと家族として見ていますよ」
「……リベラル様、何を仰って……?」
「抱き締め返して欲しいと、そう思ってますから」
魔眼によってリベラルは、ある程度の意志疎通が出来ることをまだ伝えていないので、リーリャとしては何故分かるのだという思いを抱く。
けれど、未だにゼニスは離れようとせずに抱擁を続けたままである。
やがて、どうするべきか悩み悩んだようであったが、リーリャも背中へと腕を回し、ゼニスを優しく抱き締めた。
「…………」
「っ!!」
彼女は微笑んでいた。
昔から変わらぬ美しい顔で、リーリャ
を優しく見つめる。
――どうして、奥様は私などに……。
ゼニスはいつだってそうだった。
あの時も最初は怒っていたが、最終的には今のような優しい眼差しを送ってくれたのだ。
何故、自分なんかにそのような表情を見せるのか不思議だった。
胸中に過るは、ブエナ村で過ごした過去の思い出。けれど、両者にとって最悪であった筈の出来事だ。
「……っ! まさか、奥様もルーデウス様のように……私のことを、私などのこと許して下さるのですか……?」
だからこそ、その可能性に思い至ったリーリャは衝撃を受けていた。
――――
――ゼニスとリーリャの関係は、複雑である。
元々は侍女とその雇い主、といった関係であった。しかし、パウロと不倫関係となり、アイシャを懐妊してしまう。
そのため、リーリャは侍女でありながら、第二夫人という立場になった。
ルーデウスによって家庭崩壊は防げたが、当然ながらパウロを誘惑していたリーリャには引け目があった。
騒動後にゼニスが仲良くしようという姿勢を見せてくれたことも一因だ。
負い目が大きく募る関係となっていた。本当に私はこの家に居ていいのだろうか、という気持ちも少なからずあった。
実際のところ、不倫関係を作って修羅場にまで発展したにも関わらず、互いに仲良く出来ていたとは思える。
雇用されてすぐの頃から、良好な関係となれたこともあるのだろう。意外と共通の話題も多く、会話することも多々あったのだ。
少なくとも、険悪な雰囲気はなかった。
けれどそれは、ルーデウスや生まれてきた娘のために、仕方なく築いた表面上の関係なのではないのかと不安だったのだ。
家庭が崩壊することを恐れたルーデウスのためを思い、罵倒したい気持ちを我慢していただけではないのかと。
ゼニスはミリス教徒であり、『一人の相手を愛すべし』という教義を持つ。
貞操観念が強かった彼女は、『他の女性に手を出さない』という約束の元で、パウロと結婚して現在の関係になったとリーリャは聞いている。
だから――内心では恨まれてるだろうと、そう思っていた。
「…………」
微笑みを見せるゼニスには、確かにリーリャを想う気持ちが宿っている。
そこには、恨みなど微塵も存在しなかったのだ。あるのは、ただひとつの想いだった。
そのことに気付いたリーリャは、どうしようもない気持ちに駆られる。
「っ……! 奥様、申し訳、申し訳……ございません……」
彼女の謝罪に、ゼニスは穏やかな表情を浮かべたままだ。それはまるで、無事に再会したことを喜ぶかのようでもあった。
本来であれば、そのような思いを抱かれる資格など無い筈なのに。
ゼニスは優しかった。このような姿になっても尚、リーリャを気遣っていたのだ。
嫌われてると思っていた。憎まれてると思っていた。無事であることを願われてないと思っていた。
けれど、そんなことは決してなかった。
自分が一人勝手に、そうなのではないかと恐れていただけに過ぎなかったのだ
――ゼニスは、リーリャのことを家族として受け入れていた。
その事実に至ったリーリャの瞳から、涙が溢れ出す。抱擁の温かさから、ゼニスの想いを、心を感じたのだ。
このような姿となってしまったが、それでも彼女は昔からずっと受け入れ続けてくれた。
(私は、この家族と出会えて、仕えることが出来て、幸せ者です……)
始まりは、あまり良い形ではなかったかも知れない。
ただなるべくお金が欲しいから、侍女の募集に飛び付いただけに過ぎなかった。断られそうなら、過去にパウロによって強引に夜這いされたことを交渉材料にすればいいか、なんて考えもあった。
生まれたルーデウスに対しても気味の悪さを感じたりしたし、必要性は薄かったがあまり世話も出来てなかったと思う。
それ以外では給金分はそつなく働いていたが、最終的に情欲に負けての妊娠騒動だ。
本来であればそのまま家から追い出され、赤子のアイシャと共に野垂れ死んでいたところである。
けれど、そうはならなかった。
パウロも、ルーデウスも、ゼニスも。
三人とも、リーリャとアイシャを家族として見てくれていたのだ。
(最大限の敬意を払い、全てを尽くして仕える。それが、私に出来る唯一の恩返し……私が死ぬまで仕える人物だ)
今のゼニスは、まともに行動が出来る様子ではない。ならば、自分が支えねばならぬだろう。
介護というのは決して楽なことではないが、それでも不安は一切なかった。
――アイシャと共に、ゼニスたちを支えよう。
リーリャはそんな強い決意を胸に抱いた。
――――
ゼニスとの再会からしばらく経過し、リーリャたちの気持ちも大分落ち着き始める。
ノルンとアイシャは、いつの間にかベッドで横になって眠っていた。その横でゼニスも同じベッドへと座り、二人を静かに眺めている。
「奥様は、治るのでしょうか……」
人間性を失ったと聞いた時は、頭が少し真っ白になってしまったリーリャであった。しかし今のゼニスは、僅かだが考えて行動しているように見えるのだ。
もっと廃人のように何も行動出来ない可能性があったことを思えば、かなり希望の見える状態と言えよう。
「パウロ様と合流した時にも改めて伝えると思いますが、私が必ず治します」
「……治せるのですか?」
「時間は掛かりますが――治せます」
ハッキリと断言したリベラルに、リーリャは瞠目する。
けれど、その驚きを決して口にすることなく、彼女は頭を下げた。
「奥様を、お願いします」
「ええ、任せてください。なんてったって――私は『銀緑』なのですから」
リーリャの願いに、リベラルは力強く答えた。
実際に治せるのかどうかと言われれば、答えは当然ながらイエスである。
既に告げたことだが、時間さえあればリベラルはゼニスを治せるのだ。
そもそも、ゼニスの容態は本来の歴史に比べて軽症となっている。本来であれば、彼女はこんなにも活動的ではない。
日常生活に必要な行動は教えれば出来たが、それでも他者との関わりはほとんど出来なかった。
けれど、今のゼニスはノルンとアイシャの頭を撫でられるし、リーリャの不安に気付いて抱擁することも出来る。何よりも、既に現状を理解してリベラルと断片的なコミュニケーションが取れるのだ。
恐らく、本来の歴史よりも魔力結晶に閉じ込められた時間が短かったために、軽症になったのではないかと考えている。
パウロはゼニスを助けに行って欲しいとリベラルに懇願した。
そしてそれは――決して間違えではなかったのだ。
もしそう願ってなければ、ゼニスはもっと重症な状態で救出されただろう。そうなっていれば、治すのに途方もない時間が必要となっていた可能性もある。
「とは言え、この国で腰を据えて治療するのは厳しいので、ラノア王国にあるシャリーア辺りで本格的な治療の研究をしようと思います」
「シャリーア……ですか?」
「ゼニス様は魔力結晶に閉じ込められた影響で、神子となっています。なので、医術よりも魔術方面から治療を進めていくことになりますから、魔法都市にいる方が都合も良いんですよ」
リベラルは龍族だが、髪色の問題もあり魔族としてしか見られない。故に、魔族に排他的なミリス神聖国では落ち着いて治療に専念出来ないし、余計な邪魔をされる未来しか見えない。
逆にシャリーアでは、種族的な差別がなくリベラルも過ごしやすいし、研究をするための設備も用意しやすいのだ。
行かない理由がないだろう。
もちろん、本来の歴史にもなるべく近付けようという意図もある。
しかしそれを抜きにしても、シャリーアの環境が最も整っているのも事実だった。
「まあ、パウロ様や他の方々との情報交換が終われば、そのまま向かうことになると思いますよ」
「…………」
リベラルの答えに、リーリャは少しばかり悩む。と言うのも、ゼニスの世話をどうするべきか、ということについてだ。
パウロは捜索団の団長として身動きが取れない以上、誰かが彼の傍で支えなくてはならない。しかし、アイシャはまだ幼い上に教育が終了しておらず、中途半端な状態だ。
いくらアイシャが優秀と言えど、流石に世話を任せるのは無理だろう。
そんな悩んでる姿に、リベラルも気付いたのだろう。もしや、といった様子で口を開く。
「……もしかして、ゼニス様のお世話のことで悩んでますか?」
「はい……」
「あー、まあ、大丈夫ですよ」
「しかし、リベラル様に負担をお掛けさせる訳には……」
ゼニスの治療だけでなく、世話も行うのは流石に大変だろう。それに、効率もあまりよくない。
そもそも、先ほどゼニスに全てを尽くそうと誓ったばかりである。なのに任せっきりというのもどうかというもの。
「いえいえ、召し使いにはちょっとした当てがいるので問題ありませんよ」
「当て、ですか?」
「ええ、光の速さで雑用をこなすパシリがいるんですよ。まあ、雑魚ですが世話をさせるには丁度いいのでソイツにさせようと思います」
「そ、そうですか……」
なんだがよく分からないが、取り敢えず凄そうという感想をリーリャは抱いた。
リベラルが大丈夫だというのであれば、きっと大丈夫なのだろう。
そう思うことにした。
「そう言えば、私の話ばかりでそちらの話を聞いてませんでしたね」
そこで話題は切り替わり、リベラルはリーリャたちの出来事を訊ねる。彼女が最も知りたいのは、シーローン王国でのことだ。
リーリャとアイシャがこの場にいるので、問題なく助けられたのは分かるのだが、どういった過程で進んだのかが気になるのだ。
「千里眼で状況を把握したと伺いましたので知ってるとは思いますが、私とアイシャは奴隷にされてました――」
奴隷になってしまった二人は教養の高さもあり、安物扱いにはならなかった。そのため、貴族向けの金額となっていたらしい。
また、比較的自由に過ごせたこともあり、アイシャの教育も出来たとのこと。そして教育をしているときに、ふと思い付いたことがあったのだ。
他の奴隷もついでに教育してしまおうと。
その目的は、自分達の優秀さをよりアピールすることと、教育することで自分達への金銭的負担の軽減だ。
奴隷にされてしまっても食事程度は出されるが、当然ながらその分の金銭的負担が胴元に発生する。売れ残れば残るだけ負担も大きくなるため、売り手は早く売りたいのが本音だろう。
しかし奴隷たちに教養を与え、価値を上昇させ続けることで、その分の負担を帳消しにしていたのだ。そうすることで売られることなく、ずっと過ごせていたらしい。
その上で、アイシャが合間に救援を求む手紙なども出したりしていた。
「そうしている内に、エリナリーゼ様とタルハンド様が現れました」
ここで、パウロたちよりも先にシーローンに到着していた二人が発見したようだ。アイシャがこっそり出し続けていた手紙からたどり着いたらしい。
しかし、値段の問題で二人を購入出来ずに行き詰まってしまう。何とか出来ないかと交渉など色々したらしいが、それは二人の本分ではない。
『黒狼の牙』の交渉担当は、生憎いないのだ。
とは言え、色々と妨害を行ったりしたらしい。
アイシャとリーリャを購入しそうな者が現れたりすると、嫌がらせなどの行為をやりまくったのだ。やり過ぎて何度か危ない場面もあったらしいが、何とか切り抜けたとのこと。
そうこうしている内に、ようやくパウロたちが到着だ。
パウロは人神ではなくリベラルの助言通りに動き、人形を売り払って金銭を獲得し、第三王子であるザノバへのメッセージも無事に送れた。
そしてそのお金でそのままリーリャとアイシャを購入してお仕舞い。その後はミリス神聖国へと向かい、ルーデウスと合流だ。
何ともまあ、上手くいった話である。
(残念無念ですね。ヒトガミにお疲れさんって言ってやりたい気分です)
リベラルの動きが見えないヒトガミは、エリナリーゼとタルハンドをシーローン王国に向かわされたことが誤算だったのだろう。
二人がいなければどうなっていたのか分からないが、もしかしたら誰かに買われていた未来があったのかもしれない。しかし、それも既に“たられば”の話である。
リーリャとアイシャは、もう奴隷から解放されてるのだ。
「ルーデウス様と既に合流したらしいですが……彼らは既にフィットア領へと向かわれたのですか?」
「いえ、ルーデウス様の仲間に、その、スペルド族の方がいたのですが、ウェストポートを渡るのに莫大な資金が必要なため立ち往生しているとのことです」
結局、資金の問題を解決出来なかったため、こちらに一度戻ってきたらしい。
そもそも資金があっても渡航出来るか怪しいが、取り合えずどうするべきか考えてる途中のようだ。
つまり、ミリス神聖国にみんな集合していた。
「なるほど、状況は分かりました。ありがとうございます」
しかし、タイミングとしてはバッチリではある。そのままパウロとルーデウスにゼニスのことを報告出来るのだから。
リベラルはそう考え、リーリャとの会話を終えた。
Q.リベラルのミリス神聖国での扱い。
A.作中に記載したように、魔族扱い。見た目以外の判断方法はよく分かってない。そのため、酷い扱いを受けてる。どれくらい酷いかっていうと、初めて訪れたロキシーが心折れそうになるくらい。そして今後の展開のための伏線というか意味付けのひとつ。自分が何を考えていたか忘れた時用のために、『ミリス神聖国にある魔術』と書き残しとく。
Q.リーリャとゼニスの関係。
A.見落としてるだけかもですけど、原作にリーリャの独白でルーデウスへの尊敬はあるけど、ゼニスへの思いが見当たらないんですよね。なので、きっとこうなんじゃないかな?という想像を込めて書きました。
Q.リーリャとアイシャの救出…。
A.…まあ、無事に完遂。というか、ヒトガミもあまり期待してなかった。それと同時に、グレイラット家がヒトガミと敵対することが決定。そして、投げやりになったヒトガミが取る行動といえば…。
Q.あれ?そう言えばもうすぐミリスで暗殺騒ぎがあるような…。
A.ミコ様は運命が弱いですけど、運命の強い人が今いっぱいいるのです。クリフせんぱぁぁぁい!学校に行きましょうぜぇ!
Q.スペルド族は渡航出来ない。
A.ガッシュと会えてない&テレーズさんまだ来てない。