ヒトガミ「(´・ω・`)やあ」
リベラル「死ね。氏ねじゃなくて死ね」
アトーフェ「人神にいいとこかっさらわれた」
親衛隊「せやな」
書いてる時はとてもいい感じに仕上がってるように感じるのに、時間が経ってから見直すと凄く駄目に感じる。そして、一度そう感じてしまうと「いやいや、つまらなさすぎだろこれ」と何度も思ってしまう。書き直しても、何度も何度も……例え、面白くてもだ。
ネガティブ思考…奴は厄介だ。書く気力をゴリゴリ削ってきて、投稿する気持ちをむしり取りやがる…。
せめて、その気持ちが晴れることを願おう。あーめん。
なんちゃって。
最初にその姿を見たとき、リベラルは「何故?」といった疑問を浮かべていた。
そもそも、彼女のからだには『龍神の神玉』が埋め込まれており、人神に対しての対策を持っているのだ。だからこそ、こうして姿を現せたことに、疑問を抱く。
「え…?」
リベラルは、ふと自身のからだを見下ろす。
未来でルーデウスが人神と邂逅した際、彼の姿は前世の死ぬ前の姿であったのだ。しかし、今のリベラルの姿は、前世の姿でも、ましてやリベラルとしての姿でもなかった。
まるで――火の玉のような緑色に光るナニかだ。自身のからだであろうそれは、中空でフワフワと漂っている。
「えぇ…? 何ですかこれは?」
「『龍神の神玉』だね。それのせいで、ここでは君の姿が変わってるみたいだよ」
こんな姿で、どうやって喋ってるのかよく分からないが、それでもリベラルは声を発することは出来た。
そんな彼女の疑問に答えた人神は、『龍神の神玉』の単語を溢した際、僅かに忌々しそうな雰囲気を晒す。しかし、すぐに人の良さそうな笑みへと切り替わった。
「…それより、何故私に接触を? 貴方と私は敵同士の筈ですが」
リベラルは抑えきれぬ鋭い殺気を溢しながら、人神を睨み付ける。彼女にとって、人神など敵でしかないのだ。確かに、戦ったりするのはなるべく避けたいが、それでも味方になるつもりもない。
六面世界の5つを、裏で糸を引いて崩壊させたことは気に食わないし、順調に進む筈だった世界をぶち壊されたのは、非常に胸糞悪い話であった。
何より、未来でルーデウスへの対応を知っている以上、いずれ裏切られることは明白だ。このような糞野郎に従う使徒の気持ちが、何一つ理解出来ない。
それに、人神が原因で、リベラルは現在進行形で、泣き出したくなる厳しい鍛練を強制させられている。それも許せなかった。
「そりゃあ、君となら仲良く出来ると思ったからさ」
「私と仲良く…? まさか、それを本気で言ってるのですか?」
「本気だよ。僕は君と仲良く出来ると思ったからこそ、こうして姿を現したんだから」
「…………」
正直、訳が分からなかった。
リベラルが過去の出来事を知っており、尚且つ未来の知識を持っていることを把握しているのであれば、人神とは絶対に相容れぬことが分かる筈なのだ。例え、人神から返しきれぬ程の恩を受けようとも、それだけは絶対である。
なのに、言うに事欠いて「仲良く出来ると思った」等と抜かしたのだ。何をどう考えれば、そのような思考に行き着くのか理解不能であった。
しかし、ひとつの可能性に辿り着く。
もしかしたら――人神は私が転生者だと気付いてないのか?
そんな疑問だ。
それに、心を読み取れていない可能性があった。
今見ているこの夢――この空間は、人神が他者の精神に直接語り掛けてるかららしい。だが、この場にいるのはリベラルではなく、揺らめく
『龍神の神玉』によって、上手くこちらの精神に干渉出来ていないとも考えられる。もっとも、だからと言って楽観視するつもりは毛頭ないが。
(くたばれモザイク野郎! 誰がお前みたいな卑猥な奴と仲良くしてやるか! 会話するだけで妊娠してしまいますよ!)
試しに、リベラルは強くそう念じてみた。これは軽い気持ちなどではなく、本心から思っていることである。
人神は特に気付いた様子を見せず、何見てんだよと言いたげな態度だった。
「なんだいなんだい、そんなに睨み付けてさ! 僕が嘘吐いてると思ってるのかい?」
「…どうでしょう。余り信じられませんね」
などと言いつつ、内心では「どっちでもいいから早く消えろよ」と思う。どちらにせよ、人神と会話することにメリットなど、ほとんどないのだから。
しかし、人神はそんなことを思われてると知ってか知らずか、図々しい態度で居座り続ける。
「そもそもさ、君はラプラスから過去の話を聞いたんでしょ?」
「それが何ですか? 貴方が最低の屑野郎で、性根が腐りきってると言われましたよ」
「それだよそれ。僕は確かに彼らを騙したけどね、それは悪い龍神をどうにかするためだったんだよ」
「ほう、それ相応の理由があったと言うのですか?」
「そりゃそうだよ。君は知らないだろうけど、龍神は龍界以外の世界を滅ぼそうとしてたんだから」
リベラルは、思わず頭にクエスチョンマークを浮かべた。しかし、人神は言葉を続ける。
「ずっと昔から企んでたみたいだけど、僕だけはそれに気付くことが出来たんだ。でも、僕は神々の中で一番弱かったからね」
「…………」
「だから、知恵を振り絞ったんだ。どうすれば龍神に勝てるか、必死に試行錯誤してね」
「はぁ」
「その結果、騙すことになった訳だよ。確かに僕の行いは非道だろうけど、そうしなければ世界は滅んでいたからね」
…何だ、これは。
まさか人神は、これで信じると思って、話してるのだろうか?
余りにも荒唐無稽な与太話だ。冗談にしても笑えないだろう。嘘を吐くにしても、もっとまともなものがあった筈である。ラプラスの話した龍族の過去話と、全く違うことをのたまうとは。
そんな話を信じるほど、リベラルは馬鹿ではないのだから。
「五龍将たちも、ラプラスも、みんな龍神の言葉に踊らされてる。そもそも、六面世界の5つが崩壊した以上、僕が死ねば本当にこの世界は終わるんだよ?」
「……確かにそうかも知れませんね」
「でしょ? ラプラスが自分に妄信的なことを利用して、龍神は最後の悪足掻きに僕を殺すように命じるしさぁ…堪ったもんじゃないよ」
「…………」
ひとつ、リベラルに確信出来ることが出来た。それは、人神がリベラルの心を読み取れていないことだ。
未来の知識があるリベラルは、人神がどのような性格をしているのか知っている。甘言で誘い、目先の欲に導き、そして最後に大切なもの全てをぶっ壊す。
自身が死にたくないがための行動なのかは分からないが、それでも人神の非道を知っているのだ。
人神がリベラルに未来の知識があることを知っていると仮定すれば、それは流石にあり得ぬ発言である。幾らなんでも、人神が馬鹿すぎるだろう。そんな嘘が通じないことは明白だ。
だが、もしもリベラルをただの子供だと考えているのであれば――、
「君は、ラプラスに都合のいい人形として作られてるよ」
――人神の狙いは、即ち
かつての五龍将たちのように裏切らせて、互いに戦わせようと考えているのだ。
「都合のいい人形…ですか?」
「そうだよ。だってさ、今まで君、龍鳴山から出させてもらうことも出来ず、ずっとやりたくもない鍛練をさせられてたでしょ?」
「それは…貴方を打倒するために…」
「それだよ。僕を倒すためだって? 君は一体僕の何を知ってるんだい? ラプラスの話でしか知らないじゃないか」
未来の行いを知っている。そのことを人神が知っていれば、その発言が矛盾してることに気付くだろう。
もはや、心を読み取れてないのは確定的であった。
そのことに気付いたことを悟らせぬよう、リベラルはなるべく声色を変えぬよう意識する。
「それは…そうですけど」
「君は洗脳されてるんだ、リベラル。僕はそのことを伝えたかったんだ」
「…………」
「僕の言葉が届いてなくてもいい。けれど、少しでも自分の意思で考えて欲しいんだ」
そして、人神は僅かな溜めを作り、口を開く。
「――君の知る世界が、どれほど狭いものなのかを」
なるほど、とリベラルは思う。
もしも己が純粋なリベラルという存在であったのならば、この話はいわば布石だったのだろう。
人神は、ここで無理に信じさせるつもりなどなかった。ただ、リベラルという存在に、疑心を与えたかったのだ。ずっと龍鳴山という狭いコミュニティに閉じ込められてる彼女に、ほんの僅かなヒビを加えようと。
だが、生憎なことに、リベラルは
確かに、龍鳴山で延々と鍛練を強制させられていることに対して、不満はある。しかし、それだけだ。鍛練ばかり要求してくるラプラスのことは、確かにあまり好きになれないが、結末を知っている。あまりにも報われない結末だ。救うことも出来ない。
魂を二分にされ、魔神と呼ばれる片割れは良いように使われる始末だ。しかし――魔神の恨みは本物である。オルステッドは言っていた。
『二つに割かれたラプラスは、記憶を失い、
人の存在を憎悪する『魔神』と、
神を打倒せんとする『技神』に別れた』
果たして、記憶が失われてもなお、ここまで強い意思を持つことがあるだろうか。もしも、あるのであれば――それは魂の奥底にまで染み付いてるのだろう。
ラプラスは、決して嘘を吐いてない。彼は人神に騙され、奪われ、使命までも壊されるのだ。そんな結末を、リベラルは知っている。
ラプラスの言葉は、とても重たく心に響く。
人神の言葉はあまりにも軽く、心に響かない。
どちらを信じるかなど、言うまでもないだろう。父親に決まっている。だからこそ、その重圧に耐えきれずに、飛び出してしまったのだ。
「それで、話はそれだけですか?」
「いやいや、まだあるよ! 言ったじゃないか、僕は君の味方だってね」
人神の言葉に、リベラルは一切揺れなかった。
彼女は、人神の企みを防いだことを確信する。
けれど、人神はまがりなりにも“神”の名を冠する存在だ。そんな簡単な存在でないことを、リベラルはすぐに思い知ることになる。
「君ってさ、今は家出しちゃってる訳じゃん?」
「そうですね…」
「鍛練ばかりで嫌気が差したんだろう? リベラルちゃんってば随分と子供らしいところがあるんだね」
「……よ、余計なお世話ですよ!」
図星を突かれ、彼女は現在顔がないにも関わらず、頬が赤くなるのを感じた。ラプラスの結末は知っているが、それと同時に、無限の鍛練を要求されるのが嫌だったのだ。
それに、ラプラスを下手に助け、歴史を改竄してしまえば、間違いなくルーデウスは誕生せず、転移事件は起きなくなるだろう。それは、不味いのだ。
人神を倒せないだとか、それ以前の問題になってしまう。全てが台無しになるのだ。
人神はそんな様子を見せる彼女に、軽く苦笑するかのような仕草を見せた。それから、軽く咳払いをして、
「君に、ひとつ助言を授けるよ」
人の良さそうな笑みを止めて、真面目な雰囲気を纏った。
「助言…ですか?」
「そう、助言だよ。これは、ささやかな友好の証だと思って聞いて欲しい」
「いえ、そんなものいりませんけど」
「…真剣に聞いて欲しいんだ。人神の名に誓って、冗談を言うつもりはないよ」
リベラルは思い知る。
神を甘く見るべきではないと。
「リベラルよ、ラプラスの元へとすぐに帰りなさい。
帰らなければ――ラプラスは君を殺そうとするでしょう」
「……は?」
唐突な予言に、リベラルは思わず頓狂な声を上げた。
無理もないだろう。いきなりそのようなことを言われ、動揺しない筈がない。
「それは…本当ですか?」
「本当さ。どういう因果でそうなるのかは知らないけど、すぐに帰らないとラプラスは君を殺そうとするよ」
「…………」
リベラルは考える。
果たして、ラプラスが本当にリベラルを殺そうとするのか、と。
普通に考えれば、あり得ない話だ。だって、ラプラスが未来に抱く想いは――本物なのだから。その未来に繋げるためのリベラルを殺そうとするなど、あまりにも荒唐無稽な話である。
しかし、と思い直す。人神が持つ予知の力も――本物だ。その力があるからこそ、何百回とループを繰り返しているオルステッドに、一度も負けたことがないのだから。
――これは、単に疑心を与える為の言葉なのか?
――そもそも、人神は本当に私の心を読み取れてないのか?
――人神は、一体どういうつもりでこんなことを言った?
ぐるぐる、ぐるぐると、
疑問が渦巻く。
迷いが渦巻く。
人神は、答えの出せないリベラルのそんな様子を、怪しい笑みを浮かべて眺める。まるで、考えても無駄だと言わんばかりの表情で。
「……因みに、帰らなければ確実に殺されるのですか?」
「さぁね。リベラルちゃんの未来って、どうにも
「見辛いって…信憑性が一気にガタ落ちしましたよ」
「でも、ラプラスに明確な殺意を向けられるのは確かだね。それだけは、自信を持って言えるよ」
「…………」
考える。人神の真意を見抜かなくてはならないのだ。
人神は、決して善意で助言を与えない。必ず、自分に利があるように仕向けるのだ。考えなしに従ってしまえば、それこそ人神の思う壺である。
しかし、いくら考えても、リベラルをラプラスの元に帰そうとする意図が読めなかった。
ラプラスと龍鳴山に戻ったところで、纏めて始末するつもり、と考えるのは流石にないだろう。そんなことが出来るのであれば、とっくの昔にそうしている筈だ。
「と言うか、ラプラス様は私を見付けることが出来るのですか?」
「そりゃ、勿論さ。彼には魔眼があるからね。リベラルちゃんを探し出すのは容易だろうさ」
「そして…そのまま襲われると?」
「そう言うことだね」
「…………」
いや、そもそも、本当にラプラスに殺されるのだろうか。人神は“殺そうとする”とは言ったが、“殺される”とは言ってないのだ。
だからと言って、安易に人神の助言に、真っ向から対立するのも、どうかという話でもある。
未来で、ルーデウスは一度だけ人神の助言に真っ向から逆らったことがある。その結果として、彼は
……何となく今の状況と似ている気がして、リベラルは少し嫌な気持ちになってしまう。
だが、もう少しだけ考えなければならない。ルーデウスが人神の助言に逆らったのは、彼の母親を助けに行くか否かである。
そして、人神が助けに行くべきではないと助言を出した理由が、ルーデウスとロキシーが結婚してしまうからだ。その結果として、オルステッドと共に人神を倒す娘が誕生する。
…そう考えれば、この助言には真っ向から逆らうべきなのかも知れない。
「……もし、私が貴方の助言を素直に聞けば、ラプラス様は私を殺そうとしないのですね?」
「うん。特に何事もなくハッピーエンドさ。確かにラプラスは厳しい鍛練を要求してるけど、リベラルちゃんのことを大切に思ってるからね」
「…………」
全く分からなかった。
人神の考えが、読めない。
「何故…そのような助言をするのですか…?」
「はぁ、何度も言ってるじゃないか。僕は君の味方だって」
「……信用出来ません」
「でも、僕はリベラルちゃんに死んで欲しくないから、こうして目の前に現れて助言してるんだよ。それは本当さ」
「……そうですか…」
結局、考えることなど無意味なのかも知れない。
人神が見据えているのは、未来だ。
“人神”の未来だ。
リベラルが知るちょっとした未来では、彼の考えを暴くことなど出来やしない。情報も何も持たず、人神の未来に先手を打つことなど不可能である。故に、考えるだけ無駄であった。
「さて、もう一度言うよ」
思考を続けるリベラルに、人神は念押すかのように、再度口を開く。
「リベラルよ。ラプラスの元へと、すぐに戻りなさい」
そこで、彼女の意識は途絶えた。
――――
リベラルはとある山の中腹にある、洞窟の中で目を覚ます。あてもなく彷徨っていた彼女は、適当な寝床として、ここに行き着いていたのだった。ゴツゴツとした岩肌が、寝覚めを悪くしていた。
しかし、今はそんなことどうでもよかった。問題は、人神が現れたことである。
「……これは、どうするべきなのでしょうか…」
もはや、人神のもたらした助言は、考えるだけ無駄であった。人神の狙いなど、オルステッドのようにループでもしなければ見抜けないだろう。
しかし、リベラルは選択肢を突き付けられたのだ。第三の選択肢など存在しない、二つの道を。
すぐにラプラスの元に帰るか。
それともラプラスの元に帰らないか。
ヒトガミ曰く、戻らなければラプラスがリベラルを殺そうとする、らしい。だから、早く帰って欲しいと。リベラルには死んで欲しくないと。
意味不明だ。リベラルは敵なのだから、助けるメリットがないだろう。けれど、もしかしたら、これも疑心を植え付けるための布石なのかも知れない。
そう考えれば、しっくりくるものもあるだろう。とは言え、しっくりくると言っても、様々な疑問が晴れる訳ではないのだが。
「仕方ありませんね…ここは一度、人神の考えに乗ってみますか」
結局、リベラルが選んだのは様子見だった。
現時点では、人神の真意を図ることが出来ない。出来ないのであれば、諦めるしかない。ある意味、妥当な選択とも言えよう。
それすらも人神の手の内かも知れないが、そこまで考えることは不可能だ。正に諦めるしかないだろう。
「…とりあえず、さっさと帰りましょうか。ラプラス様に殺されそうになるのは嫌ですし」
自嘲気味にそう呟き、リベラルは立ち上がる。しかし――すぐに気付いた。ある事実に。
「あれ? 私一人じゃ――龍鳴山に戻れませんよね?」
そう、龍鳴山は数多のレッドドラゴンが飛び交う地である。そして、リベラルの実力では、登ることなど出来やしない。
リベラルはまだ弱い。有象無象を倒せる程度の実力はあるが、ドラゴンに打ち勝つ実力などないのだ。
即ち、二つの選択肢があると思ったのに――選択肢は一つしかないのだった。
意図せずして、人神の助言に逆らうことになる。
――――
龍鳴山の中腹に、一軒の家がポツリとあった。
その家の中へと入れば、銀色と緑色の入り混じった斑模様の髪をした男が、机で腕を組み、静かに目を瞑っていた。
その傍らには、金色の髪をした少女が、悲しそうに顔を伏せている。
「…………」
「お嬢様…帰ってきませんね…」
ラプラスとロステリーナだ。二人は机の前で無言のまま座り、じっとリベラルが帰ってくるのを待っていた。
「……そうだね」
ラプラスは表情を浮かべず、冷たい声色で返事をする。その雰囲気は、己に対する怒りと、後悔が混ざり合っていた。
彼はサレヤクトと合流した際、リベラルがいないのは、人神による攻撃を受けたからだと考えた。人神によって、己の娘は殺されてしまったかも知れないと。
ラプラスには、使命がある。
未来に繋げるものがある。
だからこそ、龍鳴山へと帰った。何としてでも、己が生き延びる為に。
しかし、帰還したラプラスに対し、ロステリーナは、キョロキョロと辺りを見回して「お嬢様はいないのですか…?」と、不安そうに訊ねてきた。リベラルの呪いが原因で、怖がってるにも関わらず、だ。
彼女のその台詞に、ラプラスは頭を殴り付けられたかのような衝撃を覚えた。
――ロステリーナが心配してるのに、どうして父親である私が、真っ先に娘の心配をしなかったのだと。
激しい後悔に襲われた。何故、私は先にリベラルの安否を確認しなかったのだと。帰らずに探していれば、見付けられたかも知れないのに。
ラプラスにとって、一番大切なのは龍神が最期に与えた使命だ。人神を倒すために、御子へと術を伝えることである。
あの御方には返し切れぬほど、大切なものを沢山貰った。だから、リベラルは一番ではない。
けれど、それでも――大切な存在である。
「――リベラルは私の娘だ」
未来のことを思えば、正しい選択だっただろう。
だが、父親としては最低の選択だった。
真っ先に己の保身に走ってしまうとは。
「ロステリーナ、私は行ってくるよ」
「……ご主人様…私を一人にしないで下さいね」
「もちろんだとも。リベラルを連れて帰ってくることを、龍神様の名に賭けて誓うよ」
ラプラスは魔眼を開眼する。かつて、『剛龍王』クリスタルを殺害した下手人を捜索するのにも使用したものだ。
人神という忌々しい存在によって開眼された魔眼は、奴の思惑に乗ってしまっているようで、なるべく使いたくなかった。それでも使ったのだ。
リベラルが生まれてからは、一度も使用したことがない。彼がこれを使用するのは、本気の時だけだ。あらゆる装備を整え、彼は立ち上がった。
故に、ラプラスは気付くこととなる。
リベラルの魂が、歪であることに――
人神が一体何のためにこのような助言を与えたか。
それはいずれ、絶望にうちひしがれるリベラルの肩を叩き「君が馬鹿なおかげで、僕の思い通りに事が進んだよ。お疲れさん」と言いながら説明してくれるかも知れませんね、きっと。