リベラル「エリスに料理教えて仲良くなりました」
リベラル「ルイジェルドと仲良くなりました」
リベラル「ルーデウスにも稽古つけて別れました」
今回でこの章は終了です。
相変わらず謎の14話構成。でも狙ってやってないです。たまたまです。
今回は原作と似てる部分はあれど、決定的に違う結果になったと思います。
後…更新は今回以降また遅くなっちゃうと思いますずびばぜん!!
前回から言ってましたが、やることが溜まってるけど体調崩してダウンしたことを言い訳に、何もやらずにサボって小説書いてました!
大量の課題に休み明けは大量の試験が待ち受けており、また課題も沢山出されながら仕事もして、更には実習が待ち受けている…書く暇どころかスマホイジルジカンモナイヨ(泣)
では皆さんしばらく逝ってきます(絶望)
ルーデウスと別れた後の旅路は、相変わらず順調だった。
忘れられていたかも知れないが、リベラルはべガリット大陸でアルマジロのような魔物をずっと使役してきていた。
この辺りにいる魔物よりも格の強い魔物だったため、他の魔物が寄ってくることはほとんどなかったのだ。
たまにヒトガミの使徒も現れるものの、基本的に一撃で仕留められる程度である。
「ゼニス様、体調はどうですか」
「…………」
特に反応を返すことはなかったが、問題はないのだろう。
ゼニスは馬車の中で寛いでいたので、気にせず顔を前に向ける。
(ルディ様たちはフィットア領にたどり着いた後、ルイジェルド様の名声回復の手伝いをするという話ですが……)
それについては上手くいくか微妙なところだろう。差別をなくすには時間が足りないのだから。
結局ルイジェルドが一人でスペルド族の元へ向かわないように場所は伝えてないが、リベラルに聞きにやってくることも考えられる。
治療の進行状態によっては、そのタイミングで見に行くのもいいだろう。
(病気に関しては私も分からないことが多いですからねー…)
スペルド族の疫病を治せるかどうかの不安はあった。
人体の損傷を知るために魔眼は有効だが、流石にウイルスだとか細菌だとかまでは魔眼で見ることは出来ない。
顕微鏡だとかの仕組みは分かるが、そんな現代レベルのものを作成するのは困難だ。
特に、自分が病に侵されるというのは避けたい事態である。
(魔石症とか、もしかしたらヒトガミが狙ってやってくるかも知れませんね)
本来の歴史で、魔石症のあるネズミがルーデウスたちに紛れ込んだのはヒトガミが原因であるかは分からない。
なにせ、ヒトガミの助言は一切なかったのだから。
己の意思でナナホシを助けようと、ルーデウスは魔大陸に向かったのだ。
なので、ネズミに関しては本当に偶然だったのだろう。
問題は、そのネズミをヒトガミが利用したことだ。
ネズミが忍び込むなんてヘマをリベラルはするつもりはないし、守護魔獣をルーデウスに召喚させる予定である。
余程の例外がない限り、ロキシーが魔石症になることは防げるだろう。
(まあ、疫病については空き時間にでも勉強しておきましょう。ケイオスブレイカーなら本も多くあるでしょうし)
ペルギウスと戦友であるため、彼女がケイオスブレイカーの書庫に立ち入ることを許してくれる。
持つべきものは友であった。
アルマンフィを借りる予定なので、ついでに持ってきてもらうのもありかもしれない。
(ペルギウス様、何だかんだで私のワガママ許してくれますからね。私も甘えさせてもらいますよ)
リベラルに甘いのも僅かな戦友の一人だからだ。
いつか借りは返すので許してくれるだろう。
(病気といえば……静香ですね)
ナナホシは転移者であり、魔力を持つことなくこの世界にやってくる。
それによってドライン病になってしまうのだ。
リベラルはドライン病はソーカス草によって抑えられることを知っているが、手元にある訳ではない。
ソーカス草は日の差さない深い洞窟の奥地に生えるが、栽培するなら管理する必要がある。
そのため、リベラルはどうしてもソーカス草を確保することが出来なかった。
栽培するとしたら、手の空いたタイミングで魔大陸のどこかの魔王城から分けてもらうしかないのだ。
結構時間が掛かるため、行くタイミングも考えなくてはならない。
(取りあえず、ラノア王国に着いてからですね)
そうして、リベラルは苦労することもなく目的地にたどり着くのだった。
――――
リベラルと別れたルーデウスたちだが、こちらも順調に旅は進んでいた。
シーローン王国は本来の歴史ではパックスにちょっかいを掛けられていたが、その原因となるロキシーもいない。
なにやら第三王子が人形に興奮して暴れてるだとか、ラノア魔法大学に行かねばならぬだとか、人形を作ったルーデウスとリベラルに会うまでは死ねないだとか。
よく分からないが、そんな感じの騒ぎはあったらしい。
市場を覗くと、過去にルーデウスとリベラルが作った人形がいくつかあったのを見て察した。
どうやら金策として売られていたようだ。
第三王子のことはよく分からないが、きっと人形のファンなのだろう。
そう思うことにした。
「ルーデウス! 早く行きましょ!」
「ええ、今行きます」
取りあえず、シーローン王国では特にトラブルもなかった。
北に進んで行く。
中央大陸のアスラ王国に行く道のりは、かなり整備されてる方だ。
そのため、ルーデウスたちは比較的のんびりと向かうことが出来ている。
魔物にもあまり襲われないし、賊にも襲われない。
懸念であったヒトガミの使徒も、どうやらリベラルの方に向かわせてるのか一度も見なかった。
赤竜の下顎を通る際も、別に赤竜に襲われるとかいったこともなく平和だ。
赤竜狩りたいよねー、私たちなら出来るでしょー? いや、無理だよー。みたいな会話をしたくらいだった。
どちらかと言えば、転移事件によって転移したフィットア領民を保護したときの方が大変である。
彼らは戦闘能力がないし、旅に慣れてる訳でもない。
そのままその地で生きていくことを決めた者はともかく、帰ることを望んだ難民を護衛するのは意外に大変だった。
そんなこんなで、アスラ王国へと無事にたどり着いたのだ。
それから約2ヶ月。
難民たちを護衛していたこともあって想定よりも遅くなったが、フィットア領へと到着する。
転移事件によって全てなくなったことに難民たちは悲しげな表情を浮かべていたが、ルーデウスたちに感謝を告げて難民キャンプへと入っていった。
もちろん、スペルド族のことも宣伝してからだ。
彼らはルイジェルドと仲良くなり、スペルド族の現状について嘆いてくれた。
中には「俺は医者だったから、力になる」という人もおり、ルイジェルドもどこか救われたような表情を浮かべていた。
ともかく、到着した彼らも難民キャンプへと立ち寄る。
「…………」
「行きましょうエリス」
エリスは何もなくなったフィットア領に思うところがあるのか、時おり立ち止まることがあった。
その度にルーデウスが引っ張る。
ルイジェルドも無言でついてきていた。
難民キャンプの本部へと入ると、今回の件で行方不明になった者の名前が載った紙があった。
ルーデウスたちは今回それなりの数の難民を連れてきたため、ちょっとした騒ぎになっている。
鬱蒼とした雰囲気と再会を喜ぶもので二分化されているが、騒がしいので見つけた人の名前を伝えるのは後にした。
受付でエリスが戻ってきたことを伝えると、受付のおばさんはすぐに奥へと引っ込んだ。
そして、凄い勢いで一組の男女を引き連れ、戻ってきた。
見覚えのある男女だった。
片方は、白髪に髭を蓄え、執事然とした顔をしつつも、
やや裕福そうな町人じみた服装をした、壮年の男。
アルフォンス。
もう一人は、チョコレート色の肌に剣士風の格好をした女。
「ギレーヌ!」
エリスは非常に喜んだ様子で駆け寄った。
ギレーヌもそれを嬉しそうに迎い入れる。
「エリス、いや、エリス様、よく無事に……」
「……もう、エリスでいいわよ」
そんなやり取りをしつつ、大切な話をするため4人は建物の奥へと向かうことになった。
ルイジェルドは完全な部外者だったため、入ることは出来なかった。
アスラ王国の話をするということを聞かされたので、彼も素直に従う。
ルーデウスが中に入って聞いた話は、本来の歴史とそう大差のないものであった。
『サウロス様、フィリップ様、ヒルダ様が亡くなったこと』
といっても、フィリップが生きていたことはリベラルから伝え聞いていたので疑問が浮かぶ。
詳しく話を聞けば、どうやら何者かに殺されてしまったとのことだ。
一体全体どういうことなのか全く把握出来ない。
そんな混乱をよそに、話は進んでいく。
『ピレモン・ノトス・グレイラットが、エリスを妾として迎え入れたいこと』
これについては、ギレーヌとアルフォンスの意見が大きく食い違い、一触即発な雰囲気となる。
2人は言い争いとなるが、結局エリスが一人にさせて欲しいという話によって終了した。
本部から出たルーデウスは、取りあえずルイジェルドと話の共有するために彼と合流することにした。
――――
一人になっていたエリスだったが、そこに誰かがノックする。
彼女は無視していたが、やがて部屋の中へと誰かが入ってくるのだった。
「エリスお嬢様」
「何よギレーヌ。一人にさせてって言ったでしょ……」
彼女が文句を吐くのも仕方ないだろう。
言葉通りだ。
時間が経ってから戻ってきたのならともかく、ギレーヌはすぐに戻ってきたのだから。
「大切な話がある。付いてきて欲しい」
「なによいきなり……嫌に決まってるでしょ」
「フィリップ様が、会いたがっている」
その言葉にエリスは固まる。
そしてキッとギレーヌを睨みつけた。
「さっき死んだって言ってたじゃない!」
「そういうことにしてるだけだ」
「なんでよ!」
「私には分からない。だから直接聞けばいい」
アルフォンスがそのことを知っているのか不明だが、フィリップが生きていることは確からしい。
僅かに迷いながらも、エリスは頷いた。
「分かったわ。連れて行きなさい」
そうして本部から出た2人は、道から外れた先を進む。
しばらくするとちょっとした小さな家が見えて来る。
ギレーヌがその家のドアをノックすると、一人の男が出てきた。
「やあ、ギレーヌさん。エリスさんを連れてきたのですか?」
「ああ。フィリップ様を呼んできて欲しい」
「分かりました」
黒髪で50歳ほどに見える初老だ。
彼はギレーヌの言葉に従い、部屋の中へと戻って行った。
しばらくすると、その男とフィリップがやって来る。
「エリス……」
「お父様……」
2人はしばらく無言で見つめ合った後、どちらともなく近付き互いに抱きしめ合った。
「よく、無事だったね」
「お父様も、死んだって聞いて、私」
「すまないね。余計な心配を掛けさせてしまったよ」
互いに涙は見せなかった。
フィリップはともかく、エリスも流石はボレアスの名を持つだけのことがあったのだろう。
すぐに切り替えていた。
「……それで、どういうことなの?」
「そうだね。詳しく説明するから中に入るといいよ」
「分かったわ」
そして、彼らは中へと入っていく。
あまり贅沢はしてないのか、部屋の中は質素で椅子と丸いテーブルがあるだけだった。
そこに2人は座る。
「エリス、3年程度しか経ってないけど変わったね」
「3年もあれば変わるわよ」
「これも全てルーデウスのおかげということかな」
「そうね、そうだと思うわ」
じゃじゃ馬だった娘があっさりと認めたため、彼は瞠目してしまう。
かつて山猿扱いまでされ、貴族としての人生を絶望視されていた頃の姿はそこになかった。
「……そうか、成長したんだね」
そのことにどこか悲しいような気持ちもあるが、やはり父親として喜ばしいことでもあった。
それと同時に、彼女に対して現状とこれからのことを伝えても大丈夫だと確信する。
「父さんが処刑されたことは知ってるね?」
「ええ、知ってるわ」
「私も処刑されそうになったけど、何とか免れることが出来た。けどね、この地を食い荒らそうとする連中に取っては邪魔だったんだろうね」
土地も資産もなくなったのに、まさかの追い打ちを掛けてきたのだ。
本当にこの地をどうにかするためだとは思わないが、フィリップを生かしておいても邪魔になると考えたのだろう。
だが、その考えは間違えていない。
彼は再起を図り、かつての栄誉を取り戻そうとしているのだから。
「私の存在はフィットア領の復興に邪魔になっていた。だから死んだことにしたんだ。アルフォンスには申し訳ないことをしたけどね」
かつての部下を思い、彼は目を伏せる。
アルフォンスも納得していたのだ。
フィリップは能力がある。あるからこそ、止めを刺そうと――恐らくノトス家に――されたのだから。
「だからね、私はリベラルの提案に乗ることにした」
唐突にリベラルの名が出たことにより、エリスは頭にはてなを浮かべる。
「アスラ王国第二王女、アリエル・アネモイ・アスラに王位を継いでもらう。そして私はその手助けをする」
その宣言をし、隣りにいた黒髪の初老――シャンドルに視線を向ける。
彼が持ってきた手紙には、リベラルからの伝言が書かれていた。
アリエル王女を王にすること。
貢献し、功績を残すことで再び爵位を手に入れること。
それに対しての協力を行うこと。
「私は決意したよ――かつての栄誉を取り戻すことを」
リベラルが本気だったことは分かった。
手紙を届けて己の部下として扱っていいと言われた目の前の男は――北神二世アレックス・C・ライバックだったのだから。
元七大列強7位の武術の達人である彼は、お釣りが出るほどに優秀な存在だ。
情報収集能力も非常に高く、ギレーヌにはない能力を持ち合わせていた。
「そう、お父様は諦めないのね」
「ははっ、エリス。君らしくない台詞だね」
フィリップの雰囲気が変わる。
線のいい人当たりのよい空気は鳴りを潜め、そこには激しい怒りが宿っていた。
「フィットア領がこうなったのは事故だ。仕方ないことだよ。けどね――父さんが処刑されたのは納得できる訳がない」
そう。サウロスは失脚したことによって敵対勢力に責任という形で消されてしまったのだ。
フィリップがいたから、なんて理由もあるかも知れない。
けれどどちらか片方だけだったとしても、どのみち処刑に追い込まれていただろう。
「私はかつての栄誉を取り戻すとは言ったけどね――父さんの仇が討ちたいんだ……!!」
それは、フィリップらしからぬ姿だった。
娘であるエリスも、彼のこのような姿は初めて見た。
だが、当たり前の感情だった。
サウロスは殺されなくてもいい存在だったのだ。
フィットア領をいち早く再建するならば、必要な存在だったのだ。
なのに、死亡者も行方不明者も数多くいるにも関わらず、先に責任を取らされた。
彼が愛したフィットア領は無くなり、妻のヒルダも死んでしまった。
そこから更に父親まで奪われたのだ。
――許せるわけがないだろう。
「エリス、君は納得してるのかい? この結果に」
「……納得してる訳ないでしょ……!」
彼女もまた、悔しく感じていた。
作られた握り拳から血が滲み出るほど悔しかった。
いきなり転移事件に巻き込まれ、大好きだった家族が奪われた。
政治のことは分からないが、それでも誰かに殺されたのだという話だけで十分だった。
彼女はいつもそうだ。
殴る相手がいるのならば殴っていた。
感情に任せて怒りをぶつけていた。
最近は自制出来るようになったが、この身に走る怒りがなくなった訳ではない。
「そうだよ、私も納得してない。だから、選択したよ」
政治はフィリップの領分だ。
流石に娘に任せることはない。
けれど、娘のためにも殴る相手をハッキリさせることは出来る。
「私が行く道は過酷だ。非常に苦しい戦いになるかも知れない」
でも、それでも彼は進むと決めたのだ。
「私はボレアスの名を捨てることを選択した。だから、エリス。君も決めるといい」
フィリップは腹黒さもあったが、それでも父親としての優しさがあった。
以前の彼ならば、エリスだけでなくルーデウスも利用して王家の戦いに勝とうとしただろう。
だが、それが辛い道のりであることを分かっているフィリップは、無理に引き入れなかった。
「私としては、君が付いてきてくれるのなら嬉しい。けどね、ルーデウスと共にいたいと願うなら引き止めはしない」
「…………」
「私も父親だからね……娘の幸せは願っているさ」
エリスは無言となる。
難しい話ではなかったので、彼女にも理解は出来た。
けれど、それを選択するのはとても難しいことだった。
父親か、好きな人か。
フィリップを選べば、長い間ルーデウスと会えなくなるだろう。女に目のない彼のことだ。もしかしたら知らぬ間に新しい女が隣にいるかも知れない。そして、それに対して文句をいう訳にいかない。父親を選んだのだから。
ルーデウスを選べば、父親がどうなるのか分からない。死目を見ることも出来ないかも知れない。私がいれば、なんて後悔を抱く可能性もある。なによりも、残された最後の家族なのだ。
どちらを選んでも、とても辛い選択肢だった。
「……ちょっとだけ、考えさせて」
唐突すぎて、心の整理ができなかった。
そしてフィリップのどこか悲しそうな表情が、頭に焼き付き離れない。
苦しかった。
自分はこんな悩みを抱くことなんてないと思っていた。
いつもはもっと簡単に決められる筈だったのに、決めることが出来ない。
「……また来るわ」
「私もそろそろ行動を起こす必要がある。明日には決めて欲しい」
「……分かったわ」
椅子から立ち上がったエリスは、そのまま出口へと向かう。
そして、その後ろ姿をフィリップは見送った。
――――
宿にたどり着いたエリスは、2人に何かを相談することはなかった。
相談出来る訳がなかった。
だが、ルイジェルドに一言出て行って欲しいとだけ告げる。
彼は何かしらの事情をルーデウスから聞いていたのか、何も聞かずに「分かった」と静かに告げて出て行く。
残されたルーデウスは真面目な表情でエリスを見つめる。
「ルーデウス。聞いていい?」
「なんですか?」
「やっぱり家族って大切よね?」
「……そうですね。とても大切です。少なくとも僕は家族のために命を掛けられるほど大切だと思ってますよ」
「そう、そうよね」
なんだか普段と違う様子のエリスに、ルーデウスは何かを感じる。
しかし、家族が全員亡くなったと聞き、ノトス家に嫁がないかという提案をされたばかりだ。
しおらしくなるのも仕方ないことだろう。
「私ね、今日が15歳の誕生日なの」
「えっ? そうだったんですか?」
本来の歴史よりも日数がズレていたため、彼女の誕生日を迎える場所は変化していた。
しかし、冒険により月日が曖昧となっていた彼にとっては、全く気にしていなかった事実だった。
唐突な宣言にルーデウスは今から誕生日を用意しなきゃ、という焦りに捕らわれる。
だが、エリスは彼の手を掴んだ。
「えっと、すみません。何も用意出来てなくて……」
「別にいいわよ。その代わり……い、一緒に寝ましょ」
「今日は寂しい気持ちなので、エッチなことをしちゃうかもしれませんよ?」
「きょ、今日はいいわよ」
「……ちょっとくらいじゃ済まないかも知れませんよ?」
「分かってるわよ。今日は、ぐっちゃぐっちゃにしてもいいって言ってるのよ」
その言葉で、互いに無言となる。
ルーデウスはまじまじとエリスの身体を見つめていたが、彼女は羞恥心から顔が真っ赤だった。
「な、なんで突然そんな事を言い出したんですか?」
「……その、私がしたいからよ」
「えっ?」
「何度も言わせないでよ!」
煮え切らない態度のルーデウスに痺れを切らし、エリスは無理やり口付けをちょっとだけする。
「私がしたいって言ってるのに……ダメ?」
結局、その日の2人は繋がった。
内容は語る必要もないだろう。
けれど、その繋がりは今のエリスにとってとても大切なものだった。
ルーデウスと繋がることで、彼女は自身の気持ちを再確認することが出来た。
やっぱり、私はルーデウスを愛しているのだと。
だからこそ、決意することが出来た。
――お父様に付いていこう。
もう迷いはなかった。
それが己の選択だった。
エリスはここで、ルーデウスたちと別れるのだ。
沢山したこともあり、彼は既に寝静まっている。
もしかしたらルイジェルドに聞かれたかも知れないが、彼なら野暮なことは言わないだろう。
服を整えて支度したエリスは、ルーデウスへの置き手紙を書いていく。
事情を説明する訳にいかない。
けれど、家族のことを出せばきっと彼は気付くだろう。
ただ端的に、ハッキリと一言だけ書く。
『私には守るべきものがあります。そのために、旅に出ます』
とても辛い選択だった。
けれど、その選択を後悔することはないだろう。
決意を示すため、彼女はその燃えるかのような真っ赤な髪を切り、机の上に置いた。
「……むにゃむにゃ……エリス……」
「ルーデウス、愛してるわ」
寝言を零す彼の頬にキスをしたエリスは、準備を終えて外へと出る。
外は既に真っ暗で誰もが寝静まってる様子だった。
だが、そんな時間でもエリスの動きを察知していた彼は――ルイジェルドは壁に背をつけながらそこにいた。
「こんな夜更けにどこに行く?」
「私の家族の元よ」
「そうか」
ルイジェルドは気付いていた。
フィリップと出会っていたことを知っていたのだ。
隠密行動で彼以上のものはいない。
「……ルーデウスはいいのか?」
「いいのよ。だって、知ったら絶対に私のこと助けようとするでしょ」
そうだ。
ルーデウスに知られる訳にいかなかった。
ルーデウスがエリスの事情を知れば、絶対に付いてきただろう。
どれほどの危険があろうとも、付いてくる筈だ。
けれど――愛しているからこそそれが嫌だった。
自分の選択で、彼の選択を歪めたくなかった。
自分の選択で、彼に危険な目に遭って欲しくなかった。
助けて欲しいとは思っている。
けれど、ルーデウスは小さかったのだ。
自分よりも歳も体格も小さいのに、ずっと助けてくれていた。
今までずっと、ルーデウスのことはあまり考えなかった。
彼の大きさばかりに目を取られ、小ささには目をそむけていた。
そんな自分を変えたかった。
これ以上の負担を掛けたくなかった。
「ルイジェルド。絶対にこのことを言っては駄目よ。伝言以上のことをルーデウスに伝えないで」
「……分かった」
ルイジェルドも家族が絡む件であったため、無理に止めることは出来なかった。
彼もエリスのことを助けたいとは思うが、自分自身の問題もある。
何よりも国家に対する問題に突っ込むと、スペルド族という肩書が足を引っ張りかねない。
ルイジェルドは、エリスの選択を見守るしかなかったのだ。
「エリス。お前は、今日から戦士を名乗ってもいい」
だからこそ、彼を言葉を贈る。
「守るべきものがあるお前は戦士だ」
エリスにもまた、守るべき大切な者がいた。
転移事件を切っ掛けに沢山のものを失くした。
けれど、まだ残っているものがあったのだ。
「ルイジェルド」
エリスはルイジェルドを抱き締める。
彼も抵抗することなくそれを受け入れた。
「また会いましょう」
「ああ、また会おう」
そして、彼女は旅立った。
四章 “揺れるゆりかごは幸福への兆し” 完
――――
朝起きてからのルーデウスは、本来の歴史のように混乱して取り乱した。
初めてを捧げ合ったエリスがいなくなり、残されたのは『私には守るべきものがあります。そのために、旅に出ます』と書かれた置き手紙だけなのだから。
何が起きたのか理解出来なかった。
ルイジェルドに話し掛けても、知らないと彼は言う。
そんな訳がないだろう。
ルイジェルドがエリスを見失った挙げ句、そんな一言で話を終わらせる訳がない。
何度も問い詰めたが、手紙の内容以上のことを語ることはない。
痺れを切らしたルーデウスは、アルフォンスの元へと向かう。
「あ、アルフォンスさん、エリスは!?」
「ギレーヌと共に旅立たれました」
「ど、どこに?」
聞くと、アルフォンスは、やや冷ややかな目で俺を見た。
そして、ゆっくりと口を開く。
「ルーデウス様には口外するなと、申し伝わっております」
「あ……そう、ですか」
結局、ルーデウスは何も分からないままエリスに捨てられたのだと思ってしまった。
だが、ルイジェルドは「捨てられた訳ではない」と伝える。
正直何も教えようとしない彼に対して苛立ちを感じたものの、時間が経つことで僅かに冷静となった。
そもそも、ルイジェルドが何も言わないのだから、それなりの理由があるのだろう。
少なくとも、彼が納得出来るだけの理由がある筈なのだ。
けれど、その理由が分からない。
何度も何度も考え悩み、そして答えが出せないまま時間だけが過ぎていく。
やがて、どれほどの時間が経ったのだろうか。
苦悩する彼の元に、ルイジェルドが訪れる。
「ルーデウス」
「……なんですか」
「客だ」
彼が連れてきた先。
その視線の先に、2人がいた。
ひとりは、三編みの青い髪にじっとりした表情。
ひとりは、短い緑髪にまだ幼さを残す美少年のような少女。
「ロキシー先生に……シルフィ……?」
そこに居たのは敬愛する師匠と、可愛い妹分の2人だったのだ。
Q.リベラルフィリップのこと忘れてない?大丈夫?
A.忘れてませんが、優先度低めになってます。シャンドル送り込んだしへーきへーきとか思っているかも知れません。取りあえず、アリエルとペルギウスの繋ぎはしなきゃとは考えてます。
Q.シャンドルさんルイジェルドの隠密気付かんかったんか。
A.描写してませんが気付いて会話しに行き、結果「ヨシッ!」となりました。
Q.ルーデウスとエリス。
A.どうあっても別れる運命でした。エリスに取っては唯一残った家族だったので、どうしても見捨てられませんでした。原作のようにもっと想いを書きたかったんですけど、無理でした。
Q.ロキシーとシルフィエットが一緒にいる!?
A.今作で何度か描写しましたが、転移したシルフィはロキシーに拾われそのまま師弟関係になりました。なので、これから先のルーデウスはデッドエンドを名乗りつつルイジェルド、シルフィ、ロキシーというメンバーで活躍します。
Q.ルイジェルドもうちょっと上手くルーデウスに説明できひんかったんか?
A.これが彼なりの精一杯でした。
Q.覗き疑惑のルイジェルド。
A.彼は紳士なので「2人っきりになりたい」という台詞で全てを察してちゃんと離れました。
Q.エリスこれ原作より強くなれる?
A.北神の教えを受けながら剣王の教えも受けられます。かなり強くなれると思います。