時刻は夜の11時半。周囲は暗くなっており、建物の光も少なくなっている。当たりを照らしているのは少ない街灯と月の光だけである。そんな中、とある建物の扉の前に3人が立ち止まっている。
「鍵は開いているな。」
「…それじゃあ、永守が先導して、その後にわたしと5pb.ちゃんが行く。OK?」
「OK…。」
「あ、あの…、気をつけて…。」
本来であれば、その建物にはアイエフと永守の2人だけで向かう予定だったが、突如5pb.もついて行くと言い出した。何か理由があっても間違っている事はやってはいけない。そして、自分がどういう気持ちを持っているか…それを伝え出来れば改心して欲しいと考え同行する事となった。右手にリボルバー、左手にフラッシュライトを持った永守が先に突撃し、その様子を開いた扉の影から見るアイエフと5pb.が覗いてみている。
「誰も居ないのか。」
中に入った永守は、周囲を見渡す。中は薄暗いが、電灯がある為目視可能なくらいは明るい。その周辺には、商品ラックと小さい木箱があり、如何にも“商品”と思われる大量の違法音楽CDが並べられている。その先にある机にはノートPCが置かれており電源が入りっぱなしになっているのが分かる。現在の部屋は安全と分かった永守は、二人に突撃可能の合図を出す。それを見た二人は部屋の中に入る。
「まさか、これ全部売り物なの?」
「そのようだ。ここに入荷分と売り上げ表がある。」
開いていたノートPCを見ている永守が、とある資料を開いている。彼が言った通り、そのデータには売り上げデータと入荷データと言った、POSシステムのようなソフトウェアとなっている。
「でも、これは動かぬ証拠になったわね。後は犯人を…。」
アイエフがそう言いかけた時、後ろから聞き覚えのある声がした―――――
――――――――――
「おい、てめぇら!開店前に入った挙げ句、商品に触るとはいい度胸じゃねぇか!」
「ひっ!?」
わたし達3人は声のしたほう…丁度後ろを向く。5pb.ちゃんだけは突然の声に驚いてしまったみたい。
「アンタは…!?」
「やはり、お前だったか。」
「てめぇらは昼の時の…。なるほど、嗅ぎ付けたって訳か。」
「あ、アイちゃん、永守さん。し、知り合い?」
「ちょっとしたね。CDショップの時に値段が高いとか罵倒していたのよ。それも5pb.ちゃんのCDの前でね。」
「5pb.?へぇ、まさか本物まで来るとはね。」
「ぼ、ボクの曲をコピーした上に、勝手に売ってるのは…貴方なの…?」
「如何にも。正規版が売れないのが不満か?」
「アンタ、1:3なのに随分と余裕ね。」
正直、この目の前に居る主犯が余裕面しているのが気にくわなかった。追い詰められているのになんなのよこの余裕は…。
「そうだな、確かに俺はピンチかもしれない。だがな、客は安い方へ見向きする。そして、俺みたいに儲けたい奴はごまんといる。ここは、氷山の一角に過ぎないのさ。例えここを潰した所で、俺と同じ意思を持った奴が始める、イタチごっこって奴だ。」
「だからって、見過ごすわけにはいかないわ。」
「はん、自分達の方が善人だとでもいうのか?これだから正義は嫌いなんだ。」
そう言い争っていると5pb.ちゃんが意を決したように男に言いかける。
「ね、ねぇ…貴方は、音楽が嫌いなの?」
「あぁん?好きに決まってるだろうが。」
「で、でも!ボクの曲だけじゃなく、皆の曲を…悪用してる…。」
「は?一流のアイドルが何を言ってるんだ。俺は大好きな音楽を、皆に届けてるだけじゃねぇか。いい曲を格安で手に入れる。それで買い手も、俺も、歌い手も名前が広がるから皆幸せ。それでも文句があるか?」
「何よそれ。貴方がやっている事は、アーティストを食い物にして自分だけが得してるだけじゃない!ただの不公平よ!」
「訳分からないこと言ってるのはそっちだぜ?商売ってのはお互いが得するからこそ成り立つ。格安で手に入るだけじゃない。無名のアーティストもそれで知ってもらえる。皆ハッピーだろ?」
わたしはこの男の事を理解する事が出来ない。確かに5pb.ちゃんの人気が落ちるようなことはしていない。とは言え、やっている事は到底許せない事だ。そんな時、黙っていた永守が喋り出す。
「なるほど、確かにアンタの言っている事は分からなくない。」
「え…?」
「な、永守…本気なの!?」
「へぇ、以外にも理解者がいるじゃねぇか。なら、てめぇもこのビジネスを広げる手伝いをしないか?」
「…冗談言うな。俺はアンタに協力するなんて言った覚えはない。それに、アンタは重大な事を忘れている。」
「なにぃ?」
「アーティストは、音楽を仕事としている。そして音楽CDの売り上げによって意欲だけでなく、新曲を作ったりライブの計画が出来る。今はアンタのやり方でもいいだろうが、何れは音楽業界が衰退し、アンタの好きな音楽が消えていく。それでもいいのか?」
「で、デタラメ言うな!てめぇの言っている事こそ言いがかりだ!」
「作曲だけじゃない。楽器のメンテナンスが出来なくなり、グループならその全員分の給料の駄々下がり…リストラかグループ解散だ。果たしてアーティスト達はそれで食っていけるだろうか。未来はあるのか。」
「い、いい加減にしろ!どいつもこいつも説教なんk…うぐ…クソォ!」
永守の言葉の後に反論をしようとした男が、突然と苦しみだした。
「な、なに…!?」
「どうしたのよ急に!!」
「あ、頭が…いてぇ…う、ぐうぉおおおおおおお!!」
―――――
男が急に苦しみだした途端、黒いオーラのようなものが男の背中から徐々に溢れていき形を成す。そして、男が倒れその隣に現れたのは、死神のようなローブとドクロのような顔をしたモンスターが現れた。
「ぐ、ぐおおおお…くそぉ、ゲイムギョウ界を乗っ取る計画が台無しだ!」
「きゃ、きゃあああああああ!!」
「も、モンスター…!?」
「どうやら、本体のお出ましだ。」
「よくも、よくも俺の計画を邪魔してくれたな!音楽CDで儲け、軍資金を集め、手始めにリーンボックスを乗っ取る計画を!!」
「アンタ、無関係な人を巻き込んだ上にそんな計画を…許せない!」
「だが、この姿を見られた以上生かしておくにh…ブベラッ!!」
そんな悠々と話しているモンスターに対して、俺とアイエフの蹴りが見事に顔面にめり込むようにヒットする。そして痛そうに立ち上がるが、既にふらふらな状態だ。
「き、貴様ら…これから、名前を言うところを…!慈悲はないのか…!」
「モンスターに慈悲以前に、アンタには恨みがあるからね。」
「あと、モンスターなら手加減はいらない。」
「ちょ、ま、タンmぎゃああああああああああああああ!!!」
俺とアイエフはそのモンスターに対して容赦のない蹴りを連続で放つ。悪に慈悲などない。
『成敗!!』
その内モンスターは力尽きてしまったのか、結晶片へとなり消えていった。
「お、終わったの…?」
「ええ、もう大丈夫よ。」
「ああ、後はこの男だ。」
モンスターに憑依されていた男がモンスターを倒し終えた後、暫く介抱することにした。介抱している最中に、アイエフの携帯に着信が入り電話に出る。
「…わかりました。永守や5pb.ちゃんにもそう伝えておきます。」
「誰から?」
「ケイブさんからよ。どうやら永守が行った違法CD製造場が本拠地であって、他に製造場はないそうよ。アイツの言っていたのはタダの脅しだったのね。」
「だが、再び同じ事が起きないように対策をした方がいいだろう。」
そうしていると、男が目を覚まし上半身を上げる。
「うぅ…、こ、ここは…?僕は確か、5pb.ちゃんの音楽CDを拾って、それを聴いていたはずじゃ…。って、5pb.ちゃんがなんでここに!!」
「気がついたか。そのCDに潜んでいたモンスターに操られていたんだな。」
「アンタ、自分のやっていた事は覚えてる?」
「あ、ああ…。幾ら止めようと思っても、体は言うことを聴かなかった。まるで悪夢を見ていた感じだよ。それでも、僕は違法CDを作った上に5pb.ちゃんだけじゃなく、他のアーティストにも迷惑を掛けてしまった。…謝って済むことじゃないですよね。」
「も…もう、こんなこと、しないよね?」
「も、もちろん!ここにあるCDは全部処分しますし、しても構いません!」
「…ベールに説得すれば、免罪にはなるか?」
「ちょ、永守何言ってるのよ。」
「本来の姿はどうかは置いといて、この男はただ操られていただけだ。拾ったCDを聴くのはどうかと思うが今のところ罪はないだろう。」
「ボクも、二度としてくれないなら…。」
「5pb.ちゃんまで…。」
「あ、あの、どういうことで…。」
「…別に許した訳じゃ無い。ただ約束してくれ。二度とこのような事に手を出さないと。そして、この事を後世に伝える事。もし同じ事をしているのなら、今度俺はお前さんに牙を向けることになる…。」
「は、はい!」
その後、ベールとの相談により今回の件はモンスターによる被害という事で収まり、男に関しては免罪となり、警備の強化をする方針へとなった。今後同じことが怒らない事を願いたいところだ。
――――――――――
違法CD販売事件を解決し、通常通り最後のリーンボックス職業体験をする事になった。今回の事件を経て、ケイブの所属するリーンボックス特命課の補佐をしたり、5pb.の次回開催するイベントに対しての準備の手伝いだったりというのをしている。一応5pb.から此方に距離をよってきたりもするが、まだまだ慣れないのか一定距離を置こうとする。というより、招待されているイベントに対しての準備をするってのも不思議な感覚である。
そして相変わらず最終日は、フリーという指示が出た。納期が近いからラストスパートDA!的なのはないようだ。とりあえず、最終日は適当にぶらぶらしつつ、ゲイムギョウ界のモンスターに関しての情報収集をすることにした。もしかしたら、モンスターが落とすアイテムが地球を救う為のヒントになるのではと考えている。そんな事をしつつ、少々遅い昼飯というとで、リーンボックスの喫茶店で外を眺める事が出来るカウンター席で、熱々のコーヒーを飲みつつ、リーンボックス特性のホットドッグを食べている。そんな時、隣の席…具体的には空いている左の席に誰かが座ったようだが、その客が俺に話しかけてくる。
「アンタ、ラステイションのギルド前に居た奴だな。」
「…お前は、あの時の…。」
そこにいた男は、以前ラステイションのクエスト報告をした後に、ギルドから出た際に俺に対して“人を殺した事があるな”と言った奴だった。
「リーンボックスの違法CD事件の解決に、一役買った男がいると聞いてね。それがアンタなのか確かめたかったのさ。」
「それを聞いてどうする。」
「…アンタに協力して欲しい事がある。」
「あの時いたもう一人と協力すればいいだろう。」
「今回の件は私情でね。彼女を巻き込みたくない。」
「それで、俺に頼んでどうする。」
「失礼だと思ったが、初対面の時、アンタは人を殺したような目をしていた。俺はそういう人を探している。俺の宿敵を殺せる協力者を求めてな。協力してくれるか?」
どうやら、この男も何かしらの問題を抱えているようだ。既に会話の内容からして物騒な事は避けられないのは確かだ。…どうも最近、面倒事に巻き込まれる事が多いな。
「…星占いでも見とけばよかったな。」
「なんか言ったか?」
「いや、何でもない。協力するかは話を聞いてからだ。」
「そうだったな、悪い悪い。では、話をしよう。…俺は人を探している。こういう奴だ。“エンデ”と名乗っている。」
「エンデ…だと…?」
俺は提示された写真と名前を聞いて眉間に
「知っているのか…!!」
「…俺も此奴には野暮用があってな。」
「となると、アンタは“転生者”か?」
「転生者?…いや、俺は転生者ではない。」
「なん…だと…?アンタ、特権とかそういうのは…!」
「声がでかいぞ。」
周囲に人は少ないとはいえ、こんなよくわからない単語で且つ物騒な話を大声で話すのは宜しくないだろう。
「わ、悪い…。………ふぅ、じゃあ、アンタは転生者じゃないのか。」
「ああ、俺は地球というところから来た。」
「地球…?ちょっと待て、俺も前は地球の日本で住んでいたが…。」
「…お前のいた地球は、こういうのは使えたのか?」
そう言って、俺は手の平を少し離れたティースプーンに向け、超能力のテレキネシスで掌に引き寄せる。
「手品か…?」
「…お前の所には超能力は無かったのか。」
「馬鹿な。アンタは転生者じゃないのにそんなのが使えるというのか。」
「俺がいた地球は超能力という魔法のようなのが当たり前のように使えていた。」
「じゃあアンタはどうやってゲイムギョウ界に来たんだ?」
「転送だ。訳ありだったがな。」
「…そうだ、まだ名前を聞いてなかった。俺はジンと言う。アンタは?」
「…獨斗永守だ。」
「獨斗永守…、それじゃあ、アンタが僅か数ヵ月でギルドランクAになった漆黒の風と言われている男…。」
「…二つ名は兎も角、そう言われている。」
兎に角、この男が探していた“転生者”だというのは十中八九当たっているだろう。尚且つ同じターゲットを探している。この男になら全てを話して協力を要求するのもいいだろう。そんな時、向こうも“転生者前の話”と“エンデを追っている理由”を話すという。
俺はジンに自分が居た地球の事、そして起きてしまった事、今の目的を全て話す。ジンも元居た地球の事、転生した時の出来事を話すこととなった。
「そうそう、俺ことジンの情報を知りたいのなら、登場人物紹介が更新されてるからそこを見てくれ!因みに、兄貴の紹介も更新されたから興味があったら見てみよう!」
「…兄貴って俺の事か?」
「どう見ても年上だろう?だったら兄貴でいいっしょ!こっちも気軽に呼んでも構わないからさ。」
「俺を信頼するに値すると思っているのか?」
「確かに、兄貴からは闇の力を感じる。でも、完全な闇って訳じゃない。一点の光がある闇…?」
「………。」
兎も角、お互いの過去と知っていることを全て話したのだと思う。お互い不運であり、共感するべき部分もある。どうやらエンデはゲイムギョウ界担当と考えていいだろう。そして子どものように気の向くままに混沌と破壊を楽しんでいたに違いない。ジンとはパイプを作っておいたほうが良さそうだ。相棒に近い日本一という女性とも繋がりを持てば、何かと役に立つ時が来るはずだ。
「今後の事で話をしておきたい。もう暫く付き合えるか?」
「…そういや、まだ昼を食べてなかったな…。俺は構わないぜ!」
「なら、奢ってやるから欲しい物を頼め。」
「マジか!じゃあこれとこれにするか!」
「それじゃあわたしはこれと、これと、これ!」
「分かった、追加注文するk…ん?」
俺は声のした方、具体的には俺の右側の席を見る。そしてその人物を見て俺は目を見開く。ジンもその人物を確認し目を丸くしている。
「ねぷ?どうしたの、そんなびっくりするような目をしてさ。」
そう、会話文からお察しだが、“ネプテューヌ”がさも当たり前のように俺の隣に座って注文をしているのだ。
「ね、ネプテューヌさん!?」
「…お前、何時からここに?」
「ついさっきだよ。…て、あれ?君と会ったことあったっけ?」
「あ、っと。これは失礼。えっと、俺はジンって言います。」
「ジン君ね。それで、えい君はどうしてジン君と話してるの?」
「彼もギルドランクはAでな。その関係で知り合って、協力関係を結ぼうとしてたわけだ。」
「へぇ、じゃあえい君の友達ってことだね!よろしくぅ!」
「あ、ああ、宜しく、お願いします。」
さっきと違って押され気味な反応をしている。基本的に女性相手が苦手なのか?そしてネプテューヌがジンに向かって質問攻めしていく。その質問に対しての反応は優柔不断と言っても過言ではない程に、直ぐに答えない感じだ。感情があったのなら、俺もこんな反応をしていたのだろうかと考えるが、考えても無駄だと思い考えるのをやめる。
そんな時、外から何か妙な視線を感じる。
「ん?どうしたのえい君。険しい顔してさ?」
「…視線を感じた。」
「視線?何処からだ?」
「あそこからだ。」
俺は正面にあるビルとビルの間辺りを指さす。
「うーん?あそこ?」
「…一瞬だけ感じたような?」
「誘っているかのようだ。」
「気になるなら行ってみる?」
「危険かもしれないぞ?」
「だからって兄貴、分からないままじゃ先へ進めないぜ。」
「お、気が合うね。えい君もここは大船に乗った気で行こうよ。なんたって、わたしがいるんだから!」
「…分かったよ。危険と感じたら逃げるぞ。」
そうして、俺達は店を後にしビルとビルの間、路地裏の方へ移動する。だが、入ったはいいが目視出来る範囲に生物らしいのは見当たらない。
「ねぇねぇ、えい君。本当に何か居たの?」
「気のせいだったんじゃないか?」
「…それが一番いいのだがな。」
「じゃあさ、折角だしこのままどっか行こうよ!」
「お前…仕事はどうした。」
「はて、何の事やら。」
此奴、絶対サボる為に来ただろ…。これはどう考えても帰ったらイストワールが有頂天待った無しだろう。そんな時だった。奥の方から光が見えた…まるで女神化した際に発生する光り方だった。そして此方に向かって明らかに殺意を持った視線を感じ、此方に何かが飛んでくる。
「(…殺気…!)クッ…!!」
『うわっ!!』
とっさの行動の為に、ジンの足に回し蹴りをしつつ、ネプテューヌを押し倒すような形になってしまった。
「大丈夫か…!?」
「え、えい君///」
「…顔を赤くしてる場合じゃ無いぞ。」
「そうだぜ…クソッ。」
ネプテューヌは大丈夫のようだが、ジンは避け損ねてしまったのか、肩に何かが刺さっている…“矢”だ。
ネプテューヌを立ち上がらせ、その矢が飛んできた方向に目を向ける。そして此方に向かって誰かが向かってくる。そこに居たのは、女神化したネプテューヌと同じような髪型をした緑髪で、女神化した後のバトルスーツに、女神化した後の瞳を持つ…いや、紛れもなく女神と同じ存在であろう人物が目の前にいる。此方に明らかな殺意を持っている事を除けば…。
【用語集】
○よくも、よくも俺の計画を邪魔してくれたな!
チャージマン研より、ジュラル星人の「よくも俺達の計画を邪魔する気だな?」のオマージュ。チャージマンはネタの宝庫です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
次回は開幕戦闘予定です。