教会に着いた頃には、ネプギアは完全回復という訳ではないが、一人で不通に歩ける程にまで回復した。それから買い出し組は準備側に加わり、会場設備や料理の準備をする。準備中、何故かネプテューヌ、ノワール、ブランの視線が妙に突き刺さる感じがした。恐らく、原因はネプギアを背負ってきてそのまま現れてしまったからだろう。ただ、変質者を見る目ではなく、表現しがたい視線だったな。何となく好意を持っているのは分かるし、フラグ的なのを立てているのは自覚しているが、視線が痛く落ち着けない為かいつの間にかガムを噛んでいた。そんなこともあり気づけば、外は夕方になっていた。
「皆さん、お待たせしましたわね、我が家のホームパーティーへようこそ、ですわ!」
テーブルには数種類の飲み物や料理がバイキング形式のように並べられ、人数分の皿とグラスが用意されている。何とか間に合ったが、肝心のベールは結局ネトゲに夢中になり準備に参加しておらず、“ようこそ”という発言に全員が呆れ顔だったり苦笑していたり、ブランとノワールが毒舌を言ったりと、歓迎ムードという感じではなかった。まぁただ、こうやってパーティー会場を用意してくれただけでも感謝すべきではないか?余談だが、ジンと情報交換をしたい為、パーティーに呼んでもいいかとベールに相談し、許可が下りたので連絡し、今日の夜ぐらいには教会に着くらしい。
「そういえば、買い出し中に立ち眩みしたんだって?」
「うん。でも大丈夫、もう平気だよ。」
隣にいたネプテューヌが、ネプギアの事を心配したのか気遣いをしていた。このこともジンとは相談しておいた方がいいだろう。話が進まないのか、ベールが咳払いをして注目を集める。
「さぁ、皆さん。遠慮なく食べて、飲んで、騒ぎましょう!今日の為に、とびっきりのゲームも用意しましたわ!!」
その言葉を聞いたネプテューヌが、興味津々に且つ今すぐやりたいのかソワソワしている。それを察したのか、説明するより体験した方が早いという事で、ネプテューヌとノワールを少し下がらせベールが映写機のようなものを設置する。
「それでは、華麗に戦って下さいまし!」
…戦う?バトル物なのだろうか。ベールが、ゲームコントローラーの起動ボタンを押すと映写機から光が漏れだし、“なんということでしょう”と言わざるを得ない光景が広がっている。なんと、パーティー会場が一瞬にして“森”へと変わった。
「あ!ねぷねぷが…。」
俺含め、全員が驚愕している中、コンパがネプテューヌとノワールがいた方に指を刺す。
「ねぷぅ!す、スライヌになってる!!」
「こ、これ、私なの!?」
二人が言っている通り、一目でネプテューヌとノワールだと分かる“スライヌ”に変身しているのだった。
「二人の動きを、特殊なカメラで読み取って、立体投影しているのですわ。」
シェイプシフターやメタモルフォーゼみたいな事を機械で実現しているのか。俺はその場で、天井があったであろう所に向けて高くコイントスする。すると、天井があったであろう地点を通過し、俺の手元にコインが舞い降りてくる。
「一体どういう技術なんだ…。」
「ふふ、中々の技術でしょう?」
中々どころではないだろう。
「んじゃあ、この姿でノワールと戦えばいいんだね!やい、ノワスライヌ、ねっぷねぷにしてやんよ!!」
「え!?な、なによノワスライヌって!!」
「ていやぁ!」
「のわぁっ!!」
スライヌの状態でネプテューヌがノワールに体当たりを仕掛けヒットすると、50Pという文字が浮かび上がったのが見える。なるほど、ポイント先取系なのか。
「私を怒らせたわね…、覚悟しなさい、ネプライヌ!!」
ネプテューヌの攻撃に切れたのか、ノワールもお返しにと体当たりをするが、華麗に避けられて逆さになってしまう。
「やーい逆さノワイヌぅ!そんな体当たりじゃ、わたしに当てようなんて10年早いよぉ!!」
そういって、二人の体当たり合戦が始まる。考えてみれば、スライヌって体当たりと溶けるぐらいしかできないよな…。攻撃方法も元のモンスターと同じ事しかできなくなるのか。
「因みに、もっと実践寄りのシュミレーションモードも用意してありますから、戦闘の訓練にも使えますのよ?」
「VRトレーニングも出来るのか。とんでもない技術だな。」
「もっと褒めてもいいのですのよ?」
なんというか、全員が料理よりもVRの方に興味津々になっている様子だ。まぁこんな凄い物を見せられたら仕方ない事だろう。かという俺もマニュアルがあるのでそれに目を通していたりする。
暫くマニュアルに目を通していると、面白い事に実践モードにはキャラクタークリエイトなんてものがあり、自分で作ったキャラやモンスターと戦う事が出来る斬新なシステムが盛り込まれていた。既存のモンスターに新しい能力を付与したり、パーツを取り換える事が出来るのは勿論、新たにパーツを組み合わせてモンスターや人物を創り、戦ったり戦わせることも出来るようだ。それもキャラクタークリエイトは妙にパーツが細かすぎて、これだけで時間泥棒になりそうなクオリティと感じた。需要があるかどうかはあれだが…。
「…ん?」
ふと、キャラクタークリエイトのデータを見てみると気になるキャラデータが紛れ込んでいた。ネプテューヌにネプギア、それに他の女神や候補生…これまた、精密な程作り込まれている。そして何故か、俺“獨斗永守”まで紛れ込んでいる。おまけに再現率も高いと来た。
「皆さんには内緒でお願いしますわ。」
「………。」
何時の間にか隣に来ていたベールが、俺に向かってそう囁く。あえてここは、こんなデータまで作られているのは聞かないでおこう。そんなアイコンタクトをベールとやっていた。…そういえば、忘れていた事が一つあったな。
「ベール、リーンボックスで保護する事になったあの少女はどうしている。」
「ああ、スミレちゃんの事ですわね?彼女なら、職員の一人として保護しておりますわ。わたくし達と同じ力も使えるから、リーンボックスの女神候補生として考えてたりもしますのよ。ただ、責任を感じているのか、パーティーには出たくないとずっと拒んでましたの。」
「そうか…。」
どことなく、ベールが上機嫌に、スミレという名の彼女の事を話す。とりあえず、保護される場所があるだけでも安心だな。時間がある時に会っておいた方がいいだろう。
―――――――――――
リーンボックスの一目が全くない港に一隻のエンジン付小型ボート、魔女のような格好をした女性と血色の悪いボロボロの衣類を纏った少年が立っており、その目先にある島を眺めている。その2人に向かって二足歩行の鼠が走って来ている。
「遅い!!計画を台無しにするつもりか!!」
「チュウ…これでも精一杯急いだっチュよぉ…。無理なスケジュールを組むオバハンがいけないっチュよ。」
「雇い主に向かってオバハン言うのはやめろと何度いったら…。」
「まぁまぁ、時間はまだあるんだし、少しは落ち着きなよおばちゃん。」
「貴様も、おばちゃん言うなクソガキ!…お前が“アレ”を探すと交渉してきたから多めに見てやっているが、無断で持っていくのは大概にしろ!」
「でも、僕が実験してきた通り、“コレ”が女神に有効だってのは分かって貰えたでしょ?」
「………。まぁいい、こんなところで腹を立てつつ説教しても仕方ない。ネズミ、例の物を早く寄越せ。」
「分かってるっチュよ。」
そういって、鼠が鞄から十字の禍々しい結晶を女性に渡す。そして、不敵な微笑みをしつつ、何かを確信したかのような雰囲気を漂わせている。
「くっくっく…、これで四つ揃った。今夜、ゲームの…いや、世界のルールが、塗り替えられる…。」
――――――――――
「………。」
「あ、あの…お、お疲れ様ですぅ。」
「アンタ、あんな変なので行くからそうなるのよ…ププッ、思い出したらまた…。」
「御もっとも、何も言い返せないな…。」
椅子に
そんな盛り上がっている中、扉からノックの音がした為ベールが扉を開ける。
「何ですの?パーティーの最中ですのに…。」
「ベール様、実は…―――」
そこにはリーンボックス職員がいて、パーティーの最中だった為に不満はあったが、職員の話を聞いたからか、ベールの顔が険しくなっていた。それに気づいたのか、ゲームを楽しんでいる一行も中断し、全員元の姿に戻る。ネプテューヌだけが妙に不満げだったのはまた別の話。
「何かあったの、ベール。」
只ならぬ様子だと察したであろうノワールが、ベールの元に行き詳細を聞こうとする。
「いえ…ズーネ地区にある廃棄物処理場に、多数のモンスターが出現したという知らせがありますわ。」
「ズーネ地区…。」
「リーンボックスの離れ小島ね。引き潮の時だけ、地続きになる…。」
ズーネ地区…詳細が分からない為、Nギアの地図機能で確認する。確かに、リーンボックスから離れている場所にある。ベールの言う通り、現在は廃棄物を処理する為の施設として使っており、人の出入りは殆どない場所だと載っている。
「モンスター位、何処でも普通にでるっしょ?」
「国が管理している地区ですから、出入りするのはまだしも、多数出現するというような事はあり得ませんわ。」
国が管理している場所、街中や管理施設等がある場所は女神の加護の影響により、モンスターが出入りしたり出没したりしないエリアの事だ。ゲームで言うなら、セーフエリアとエネミーエリアと言ったところか。ベールはゲームをやっていたPCの席に座り、ノートPCを取り出し調べている。
「でも、事実のようですわね。」
どうやら、そのズーネ地区にモンスターがいるのは事実であり、通常ではあり得ない事例が出てしまったようだ。しかし、不思議な事に俺は妙な胸騒ぎがしており、そのズーネ地区に行かなければならないと囁いている…。
「わたくし、今からズーネ地区に行ってきますわ。」
「わたしも行くよ!」
部屋を覗き込んでいたネプテューヌが、真っ先に同行すると言った。ただ、ベールは同行する事を望んではいないようだ。
「けれど…これは、わたくしの国の事ですから…。」
「こうしてわたし達がいるのも、何かの縁だしさ。手伝わせてよ。」
「また、お決まりの『“友好条約”を結んだ以上は仲間』って奴?」
「まーねー!」
「わたしも行くわ。誘拐事件の恩を返す、いい機会だから…。」
「よーし!じゃあ、3人で…」
「ま、待ちなさいよ!私も行くわよ!貴方達だけじゃ、どれだけ待たされるか分からないもの…。」
「皆さん…、分かりましたわ。では、4人で参りましょう。」
ブランの名乗りから、案の定というべきかノワールも同行する方針になり、4女神でズーネ地区に行く事となる。
「あ、あの!私も行きます!」
「え?…あ、アタシも!」
「わたしも!」
「わたしも…。」
ネプギアが同行の意志を示した途端、ユニ、ラム、ロムも付いて行くと言う。
「貴方達はダメ。遊びじゃないの。」
「え~?」
「ユニも当然、留守番よ。貴方まだ変身も出来ないんだから。」
「………。」
「ネプギアも、ここはお姉ちゃんに任せといて!」
分かっていたが、候補生は全員待機命令が出てしまった。だが、俺は行かなくてはいけない気がした為、席を立ち上がろうとする。するとベールからこんな言葉が発せられる。
「永守さん。今回は貴方も待機でお願いしますわ。」
「ダメか。」
「着いて来たいのは分かるけど。ベールの言う通り、貴方は残ってなさい。」
「本来であれば、わたし達女神が対応する問題。貴方の活躍は認めるけど、立ち位置はプラネテューヌ補佐…、貴方の出る幕じゃないわ。」
ノワールとブランが立て続けに厳しい意見を言う。するとネプテューヌも意外な言葉を言う。
「うーん、確かにえい君も居れば百人力だけどさ。偶には女神としていい所見せないとね!だから、ここはぐっと我慢して待っててね。」
「…分かった。」
「ああ、そうだ。はい、これ!」
唐突にネプテューヌがポケットから何か取り出して、俺に渡してくる。
「これは…?」
「退院祝いに渡す予定だったけど、忘れちゃってて。今渡すのもあれだけどね。でも、これでお揃いだよ!」
手渡されたのは、ネプテューヌやネプギアが首物にしている、白と紫色をしている色違いのネッグリングだった。何故か、ノワールとブランの視線が痛いが、俺は軽く頷き首に装備しようとする。
「…なんかピッチピチなんだが。」
『………。』
その場にいた全員が唖然したり苦笑してしまう。どうやらネッグリングは、俺仕様のサイズではなく、ネプテューヌとネプギアが付けているのと大差ないサイズの為、ゴムが妙に伸びきっており苦しい。仕方ないので、左手首に巻くように付ける。
「ねぷねぷ、気をつけるですよ?」
「大丈夫、4人居れば直ぐ終わるって!」
「上手くいくといいけど…。」
「ネプテューヌ…もう少し緊張感持ったらどうなのよ。そんな事言ってると、足下をすくわれるわよ?」
「そうですわよ。今回ズーネ地区に現れているモンスターの数は、普通ではあり得ない数ですのよ。」
「ネプ子、無茶してネプギア達を悲しませるんじゃないわよ?」
「まぁ、そこがネプテューヌのいい所でもあるんだろうがな…。」
「えい君、分かってるねぇ!じゃあ、そんなわけで、変身!!」
そう言うと女神4人が変身し女神化する。俺も半女神化が出来るからなのか分かる。確かにこの4人が女神化した時の雰囲気は鬼に金棒という所だろう。…それでも、この胸騒ぎが消えることはなかった。
「では、皆さん。参りますわよ。」
変身が完了し、準備万端という合図と思われる頷きを4人がする。やはり、心配なのかネプギアが再び立ち上がる。
「あ、あの、やっぱり私も…!!」
「ネプギア…。大丈夫、直ぐ帰ってくるから。終わったら連絡するわ。えい君も、お願いね。」
「ああ。」
そして、女神化した4女神はズーネ地区に向けて飛び立っていった。
――――――――――
4女神がズーネ地区に向かって飛び立ってから、数十分が経った。気分が晴れない為、ガムを噛みつつベランダで外の空気を吸っているが、このモヤモヤとした感覚は一向に取れない。ネプギアも同じ気持ちなのか、ベランダからネプテューヌ達が飛び立っていった方をずっと見つめている。
「ネプギアちゃん、お兄ちゃん、大丈夫?」
「え?」
「…ロムか。」
ロムが、心配そうな顔をしてネプギアの隣に来る。
「俺は大丈夫だ…。」
「私も、大丈夫だよ。ただ、何だろう…、お姉ちゃんが心配なの。」
「ネプギアのお姉ちゃん…あんまり強くないの?(そわそわ)」
「ううん、そんなことないよ。本気を出したらすっごく強いよ。こんな弱い私を、何時だって守ってくれるもの。…ただ、なんでだろう。今日だけは、胸騒ぎが…するの。」
「胸…騒ぎ…?」
どうやら、ネプギアも同じ状態のようだ。だが、一向に収まらずただ突っ立っていては何も始まらない。
「…中に戻ろう。アイエフがさっきから連絡している。何か情報を掴んでいるかもしれない。」
「う、うん。」
ロムの方を見ると頷いた為、3人でベランダからパーティー会場へと戻る…。
≪やぁ永守…、楽しんでるかい…?≫
「!?」
突如、脳裏に聞き覚えのある声が響く。…奴もテレパシーのようなものが使えたのか。俺は
≪…お前から連絡をするとはどういう風の吹き回しだ。まさかデートの約束をしたい訳じゃあるまい。≫
≪察しがいいね。ズーネ地区で面白いショーが始まろうとしてるよ。…廃棄物処理場で待ってるからね。≫
テレパシーが通じた上に、この胸騒ぎの原因が分かった途端、行動に移す為ベランダ側に向かう。それにネプギアは気づいたのか話しかけてくる。
「永守さん、中に入らないんですか?」
「…ズーネ地区に向かう。後の事を頼む。」
そう言って俺は、止めてあるバイクに乗る為、ショートカット含めベランダから飛び降りる。
――――――――――
永守さんの予想外な行動を目撃してしまったからか、私とロムちゃんは、目を丸くしながら固まってしまいました。そして、永守さんがバイクに乗ったのかエンジン音が響き猛スピードで走り去っていく音がした。その音を聞き、ハッと我に戻り中に居る皆に伝えなきゃと思い慌てて会場内に入りました。当然ながら、その様子をみたアイエフさんは驚いてました。
「ど、どうしたのよネプギア。何があったの?」
「え、永守お兄ちゃんが…。」
「ズーネ地区に行くって言って…凄い形相をしながらベランダから、飛び降りて…。」
『ええええええええええええええええ!?』
当然、皆さん驚きますよね。私もあの行動には驚くしかありませんでした。アイエフさんが深呼吸して、これから重要な事を話すよという雰囲気になっていました。
「いい、落ち着いて聞いて。ショッピングモールに居た鼠の事なんだけど。」
「何か分かったんですか?」
「見覚えがあると思って、諜報部の同僚に調査を頼んでおいたの。案の定、各国に指名手配されている要注意人物…基い、要注意鼠としてね。」
「ええ!あの鼠さん、悪い人だったのです!?」
「それも、数時間前にズーネ地区に船で向かったという事も分かったの。」
「それって、つまり…。」
「ええ、今回のズーネ地区にある廃棄物処理場の件は、何か裏があるって事になるわ。もし、何かあるなら、アイツ一人でも大丈夫だと思うけど、永守も危ないわ…。わたし、様子を見に行ってくるわ。今なら引き潮でまだ間に合うし…。」
「私も、連れて行って下さい!」
アイエフさんがズーネ地区に向かうと分かった途端、私は同行したいと口走っていました。
「ダメよ、ネプギアまで危険に晒す訳には…。」
「お願いします!永守さんが向かったことも、気になるんです!お願い、アイエフさん!」
「………。分かったわ。但し、危険だと分かったら直ぐ引き返すわよ。それでもいいのなら。」
「は、はい!!宜しくお願いします!!」
――――――――――
皆に見送られる形で飛び立ち数十分、ズーネ地区方面に向かって飛んでいるわたし達の前に、一つの島が見えてきた。
「…見えてきましたわよ。」
ズーネ地区の廃棄物処理場と思われる島が見えてきた。そこの陸にはリーンボックスで見られる機械系モンスターが、大小含め大量に群がっている。
「うげッ、うじゃうじゃいやがるぜ。」
「でも、数が多いだけで大した事のない奴らばっかじゃない。」
「確かに、これならえい君がいなくても問題ないわね。でも、油断は禁物よ?それに、万が一街に渡ったら一大事よ。ここで早めにーーーー!!」
わたしが言いかけた途端、陸上の地面から4足歩行の機械が4機現れた。
『九十九式戦車…!』
わたし含め全員がそういうと、その4機は此方に標準を向け、弾幕を張るように乱射してきた。でも、武器で防げる辺り、一発一発は大した威力じゃなさそうね。
「あのデカブツが真打か!」
「的に不足なしですわね。」
「おあつらえ向きに一人一体…競争ね!!」
「抜け駆けはさせねぇぜ!」
強敵が現れたせいか、全員が闘争心に火が付いてしまったらしく、一人一機という流れになっている。
「3人とも待って!ここは、皆で一体ずつ倒すのがセオリーじゃ…」
「腰抜けのセオリーね。」
ノワールが一瞬だけこっちをみてそう呟く。女神化の宿命なのか、どうしてこうなってしまうのだろうか。それに、変身すると皆妙に強気なんだから…。まぁでも…。
「…わたしもそうだけど!!」
わたしも、闘争心が燃えている以上、人の事は言えないわね。
「レイシーズダンス!!」
「テンツェリントロンペ!!」
「レイニーラトナビュラ!!」
「クロスコンビネーション!!」
九十九式戦車の猛攻を搔い潜り、此方の攻撃が届く範囲に潜り込み、それぞれ一撃必殺であろう一撃を加え、九十九式戦車は結晶片となる。順位としては、ノワールが一番、それに少し遅れてブラン、わたしとベールは同時だったけど、ベールが早かったというのを聞いて、呆れてしまったのかわたしがビリで結構と言っていた。あらかた片付いたからか、全員気が少し抜けてしまっている。…これがいけなかった。
「!?、ノワール、ブラン!!―――――ああッ!!」
『ッッ!?』
突如、地面から出てきたコードのような物体に、わたし達4人は拘束されるように縛られる。
「な、なんなの!!」
「ざけんなよ!」
「気持ち悪いわね…!!」
「くっ…こんなもの!!」
コードの縛りから抜け出す為、力一杯引っ張り引き千切ろうとする。コードに亀裂は入るが中々抜け出せない…なんて頑丈なの…!
「ふふふ…そろそろか。」
向こうの方から声が聞こえた。そこへ視線を向けると、一人の魔女のような人物が立っていた。…あれが、黒幕…!?
「女神達よ…、我が
何か宝石のような物をカプセルに入れ、それをわたし達の頭上辺りに投げてくる。すると、そのカプセルは頭上で浮遊し、下の三ヵ所から同じ光が見え、赤紫色のピラミッド型の結界のような物に囲まれてしまった。
「ああっ!!」
「こ、この力は…。」
「ど、どうして…力が…抜けていく…!」
ノワールの言う通りなのか、力が徐々に抜けていく感覚がする。それの影響か、拘束しているコードが一層強く縛られていく。
「あの石…あれを破壊すれば…!!」
あの石を破壊すれば、ここから抜け出せる。そう思いわたしは刀を頭上にあるカプセルに向けて投げる。けれど、カプセルに直撃する前に徐々に減速して、投げた刀が消滅した事に驚いてしまう。
「そんな…!!あぅ…!!」
「ふふふ…、シェアエナジーを力の源にしている者は、その石に近づけない…。それが、武器であろうが、女神でもな…。」
「ど、どういう事ですの…。」
不敵な微笑みをする女性に、ベールが問いただした。
「その石の名は“アンチクリスタル”。シェアクリスタルとお前たちとのリンクを遮断し、力を失わせる石だ。」
「アンチ…クリスタル…。」
そんな物があるなんて信じられなかったけど…事実、力が抜けていく感覚がある上に武器が消滅してしまった以上、あの黒幕が言っている事は本当だってことになる…厄介だわ…。そう考えを巡らせてる時、下からカメラのシャッター音が聞こえた。そして、驚くべき光景を目撃する事になってしまった…。
「うーん…いい写真ッチュねぇ♪。これは世界に大旋風を巻き起こすッチュ。」
「ふーん。この石にいたら、例え女神でも人並に堕ちるんだね。」
そこに居たのは、マスコットキャラとも言える鼠のようなのと、数週間前に、リーンボックスの裏路地でえい君と激闘した、血色の悪い少年“エンデ”がいた。
「やぁ紫の女神様、お久しぶり。それ以外は初めましてかな。」
「こんな事…ただじゃ済まさないわよ、直ぐにぶっ飛ばしてやるんだから!!」
「さぁてどうかな?アンチクリスタルの中では、女神は力を失っていく。お前たちに勝ち目は…――――ん?」
突如、後ろ側から銃声と猛スピードを出しているようなエンジン音が聞こえた。そして、そこに一台のバイクが飛び出るかのように出現し、着地する。見覚えのある服装、サングラスにトラベルハット、左手に銃を持っている男性が、凄い形相でバイクから降りる…。
「え、えい君…!!」
【用語集】
○わたしに当てようなんて10年早いよぉ!!
元ネタは、バーチャファイターの結城晶の台詞「10年早いんだよ!!」。CVは、ポケモンのロケット団のコジローで有名な”三木眞一郎”さんなのだが、初代がまさかの”光吉猛修”さんだったのには驚きです。
○まるでカカシですなぁ
映画「コマンドー」の名(迷?)台詞の一つ。あの映画の吹き替えセンスは輝いている…。因みにネタを知ってるだけで映画は見たことがない。
○[文字]www
言わずともしれた、笑いを表現する時に表現する”(笑)”と同じ意味を持つネット用語の一つ。文字の後に付ける事が大前提となる。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
リーンボックスに出てきたVRに独自設定を入れてみました。所謂、ボクの考えた最高のVR的な奴ですかね。リーンボックスならやってくれる、そんな気がしたので思い切ってこうしました。