超次元ゲイムネプテューヌ~闇夜の円舞曲~   作:KeyMa

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Scene67 七賢人の刻限~Raid~

 

 

【プラネテューヌ:教会】

 

「うわーーん!!やだやだーーーーー!!えいえいー、えいえいー!!」

「こら、ひとの後ろにかくれないのっ!」

 

…俺は、イストワールの噂で聞いたというプラネテューヌとラステイションの間ら辺で、七賢人が定期的に活動しているという場所へ足を運び、調査と言う名目で現場へ行ったのだが、結果としては、噂は噂だ。誰かが入った形跡はあるが、普段人が立ち入ろうとしない場所であり、小屋はあるが放置された物件であり何かが盗まれた形跡もない…全くの無駄足だった。でだ、報告の為にプラネテューヌに足を運んだのだが、扉を開ける前から騒がしく、中へ入った途端、ピーシェは俺を見るや否や一目散に寄ってきて後ろに隠れるのだった。…前回からそうだが、“エース”と名乗っても“えいえい”と呼ばれる。子どもだからこれは仕方ないのかもしれないが、この件には目を瞑っている。というか、またしても女神全員が揃っているのだが…。

 

「あ、エースさん、戻りましたか。」

「何事だ。…お前の仕業か?」

「ちがうわよ。ひとのせいにしないでよ。」

「えっとねぇ~、ピーシェちゃんが走り回ってぇ、壁にぶつかっちゃったの~。」

「…あれか。」

 

状況を見る為に周りを見渡す。その中で一人、異様な物を持って部屋に入ってくるのを見る。当然、それを見た全員がギョっとするのは言うまでもない。ピーシェは、壁に激突したくらいでは泣かないとは思う。子アイエフの言う事が正しければ、走り回って激突で大泣きしたとは考えにくい。そうなれば、原因は別の所にあると言える。その一つが、子コンパが持っているアレだろう。元居た超次元のコンパが持っていた“巨大注射器”の小型バージョンだ。

 

「ぴーちゃん、にげたらだめですー。これを、おかおにさせばなおるですー。」

「わーっ!!やだ、やだっ!おちゅーしゃ、やだーっ!!」

 

今のピーシェは何ともないのだが、激突した時は顔が赤くなっていたという。それで、ナンデモナオシと言う液体薬を投与すれば治るよと…ちなみに話によると、あの注射器を取り出したのは二度あるそうだ。それ以来、普通の注射でも、見ると現在のように怖くて逃げだそうとするらしい。

 

「いやいやいやいや…あんなの、大の大人でも腰を抜かすわよ。」

「というか、何処から出したのよあんなの…。」

「流石に大きいのは大歓迎ですが、あれはノーサンキューですわ…。」

「そもそも、私も何であんなのがここプラネテューヌで売っていたのか、知りたいくらいなのですが…。」

「あんまり怖がらせちゃだめだよ~。だからぁ、それは没収~。」

「え~、どうしてですか~?」

 

とまぁ、プルルートによって注射器は回収されるのだが、子コンパは納得いかない様子。それをナナが“自分がされたらどう?”と言い、“こわい”と回答。一応はそれで納得はしてない顔はしているが、収集はついた模様。…さて、後は張り付いているピーシェの恐怖心を無くすことだ。

 

「…ほら、怖いのは無くなったぞ。だから離れてくれないか?」

「もう…おちゅーしゃ、ない?」

「無い。だから、セミみたいにしがみ付くのを解いてくれ。」

 

“ホントに?”と涙を拭いながら周りを見ると、無いのを確認してピーシェは泣き止んだ。…のはいいのだが。

 

『ブッ!!』

「わーわー!そんな事で吹かないで下さい!!Σ(゚ロ゚;)」

 

ピーシェが離れたのを全員が見ているのだが、女神三人が思わず飲んでいる飲料水を吹き出し、“プププッ”と笑いをこらえる表情をしている。あれだけギャーギャー泣いて、鼻水も出しつつしがみ付いてた。しかも、身長的に丁度良くない位置でもあった。

 

「…oh…。」

「あはは!!えーす、おもらししたみたいー!!」

「わー、たいへんですぅ!」

「えー君が大変な事にぃ~!」

「そんな事言っている場合ですか!!直ぐタオル持ってきますね!!ε”(ノ´・д・)ノ」

「あと、着替えも用意した方がいいかと…。」

 

毎日という訳ではないが、神次元のプラネテューヌは超次元のプラネテューヌ並みに賑やかになっている。

 

「…あの、いい加減皆さんお仕事を成されては…(;´-ω-`)」

「ふふっ、多少遅れが出ても、心配ご無用ですわ。準備が整えば、この大陸くらい一気に…。」

 

ここまで仲良しムードだったが、このベールの言葉がトリガーになってしまったのか…

 

「今の言葉、聞き捨てられないわね…。」

「そうね、天下のラステイションを相手にデカい事言ってはね。」

「…は?何時からあなたが天下になったのかしら?」

「でも、現実的にそうでしょ?実際のシェア率は、ラステイションが断トツなのは確かなのよ。」

 

そして止まらないノワール節。初期戦略から失敗した国、他国を視察したのに生かし切れていない国、現状維持で留まっているぬるーい国…。兎に角、他国の失敗談、痛い所を付いていく。それも実際に目にしている上に事実なのは確かなのだが、歯止めが利かない。

 

「…てめー、あんま調子に乗ってんじゃねーぞ…。」

「…そう余裕ぶっていますと、足元をすくわれますわよ?」

「はいはい。寧ろ私からしたら、やってみろって感じだけど?最も、ステルスが出来てもハッキングが出来ないんじゃ、私の国はそう簡単に崩せはしないわよ。」

「………。」

「凄い自信ですね…。」

「ノワールちゃんが、イヤな子になってる~…。」

 

そう言いつつ俺の方をチラッと見る。ルウィーの元大臣ことアクタイジーンの情報を盗んだことは評価に値するようだが、確かに機械のハッキングは習得していない。それを見越しての強気発言なのだろうか。

 

 

 

――――――だが、今回は平和的に終わることはなかった。

 

 

 

Prrr…Prrr…

 

「あら?教会の電話が…。」

「私が出ますよ。」

 

教会に電話が来るのが珍しいのか、イストワールが驚きつつも電話の方へ向かうも、ナナが対応すると言い出し、受話器を取り対応する。

 

「…ノワールさん。ラステイションの教会からお話があると。」

「私に?今日は1日オフだって言ったのに…。」

 

1日オフ…今日はずっとプラネテューヌに居る気だったのか?…と心のどこかで叫んでいたが、ノワールの表情が急変する。

 

「な、なんですって!?国内のネットワークがぐちゃぐちゃ!?…ああもう!わ、分かったわ。す、直ぐ戻るわ!!…た、大変よ!わ、私の国で…。」

 

最初こそ真剣に話を聞き、折角の休みが台無しという表情だったのだが、今やアワアワと落ち着きが感じられない、一種のパニック状態へとなっている。

 

「あらあら…早速、足元を救われましたわね。」

「…見事に天狗の鼻を折られたわね。」

「う、五月蠅いわねっ!!こ、これはきっと七賢人の仕業に違いないわ…。」

「まだ、七賢人の仕業って決まった訳では…。」

「…だが、ここ数年は沈黙していた。女神を陥れる準備が出来たのかもな。」

「あなたも悠長に分析してる場合!?…もういいわ。これくらい、私一人で解決できるんだから!!」

「ま、待ってください、ノワールさん!!」

 

ナナの制止を無視し、ノワールはプラネテューヌ教会から慌てて出ていく。確かに、ここの世界のネットワーク、システム全般が、超次元に比べると一世代前という印象を感じる。それでも、自信満々に言っていたノワールの城壁を破るというのなら、相手が一枚上手という事になる。

 

「い、いいのでしょうか?」

「少し調子に乗り過ぎたツケが回ったのよ。あれくらい、いい薬よ。」

「そうですわ。一度痛い目を見た方が、目が覚めますわよ…。」

「なんか~みんな言ってる事が腹黒だよぉ~?」

 

っと、私には関係ないと言わんばかりに、他人事のように話していたが、再び教会の電話が鳴り響く。

 

「あれ、また電話ですか?今日は本当に珍しいですね。(´-ω-`;)」

「あ、出ますよ。」

 

そう言いつつ、ナナが受話器を取る。連絡先は、ルウィーからであり内容を聞き受話器を置きブランに内容を伝えようとした時、立て続けに電話が鳴り響く。今度はリーンボックスからとの事…どうやら一国を狙った訳ではないらしい。

 

「内容を伝えます!ルウィーの教会で、大暴れしている何者かがいるそうです!リーンボックスでは、多数の未確認モンスターが出没とのことです!」

「えっ…!?懲りずに、またわたしの国に手ぇ出すとは…。」

「なんですって…!?わたくしの国が二度も襲撃を…!?」

「ばいば~い、またねぇ~。」

 

ブランとベールも自国の問題を解決すべく、プラネテューヌの教会を後にする。プルルートは相変わらず呑気なようで…。不思議な事にプラネテューヌには特に報告がないのが、また不気味で仕方ないが…。

 

「仕方ありません…現状、プラネテューヌに報告がない以上、他の国の問題を解決するのが先決ですね。私、ノワールさんが心配なので、今からラステイションに向かいます!」

「ナナちゃん、行動が早い~。」

「何を呑気な事、言ってるんですか。…まさか、プルルートさんは自宅警備員と言いつつ、お留守番と言う名の御昼寝をする気ですか?(´・д・`)」

「ぎくぅっ!!」

「はぁ…ナナさんの言う通り、プラネテューヌは現状無事なら、他国の女神を助けに行くべきですよ。」

「えぇ~…。」

 

どうも、プルルートは乗り気ではない様子。とは言え、置いていくわけにはいかないのも事実。…リーンボックスに向かう予定だったが、まずはプルルートをルウィーに送って、リーンボックスに向かう事にする。その事をイストワールに伝えるが、やはり心配されてしまう。

 

「なんだか、凄く不安ですね。実際はエースさんか、ナナさんが同行してれば安心できるのですか…。(´□`川)」

「むーん。あたしだってぇ、やる時はやるんだよぉ~!」

「普段の行いを見たら、そう見えないからです。┐( ̄ヘ ̄)┌」

「ぷる~ん…。」

「………。分かった。ルウィーの件を解決した後、ラステイションへ送り、俺はリーンボックスへ向かう。」

「…出来れば、その件が解決したら一度戻ってくれると助かります。(。-`ω-)」

 

恐らく、ネプテューヌと同じくやれば出来る子なのだろうが、普段の行いを見ていたら信用性は低いのだろう。それが、一度戻ってきてほしいという事なのだろう。効率は悪いが、こればかりは仕方ない。プルルートをプラネテューヌ職員が用意してくれたバイクの後ろに乗せ、ルウィーへ向かう事にした。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「ねぇねぇ~。」

「なんだ?」

「えー君の携帯にあった子達ってぇ、どんな子なのぉ?」

「…またその話か。」

 

運転中に、後ろで寝ていたと思っていたら突然の質問。それも、以前に子アイエフが勝手にいじっていた際に見た、何故か写真のデータ内に入っていたネプテューヌとネプギアの写真。写真機能を使った記憶も、撮った覚えもないのだが、事実写真データ内にあるという事は、“忘れるな”という意味を込めてのお告げか何か…。今まで、二人に関しての話ははぐらかしてきたが、どういう訳かこの時は自然と口が開いてしまった。

 

「…恋人でも、命の恩人でもないが、貸し借り抜きに信頼し合っているのは確かだ…。プルルートと同じ、プラネテューヌの女神をやっている。」

「へぇ~、あたしと同じ国なんだぁ~。」

「前に話したように、別次元のだがな…。」

「ほへぇ~。あたしも、会ってみたいなぁ~。」

「………。今更だが、何故寝間着のままなんだ。」

「ん~?この方がぁ、動きやすいしぃ。直ぐ寝れるからかなぁ?」

「………。」

 

会ったら会ったで、色々カオスな事になりそうだが、別次元へ超える技術や技法がなければ、実現不可能だ。普段は聞き返さないが、質問し返す内容もあれだが、ネプテューヌ並みにずぼらというかなんというか…。そんなこんなでルウィーに到着する。

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

【ルウィー:教会】

 

ルウィーに到着するが、嵐の後の静けさというよりは、完全に後片付けと思う程、教会の補修作業に集中するルウィーの職員達の中にブランが居た。

 

「ブラン様。各階層の補修作業が完了しました!」

「…ご苦労様。内装は後にして、そのまま外の補修を優先ね。」

「ブランちゃん~。」

「あ、プルルート、エース。来たのね。」

「七賢人を退いたのか?」

「そうね…この様子じゃそう思われても仕方ないわね。」

 

どうやら、倒した訳ではなさそうだ。まるで何処からどう話せばいいのか、と悩んでいる顔をしている。

 

「立ち話も難だし…と言いたいところだけど、見ての通り内装はまだまだ時間がかかるわ。立ち話で悪いけど、いい?」

「うん、お話出来るならいいよぉ~。」

 

プルルートの返答に対して、俺はブランの質問に対し縦に頷く。話によると、ルウィーにはコピリーエースが再び現れ、清々しい程に破壊活動をしていたと言う。職員も阻止しようにも力の差がある上に、交渉にも全く応じなかったと言う。ところが、ある職員が“幾ら壊しても大歓迎”という一言を聞いたコピリーエースは、どういう訳か教会の破壊を止め、幾ら壊しても大歓迎の方へ案内してほしいと言い、そっちに行ったと言う。問題は、その職員も咄嗟に言った事と、そのあまりの出来事に上の空のようになってしまったからか、自分が何処へ行っていいと言ったか覚えていないと言う。それで、コピリーエースを案内した職員が帰ってくるのを待っていると言う。そんな話をしていると、コピリーエースを案内をした職員が戻ってきた。

 

「ぶ、ブラン様。た、大変お待たせしました!」

「そこまで待ってないわ。寧ろ、あなたが無事に戻ってきた事に安堵しているわ。…それで、戻ってきて早速だけど…。」

「は、はい。その、七賢人と名乗った人…と言うより機械は、ここから北にある採掘所へと案内しました。」

「成程ね。確かに、そこなら幾ら壊してもこっちとしても大歓迎ね。」

 

そこから職員曰く、見張りは付けているが採掘員の評判は良く、採掘速度も通常業務の5倍速くなったと言う。だが、当のブランはそれで落ち着いてはいないようだ。

 

「とは言え、教会を壊してくれた落とし前は付けて貰わないとね。…あなた達も来る?」

「…プルルート、お前はどうする。」

「あたしは行くよ~、行く行くぅ~。」

「なら、決まりだ。」

「分かったわ。あのヤロー…、袋叩きで徹底的にぶっ壊してやる…!!」

 

…これは、どっちが悪役になるか分からないが、兎に角コピリーエースが七賢人である以上、戦いは避けられないのだろう。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

【ルウィー:採掘場】

 

「そぉれ!もういっちょぉ!!」

 

ドゴーンッバラバラ…

 

「ヒューっ、流石(さっすが)っすね!惚れてしまう程のパワーだぁ。」

「ああ!!コピリーさんが来て、本っ当大助かりだぜ。」

「ほんとほんと!最初はびっくりして腰が引けそうになっちまいそうだったけど!あ、次そっちお願いしやす!」

「おーけぇ!任せろぉ!!」

 

「………。どういう…事なの…?」

 

街はずれで且つ整備が施されていないからか、若干モンスターが住み着いている状況ではあるが、基本的に立ち入り禁止棒で区画されている為、モンスターはあまり此方に襲ってはこない状態ではある。…現場に近づくにつれ、岩を打ち砕く音が大きくなっていく。その力強い衝撃音もあり、近場にはモンスターが全くいない。そして、現場を見たブランは、ある程度は想定していただろうが、コピリーエースが完全に現場の採掘員達と打ち解け、且つ仲睦まじくやり取りをしている。まるで、居なくてはならない存在へとも思えるように…。そして、此方がボケっとしている間にコピリーエースは語る。自分は七賢人であり、何れここに来るであろう女神と対峙しなければならないと。採掘員達は引き留めるも、七賢人の仲間を簡単に裏切ることは出来ないと…。

 

「友情よりも、組織を優先するか。」

「むぅ!!お前はあの時の…それに、女神も一緒か!!」

 

二人が棒立ちしている中、コピリーエースに話しかける。この反応からして、やはり戦わなければならない予感はしたが、交渉はしてみる。

 

「…できれば、お前とは戦わずして七賢人の情報が欲しいのだが?」

「それは出来ない相談だ。確かにあいつ等とは上手く噛み合わない時もあったけど、短いながら同じ志を持った同士…幾ら俺様でも、他の奴らが白旗を上げてないのに、俺様だけノコノコと白旗を上げ、仲間を易々とは売ることは出来んな!!」

「それを聞いて安心したわ。自分の立場を覚えていてくれて…。わたしの教会をめちゃくちゃにしたこと、その身を以て償って貰うわ。」

「望むところ!!最も、俺様は負ける気など微塵もないけどな!!」

 

お互いに睨み合い、ブランは武器を構え、コピリーエースは拳を構える。合図が出れば今すぐにでも互いに飛び出そうという所に、ルウィーの採掘員達がブランの前に立ちはだかるように出てくる。

 

「ま、待ってくださいよ!ブラン様!!」

「コピリーさんは、決して悪い人では…!」

「そうっすよ!現に俺達、コピリーさんには凄ぇ感謝してるんっすよ!!」

「だぁーっ!!てめーら!!ルウィーの国民であろう者が、七賢人と馴れ馴れしくしてんじゃねー!!」

「(…お前が言うのかそれを。)」

 

心の中でそう叫びながらも、やはり自国民には手を出せない為にブランは後退りする。対するコピリーエースも、採掘員達を心配してか、“そこを退いてくれ”と譲る気はないようだ。

 

「だぁー!!やり辛れーなっ!!さっさと始めんぞ!!オラ、おめーらも変身しやがれ!!」

 

採掘員とコピリーエースの友情に対して、完全にキレたブランが女神化をし、それに流れるようにプルルートも女神化する。

 

「…仕方ない。勝った方が、負けた方の言う事を聞くか、潔く腹を切るか…。」

「お、その案には乗ったぞ!!」

「それはこっちのセリフだ。てめーが勝つとは思えねーけどなっ!!」

 

ここまでスイッチが入ってしまったら、もう止めることは不可能だろう。白黒つけるで済むとも思えないが…。

 

「でもぉ、今の状態だとやり辛いし…えー君は、あの人達を守ってくれない?」

 

そんな時、俺も参戦しなければならないのかと思った矢先、プルルートが俺に対して提案してくる。随分と珍しい事に、ルウィー国民である採掘員を守ってほしいと…。確かに守りながら戦うよりは、周りを無視して全力で戦える方が、敵味方共に、不服も不正も無くなる。

 

「珍しい事を言う…。」

「あらぁ、失礼ねぇ…。あたしだって女神よぉ?無抵抗の人を傷つける事は流石にしないわよ。最も、コピリーさんが負けてぇ、彼らがどんな顔をするかは興味があるけどぉ?まぁ、あたしは元々、正義の味方ってガラは似合わないとは思ってるしぃ。」

「………。」

 

やはり…というべきか、優しくしておきながらSっ気を出す。それを聞いてしまった採掘員は、流石に“え?”という表情をしている。そして、ブランから防御壁を作り出す呪文書を渡され、これである程度は守れると言う。

 

「友よ、俺様に力を与えてくれ…行くぞ、女神!!」

 

 

 

 

 

―――――と、雄叫びを上げつつ、女神に特攻し激しい戦いを繰り広げるのかと思いきや、プルルートとブランの不思議と言うほどに息の合った攻撃に、コピリーエースは翻弄されている。最も、戦う場所が採掘現場であり、キャタビラでも足場が悪く、玩具工場とは違いバトルフィールドが狭いのもあり、思うようにコピリーエースは動けていない。プルルートの蛇腹剣により、電撃と絡みによる動きを封じる攻撃。ブランの、実直ながら一撃を重視した戦斧の一撃によって、徐々に押されていく。

 

そして、勝負は思ったよりも早く着く。渾身の一撃を込めた戦斧の一振りが、コピリーエースの顔面を捕える。

 

「ぐあああああああっ!!…は、ははは…もう、動けん…負けちまったか…。だが、悔いはない…。女神と、正々堂々と戦い、晴れ晴れしく散れるのだから…!」

『コピリーさん!!』

 

コピリーエースの様々な場所でショートが起きているのか、火花と電流が飛び散る様に出ている。そして、勝負が着いた瞬間、採掘員達が防御壁を無視して、コピリーエースの元へ集まっていく。…と言うかこの防御壁、外側のあらゆる攻撃は防ぐのに、内側は素通りするのか…マジックミラーのようなものか。

 

「コピリーさん!!誰か、早く救急箱…いや、工具箱を!!」

「どうして、どうしてこんなことに…!!」

「これも女神が…いや、ブラン様は、何も悪くはない…でも…。」

 

「…なんだかぁ、コピリーさんが、可哀そぅ…。」

「可哀そう…じゃねー!なんで、勝ったのに胸糞悪い空気なんだよ、クソがぁ!!」

 

採掘員からしたら、尋常じゃない程短期間ながら、友情を築き上げ、その友情をぶち壊されたんだ。傍から見れば、友達になった人物が殺されたんだ…互いにブチギレ案件のようなものだ。

 

「お、おい、何してんだよ?」

「直せるか見るだけだ。」

「はぁ?直すだぁ!?」

 

“何考えてんだ!”と後ろからブランにそう言われるも、こちらとしても七賢人の情報を聞きたいところであり、データがあればそれを引っこ抜くのも考えている。

 

「お、おい…大丈夫なのかよ、あの人…。」

「ねじ回しもないのに、ねじ開けたぞ…!!」

 

超能力のキネシスでねじを回し、機械修理技能という感じで、機械版が見えそうなところを覗き見る。ちなみに、今は火花が飛び散ってないあたり、システムが危険と判断されたのかシャットダウン状態なのだろう。…大分違うが、こちらとしては銃を組み立てるようなものだ。

 

「………。一部ケーブルが破損しているが、基盤自体は問題ない。綺麗に直せばまた動くだろう。」

「ほ、本当っすか!!」

「後は、お前達次第だ…。ブラン、後は任せたぞ。」

「…はぁ!?勝手にやって勝手に何言ってんだよ!!全部わたしに押し付けるのかよ!!」

 

ブランからしたら、勝手に調べた挙句、修理可能と判断し、全てをブランに任せるというのだから、ブランからしたらキレてしまっても仕方ない。

 

「お前なら出来る。俺はそう思っている。後は、お前次第だ。」

「………。」

「あぁ、待ってよぉ~。」

 

捨て台詞のようになるが、そう言い残し採掘所を後にする。捨てるにしろ、直すにしろ、国のトップならいえる事だろう。そして、後ろから大声で聞こえてくる―――――

 

 

 

 

 

「おい、てめーら!!何時までもそわそわしてんじゃねー!!今からルウィーの心得ってのを、体に叩き込んでやるから、覚悟しやがれ!!」

 

 

 

 

 

 


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