オルステッド「リベラル、お前のことはペルギウスやナナホシから聞いた」
リベラル「私は平行世界から異世界転生してきました」
ナナホシ「え?どういうこと?」
今回は2話連続投稿になります。
書いた話が約1万2千文字だったので、それなら分けようかなってなった結果です。
リベラルから語られた内容は、とても信じられないものであった。
記憶を失った自分を助けたのがリベラルであり、同じ七星という名前だと言うのだ。
しかし、静香と下の名前で呼ぶことに納得はいった。
同姓であれば呼びにくいため、自然と下の名前で呼ぶことになるだろう。
「それから、あてのない静香は私の家で暮らすことになりました」
「……どれくらい一緒に過ごすことになったの?」
「約50年ほどですね」
アッサリ告げられる年数に、ナナホシは頭が痛くなる。
現在のリベラルは約5千年も生きてるので大したことないように思えるが、人間の五十年はとてつもなく長い時間だ。
当時の彼女は人間だったのだから、それはもう長い間一緒だった訳である。
それに、ナナホシは転移の影響か不明だが歳を取らない。
リベラルの世界ではどうだったか分からないが、同様に歳を取らなかったとしても不思議ではなかった。
そんなナナホシと共に、五十年も共にいたというのだ。
正直、頭がおかしいのではないかとさえ思った。
「色んなところに行きましたよ。遊園地や動物園、オシャレなカフェ、それに世界旅行など……。
まあ、それでも貴方の焦燥感は取り除けませんでしたけどね」
この世界でもそうだが、ナナホシは『帰りたい』という願いを強く持っている。
そんな長い時間ずっと帰れずにいたとしたら、その気持ちはもっと強くなるだろう。
「それと、私の出会った静香は髪の色が白かったと言いましたよね?」
「言ったわね」
「それについての疑問も答えます」
この世界では別に髪を染める文化などないし、ナナホシ自身もそんなことをしようとは思ってない。
将来的にはどうか分らないが……少なくとも白に染めようとはしないだろう。
隣で聞いていたオルステッドは、ひとり納得したような表情を浮かべていた。
ナナホシは何も分かってないのに何で隣の男はそんな表情を見せてるんだと思うが、すぐにその雑念を振り払う。
「ある程度の年数を共に過ごしても歳を取らない静香に疑問を持った私は、少しばかり貴方の身体について調べたんです」
リベラルとしては、その不老のような体質は転移に失敗したことに関係していたのではないかと考えた。
異世界に来ただけで歳を取らなくなる、と言われてもその因果関係が全く持って不明だからだ。
「結果、貴方の遺伝子配列はもうめちゃくちゃであり、異常に少なかったということが分かりましたが……当時の医学ではそれ以上のことは何も分からず終いでした」
それがどういう意味を持つのかは誰にも分からなかった。
リベラルも今なお分からないことなのだ。
「貴方の身体からは何のヒントも得られませんでしたが……何か似ているなって感じたこともありました」
「似ている?」
「ええ、私の父親であるラプラスとです」
魔龍王ラプラスは闘神に敗北し、転生する際に魂がふたつに分かれた。
人の存在を憎悪する『魔神』と、神を打倒せんとする『技神』。
記憶を失い、丁寧に髪の色まで変わっており、魔神は緑髪、技神は銀髪となっているのだ。
とてもよく似ているだろう。
ナナホシは記憶を失いつつも、帰りたいという帰郷の思いだけが残っていたのだから。
そこから彼女はひとつの結論を出していた。
即ち――己の出会ったナナホシは抜け殻でしかなく、本体は転移すら出来ずにいたのではないか、と。
「まあ、今となっては確かめようがないんですけどね」
オルステッドも当時のナナホシの状況がラプラスと似ていると感じたからこそ、納得した表情を浮かべていたのである。
「リベラル。ナナホシがこの世界にやって来たことはどう考えている?」
今までの話は、リベラルが誕生するまでの過程の話だった。
しかし、その過程を生み出したナナホシたちはオルステッドも知らない存在なのだ。
オルステッド自身も考えてはみたが、結論は出せずにいた。
「ペルギウス様にも言われたかも知れませんが、静香を召喚することが可能な人間はこの世界にいません」
この世界で最も召喚魔術に長けているペルギウスが出来ない以上、他の者に出来ないことは道理だろう。
「私は転移事件が起きることを知っていましたので、前もって現地の調査を行いましたが……そこには赤い珠がありました」
「赤い珠?」
「適切な言葉がありませんが……次元の裂け目とも言えるようなものです。そしてそこに魔術的な要素はありませんでした」
じっくりと調べた訳ではないが、それでも魔眼を使用して調べたことだ。
僅かな時間だったが、それでも圧倒的な情報量があったからこそ、リベラルは転移事件の被害を最小限にするのは時間の都合上不可能だと断じた。
「やっぱり、私は偶然この世界に来たのね……」
「いえ、そうでもないですよ」
残念そうに呟くナナホシへと、リベラルは即座に否定する。
「思い出して下さい。貴方はこの世界に来る直前、どういう状況でした?」
「……トラックに轢かれそうだったわ」
「では、貴方の傍にいた人はどうなったと思います?」
「それは……」
ナナホシもそのことを考え、篠原 秋人を探し回っていた。
しかし、見付からないのだ。
世界中を旅し、あらゆる場所に行っても彼の痕跡は見付けられなかった。
「……あれ、ちょっと待って」
ふと、ナナホシは気付く。
何故リベラルはそこまで知っているのだろうと。
未来の自分は記憶を失ったと言っていたため、トラックに轢かれそうだったことは知らない筈である。
リベラルの言うルーデウスの人生を記した書籍も、そこまで分かっているのはおかしいだろう。
詳細を知りすぎていることに違和感を感じた。
「気付きましたか? その事故が起きる直前に、もうひとり誰かがいた筈です」
「…………あっ」
「ルーデウス・グレイラットの正体は静香が思い浮かべた人物ですよ」
「ちょっと、え、嘘でしょ……あの時のデブがルーデウスなの……!?」
あまりの衝撃に目を見開くナナホシ。
リベラルも今までのルーデウスの立ち振る舞いを見てきたので、あまりのギャップに当初は驚いたものだ。
何があれば親の葬式日にブリッチオ○ニーをするようなクズが、ここまで成長することが出来るのだと突っ込みたかった。
実は自身の過去を捏造して盛ってるのではないか? とすら思っているほどだ。
「このようにルディ様の話もするつもりだったので、是非同席して欲しかったんですけどね」
「……一応誘ったわよ。断られたけど」
「まあ、彼には申し訳ありませんが今はそのことはいいでしょう」
来なかったものは仕方ないので、これ以上ルーデウスに関しての話をするつもりはない。
「でも、そう……そういうことね……」
「ルディ様が生まれたのは、静香が来る約5年前。元の世界であっても時間の流れが違ったんです」
「ということは、未来に現れるかも知れないということね……」
ルーデウスの存在がなければ、その仮説を立てるのに多くの時間を必要としただろう。
だが、彼の存在が未来に現れるであろう篠原 秋人の存在を感じさせることになった。
「そして話は戻りますが、静香が現れる原因となった転移事件。あれは先ほど言ったように人為的に起こせるものではありませんでした」
魔術的な要素がないと言った以上、人の手で起きたとは考えにくいだろう。
かといって、自然に起きたとも考えにくい。
「魔術以外であのような現象を起こせる存在を、私たちは知ってる筈です」
「なるほど、神子か」
オルステッドの言葉に、彼女は頷く。
「ええ、そうです。神子については未だ解明出来ていないことが数多くあります。
神子や呪子の力は魔力的要因でありながら、魔術としての法則を一切無視して力を発揮します。
篠原 秋人の願いか、またはそれに類似することが起きた結果、恐らく静香を召喚したのではないかと私は考えてます」
神子であれば、ペルギウスでも出来ないことを出来る可能性があった。
もちろん、分からないこともある。
全て推測に過ぎないため絶対という訳ではないものの、十中八九この予想が正しいだろうと考えていた。
「……そう」
その答えに、ナナホシは残念そうにしていた。
自分が召喚された理由についての推測が出来たが、これでは答えがなかったのと大差ないのだから。
神子と呼ばれる存在の不思議パワーでこの世界にやって来たという結論は、今後の研究が困難でしかないことを指し示している。
落ち込んだ様子のナナホシを他所に、オルステッドが考える仕草を見せながら口を開いた。
「それで、お前はこれからどうするつもりだ?」
「私はヒトガミを倒すために生み落とされた存在です。オルステッド様の力になるために強さも付けてきました」
「そうか……」
ヒトガミ討伐には、オルステッドの協力が必須である。
魔神ラプラスが復活すれば簡単には『五龍将の秘宝』は手に入らないだろうし、既に3つ確保しているオルステッドから貰えるかも分からない。
仮に無の世界に辿り着いたとしても、ヒトガミに勝てるかも分からないだろう。
ヒトガミの強さは未知数だ。
初代龍神はラプラスにこう言った。
『なぜ奴が人神の姿をし、神の力をもっているのかはわからぬ。それを解かねば、敗北は必至だ』
今のリベラルは、ヒトガミに対してある程度の推測は出来ている。
何故人神の姿をし、神の力を持っているのか。
そしてヒトガミという存在はどこから現れたのかも、それなりに考察することは出来ていた。
しかしそれが正しいという確証はないし、ルーデウスが言っていたように格ゲーでキャラの性能を知っているのと、実際に対戦するのは別だ。
そもそも能力の断定も出来てないのである。
ヒトガミと相対しても、いきなり即死技を受けて殺されてもおかしくない。
「私はヒトガミを倒すと誓った身です。
まだまだ信用出来ない部分もあるでしょうが、その想いは本当です。
私の知っていることは何でも話しますし、持ち得た技術もお伝えします。
だから――私も共に戦わせてくれませんか?」
ラプラスの願い。
それはオルステッドの力になることだった。
そしてその望みは、娘であるリベラルに託された。
その思いを背負い、彼女はここまで歩んできたのだ。
決して短い道のりではなかった。
長く、辛い日々だった。
それでもリベラルは希望を捨てずに、オルステッドと共に戦える日をずっと待っていたのだ。
「…………」
オルステッドは無言となる。
彼は長い時間孤独だった。
呪いによって他者と関わることが出来ずにいた。
己がまだ弱かった頃、何度も人々から迫害を受けて深い関係を築くことが出来なかった。
ペルギウスに拾われた時は、大きな救いだった。
強さを教わり、楽しい時間を過ごすことが出来た。
出来ることなら、あの頃に戻りたいとすら思っている。
ペルギウスの死を何度も経験することになった。
ラプラス戦役を生き残れず、敗北するペルギウス。
相打ちとなり倒れる姿も見てきた。
やっとの思いで生き残り、ラプラス戦役を乗り越えたオルステッドを待っていたのは、新たな絶望である。
復活した魔龍王ラプラスから聞いた、無の世界への行き方。
五龍将の秘宝がなければ辿り着けないという残酷な事実。
甲龍王以外にも、仲良くしてきた者たちはいた。
聖龍帝、冥龍王、狂龍王……彼らからは多くのことを学び、頼りとなる“仲間”であった。
彼らと共に、ラプラス戦役を乗り越えたこともあった。
けれど、龍将たちの命を対価にしなければならないという事実に、オルステッドは酷く苦しんだ。
それでも彼は選択した。
彼らの命を糧に――ヒトガミを必ず打倒せんと。
何度もループしていく中で、助けを求めたくなることもあった。
袋小路に迷い込み、道を切り拓くのに多大な時間を要したこともあった。
だが、オルステッドは孤独に進み続けた。
そうしなければ、互いに苦しむだけだったからだ。
「……いや、助かる」
彼は端的に、一言呟いた。
誰の目から見ても明らかなほど、オルステッドの声には安堵が含まれていた。
そんな姿を見るのは初めてだったのか、隣にいたナナホシは思わず彼を見ていた。
「リベラル。お前が手を貸してくれることに感謝する」
リベラルは異質な存在である。
しかし、それでも信用することにした。
だって彼女は、魔龍王が残した希望のひとつなのだから。
(ラプラス、お前の力にまた頼ることになるとはな……)
魔龍王に初めてあった時のことは、今でも鮮明に覚えている。
彼は優しい男だった。
過酷な道を進ませてしまったことを、何度も謝罪していた。
自分は望まれずに誕生したのではないかと思ったこともある。
けれど、そんなことはなかった。
彼は全てを教えてくれた。
かつて世界が6つに分かれていたことを。
全ての種族に祝福され生まれたことを。
オルステッドが生まれたことを、ラプラスは「ありがとう」と感謝しながら泣いていた。
他者から恐れられ、拒絶されてきたオルステッドにとって、その言葉は何よりも救いであった。
そして再び、ラプラスの残したものが現れた。
五龍将でない彼女は、オルステッドにとってこれ以上ないほどに都合のいい存在だ。
呪いの効果を受けず、全ての事情を知っている。
更には実力もあり、背中を任せられる強さがあった。
今までのループの中で、彼女のような存在はいなかった。
「私も貴方と戦えることを嬉しく思いますよ。お父様が知ったらきっと共に戦えないことを悔しがるでしょうね」
その言葉に、オルステッドも柔らかい笑みを浮かべた。
「それと、後でルディ様も紹介する必要がありますね」
「ルーデウス・グレイラットか。お前の話では俺の仲間になるという存在だったな」
リベラルの言葉に、彼は思い返す。
彼女が未来の知識を持っているのは、ルーデウスの人生の軌跡を記した日記を読んだからだと言った。
つまり、彼には自ら教えたということだ。
オルステッドは今まででの人生で、ループのことを告げた相手は一人として存在しない。
それでも唯一己の真実を教えたということは、それほどの存在なのだろう。
気になるのは当然だった。
「まあ、それはまた後ほどのタイミングでいいでしょう」
そう言いつつ、リベラルは懐から分厚い一冊の本を取り出す。
「これが私の知る未来の知識、即ちルディ様の軌跡です」
「……残していたのか」
「ヒトガミを倒すための大きな武器になると思いましたので」
オルステッドとこうして会合し、仲間となった時点で未来の知識は無用の長物である。
ヒトガミを打倒するためにも、ループをしている彼がその情報を持ったほうが有効活用出来るだろう。
そもそもリベラルは未来の知識に関して、全てをヒトガミ打倒のために活用していないのだから。
「分かった。後で読むとしよう」
「お願いします」
そう言いつつ、オルステッドは最初の方のページを流し読みする。
顔を顰めたりしていたが、開幕のブリッチオ○ニーの部分を見てしまったからかも知れない。
プライバシーも何もあったもんではない。
ルーデウスには申し訳ないと心の中で謝罪しつつ、彼女は話を続けていった。
Q.オルステッド。
A.社長が仲間になったよ!これで勝つる!!
オルステッドは優しいので、ちゃんと心を込めたお話は聞いてくれるのであった。
Q.ルーデウス。
A.プライバシーはありません。しかし情報の出処は明らかにする必要はあるでしょう。ナナホシも言ったように、誘っても来なかったので言いたい放題の状況になりました。
Q.ルーデウスの日記
A.リベラルが転生してから書き記したもの。頑張って覚えてた内容をそのまま書き写したので恥ずかしい内容も全部載ってます。