色彩の花嫁   作:スカイリィ

7 / 7
エピローグ

「ランサー、あの家への仕込みは万全だな?」

「おうよ。並みの魔術師なら裸足で逃げ出すくれぇの加護を付けておいた。下手に手を出せば末代まで呪われる」

「ふむん。ではもうここにいる意味もないな」

 

 俺たちは荷物をまとめ始める。これからカルデアに帰還するにあたって、藤丸立香の家族へ危害が及ぶのを防ぐために様々な工作を施しておいた。秋葉原にある時計塔の日本支部にも根回しという名の脅迫をしておいた。

 

「しかしなぜなのでしょう」バスルームから着替えを終えたアルトリアが姿を現す。この部屋には更衣室なんてものはないから彼女はそこで着替えなどをしていたのだ。

「何がだ、セイバー」

「マスターの母君が見た、夢のことです」神妙な顔つきで彼女は述べた。「あれは夢というにはできすぎている。特異点の出来事をどうして見ることができたのか。やはり、何かしらの異能を持っているのでは」

「俺もそう思ってルーンで調べたけどよ、あの母親にそれらしきものはこれっぽっちも見つからなかったぞ」

 

 では一体、どうして、と二人の英雄は腕組をして悩み始める。

 

「なんだ二人とも、わからないのか」

「ああん?」

「どういうことですアーチャー」

「別に難しいことではないんだ。ただ彼女は、親として当たり前のことをしていただけなんだ」

 

 俺はそんな二人に言ってやった。それは実に単純なことなのだ、と。

 

「親として当たり前……」

「はははは!」

「なにがおかしいのです、ランサー」

 

 腹を抱えてベッドの上で転がるクーフーリンをアルトリアがにらむ。すると、彼は俺の方を見て、ニヤリと笑った。

 

「いやなに、親バカここに極まれりだと思ってよ」

「そういうことだ。しかし君たち二人にできなかったことだ」

「俺もこいつも最終的に殺しちまってるからなぁ。……おいセイバー、まさかまだわかんないのか?」

「あなたは、わかったというのですか」

 

 状況が呑み込めていないような表情のアルトリア。そんな彼女に対し、俺とクーフーリンは肩をすくめて顔を見合わせた。

 

「あー、こりゃモードレッドが可哀想だぜ」

「同感だ」

「な、なぜそこでモードレッドが出てくるというのです!」

「こりゃ筋金入りだな」

 

 喧嘩腰になる二人をよそに、俺はひとりごちる。

 

 

 そうだ、あの母親は当たり前のことをしていただけだったのだ。

 

 それは予知でも千里眼でも何でもない。ただの、親として当たり前のことをしていたにすぎない。奇跡も神秘もこれっぽっちもない。

 

 例え人類史と共に焼き尽くされようとも。

 惑星を貫くほどの光に姿を変えても。

 空間に漂う熱量に成り果てても。

 

 ただ彼女は、見守っていただけなのだ。

 

 

 自分の息子と、その花嫁を。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

青空の花嫁(作者:スカイリィ)(原作:Fate/)

浮気に嫉妬した息子の恋人が三行半を叩きつけて家出して、もふもふの小動物を連れて家に転がり込んできた件について。▼※これは「色彩の花嫁」の続編にあたる作品です。前作を未読の人は先にそちらをご覧ください。


総合評価:12066/評価:9.25/完結:9話/更新日時:2017年05月07日(日) 21:40 小説情報

Fate/sn×銀英伝クロスを考えてみた(作者:白詰草)(原作:Fate/stay night)

ひょんなことから遠坂凛が召喚してしまったのは、赤い外套の偉丈夫ではなく、平凡な黒髪の青年だった。首から下が役立たずと称された彼には、腕力がない、神秘もない、知名度もない。ないない尽くしのない尽くしで、絶望的な聖杯戦争が幕を開ける。遠坂主従の運命やいかに!?▼――力で戦えないのなら、唯一持っている頭で戦えばいいじゃない。▼警告:本作は登場人物が英霊となっている…


総合評価:23588/評価:8.94/連載:120話/更新日時:2016年05月29日(日) 20:05 小説情報

“黒”の紅茶《完結》(作者:山中 一)(原作:Fate/)

Fate/Apocryphaを取り扱った作品がないなと思って書きました。▼ケイローン先生は出てきません。代わりに紅茶さんが“黒”の陣営に召喚されます。▼一旦区切りましたが、気が向いたのでちょこちょことやっていこうかなと思いなおしました。▼更新は気まぐれになります。▼


総合評価:28452/評価:8.95/完結:52話/更新日時:2015年03月29日(日) 18:27 小説情報

数多の英雄を束ねる者(作者:R1zA)(原作:Fate/)

「俺がギリシャ最強?そんな訳無いだろ!いい加減にしろ!」▼目が覚めたらFGOの金髪ワカメに転生してた。▼ただし雷の権能が使えたし何か全能神に気に入られた。▼…何でぇ?▼これは原典から誰おまレベルで逸脱した金髪ワカ…イアソンに転生したよくわからん奴―――基(もとい)、ギリシャの勇者王伝説の物語である。▼AD.2022/11月26日:神話編、完結。▼AD.202…


総合評価:22526/評価:8.71/連載:33話/更新日時:2023年11月05日(日) 22:26 小説情報

【ネタ】故障してる千里眼持ち王子inブリテン王国(作者:飴玉鉛)(原作:Fate/)

年齢が原典に寄ったアーサー王伝説にて。全ての元凶はマーリンだった。▼限定的に未来のとある一般男性の生涯を見てしまい、多大な影響を受けたアルトリアの実子ロホルトが、現代日本的な価値観を持ったが故に藻掻き苦しむ話。


総合評価:23472/評価:8.99/短編:36話/更新日時:2023年06月11日(日) 10:36 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>