色彩の花嫁   作:スカイリィ

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エピローグ

「ランサー、あの家への仕込みは万全だな?」

「おうよ。並みの魔術師なら裸足で逃げ出すくれぇの加護を付けておいた。下手に手を出せば末代まで呪われる」

「ふむん。ではもうここにいる意味もないな」

 

 俺たちは荷物をまとめ始める。これからカルデアに帰還するにあたって、藤丸立香の家族へ危害が及ぶのを防ぐために様々な工作を施しておいた。秋葉原にある時計塔の日本支部にも根回しという名の脅迫をしておいた。

 

「しかしなぜなのでしょう」バスルームから着替えを終えたアルトリアが姿を現す。この部屋には更衣室なんてものはないから彼女はそこで着替えなどをしていたのだ。

「何がだ、セイバー」

「マスターの母君が見た、夢のことです」神妙な顔つきで彼女は述べた。「あれは夢というにはできすぎている。特異点の出来事をどうして見ることができたのか。やはり、何かしらの異能を持っているのでは」

「俺もそう思ってルーンで調べたけどよ、あの母親にそれらしきものはこれっぽっちも見つからなかったぞ」

 

 では一体、どうして、と二人の英雄は腕組をして悩み始める。

 

「なんだ二人とも、わからないのか」

「ああん?」

「どういうことですアーチャー」

「別に難しいことではないんだ。ただ彼女は、親として当たり前のことをしていただけなんだ」

 

 俺はそんな二人に言ってやった。それは実に単純なことなのだ、と。

 

「親として当たり前……」

「はははは!」

「なにがおかしいのです、ランサー」

 

 腹を抱えてベッドの上で転がるクーフーリンをアルトリアがにらむ。すると、彼は俺の方を見て、ニヤリと笑った。

 

「いやなに、親バカここに極まれりだと思ってよ」

「そういうことだ。しかし君たち二人にできなかったことだ」

「俺もこいつも最終的に殺しちまってるからなぁ。……おいセイバー、まさかまだわかんないのか?」

「あなたは、わかったというのですか」

 

 状況が呑み込めていないような表情のアルトリア。そんな彼女に対し、俺とクーフーリンは肩をすくめて顔を見合わせた。

 

「あー、こりゃモードレッドが可哀想だぜ」

「同感だ」

「な、なぜそこでモードレッドが出てくるというのです!」

「こりゃ筋金入りだな」

 

 喧嘩腰になる二人をよそに、俺はひとりごちる。

 

 

 そうだ、あの母親は当たり前のことをしていただけだったのだ。

 

 それは予知でも千里眼でも何でもない。ただの、親として当たり前のことをしていたにすぎない。奇跡も神秘もこれっぽっちもない。

 

 例え人類史と共に焼き尽くされようとも。

 惑星を貫くほどの光に姿を変えても。

 空間に漂う熱量に成り果てても。

 

 ただ彼女は、見守っていただけなのだ。

 

 

 自分の息子と、その花嫁を。

 

 

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