無職転生ールーデウス来たら本気だすー   作:つーふー

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前回のあらすじ。

リベラル「前世では約50年の付き合いです」
ナナホシ「神子が原因で転移したのなら、私の研究は無駄だったの?」
オルステッド「俺は孤独だったが、新たな仲間が出来た」

13話で五章は終了です。14話までやろうと思えばやれましたが、引き伸ばすだけになりそうだったのでやめました。遂に14話まで行きませんでしたが、今までは偶々だったので未練はありません。ないったらない!

今回は文字数が多くなってしまったため、ふたつに分けたので2話連続投稿となってます。
前話を見ずにこっちに飛んできた人はご注意下さい。
因みに文字数はこれくらいの方が良かったりしますかね…。


13話 『前世からの約束』

 

 

 

 

「他にも聞きたいことはありますか?」

 

 疑問に対してはある程度答えただろう。

 後ほど聞かれることもあると思うが、今聞きたいことはもうないかリベラルは確認する。

 

「私の研究についての意見を聞きたいわ」

 

 リベラルの話は、転移事件の仮説についてだった。

 ルーデウスという存在のお陰もあり、それなりの根拠を持った答えを聞くことが出来た。

 しかし、神子の力によって召喚された以上、ナナホシは転移の研究を続けて成果を得られるのか不安になったのである。

 

 未来の自分は転移に失敗したということを告げられたが、実際にこの世界から別の世界に移動することは成功していた。

 そしてその成果を元に、こちらの世界に転移――失敗したが――してきたのである。

 故に、リベラルは自身が将来辿るであろう研究内容について知っており、それが正しいかどうかを判断出来る存在なのだ。

 

「まあ、今の調子でいいんじゃないですか」

 

 だからこそ聞いたのだが、その答えは曖昧なものであった。

 

「……なに、その言い方?」

「言葉通りですよ。ルディ様や特待生の皆様、それにペルギウス様の協力を得ながら研究を続ければ大丈夫です」

 

 未来の自分は異世界転移装置自体を作れたが、結局失敗している。

 協力者もルーデウスやペルギウス、それに特待生のザノバやクリフだと先ほど言っていた。

 リベラルの台詞からは、前回の失敗と同じ道程を進むように言われているようにしか感じられなかった。

 

 そのため、ナナホシは険しい表情を見せる。

 

「それだと私は失敗するんでしょ?」

「十中八九、失敗するでしょうね」

「…………」

 

 失敗すると分かっていながら、そのような回答をしているのだ。

 ハッキリしない言い方に、ナナホシは段々とストレスを募らせていく。

 昔話をする時の態度もふざけていたし、ナナホシに対する対応も違和感を覚えることが何度か見られる。

 もしかしてリベラルは私のことが実は嫌いで、遠回しに煽って嫌がらせをしているのではないかと思うほどだ。

 

「何が言いたいのよ……」

 

 彼女の発言の意図を読み取れず、ナナホシは疲れた声色で呟く。

 

「えーと……そうですね……」

 

 リベラルは言い淀む様子を見せ、忙しなく視線を交互させていた。

 その様子には黙っていたオルステッドも怪訝に思うほどだ。

 

「ちょっと待って下さいね」

 

 そう言ったリベラルは、深呼吸をひとつして自らを落ち着かせようとする。

 言葉の整理がついてないのでなく、気持ちの整理がついていないかの様子だった。

 

 やがて、落ち着いた彼女は口を開く。

 

「……異世界転移装置自体は私がいつでも作れるんですよ」

「…………は?」

 

 あまりの爆弾発言に、ナナホシは目を白黒させてしまう。

 作れるのであれば、先ほどまでの勿体振った態度や転移に失敗したという発言は何だったのだという話だ。

 頓狂な声を出してしまったのも仕方のないことだろう。

 

「どういうことよ? それなら私が研究を続ける意味なんてないじゃない」

 

 当然の疑問である。

 作れる人間が既に存在するのに、なぜ何も知らない人間が一から作る必要があるのだと言いたかった。

 それに、今までの話も必要なかっただろう。

 

 リベラルは言いにくそうに視線を逸しながら、言葉を続けた。

 

「静香には……そのまま転移装置の開発を続けて欲しいんです」

「なんでよ」

「異世界転移に失敗した理由を知るためです」

 

 全く持って意味の分からない話だった。

 あまりにも説明が足りてないことはリベラルも自覚していたため、ポツリポツリとひとつずつ説明していった。

 

「実を言うと、先ほどの話で言ってなかったことがあります」

「なんのこと?」

「私が異世界転生をしたことについてです」

 

 リベラルは元々、転移をするつもりだった。

 結局失敗して死亡して転生となったが、その原因に関しては早期から判明させていたのだ。

 

「転移をするためのエネルギーが足りなかった。私はそんな初歩的なミスで死んだだけですよ」

 

 馬鹿な話ではあるが、それ以外に原因はなかったと言うのだ。

 転生先がラプラスの娘だったことは完全に予想外だったが、それでもルーデウスの例に当て嵌めれば説明出来ることだった。

 

「実を言うと実験を何度も重ね、静香の世界に行くことには成功してるんです」

「……ちょっと……どういう意味よ……」

「そのままの意味です。私やそれ以外の人間を異世界転移させることには既に成功してます」

 

 頭が痛くなりそうだった。

 本当にナナホシには彼女の意図が読めなかったのだ。

 

「分かりませんか静香? 私の異世界転移装置は、貴方が生み出したものです。にも関わらず、貴方は失敗したんです」

 

 彼女の研究成果は、全て未来のナナホシが作ったものから出来上がっている。

 つまり、ナナホシの技術をそのまま使い回ししてるだけに過ぎない。

 

「性能やコストに関しては改良出来ましたが……基盤は何も変わってません」

「!!」

 

 そこまで言われれば、リベラルの言葉の意味も理解出来た。

 リベラルは“未来のナナホシが作った異世界転移装置と同じものしか作れない”のだ。

 そしてその装置を使えば……ナナホシは転移に失敗してしまうだろう。

 未来の自分はそれを使って失敗したのだ。

 今の自分が同じものを使っても失敗すると考えるのは当然だろう。

 

「私自身の転移には成功しましたが……静香が失敗した理由が一切分からないんです」

 

 完成した異世界転移装置の実験に成功している筈なのに、ナナホシだけが転移に失敗する。

 何が原因か分からない以上、今のナナホシに使用することは出来ないだろう。

 僅かな望みに賭けて使用し、失敗して知らない世界に飛ばされたりすれば目も当てられない。

 

「私は製作過程に失敗する何かしらの原因があると考えてます」

「……何でそう思うの?」

「静香だけが転移出来ないからです」

 

 だからこそ、先ほどの発言につながったのである。

 ナナホシにはリベラルの助言なく、異世界転移装置を作って欲しかったのだ。

 

「オルステッド様も、今までの私の行動に幾つかの不審点を感じたでしょう」

「……そうだな」

 

 リベラルが未来の知識を持っていることや、その情報の出処にについてもハッキリした。

 だからこそ生じる疑問点もあった。

 未来の情報というアドバンテージがあったのだから、もっと上手く立ち回れたのではないか? という点だ。

 流石にループしているオルステッドほどでなくても、もっとやりようのある場面があった筈なのだ。

 

 むしろ、わざと今の状況に持っていったかのような節さえあった。

 オルステッドがループしてることを知っているようなので、敢えて手を出さずに流れに身を任せた、ということも考えられる。

 とは言え、仮にそうだとしてもおかしな点があることは否めないのだが。

 

「……私がここまでやってきたのは、誓いと約束があったからです」

 

 思考していたオルステッドだったが、彼女の言葉に意識を向ける。

 

「私の誓いは、ヒトガミを倒すこと」

 

 これは先ほどから言っていたことだ。

 リベラルひとりではどうすることも出来ないため、オルステッドの協力が必要不可欠だった。

 そして、己の家族を壊したヒトガミへの復讐心や使命によって築き上げられた誓いだ。

 そのために、長い鍛錬に身を捧げて力を手にした。

 

「そして約束は――静香を元の世界に帰すことです」

 

 元々リベラルがこの六面世界に転移しようとした理由は、その約束があったからだった。

 約50年間、前世の彼女は文字通り人生を捧げてナナホシを元の世界に返す協力を行い、結局失敗した。

 それでも尚諦めなかったからこそ、リベラルは龍鳴山でバーディガーディに敗北した日、絶望によって自害せず耐えることが出来た。

 

 ヒトガミの打倒と、ナナホシの帰還。

 それがリベラルの目的であり背負い続けたものだった。

 

「静香を元の世界に返すためには、先ほど言ったように失敗した原因を知る必要がありました」

 

 ナナホシだけが転移に失敗する以上、己の知る未来と違う異世界転移装置が作られるのだけは阻止する必要があった。

 基盤の違うものが作られでもすれば、もう失敗した原因を何も知ることが出来ないからだ。

 

「だからこそ、ルディ様に、ザノバ様、クリフ様、そしてペルギウス様の行動はなるべく変えないように調整しました」

「調整、か……」

「ええ。私はラプラス戦役に参戦し、運命の力というものを観測することに徹することにしたのです」

 

 ラプラス戦役に参加したのは、ルーデウスやルイジェルドにも伝えた通りの理由である。

 己の行動が本当に運命に影響を与えられるのか。

 また、与えられるとしてどの程度の変化をもたらすことが出来るのか。

 それらについての検証を行い、自身の影響力の推測を行った。

 

「幸い私には未来の知識がありましたので、その影響を観測することが可能でした」

 

 未来の知識がなければそのようなことは出来なかっただろう。

 どれほどの影響があるのか比べる対象がないのだから。

 しかし、リベラルにはその知識があり、それを為すだけの力もあった。

 その上でずっと自身の影響力。

 即ち運命の力という不確かなものについて調べたのだ。

 

 何度もシミュレートして考えた。

 ラプラスに全てを打ち明けた際にも、そのことや起きるであろう出来事について相談もした。 

 だからこそ、未来についての予測がついていたのだ。

 

「ペルギウス様はラプラス戦役を越えれば、特に干渉する必要もありませんでした」

 

 ペルギウスは強い運命の力を持ち、行動は大きく変えなくても問題ないことは分かっていた。

 

「ザノバ様はその神子としての力を国が持て余していたため、人形という切っ掛けを与えてラノア王国に来るように誘導が必要でした」

 

 ザノバはあまり強い運命の力はないものの、リベラルの干渉によって容易く動かすことが可能だった。

 

「クリフ様は教皇の孫であり、神子暗殺未遂事件が原因で権力争いに巻き込まれないようラノア王国に避難させられます。

 神子の暗殺に関しては時期が不明だったものの、どのみちそれが起きれば生きてようが死んでようが避難されることに変わりはなかったでしょう」

 

 恐らく、転移事件が発生してなくても彼はラノア王国に来ていたのではないかと考えていた。

 元からその運命にあるのならば、特に干渉する必要もなかったのだ。

 

「そしてルディ様。

 あの方の運命の力は強く、ちょっとした干渉では調整出来ず一番難しかったです。

 彼に強い影響を与えるためには、親しい仲になる必要がありました。

 だからこそブエナ村で私は過ごし、幼少期から関わりを持ち続けたのです」

 

 特に転移先が変われば、以降の行動も大きく変化しただろう。

 故に、干渉はしつつも本来の歴史通りを踏襲するように関わる必要があった。

 多少の変化はあれど、誤差の範疇に収まるようにするのには苦労した。

 そして、転移事件の時期が変化するという誤算はあったものの、それでもリベラルの調整は成功したのだ。

 

「親しい関係に、家族との交友関係。

 そうすることでゼニス様の治療を任された私は、ラノア王国に来るよう伝えました。

 それによってルディ様の行動も、静香に関することだけは変えないようにしたのです」

 

 もちろん、リベラルの行った調整はナナホシに関することだけではない。

 ヒトガミを倒すための調整も含めていた。

 

「ヒトガミを倒すのに避けることの出来ない私のお父様……魔神ラプラスの存在。それに対しても調整を行いました」

「……なに?」

「オルステッド様はまだ日記を読んでないので知らないでしょうが、ヒトガミはロキシー様を利用することで、シーローン王国第七王子パックス・シーローン様を自殺に追い込もうとしてました」

 

 パックスの存在は、オルステッドにとって非常に重要な存在だった。

 彼の存在がなければ、将来復活する魔神ラプラスの復活位置を固定することが出来ないのだ。

 パックスが自殺すれば、魔神ラプラスの復活位置を特定することが出来なくなり、いずれラプラス戦役が再勃発してしまう。

 魔神ラプラスが復活すれば、ヒトガミを倒すための一番の障害となり、勝ち目がとても薄くなってしまうのだ。

 

 その原因となるパックスの自害の阻止。

 彼が自害しようとしたのは、誰にも期待されなかったことが理由で絶望したからである。

 そしてその最初の切っ掛けとなったのが――ロキシー・ミグルディア。

 そこからパックスの認められない戦いが始まり、やがて疲弊して諦めた彼は自殺してしまうのだ。

 

「だからこそ、私は最初の切っ掛けをなくすためにロキシー様に魔術を教え、水王級になるための助言を与えました。

 それによって彼女はシーローン王国に寄ることがなくなり、パックス様との接触もなくなったのです」

 

 パウロを使って奴隷市場を潰そうともしたが、それも対処した。

 リベラルの行った干渉により、シーローン王国は転移事件が起きていない状況と同じものになった。

 つまり、オルステッドがループで知り得た状況と同じになるように調整したのだ。

 

「そうか……」

 

 オルステッドはリベラルの行動の違和感に納得がいった。

 彼女は自分の知らない情報を元に、ずっと動いていたのだ。

 情報に差がある以上、行動に対しての猜疑心が出るのは当然だった。

 そしてその行動に対しての説明を、リベラルは全て行ったのである。

 最早疑う必要もないだろう。

 

 リベラルは全て計算尽くで行動していたのだ。

 

「……なんで、そこまでするのよ」

 

 ナナホシは、ヒトガミに関してのことはあまり知らない。

 それでもオルステッドやリベラルのふたりが、ヒトガミを倒すために行動していることは知っている。

 きっとナナホシの転移に関する行動をしていなければ、既にヒトガミを倒すための道筋は完成していたのだろう。

 実際に完成していたのかは分からないが、それでもそう思わせるほどにリベラルは考えていた。

 

 “ナナホシが異世界転移装置を本来の歴史通りに作るように”細かく調整しながら活動していたのだ。

 そしてそれは、話を聞く限りこの世界に転生してからずっと考えていたことなのだろう。

 どれほどの時間を掛けたのかは分らないが、昔から計画していたことは分かった。

 

「……そんなの決まってるじゃないですか」

 

 リベラルは、何てことないかのように口を開く。

 あまりにも重く、強い想いを感じさせる言葉だ。

 

 

「先ほどから言ってる通りですよ」

 

「私は静香を元の世界に帰すために、この世界にやってきたのです」

 

「前世から、そしてこの約5千年の間、一時も忘れはしませんでした」

 

「静香が転移に失敗した原因を解明し、異世界転移装置を完成させることが私の役目です」

 

 

「……どうして、そこまで私を帰すことにこだわるのよ」

 

 その台詞に、リベラルは小さく笑った。

 

「貴方は知らないでしょうが、前世でずっと何度も言ってきたことなんですよ。

 静香を元の世界に帰してみせますって。

 

 だから――私はここにいるんです。

 

 

 

 

 五章 "それが貴方と交わした約束" 完

 

 ですから」

 

 

――――

 

 

 それは、狂気とも言える想いだった。

 己の人生を掛けて、失敗して。

 新たな生を受けて尚、リベラルは約束を果たそうとしていた。

 約5千年もの時間を掛けて、彼女はこの場に立っていたのだ。

 その約束があったからこそ、リベラルはここまで歩むことが出来た。

 

 そしてその約束も――もう少しで果たされる。




五章の終わり方どこかで見たことある、って方はその通りです。思い浮かべたであろう作品を参考に書きました。好きな作品なので宣伝しようかと思いましたが、私の作品と全然関係ないので今回は控えておきます。

Q.ナナホシの転移が失敗するからその製作過程を見る?
A.四章1話の過去話にて触れましたが『……静香が帰還しようとした場面に居合わせていれば、失敗の原因も分かるかも知れませんが……』と転移前から言っており、そのためにナナホシの状況を変えないようにずっと動いてました。

Q.リベラルの計算。
A.一応最初から考えてましたが話に矛盾や穴があったらすみません。
尚、リベラルが他者に対して『様』付けで距離感のある呼び方をするのは計算した上で関わりを持っている部分があることからも来ています。
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