リベラル「過去の話をエリナリーゼにしました」
エリナリーゼ「今が満たされてますし、全部受け入れますわ」
リベラル「結婚式を見てエリナリーゼは絶対に守るって誓いました」
模試の点数が低い…不味い。不味いけど執筆が止められないんだけど〜(以下略)
書ける内に書かないと、また何を書こうとしたのか忘れて更新が長期間停止しますからね。
ですが、本格的に不味いのでそろそろ勉強しないと…。
特に何もない平穏な時期だった。
リニアとプルセナが卒業したものの、大学生活に大きな変化は特にない。
やりたい研究を行い、シルフィエットやロキシーを侍らかせ、ザノバやクリフと談笑して。
たまにオルステッドの手伝いを行うが、危険があるのはその程度だ。
ルーデウスの元にヒトガミの使徒が現れることはほとんどなかった。
「よお、ルディ」
そんなある日、学校帰りのルーデウスにパウロが声を掛けてくる。
リベラルとの鍛錬後なのか、寒いのに彼は半袖のラフな格好をして汗をかいていた。見ているこちらまで暑くなりそうな光景だ。
「どうしましたか?」
「明日か明後日、予定空いてないか?」
パウロの言葉に、ルーデウスは自身のスケジュールを思い返す。と言っても、最近はそこまで忙しくないため、オルステッドからの仕事はない。
学校に関しても、特に優先してやらねばいけないこともない。強いて言えば、ルイジェルド人形作りとザノバの研究を手伝うくらいだろう。
ナナホシに関しても、絶対に毎日行かなければならない訳でもない。
それらのことを脳内で考え、ルーデウスは問題ないことを確認する。
「空いてますよ」
「オレもたまには冒険者として活動したくなってな。雹の森に行かねえか?」
現在のパウロは、冒険者としてほぼ引退状態だった。ゼニスたちを養っていくには、不安定すぎる職だからだ。
そのため、今は街での土木作業を行ったり、リベラルの実験に付き合うことで稼いでいる。
借金をしているものの、リベラルは律儀にお金を渡してくれてるため大助かりだ。
そんな唐突な提案に、ルーデウスはキョトンとした様子を見せる。
2人は高ランクの冒険者だ。どんな依頼だろうと受けることが出来るだろう。
雹の森の冬季は危険だが、今はその季節から外れている。気を抜きはしないが、そこまで苦労はしないと思われた。
ルーデウスも最近は冒険者として一切活動してないため、たまにはいいかと考える。
「分かりました。他に誰を誘いますか?」
「他はいないぞ」
「え? いないんですか?」
「ああ。エリナリーゼはオレとは行きたがらないし、タルハンドもギースもいねえしな」
「えぇ……」
「ノルンは行きたがってたが、流石に森の中に同行させるのは危ないからな」
まさかの2人きりだった。
何が悲しくてこんなむさいオッサンと森の中へとランデブーしに行かなければならないのだろうか。
ルーデウスはめちゃくちゃ断りたくなるのであった。
「あっ、すみません。その日はそろばん教室に行く日なので無理です」
「さっき空いてるって言ったじゃねえか」
「父さんと2人きりで行ったら、貞操が危ないじゃないですか!」
「タルハンドだったら危なかったが、オレにそっちの気はねえよ」
そんな風に何とか断ろうとしていたルーデウスだが、最終的に根負けして受け入れるのであった。
森の中だと使える魔術に制限が掛かるため、準備もしっかりしないとな、と考える。
「依頼は何を受ける予定ですか?」
「特に決めてないが、討伐系だな」
「準備も必要ですし、先に決めておきましょう」
ルーデウスは雹の森に出没する魔物の名前をつらつらと上げていく。
スノウホーネット、ホワイトクーガー、マスタードトゥレント、その他諸々。つらつらと説明していくその様子に、パウロは驚いた様子を見せる。
元々パウロの所属していた『黒狼の牙』はSランクパーティではあるものの、一癖も二癖もある人物ばかりが集まった凸凹パーティだ。
単独では性能が尖りすぎているため、出来ることが限られていた。情報収集も不得意であり、ギースに任せっぱなしな状況だった。
そのため、既に情報を集めきっている我が息子に大きく関心する。
「流石だなルディ。オレの自慢の息子だぜ」
「冒険者なんですから、生死に関わることはいくら準備しても足りませんよ」
という訳で、出ている依頼を見にギルドへと出向くのであった。
今回は切羽詰まった状況でもないため、依頼を吟味することが出来る。割の良さそうなものがあれば、それらをまとめて受ける予定だ。
取りあえず、晩ごはんにも出来そうなものだと尚良しである。
「おい……ありゃあ『魔術王』じゃねぇか」
「久し振りに顔を出したな……」
「隣にいるのは誰だ?」
「知ってるぜ。ありゃ『黒狼の牙』のパウロだ。パーティは解散したって聞いたんだがな」
ギルドへと入れば、2人の姿に何故か周りはざわつき始めていた。
それなりに顔が売れている弊害だろう。まるでアイドルを目にした野次馬である。
だが、ざわついてるだけで特に害はないため、ルーデウスは気にせず依頼の確認へと向かった。
「おっ、ルディ。はぐれの赤竜が依頼にあるぜ! 折角だしこれ受けるか!」
「は?」
パウロの唐突な提案に、ルーデウスは頓狂な声を上げてしまう。
先ほど雹の森に行くと自分で言ったばかりなのに、全然違うことを言い出したのだ。
一体どういう意図で言い出したのだと彼を見る。
「まじかよ……流石は魔術王とSランクのリーダーだな……」
「あの赤竜ずっと倒すことが出来ずに放置されてるやつだろ? 2人でどうにかなるものなのか?」
「いや、魔術王がいるんだ。あいつの魔術を実際に見たことがあるけど、ありゃヤバかったからな……」
再びざわつく冒険者たち。
最高難易度の依頼をあそこまで気軽に受けようとするのだから、驚くのも当然だろう。
パウロを観察していたルーデウスは、彼が今の状況にニヤついていることに気付いた。
更に言えば、チラチラとこちらを見てくる。
(……まさか、チヤホヤされて舞い上がってんのか?)
何でいきなりこんな幼稚なことをしてるんだと言いたかった。
元々Sランクパーティで名声を得ていたのだから、あの程度の反応で今更舞い上がるなという話だ。
ちょっと有名だからってイキってるチンピラみたいになっている。
見てるこちらが恥ずかしくなるので、止めてほしかった。
「おっしゃルディ! これ受けようぜ!」
「いや、受けるわけないでしょう。何を言ってるんですか」
その言葉に、パウロはショックを受けたかのように固まってしまう。
当たり前の返答であるのだが、それに気付かぬほど舞い上がっていたらしい。
そもそも当初の予定と違うことをするなという話だ。
周りの冒険者たちも野次を飛ばしてきたが、無視である。
適当に見繕った依頼をルーデウスは選んでいく。
「ラスターグリズリーかホワイトクーガー、それと採取系の2つにしましょう」
「しょうがねぇな。分かったよそうしよう」
周りの冒険者に煽られ、ぶつくさしつつも依頼内容に同意するパウロ。
赤竜退治は他の冒険者に任せておきたい。
だって危険だし。
そうして、準備のためにギルドから離れるのであった。
――――
翌日、準備を整えたルーデウスは、パウロと共に雹の森へと向かった。
雹の森は魔法都市シャリーアから北に3日ほど移動した場所にある。
森の切れ目がそのままバシェラントとの国境にあたる。
そして今更なことなのだが。
誘ってきたときの「明日か明後日空けてくれないか」という、パウロの台詞に見積もりの浅さを嘆くのであった。
格好に関しても、ルーデウスはもしもに備えた非常食や携帯品を多く抱えているにも関わらず、パウロは普通の旅装と胸当てに、剣を携えてるだけである。
初心者の冒険者かな?
そう言いたくなるのも仕方ないだろう。
高ランク冒険者なのに、何故か軽装で森に入ろうとしているのだから。
「父さん、何でそんな軽装なんですか」
ルーデウスは思わず口にしてしまった。
「そこまで難しい依頼じゃねぇだろ」
「難しくなくても、何かあるかも知れないじゃないですか」
もっともなことを言ったのだが、パウロは軽薄に笑うばかりだ。
「大丈夫だって、オレとルディが揃ってるんだぜ。そうそうミスりゃしねえよ」
「いやいや、その油断が命取りになりますよ」
「わかってるよ、んなこたぁ」
そう言いつつズンズン進んでいくパウロに、ルーデウスは溜め息ををひとつ溢して追従するのだった。
とはいえ、腐っても冒険者である。
森の中へと入れば軽薄な雰囲気はなくなり、真剣な様子になるのであった。
ルーデウスは離れないようにし、すぐに援護出来るように付いて行く。
雹は現在降っていないものの、足元には積もった雪がある。それらを踏み締めて探索していく。
今回受けた依頼は、結局ホワイトクーガーの討伐と解毒草の採取である。
ホワイトクーガーはその名の通り白いクーガーであり、ピューマーみたいな魔物だ。
獲物に気付かれないように接近し、不意をついて飛び掛かってくるため、索敵が重要となる。
解毒草は森の中程にあり、ついでに採取出来るため特筆することはない。地図もあるため、群生地については把握済みだ。
雪で地面が見えないと、躓くこともあるため溶かしながら進んでいく。
すると、パウロが関心するかのように声を上げる。
「おー、雪を溶かしてるのか。魔力は大丈夫なのかそれ?」
「大丈夫だ、問題ない」
「ほんとかよ。てか何だその口調」
「まあまあ、周囲を警戒しながら行きましょう。ちゃんと魔力は温存してますので」
そうして進んでいくと、不意に蜂の鳴らす不快な羽音が聞こえた。
パウロは立ち止まり音のする方角に注意を向ける。
この森で大きな羽音を鳴らすのは、スノウホーネットだ。
単体なら問題ないものの、巣の近くであれば脅威度は跳ね上がる。
あまり相手をしたくない魔物だった。
「迂回しますか?」
「そうだな、そうしようか」
パウロは別に戦闘狂という訳でもない。
無関係な魔物を討伐したところで体力を消耗するだけなので、素直に提案に乗るのであった。
そうして、なるべく気配を消しながら羽音から離れていく。しばらくすると完全に羽音はなくなったため、2人は立ち止まった。
パウロはルーデウスに現在地を確認するよう促し、彼もそれに従い地図を広げる。
迂回したため解毒草の群生地から離れてしまったものの、ホワイトクーガーを討伐する必要もあるため問題ないだろう。
「ルディ、マスタードトゥレントがいるぞ」
「えっ……あ、本当ですね」
少し先にある草木に目を凝らせば、風がなくとも僅かに動いていることに気付く。
ここに来るまで冒険者を舐め腐ったかのような態度をしていたパウロが、まさか先に気付くとは思いもしなかった。
ルーデウスは観察力がある方だと思っていたのだが、意外にもパウロの方が周りに注意を払っていたようだ。
因みに、マスタードトゥレントに関してだが。
そこまで大きくもないし、脅威度もほとんどない魔物だ。野草みたいなものなので、薪代わりにすることも出来ない。
放置しておいてもいいのだが、摩り下ろすことで調味料として使うことが出来るのだ。
パウロはササッとマスタードトゥレントの元に行って、根元から刈り取るのであった。
「ラッキーだったな」
「そうですね」
トゥレントは魔大陸では薪としてしか見られてなかったが、ここではただの調味料としてしか見られてないのであった。
哀れなトゥレントであるが、魔物なので気にすることもない。
手早く荷物として整理し、先を目指すのだった。
森に入ってからのパウロは、流石の一言であった。
ルーデウスよりも先に危険を察知するし、息も一切乱れず動けている。
ルーデウスは荷物を背負ってることもあるが、多少の疲労があった。
そのことに気付いたパウロは、休憩を提案する。
「ルディ、大丈夫か?」
「特に働いてもないので大丈夫です」
「キツかったらすぐに言えよ」
「はい」
パウロは軽装であるが、前衛だ。
ルーデウスの荷物を持ってしまうと、動きが大きく鈍ってしまう。
後衛であるルーデウスなら問題ないが、前衛のパウロがそうなると不味いだろう。
もしかしたら、そのことを考慮して荷物は最小限にしたのかも知れない。
少なくとも、周囲への警戒はより集中の出来るパウロがしているし、魔物の強襲を受けることなく進めている。
ルーデウスはもしもに備えていたが、パウロの装備も間違ってなかった。
「そろそろ行きましょう」
「おう」
そうしてしばらく進むと、解毒草のある群生地へと辿り着く。
道中も特に危険もなく、ルーデウスの魔術やパウロの剣で一撃で仕留められていた。
2人ともブランクはあったものの、その実力はその程度で錆びつくことはなかったのである。
「ッ! ルディ! しゃがめ!」
「!!」
解毒草を採取していた際、不意にパウロが声を荒げた。
ルーデウスはそれに疑問を持つことなく、指示通りしゃがんだ。
その瞬間に、抜剣したパウロの一閃が通り過ぎる。
「ギャウ!!」
いつの間に迫っていたのか。
既に飛び掛かっていたホワイトクーガーは、断末魔とともに首がはね飛ばされていた。
血飛沫が吹き出し、地面が真っ赤に染まる。
ついでにパウロとルーデウスも真っ赤に染まってしまう。
「うぇ……くっせぇな……」
「……血の匂いで魔物が来るかも知れません。洗い流しましょうか」
ルーデウスは魔術を使い、周辺と自分たちをお湯で洗っていく。
「マスタードトゥレントを混ぜ込むと血の匂いを薄められると聞いたことがあります。それも使いましょう」
「ああ、分かった」
そうして汚れの処理をし、魔術にて服をすぐに乾かしていった。
パウロはその間も周囲を警戒していたが、特に魔物が来ることはなかったようだ。
「ホワイトクーガーが迫っていたことに気付くのが遅れました。ありがとうございます父さん」
「いいんだよ。後衛のお前に接近を許したのはオレの責任なんだ。むしろこっちが謝りたいぜ」
「でしたら、おあいこさまということにしましょう」
「ハッ、そうだな。そういうことにしようか」
そう言ったパウロは、何だか楽しそうな様子だった。
森の中に入る前からもそうだったのだが、もしかしたら彼は浮ついてるのかも知れない。
こうして冒険者として2人で活動するのは、何気に初めてである。
ギルドで赤竜討伐を提案したのも、もしかしたらチヤホヤされるためではなく、自分に良いところを見せようとした結果なのかも知れない。
そう考えると、ルーデウスもあそこまでガミガミ言ってしまったことがバカらしくなった。
自然と彼も笑ってしまう、
「あっ、ルディ。解体はオレできねぇから頼むわ」
「…………」
笑顔は一瞬で引っ込むのであった。
どうやら『黒狼の牙』ではパウロは解体担当ではなかったようだ。
もしかしたら、ギースが担当だったのかも知れない。
ギースは確か、何でも出来るが器用貧乏というポジションだった。
しかし、『黒狼の牙』ではひとつに特化した人物ばかりだったため、彼は上手いこと一員としてはまり込んでいたらしい。
ギースも大変だったんだろうな、とルーデウスはしみじみするのであった。
「依頼もこれで達成ですかね」
「ああ、余裕だったな!」
「それは否定しません」
パウロの実力は、剣王に匹敵するものとなっている。
もはや世界でも上から数えた方が早いほどの強さだ。
そんな彼が油断なく依頼を受けたのだから、苦労せず達成出来るのも当然だろう。
今回に関しては、魔大陸を踏破したルーデウスがいるのだから尚更だ。
討伐証明の部位と、可食部に解体を終えたルーデウスは、そのままホワイトクーガーの遺体を焼き払う。
これで全ての後処理が終了だ。
後は帰るだけである。
「おし。じゃあ帰ろうぜ」
「……そうですね」
そうして、2人は雹の森を後にした。
――――
森を出てからの帰り道。
元々3日ほど掛けて来たのだから、帰りも同じくらい掛かるのは当たり前の話である。
日もすっかり沈んできたため、2人はキャンプの準備をして焚き火をつけるのであった。
「はは、久し振りの冒険で使い慣れてない筋肉を使ったから身体がいてぇや」
「情けないですね。もう歳ですか?」
「バッカおめぇ! オレはまだまだ現役だよ!」
そんな雑談をしながら、夕食を準備していく。
当然のようにパウロは調理が出来ないため、準備しているのはルーデウスである。
今回入手したホワイトクーガーの燻製を作りつつ、今から食べる分も作っていく。
元々ルーデウスもそこまで料理が得意な部類ではなかったものの、リベラルから教わったため必要最低限の調理は可能だ。
あらかじめ血抜きはしており、獣臭さを消すためにマスタードトゥレント擦り込んでいるため、調理中もそこまで気になる臭いはしない。
持参してきた鉄板に肉を乗せ、そのまま焼いていく。
もちろん、その他の調味料も持ち込んでいるため、それらで下味をつけている。
更にお米も持ち込んでいたため、そちらも炊き込んでいく。
帰りに肉を食うことを分かっていたため、行きしなでは消費せずに取っておいたのである。
これを焼肉と一緒にかき込んでいくのが最高に美味しいのだ。
「手際いいな。ギースを見てるみたいだぞ」
「まあ、あの人ほどではないとは思いますよ」
「いや、でもいい臭いだな……」
ある程度肉を焼けば、最後にリベラルに作ってもらった焼肉のタレを上からかけていく。
このタレは某黄金の味を再現しており、この世界で食べるにはかなり上等な味となる。
その臭いに釣られ、隣で見ていたパウロはヨダレを垂らしていた。
最後に炊き込み終えた白米を器に盛り、肉を乗せれば完成だ。
何の変哲もない焼肉丼だが、動いた後に食べるそれは堪らなく美味だろう。
「ルディ、お前料理人になれるんじゃねぇか?」
「本家には敵いませんよ」
そうして用意したご飯をセットし、ルーデウスは合掌して口にかき込む。
パウロも「ハフッ、ハフッ」と言いながら同じようにかき込んでいた。
作った側としては嬉しい光景である。
近い将来に、ソウルフードである卵かけご飯も食べてもらおうと思うのであった。
やがて食べ終えたパウロは、満足そうな表情を浮かべて腹をさすっていた。
「美味かったぜ。これからも毎日作ってくれよ」
「大変だから嫌です」
「ならよ、レシピをリーリャとアイシャに教えてくれよ」
「まあ、それくらいならいいですよ」
「よっしゃ!」
と言っても、この焼肉丼はリベラルの焼肉のタレで成り立っているため、レシピもクソもない。
そんなことをパウロに言っても仕方ないため、まあいいかと思うのであった。
「……ふぅ、ここまで快適な冒険は初めてだ」
「そうですか?」
「ああ、黒狼の牙でやってた頃は楽しかったが、今回は快適さが大きいな」
「俺としては、オッサンと2人旅だったのでむさ苦しかったですけどね」
「言ってくれるじゃねぇか」
その言葉に、パウロは肩を組んだかと思えば、そのままヘッドロックをしてくる。
魔術師であるルーデウスがそれから逃れる術がある訳もなく、そのまま痛めつけられるのであった。
それからしばらくもがいていたのだが、やがて解放される。
「ヘッ、それを言うならオレだって黒狼の牙のメンバーとやりたかったぜ」
「それだったら、俺もデッドエンドのメンバーで依頼をしたかったですよ」
そうして互いに睨み合っていたのだが、フッと同時に笑い出す。
「なぁルディ、今度はお前の嫁も連れて行こうぜ」
「それなら、俺も黒狼の牙のメンバーとしてみたいですね」
「おお、それいいな。いいぜ、タルハンドとギースも誘わないとな!」
そうして楽しそうに笑っていたパウロ。
だが、ふとその笑みは止まった。
ルーデウスはどうしたのかと思い、視線を合わせる。
「…………」
「父さん?」
「いや、わりぃ。そう言えばあともうちょっとだったなって思ってよ」
その言葉に、ルーデウスは頭に疑問符を浮かべる。
「もうちょっとって、何がですか?」
「リベラルが言ってた、ゼニスの治療の目安期間だよ」
思い返すのは、彼女から言われた目安時間だ。
まだ5年近い時間を要するが、それでも後5年もしない内に治療が完了する。
今でもそれなりに意思疎通を取ることは出来るが、それでもやっぱりゼニスの声を聞きたかった。
まだまだ時間はあるのだが、治った後の想像をよくしてしまう。
またブエナ村でのように過ごせるのかは分からないが、今よりもずっと感情豊かな姿は見せてくれるだろう。
もしもそうなった時、パウロにはしたいことがひとつあった。
「…………なぁ、ルディ」
転移事件によって家族はバラバラになった時は、再会することを目的にやってきた。
その次に立てた目標も、今日達成することが出来た。
――ルーデウスと、一度冒険したかったのだ。
浮かれてしまって情けない姿を見せたりもしたが、ここまでの時間はとても充実したものだった。
元々は、ルーデウスが大きくなったらしたいと思っていたことである。
色々と回り道をしてしまったが、その目標も果たすことが出来た。
後は、もうひとつの目標を残すのみだ。
「母さんが治ったら――今度は黒狼の牙で今日みたいな冒険をしないか?」
それが、パウロのしたいことだった。
転移事件によって多くのものを失ってしまった。
それでも、こうして元の形に戻りつつある。
それだけではプラスマイナスゼロでしかない。
だからこそ、そこから先の未来に思いを馳せるのだ。
そんなパウロの提案に、ルーデウスはポカンとした表情を見せる。
しかしそれも、一瞬のことだ。
すぐに笑みを見せて頷いた。
「――分かりました。母さんが治ったら一緒に行きましょう」
「言ったな? 約束だぞ!」
「もちろんですよ」
そうして、2人は未来の約束を交わすのであった。
見直し?知らない子ですねぇ…。
Q.何でパウロ初心者みたいになってるん?
A.作中で説明したように、息子と冒険者の活動をすることに浮かれていた&前衛なので動けるようにするためです。
Q.はぐれの赤竜。
A.この世界ではルーデウスが『泥沼』として冒険者活動してないので討伐されてません。しかし、誰も受けようとせず放置してるので冒険者たちに被害はない。
Q.ギースを普通に誘おうとしてるやん。リベラル捕まえるようちゃんと伝えたん?
A.当然の違和感でしょうが、わざとなので悪しからず。
Q.パウロの思い。
A.きっと、原作でもそうだったんじゃないかな、と思いました。せめて私の作品では彼の願いを叶えてあげたいです。勝手に作り上げた願いですけど。