世界一初恋パラレル 想いさえも閉じ込めることができるなら 作:bui
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一緒に過ごすようになって知ったことは、律は人込みが苦手だということ。
いきなり触れら、びくっとして身を引くシーンを何度か見かけていた。
なので電車のラッシュでは疲れてしまうらしく、実際に律と学校への道なども何度も何度も練習して無事に学校までの道は覚えたものの通学時のラッシュに慣れるには少し時間がかかりそうだった。
学校が始まっても毎日青い顔をしている律に「疲れてる?」と聞くと律は「ダイジョウブです。」と答える。でもその顔はいつも曇っていてとても大丈夫のようには見えない。
単なる疲労だけではなさそうで心配なのだけど律は何を聞いても相変わらず「ダイジョウブです。」と答えるだけだった。
俺の乗る駅から学校まではたったの2駅、律は40分ほど・・・、長い道中を緊張して過ごしているのだろうと思うと心配で居たたまれない。いっそ週のうちの何日かは家に泊まったらいいのかもしれない。
そんなことをぐるぐると思いあぐねていたある日・・・。
朝俺が電車に乗ろうとすると勢いよくドアから飛び出して来た人物がいた。
驚いて身を引くとそれが律だと分かり、すれ違いざまに腕をつかむと律は「イヤ!」と身をよじって俺の手を振りほどこうとした。
「律っ!?」と大きめの声で呼ぶとハッとして上げたのその目には涙をいっぱい溜めていて、やっと俺だと分かったようで今度はうつむいて顔をばっとそむけたのだ。
「律?」
両の肩をつかんで顔を向けさせるけど、律はやっぱり苦しそうな顔をして目を合わせない。
よほど具合が悪いのだろうか?
電車は俺たちを置いて行ってしまったので、一旦ベンチの方へ律を連れて行くと、とうとう我慢が出来なくなったようで律はぽろぽろと大粒の涙を流し始めた。
ヒクヒクとしゃくりあげる律を通勤や通学の人たちが横目で見ながら通り過ぎていく。
こんな目立つところに居たら律はいい見世物だととりあえず家に連れていくことにして、通学途中で律の具合が悪くなったので休むと学校に断わりの電話をかけ、ついでに自分も今日は付き添うので休むと告げた。
普段素行が悪いわけでもないからだろうけど、取り立てて詮索されることもなくそれはあっけなく受理された。
家でも学校でも何かとルールルールと手順にも結果にもうるさいくせにそれでいいのだろか?まったく世の中は大人の都合で回ってる。
まあいいけどな。楽で・・・。
手ごたえのないやり取りに呆れるけど、それより律の方が心配だ。
荷物を持ってやって肩を支えながら歩くように促すと、律がまた「ダイジョウブです。」と言った。
俺にまで気を使わなくてもいいのに・・・。
律が気安く接してくれているように感じてはいるけど、やっぱりどこかで遠慮があるのだろうか。
確かに年も上だしまだ知り合って3か月しか経っていない。
でも律を心配する気持ちはだれにも負けないのに・・・。
そう思うと余計に律のことが心配になって一旦家で休んだあとは本当に病院に行った方がいいのかもしれないと思い始めてしまった。
家について律を居間のソファーに座らせてスポーツドリンクを手渡すと見上げた律の瞳が申し訳なさそうに揺れる。
「通学大変?」そう聞くと
「ダイジョウブです。」と律がまた言った。
堂々巡りだ、らちが明かない。
単なる疲れだけとは思えないのに律はなにも言わない。
ずっと住んでいたイギリスが恋しくなったのだろうか?もし日本が嫌だと言われたらどう引き止めたらいいのだろう・・・。俺では律の支えにはならないのだろうか・・・・
そう思うと急に悲しくなって「俺って頼りない?」とボツりと言葉を漏らすと律がハッとして俺を見た。
律は少しだけ迷うように目を泳がせたあとで、青い顔をさらに苦しそうにゆがめて「カラダを触る人がいるんです・・・。」とポソリとつぶやいたのだ。
「オレ、オトコなのに・・・・。そんなのナサケないし、ハズカシイ・・・。でも・・・、すごくイヤで・・・。」
「!?」
その言葉に相槌も打てないほど驚いて律の顔を凝視すると律がフイっとまた視線をそらせる。
「マサムネ、いやでしょ?こんなオレ・・・。ダカラ言いたくなかった・・・。」
律はぽつぽつと途切れさせながらも話を続ける。
「イギリスにいるときも上級生にイヤラシイことをされそうになったコトがあって・・・、人にさわられるのが怖いんです。だからニホンに来たのにまた・・・。オレ何がダメなんでしょう?」
悲しげな律にそんな馬鹿なことがあるわけない。律が悪いわけじゃなくてそいつらが悪いのに何で?そう叫びそうになって、人に触れられるのが怖いと言っている律なのに思わず思い切り抱きしめてしまった。
「律、律、そんなことで傷つかないで。悪いのはそいつらで律じゃないだろ?」
どこの誰かもわからないそいつらみんなに、殴ってやりたいほどの憤りを感じて律を抱きしめている手にさらに力が入る。
キラキラと人を魅了する笑顔の律をそんな風に追い詰めるなんて許せない。
「ごめん律。人にさわられるの嫌って言ってたのに・・・。」
背を撫でながら、なぜか自分が慰められているような気がして律にそういうと「マサムネは平気です。気持ち悪いのが残ってたところがマサムネに触られるとみんな消えます。」と律が言った。
なら全部触ってやる。律の気持ち悪いところを全部・・・。
「どこ触られたの?」
腕の中の律が少しだけ動いて俺の手をそこへ導いた。
背中から腰、そして手は滑り下りて柔らかい膨らみへ・・・。
胸の鼓動が耳元で高鳴る。これは俺の動機か?耳を胸に当てている律に聞こえてしまう・・・。
スルスルと撫でているうちにいつの間にか俺の手は律の誘導なく太ももをさすり、その内側にも伸びていた。
「あ・・・、」律が小さく声を上げたような気がした。声だったのか、息だったのか、でもその瞬間少しだけ理性が戻ってきた俺は自分のしたことを見返して「ごめん。」と律に謝った。
律は腕の中で真っ赤な顔でフルフルと身体を震わせている。
「こんなじゃ、律に嫌なことをした奴らと同じだった・・・。本当にごめん・・・。」
俺はそこで初めて自分が律を好きなんだと気づいてしまった。
弟とか後輩とかでなく、俺は律のことが愛しくて仕方がない。だから抱きしめて、キスして、律のすべてを欲しいと思ってしまったのだ。
「律が好きだから。キスしたい・・・。ごめん・・・。」
それは律にはそれはとても嫌なことなのだろう・・・。人混みが嫌いになるようなトラウマを過去に負って、今もまた電車で不埒なことをされて真っ青になるぐらいなのに。
後悔にギュっと目を瞑ると「マサムネ?」と律が俺の名を呼び、「ナンデ泣きそうな顔をしているんデスカ?」と律の細い指が俺の頬をさする。
律の緑がかった目が先ほどとは打って変わって真っすぐに俺を見ている。
「オレ、マサムネにはナンにもイヤナ気がしません。マサムネにkissされたいです。」
律の顔が近づいてぷっくりとした唇が軽く俺の唇に触れる。
「ヤッパリヤナ気持ちはシナイデス。」
律は少しだけ恥ずかしそうにそう言って、もう一度俺の胸の中に顔をうずめたのだった。