無職転生ールーデウス来たら本気だすー   作:つーふー

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前回のあらすじ。

ザノバ「人形友達が増えましたぞ」
クリフ「なんかSAN値が削られた気がする」
リニア「パンツを寄越すにゃ」
プルセナ「パンツを盗られたの」

まるで最初の頃のように更新ペースが安定している…!
お願い止まらないでつーふー!あんたが今ここで止まったら、楽しんでくれてる人たちの思いはどうなっちゃうの?気力はまだ残ってる。ここを耐えれば、五章の終わりも目前なんだから!


10話 『第二王女の進捗』

 

 

 

 いつものように研究に明け暮れていた日。

 郵便が来たため手紙を受け取れば、そこにはアリエルの名前が記載されていた。

 中身を確認したリベラルは、現在の状況について納得する。

 

「なるほど……」

 

 どうやら保護したトリスティーナを無事にラノアまで送り届けることに成功したらしい。

 現在はトリスティーナの身分を偽装し、アリエルの侍女として傍に仕えさせているとのことだ。

 これからの方針について話がしたいため、少しだけ会いたいと締め括られていた。

 

 アスラ王国の時期後継者争いは、どうやら順調そうである。

 このタイミングでダリウス上級大臣を失墜させるための切り札が手に入ったことは大きい。

 王国まで辿り着ければ、王手を掛けられるだろう。

 これからの方針についても、恐らく今までやってきたこととほとんど変わらない活動になる。

 今のアリエルに必要なのは名声と後ろ盾だ。

 名声は今すぐに手に入れることは出来ないし、後ろ盾もリベラルだけでは政治方面で力不足である。

 

「まあ、会うだけ会いましょうか」

 

 返事を書いたリベラルは、これからのことを考えるのであった。

 

 

――――

 

 

 アリエルが指定した場所は、意外にもラノア大学の校内――生徒会室であった。

 部外者ではあるが、既に何度か侵入した身である。

 今回も気にせず大学の中を歩んでいき、生徒会室の前まで辿り着く。

 もちろん以前のように誰かから絡まれたり、パンツを盗られそうになるということもなかった。

 

 アリエルの付き人に案内され、生徒会室のドアをノックする。

 返事があったため中へと入れば、そこには茶髪をオールバックに纏めた男、ルーク・ノトス・グレイラットと守護術師のデリック・レッドバットの2人がこちらへと視線を向けていた。

 その間にアリエル・アネモイ・アスラ……アスラ王国第二王女がいた。

 彼女はいつもより元気そうな表情で、リベラルを迎え入れる。

 

「お久し振りです、リベラル様。最近はいかがお過ごしでしょうか」

「アリエル様お久し振りですね。人望集めは順調そうで何よりです」

「そうでしょうか……あまり大きな後ろ盾がない状態ではありますが」

 

 アリエルは少しだけ表情を暗くする。

 確かに学校では顔が広く、第二王女の派閥も多くあるだろう。

 しかし、その規模は未だ学内に収まるレベルだ。

 様々な種族や他国の人間も集まっているが、どの人物もアスラ王国への影響力は低い。

 それに、特待生たちの助力を誰からも得られていないのも痛手だろう。

 トリスティーナという大きな武器を手にすることは出来たが、それだけでは不安が残るのも事実である。

 

「まあ、私もあまりアスラ王国への影響力はないですしね」

「いえ、そんなことは。リベラル様が後ろについて下さってると思えば、そこまで不安はありません」

「いいんですよ取り繕わなくても。私はアスラ王国に名を残さぬように動き、こうして今に至っているだけなんですから」

「…………」

 

 彼女の言うように、リベラルはあまり政治的な力を持っていない。

 襲撃などされた際には大きな力となってくれるものの、それ以外の恩恵はあまりないとも言える。

 もちろん、人脈という点では頼りになる部分もあった。

 しかし、以前にペルギウスとの橋渡しをお願いした際に「それは貴方の力で機会を掴んでください」と断られたのだ。

 理由としては、断られることが目に見えてるからとのこと。

 リベラルが懇願すれば力を貸してくれるかも知れないが、このことで借りを作りたくなかったという事情もあった。

 

 頼りになった面も当然ある。

 トリスティーナのことを教えてくれたのはリベラルであり、北神二世であるシャンドルを戦力として送り届けた功績もあった。

 それ以外にも、フィリップが裏から手を進めてもいる。

 既に十分すぎるほどの恩恵を与えてくれてるため、無理にお願い出来ない立場でもあったのだ。

 

「フィリップ様はどうしてますか?」

「あの方は現在王国に残って活動してます」

「ひとりでですか?」

 

 リベラルの質問に、アリエルは首を横に振る。

 

「いいえ、シャンドルと共にいます」

「なるほど」

 

 アリエルがラノア魔法大学にいるのは、自ら望んで留学したからではない。

 第一王子派閥に暗殺されそうになり、シャリーアへと逃げてきたのだ。

 故に現在のアスラ王国で、アリエル派閥として活動するのは非常に危険だった。

 そのため、一番の実力者である北神二世がフィリップのサポートとして残ったのだろう。

 諜報活動にも長け、少数で行動するなら北神流が一番適任である。

 

「順調に引き抜き出来てそうですかね」

「それは何とも言えないようです。相手に気取られないことを優先しているみたいですので」

 

 少数で行動している以上、大きく動けないのは仕方ないだろう。

 とはいえ、話だけ聞くと順調そうではある。

 

「アリエル様の方はどうですか? 学園内で行き詰まってることはありますか?」

「そうですね……少し、支援者が少ないのが現状です」

「時間はまだあるでしょう。それまでに集めればいいですよ」

 

 リベラルにそう告げられるものの、彼女は浮かない表情であった。

 入学してからそれなりの時間が経過してるものの、これといった成果がないのかもしれない。

 

「今後はどうするつもりですか?」

「現状を変える手立てはあまり思い浮かんでおらず、少々困っている状況です」

「仲間に引き入れたい候補はどうです?」

「特待生たちを何とか引き入れたいのですが、気難しい人が多く上手くいってないです」

 

 現在のアリエルは、ルーデウスと何のつながりもない。

 本来の歴史ではフィッツが彼との縁を作ったが、ここではフィッツが存在しないため切っ掛けがないのだ。

 特にルーデウスはノトスとボレアスのどちらとも関係があった。グレイラットに対する確執も考えられるため、何度も接触出来てない状態である。

 だが、フィッツ以外にもルーデウスとつながりのある人物がいる筈なのだ。

 フィリップの元へと駆けつけた、赤髪の剣士がいるのだから。

 もっとも、そのことを知らないのであれば彼女は何も言わずに戦っているのだろう。

 

「ペルギウス様をご紹介して下さるのはやはり駄目でしょうか…?」

「不可能ではないですが、アリエル様が王を目指すのであれば自らの手で機会を作って下さい。私に全て頼り切るようではこの先やっていけないことは理解してるでしょう」

「しかし、どうすれば」

「この学園内にペルギウス様と繋がりのある人物はいますし、趣味の合う人物もいます。人脈を見つけるのも、作るのも王に必要な素質ですよ」

 

 本当にどうしようもなくなれば紹介することも考えるが、今はそこまで切羽詰まった状況ではない。

 今は出来ることをしていけばいいと考えていた。

 

「それに、ひとりで考える必要もないでしょう。貴方の臣下以外にも悩みを話してもいいかもしれませんよ」

「それもそうですね……」

 

 アリエルは相談せずにひとりで勝手な判断を下すことは少ない。

 臣下たちと会議はするものの、人数が少ないため意見が広がらずに似たような結論に落ち着くことは確かだ。

 深い事情を話せる友人がいないという根本的な問題があったものの、そこまで頼ることも出来ないだろう。

 

「ひとまず、今後の方針についてはこれまでのように仲間を増やしていく、ということになりますかね?」

「はい。トリスティーナを確保したとはいえ、今から王宮に向かうのはよろしくないと思われます。フィリップもいることなので、もっと地盤を固めてからにする予定です」

「そうですか。まあ現国王もまだ健在してますし、焦らずにやっていって下さい」

 

 少々浮かない表情を見せているものの、彼女はその言葉に頷いた。

 

「ところで、ギレーヌ様やエリス様はどうしてますか?」

 

 その質問には、隣に控えていたデリックが口を開く。

 

「御二人は恐らく鍛錬をしています。この時間であれば寮の近くにいるでしょう」

「ありがとうございます。そちらにも顔を見せてみます」

 

 彼の言葉にお礼を告げ、リベラルは部屋から出ていった。

 

 アリエルは少しばかり焦っているように見えるが、恐らくトリスティーナを確保出来たということから来ていると思われる。

 第一王子派のダリウス大臣のアキレス腱となる存在を手にしたため、気持ちが逸っているのかも知れない。

 それにトリスティーナを確保したという情報がハッキリと相手側に伝われば、何とかして排除しようとしてくる可能性もあるだろう。

 ラノア王国にいるためアスラ王国はおいそれと手出し出来ないだろうが、それでも警戒するに越したことはない。

 

 とはいえ、その可能性は低かった。

 ヒトガミからはリベラルの姿が見えないため、適当に使徒を送り込んでも始末されることは目に見えてるからだ。

 ヒトガミは博打を好まず、自身の未来視を最大限に活用した手を打ってくる。

 アスラ王国に向かう際に、総攻撃を仕掛けてくる方が可能性として高いだろう。

 とりあえず、アリエルのことは現在心配する必要もない。

 本来の歴史でももっとゆっくりと準備をしていたし、盤石な体制になってからアスラ王国に向かえば確実である。

 

 そのような思考をしていたリベラルは、エリスたちがいると思われるアリエルの寮の近くまでやってきた。

 近付くにつれ、剣戟の音や掛け声が響く。

 音の方へと向かい、様子を見てみれば予想通りエリスとギレーヌのふたりが剣を交えていた。

 かなり集中しているようで、ある程度近付いたのにも関わらずリベラルに気付く様子が見られない。

 邪魔にならないように、終わるまで静かに見守ることにした。

 

「ハァ!」

 

 エリスが剣を振るい、それをギレーヌが受け止める。

 どうやら型の練習をしてるようで、同じ形で攻防を繰り返していた。

 彼女の剣は、以前見たときよりもずっと速く、そして鋭かった。

 

 しばらく眺めてると、どうやら終わったようでふたり揃って一礼する。

 それからリベラルに気付いたようで、こちらに視線を向けた。

 

「エリス様、ギレーヌ様。お久し振りです」

「お前は……ああ、ロアでの馬車以来か」

「リベラルじゃない! こんなところで会うなんて奇遇ね!」

 

 ギレーヌとはブエナ村にて、ルーデウスを馬車に乗せていた時くらいにしか会ったことがなかった。それでも覚えていたことは素直に凄いことだろう。

 エリスは共に旅をしたこともあり、忘れられている、なんてことはなかった。料理も教えたし、鍛錬の相手もしたため印象は強かったのだろう。

 

 駆け寄ってきたエリスはどこか嬉しそうな表情だ。

 こんなデレの入った彼女を見るのは初めてかも知れない。

 

「それでどうしてここにいるのよ?」

「以前に話しませんでしたっけ? ラノア王国でゼニス様の治療をするためですよ」

「……そうだったわね!」

 

 エリスもフィリップの元で忙しく活動していたため、忘れていたとしても仕方ないことだろう。

 リベラルも特に文句を言わず受け流す。

 

「そうか、リベラル。お前がアリエル様の話していた銀緑だったか」

「どこまで話を聞いてるのかは分かりませんが、私が銀緑で間違いないですよ」

 

 元々トリスティーナを確保するのはリベラルの指示によるものだったし、フィリップやシャンドルも同様にリベラルの指示で動いている。

 ある程度の事情を彼女が知っているのも当然だろう。

 特に否定せずに頷くと、ギレーヌは小さく笑う。

 

「銀緑の話はあたしも知っている。ラプラス戦役で知る人ぞ知る名だった」

「はぁ」

「折角の機会だ。手合わせをしたい」

 

 リベラルとしては別に断る理由はない。

 毎日鍛錬はしているが、ひとりでやるよりも相手がいる方が練習になるからだ。

 しかし、最近はよく多くの人と戦う場面が増えたような気がした。

 まあ、彼女としては歓迎すべきことなので別にいいのだが。

 

「腕が鳴るわね!」

 

 エリスは実際に何度か手合わせをしたことがあるので、リベラルの強さをよく知っていた。

 まだ了承していないが、既にやる気満々らしい。

 リベラルは苦笑しつつも、ギレーヌの頼みに頷いた。

 

「いいでしょう。死にかけても私が治しますので最善を尽くしてやりましょう」

 

 

――――

 

 

 リベラルと向かい合うエリスとギレーヌ。

 2対1の形で行うこととなった。

 折角なのでルールも設けている。

 2人は護衛役で、リベラルが刺客役だ。

 後方にある木を傷付けたらリベラルの勝ちで、三分間耐えたらエリスたちの勝利だ。

 

 現在の2人は実際に護衛をする身なので、このルールの方が今後にも役立つと判断した。

 互いにこの形での手合わせを行うことには納得済みだ。

 エリスは「フンッ!」と鼻を鳴らし、ギレーヌは静かに佇んでいた。

 因みに、二人には念の為真剣ではなくいつもの土魔術で作り出した剣を渡している。

 

 ギレーヌは剣王であるが、現在のエリスはどの程度のレベルなのか不明だ。だが、それでも先ほどの稽古を見た限り、剣聖以上はあるだろうなと評価していた。

 剣神ではなく北神の元で実戦を経験しながら強くなったのだ。本来の歴史より弱いことはないだろう。

 以前のパウロのような舐めプをしていたら、痛い目に遭うかもしれない。

 

 と、考えながらリベラルは何気ないように一歩後ろに下がる。

 

「うらぁぁぁぁ!」

 

 そこには目にも留まらぬ速さで踏み込んだエリスが、既に剣を振り終えていた。

 剣はリベラルの寸前を過ぎたのか、服だけが斬り裂かれる。

 

 今のは紛れもなく『光の太刀』であった。

 剣神の元にいなくても、エリスはしっかりと剣神流の奥義を習得していた。

 

「ガアアァァァ!」

 

 振り終えたのと同じタイミングで、ギレーヌも『光の太刀』を放とうとしていた。

 ふたり揃って必殺の一撃を放つなんて殺意が高すぎやしないかとリベラルは苦笑しつつ、半歩横に移動する。

 そうすることでギレーヌの直線上にエリスが並び、剣を振るうことが出来ずに動きが止まった。

 

 リベラルはその隙にエリスを押し、ふたりの体勢を崩そうとしたがそうはいかない。

 

「!!」

 

 エリスは凄まじい速度で横に飛び退き、一瞬にして背後へと回っていたのだ。

 地面スレスレとも言えるほどに身体を低く倒し、そこから剣を振るおうとする。

 北神流の技である『地空剣(ちくうけん)』だ。足下を刈り取る剣技であり、今のエリスのように体勢を低くして足を狙う技だ。

 だが、それだけではない。

 リベラルにはそれが『光の太刀』で放たれるように見えた。

 

 その動きに合わせるように、ギレーヌも再び正面から『光の太刀』を放とうとする。

 挟まれた状態からの必殺の一撃を前に、彼女はトンッ、と足踏みをひとつしただけであった。

 

 ふたりの足元の地面が勢いよく盛り上がり、ギレーヌは体勢を崩す。

 エリスは低い体勢だったため、腹部を強打して宙に浮かんでいた……が、すぐさま空中で剣を振り抜き反撃の隙を与えないようにしていた。

 

「安易ですよ」

 

 リベラルはそっと手を添え力の流れを変える。

 空中に浮かんでいた彼女の力の流れはより浸透し、激しく回転しながら吹き飛んだ。

 

 その間に体勢を戻したギレーヌが剣を振るおうとしたため、リベラルは後ろに飛び下がった。

 その動きに反応し、彼女は斬撃を飛ばす。

 しかし、それもリベラルからすれば安易な攻撃だった。

 

「『(ナガレ)』」

 

 放たれた斬撃はまるで方向が入れ代わったかのように、ギレーヌへと戻っていった。

 それを防ぐギレーヌだったが、リベラルは既に懐へと入り込んでいた。

 

「『鯨波(ゲイハ)』」

 

 とてつもない振動が彼女を襲い、身体が痺れて動かせなくなる。

 崩れ落ちるギレーヌと入れ替わるかのように、復帰したエリスが駆けつける。

 

 頭から落ちることは何とか防げたのか、肩を庇っているようにしていた。

 そのことをほとんど感じさせないかのように、エリスはしなやかな動きでステップを織り交ぜながら距離を詰める。

 そして、ジャンプして一気に最後の距離を詰めた。

 

(その動きは以前のデッドエンドと同じで――っ?!)

 

 空中でエリスが身を翻すことで、身体に隠れていた日光がリベラルの目に入り込み一瞬眩んでしまう。

 環境を利用したまさかの戦い方に不意を突かれるが、彼女は冷静に対処する。

 そのまま前へと進むことによって、飛んでいたエリスの下を潜り抜けたのだ。

 エリスが着地するのと同時にリベラルの眩みも収まり、そのままもう一歩前へと進む。

 

 向き直るのかとエリスは思ったが、リベラルは前方へと魔術を放っていた。

 

「あっ?!」

 

 狙いに気付いたエリスだったが時既に遅し。

 放たれた魔術は、護衛対象として設定していた木に命中するのであった。

 

「戦闘終了です」

「うっ……仕方ないわね」

 

 元々そのようなルールで行っていた以上、彼女も文句を言わずに引き下がる。

 自分が生き残っても護衛対象がやられてしまっては元も子もない。

 最初の方からずっと離れていた自分が悪いため、悔しそうにしつつもリベラルの治癒魔術を素直に受け入れた。

 その後、痺れが収まり復活したギレーヌもリベラルの元たちへと歩み寄ると、何も出来なかったことを悔しそうにしていた。

 

「しかし、エリス様の実力が想像以上に伸びてましたね」

「でも、勝てなかったじゃない」

「何が悪かったのかは分かっている筈です。一つ一つ修正していけば貴方はもっと強くなれますよ」

 

 それは世辞ではなく本心だった。

 ギレーヌやルイジェルドは、エリスの才能を己以上だと評価している。

 そしてそれはリベラルも同様であり、もっと強くなれると感じていた。

 

「それに、今のエリス様の実力は剣聖の域を超えていました。間違いなく剣王と同等の実力がありますよ」

「ああ、エリスお嬢様はあたしにほとんど追い付いてる。正面からならまだあたしに分はあるけど、条件が変わればどうなるか分からない」

 

 以前に評価したパウロが剣聖と同等以上だったことを考えると、エリスの強さは頭一つ上だろう。

 リベラルも先ほどの手合わせでは驚くことが多かった。

 剣神流はともかく、北神流を使いこなしていたのだ。

 更に驚くべきは、そのふたつの剣術を複合させて扱っていたことだ。

 

 三大流派全てを修めている人物は、探せばいるだろう。

 身近なところで言えばパウロとリベラル。遠いところで言えば剣神。

 だが、どの人物も三大流派を使い分けて扱っており、エリスのように複合させた剣術を扱う者はいない。

 彼女の剣術は、最早三大流派に属しない新たな流派の域に踏み込みつつあった。

 リベラルとしても是非その技術を吸収したいと考える。

 

 そんな感じでエリスをべた褒めすると、彼女は満更でもなくなってきたのか途中からニマニマした笑みになっていた。

 

「話が変わりますが、お二方はこれからどうする予定ですか?」

 

 トリスティーナの護送のためシャリーアまでやってきたエリスたちだが、このまま留まる可能性もある。

 ある程度の予想はしていたが、確認のため質問した。

 

「もちろん、お父様の元に行くわよ」

「そうだな。あたしはアリエル王女の護衛じゃない。フィリップ様の剣だ」

 

 どうやら決意は固いようで即答だった。

 フィリップはアスラ王国で孤立奮闘していることを考えると、確かに彼女たちもそちらに向かった方がいいだろう。

 しかしと、リベラルは考える。

 

「エリス様の事情について、ある程度の予想は出来てますが確認します。

 分かっているとは思いますが、この街にはルディ様もいます。顔を見せたりはしないのですか」

「…………」

 

 その問い掛けには、即答しなかった。

 キュッと唇を結び、目を伏せた後に顔を上げる。

 

「ルーデウスと会うのはお父様を助けてからよ」

「……現在彼の周りには好意を寄せる女性もいますが、それでも大丈夫ですか?」

「大丈夫よ」

 

 最後には必ず自分を選んでくれるから、という思いでそう告げた訳ではない。

 

 ルーデウスは格好良いし凄い。

 それは分かっていることであり、他の女性が寄ってくることも考えなかった訳ではない。

 もしも自分以外の誰かと結婚などしたら、激しく嫉妬するだろう。

 だが、既に決意したことなのだ。

 ルーデウスを愛しているからこそ、父親を助けると決めた。

 こんな中途半端なタイミングで彼と出会っても、心が揺らいでしまうだけである。

 

 それにルーデウスは優しいのだ。

 全てが終わった後に会いに行っても、真摯に対応してくれるだろう。

 そこで想いを伝えればいいのだ。

 家族になりたいとちゃんと向き合って伝えれば、ルーデウスは必ず答えを出してくれる。

 

「そうですか。素晴らしい意思ですね」

「当たり前よ」

「安心して下さい。私もエリス様の想いが伝わるようにサポートしますから」

 

 ウインクをしたリベラルだったが、エリスは「ふんっ」とそっぽ向いてしまう。

 

「ところで、エリス様は誰かにアプローチを受けてたりします?」

「知らないわ。興味ないもの」

 

 実際にはトリスティーナの護送が完了し、ルークと初めて顔合わせをした際に猛アタックを受けていた。

 しかし悲しいかな。

 エリスはルークのアプローチをアプローチとして認識しておらず、ただのうるさい奴、という印象しかなかった。

 今の彼女の頭を占めるのはフィリップとルーデウスのふたりだけだった。

 

 エリスの答えから何となく事情を読み取ったリベラルは、一応ルーデウスにもそのことを伝えておくかと考える。

 現在はシルフィエットやロキシーへの好意に対し、どう対応するか迷ってるヘタレっぷりを見せているがまあいいかと思う。

 

「フィリップ様の元へはいつ向かうのですか」

「準備が出来次第になる。早くても3日後になるだろう」

「そうですか……」

 

 随分と急いでいるが、フィリップ側のことを考えると仕方ないのだろう。

 アスラ王国に辿り着くまでかなりの時間を要するため、少しでも早めに出るのは仕方のない話だった。

 

「まあ、出発までの間に困ったことがあれば力になりますよ」

「助かる」

 

 そうして、エリスとギレーヌとの時間を過ごしていった。

 

 

――――

 

 

 それからしばらくエリスたちと過ごしたリベラルは、特に何事もなく帰宅した。

 家に到着した彼女は、中に入る前に郵便が来ていることに気付く。

 この世界では郵便はある程度普及しているが、そうそう頻繁に届くものではない。

 今日の朝もアリエルからの手紙が来ていたため、次は誰からだと思い郵便の中身を確認する。

 

 

 手紙の差出人は――ナナホシ シズカ。 

 

 

「……遂に、ですか」

 

 名前を確認したリベラルは小さく呟き、手紙に書かれた指定時間も確認する。

 早急に会いたいという思いがあるのか不明だが、明日と記載されていた。

 

「…………」

 

 オルステッドもようやくこの地に到着したようで、話を聞くための準備は整っているとのことだ。

 以前のような出会い頭の殺し合いに発展することはないだろう。

 

「……やっと、会えますね」

 

 約5千年。

 ずっと会える日を待っていた。

 彼女との約束を果たすために、リベラルはこの世界にやってきたのだから。

 




前書きは深夜テンションで書きましたすみません。

Q.技紹介。
A.地空剣→作中での描写通り、身体を地面近くまで倒しながら剣を振るう。
鯨波は四章12話を参照下さい。

Q.エリス強くね?
A.強いです。剣神よりも北神の方が教えるの上手かったのかも知れません。現在のステータスを表記するのであれば…
剣神流:剣聖
北神流:北聖
となります。しかしその2つを組み合わせた戦いをするため、王クラスの領域に入り込んでます。現時点でもパウロより強く、ギレーヌと僅差という設定です。
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