【プラネテューヌ:教会前】
「ふわぁ~、着いたぁ~。」
「…さっさと報告するか。」
ルウィーの問題に対して手伝いに行き、ある程度解決したと判断し、イストワールへ報告をする為にプラネテューヌへと戻ってきた。報告をした後、プルルートをラステイションへ送り、そのまま俺はリーンボックスへ向かう予定でいる。しかし、教会に近づくにつれて、教会からの騒音が大きくなっている事に気づく。
「ほぇ?なんかぁ、騒がしくない~?」
「………(まさか、襲撃?)」
そう考え、俺はバイクから降りつつ足早に教会へと向かう。“待ってよぉ~!!”とプルルートも追いかけて来る時には、扉に手を添え中へと入る。
「くらえーっ!!」
「ぴーちゃーん、頑張るですぅ!!」
「こんぱ、わたしたちも手伝うわよっ!!」
「いた、いたた!!や、やめてってばぁ!!」
「………。」
「あ~、アブネスちゃんだぁ~!!」
「あ、も、戻ってきましたか。ヾ(´・ ・`。)ノ"彡」
「何事だ、これは…。」
戻ってくると、若干服装が乱れているイストワール。部屋の中央にアブネスを囲いつつ、子コンパ、子アイエフ、ピーシェが一斉攻撃の如くフルボッコにしている。イストワールの話によると、ルウィーへ向かう為に出てから数時間後、突然アブネスが一人でプラネテューヌ教会へ乗り込み、特に理由もなく“誘拐犯”の犯人だと決めつけられたと言う。おまけに、幾ら違うと言っても犯人だと一方的に決めつけている上に、イストワールの誤解だと言う話を全く聞こうとしない。そして、事情は分からないものの、独断で悪い人だと判断した子ども3人が、悪役退治という形でアブネスを殴る蹴る…という状況である。
「えいっ!やぁっ!」
「わ、わたしもがんばるですぅー!!」
「えいえんのやみにおちろっ!そして、こんとんにきえされーっ!!」
「もー!呑気に解説してないで、助けなさいよー!!」
…が、イストワールは自業自得という事で止めようとはしない様子。それに乗っかる様に、只々見守る事にした。
―――――数分後
「いたたっ!ちょっと、もう少し優しく出来ないのっ!!ってか、止めに入りなさいよ、バカ女神、変態男!!」
「ぷるーん…バカって言われたぁ…。」
「…あれ程の攻撃に耐えたんだ。これくらい我慢できるだろ。」
大の大人…と言うのはアレだが、流石に大泣きしたところで手を出すのを止め、子コンパが(何故か)持っている本格的な応急キットで手当てをしている。七賢人の中でも最弱…と言われているが、こと耐久力に関しては人並以上のものを持っている可能性はあるようだ。
「良いか悪いかは置くとして、今回は偶々この人が頑丈だったとしても、下手したら死んだかもしれない。今回を教訓に、手加減を習得しなさい。」
『はーいっ!!』
「って、あたしを実験台みたいな風に言うな!!」
「とは言え、そちらもこっちの話を聞こうとしなかったじゃないですか。自業自得ですよ。(´。` )」
「うっ…そ、それは、ここが託児所的なのをやっているのは知ってたし、ちゃんと情報は集めたんだから。」
裏取りしているかは分からないが、子どもが誘拐されている事も兼ねて、恐らくは保育園や託児所が怪しいと踏んでの調査なのだろう。そうして、強行姿勢で誘拐犯と吐かせようとしていたのだろう。ただ、他人事になってしまうが、初手がプラネテューヌ教会でよかったと言うべきなのだろう。他の所でやっていたら、虚偽にも関わらず言ってしまう可能性もある。…と、アブネスが少しずつ落ち着きを取り戻していた―――――が、プルルートの当然の爆弾発言に、アブネスは再び有頂天の如く怒り出す。
「ねぇねぇ~、アブネスちゃん~。七賢人が誘拐してたりは聞いてない~?」
「…はぁっ!?ほんっとバカなの、あんたは!!なんでそうなるのよっ、そんなことある訳ないでしょっ!!」
「あの、プルルートさん。流石になんの根拠もなしに決めつけるのは、良くないと思いますよ?そもそも、アブネスさんがそっち方面で活動している上に、そういう意味で目を光らせている以上、七賢人に子どもを誘拐するなんて出来るとは到底思えません(´・ω・`;)」
此方としても決定的証拠がない以上、アブネスと同じ根拠もなしにでっち上げで犯人にし、やってはならない事をしてしまう。…が、その線も考えようによってはあり得る。知っているかどうかは分からないが、揺さぶりをしてみるか。
「う~ん。でもぉ、前にブランちゃんが読んでた本でぇ…。」
「まさか、そんな事で疑うって言うの!?無実なのに疑われる気持ち、考えた事あるの!!」
「…その言葉、そっくりそのままアブネスさんにお返ししたいところですね…(。-`ω´-)」
「アブネス、一つ確認したい。」
「何よ。まさかアンタもそこのバカ女神と、同じこと言う気?」
「ルウィーで、七賢人の一人が暴れていた…という情報は知っているか?」
その言葉を聞いたアブネスは、まるで知らなかったと言わんばかりに目を見開き、明らかに驚いている様子でいる。
「はっ!?ちょ、ちょっとちょっと!!な、なによ、それ…。そんな話、聞いてないんだけど!!ほ、本当なの!?」
「本当だよ~。ブランちゃんだけじゃなくて、ノワールちゃんに、ベールさんもぉ、慌てて帰ってったよぉ。」
「わ、ワタシ、そんなの聞いてない…んもぉ、あいつ等勝手な真似してぇ…!!」
そう言い終えると、一目散にアブネスは慌てるように教会を後にする。子ども達は追いかけようとするが、追いかける必要はないとして止めさせる。
「…あの様子では、統率が取れてないか、独断で全員動いているのか…。」
「かもしれませんね。憶測に過ぎないので決めつける訳にはいきませんが…(‐”‐;)」
―――――――――――――――――
【翌日:リーンボックス】
…何はともあれで片づけるには色々あり過ぎたが、プラネテューヌの方は若干の警備の強化体制を取るで落ち着き、プルルートをラステイションへ送る。此方も色々と大変であったが、ノワールとナナの連携もありある程度は収まり始めて居るという。しかしながら、まだ犯人は特定しきれていないと言う。
リーンボックスへ手助けをする為に行ったのはいいが、各国全体の騒動の関係かリーンボックス行の船の欠航により当日には行けず…だったら、戻ってラステイションの手伝いをしろと言いたいところだが、港に着いた頃には既に日が暮れており、そこから戻ったら深夜位になってしまう。小型艇を買う資金も今は無く、引き返す事を留まり翌日の一番船で何とか到着する。そして、街まで歩く…のだが、いくら何でもここまで大きくする必要はあったのだろうかと言うくらい、街まで若干の距離がある。とは言え、謎のモンスターが出現という報告があったにも関わらず、嵐の前の静けさともいえる程に何事も無く街が肉眼で見える程に近づく。
――――――がさがさっ
「………?」
「………。」
リーンボックスの街へ続く道の雑木林、その一部から物音がしてそっちの方を見る。そこにいた良く分からない生物と目が合う。体の基本とサイズはゴ〇ちゃん程度だが、その目は今にも飛び出しそうな程にぎょろっとし、巨大なたらこ唇、甲殻類のような足が六本、背中にゴ〇ラ的な尾びれが付いている。あらかた、この世界の生息モンスターは調べているが、前の世界含め見たことがない。
「きゅいいいいいいいっ!!」
「っ…!?」
五秒ほど目と目が合う瞬間をしていたが、突然とそのモンスターは叫びだす。見た限りでは全く脅威に見える相手ではない…のだが、俺の意志とは無関係に右腕だけが勝手に距離を取る様に、後ろに動くという初めての出来事に若干戸惑ってしまう。
「きゅいっ!きゅいいいいいいっ!!」
「(かなり興奮しているようだ。腹でも空かしているのか…?)」
そんな事を考えてしまうが、やる気満々なように見えるモンスターに対し、念には念をでファイトスタイルのように構える。この騒動の影響か武器や危険物を持ち込むことが出来ず、衛生兵のような道具しか持っていない為に、拳と足で戦うしかない。だが、あくまでモンスターが攻撃してきたら反撃するスタイルは変えない。
「きゅいっ!!」
「………。」
目の前のモンスターを中心に、サイドステップによるフットワークを使い様子を見る。しかしながら、依然とまるでモンスターの前に出たくないと言わんばかりに、俺の意志を無視するように右腕が動かない。それどころか、サイドポケットに突っ込んでいる状態から動かす事も出来ない。更には、サイドステップの速度を上げるも、モンスターは目ではなくしっかりと体を動かして俺を肉眼で捉えている。
「きゅいっ!」
「きゅいっ、きゅいきゅいっ!」
「…鳴き声も同じか。」
そんな見の状態を続けていると、同じモンスターが現れる。…この二匹が昨日の連絡で言ったモンスターであれば、簡単に見逃す事は出来ない。だが、右腕が全く動こうとしない謎の現象が起きている。黄金の右腕…という訳ではないが、武器を一つ無くした状態で戦う必要がある。左のジャブと蹴り技を屈指して戦うしかないと考え、体を半身にし、左拳を前に構える。
「追い詰めましたわ!!って貴方は…。」
二体目のモンスターが現れた場所から、グリーンハートことベールが現れる。どうやら現れた二体目を追いかけてきたようだ。
「説明は後だ。その様子では、このモンスターが突如現れたと言う…。」
「ええ、その通りですわ。気を付けて下さいまし。このモンスター達は、並外れた耐久力を持っていましてよ。」
話し方からして、一度戦ったのだろう。だが、女神ですら昨日に遭遇して戦ったにも関わらず、全てを駆逐しきれていないというのは、このモンスターが並外れた耐久力と言ったと思われる。実際にまだ殴ってはないが、サイドステップで移動しているのを捕えているところ、身体能力も高いと見られる。
「きゅいきゅいっ。」
「きゅいっ!!」
すると、モンスターがまるでコミュニケーションを取る様に鳴き、何か決めたかのように力強くもう一匹が鳴き、背中合わせのような体制になっている。
『きゅいいいいいっ!!』
そして、互いに体当たりのように飛び出してくる。互いに一対一で抵抗しようと、意思疎通をしていたのだろう。モンスターの体当たりをいなすように避ける。その体当たりをかわすが、着地すると同時にすぐさま転回、再び頭突きをするように飛び掛かってくる。その頭突きに合わせるように左腕を絞り、スクリューブロー風のジャブを放つ。
「きゅいっ!」
「…効いていないのか。」
戦闘慣れしていない、又は非戦闘系だったのか、基本的に体当たりしかしてこない為に反撃は取りやすい。しかしながら、打撃は兎も角、鎌鼬を宿した手刀による斬撃と貫手、更には蹴り技から衝撃刃、そのどれもが真面に喰らえばダウンが取れそうだが、悉く一瞬だけ動きは止められるものの、撃破には至らないように見える。
「はああああっ!!」
「きゅいい!!」
「むんっ!!」
「ぎゅっ!!」
だが、流石にダメージは蓄積しているらしく、何度か攻撃を受けているモンスターの攻撃が、弱まっており攻撃頻度が少なくなっているのは分かる。攻撃を当てやすくはなったものの、瀕死になりながらもまだ立ち向かおうとするモンスター…一体何がお前達をそこまで奮い立たせている。
「並みの耐久力だけじゃなく、ガッツも持ち合わせている。」
「分かって貰えるのは有難いのですが、よく素手で戦えますわね。こっちは見ていると気分が悪くなってきますのよ?…寧ろ早く終わらせたい程ですわ。」
「(このモンスターと戦うのが気持ち悪い…?)」
ベールの言葉に違和感を覚える。基本的にモンスターと戦うのを我慢するのは、恐怖かグロテスクな場合にはなると考えられる。しかし、目の前にモンスターは(俺基準化もしれないが)SAN値が削れるような見た目はしていない。…にも関わらず、ベールはそんな感じで戦っている。現状では、この目の前のモンスターと右腕が動かない因果関係は分からない。だが、何かしらの理由はあるのだろう。それは兎も角、弱っているとはいえ戦闘が長続きすれば不利になる可能性はある。万が一、オートヒールのような能力を持っていたら、それこそ回復技や魔法を持っていないこっちとしては、余計に不利になる。…近くに味方が居たら放ちたくない上に、撃破を視野に入れているベールからしたら、嬉しく思わないだろうが仕方ない…。
「くっ、いい加減倒れて貰えません事っ!」
「…少し、我慢してくれ。」
「…?我慢とは何を…―――――っ!!」
『きゅ、きゅいっ!!きゅいいいいいいいいいいい!!!!』
ベールが何か言おうとしたが、その前に俺は
「………。行ったか。」
「“行ったか”じゃありませんわっ!!なんて気当たりを放っていますの!!もっとしっかり説明をして下さいましてっ!!」
「しかし、俺は丸腰な上に、長引けば不利になる。」
「あなたの場合は丸腰でもっ!!…はぁ、言っても仕方ありませんわね。」
そう言いつつ、ベールは言うのを止め呆れたように変身を解除する。
「逃してしまった事に関しては、目を瞑っておきますわ。それでも、わたくしだから耐えられたとは思いますが、あまり放って貰いたくはありませんわね。」
「…しかと心に響いた、わかった。」
「…それ、ネタで言ってますわよね?」
それから、ベールから話を聞く。昨日の連絡を受けて直ぐに帰国をすると、先ほどのモンスターが暴れていたと言う。見た目は兎も角、理由の分からない悪寒に襲われつつも対処をしていたと言う。そればかりか、確認した限りでは数十匹はいると言う。幸いなことに、街への被害や悪質な事はされていないと言う。そして、目撃情報も多数あるものの、生命力の高さ、逃げ足の速さも相まって、解決は愚か一匹も倒す事に成功していないと言う。
「…最初に出没した場所は分からないのか?」
「ええ…わたくしが戻ってきた時には、既に多方面へと展開しているように、あのモンスターが居ましたわ。」
「ドローン…いや、無人偵察機とかでの偵察は出来ないのか?」
「…マルチコプターの事でしょうか?単独で飛ばす事は出来ますけど、監視カメラを搭載出来る程のバッテリーが上手くいかなくて、それはまだまだ実現出来てませんわ。」
「…そうか。」
どうやら、今の会話を聞く限りでは、まだドローンによる無人偵察機は出来てない用だ。ベールから夢見すぎな目線を感じる…。とは言え、ベールは作戦を考えており、あのモンスターを仕切っているのは七賢人だと考え、あのモンスターを放った何者かを見つければ…と考えている。傷ついたモンスターは何処かで羽休めをしていると言う目立てで、監視カメラの情報を頼りに、これから向かおうと考えているようだ。そう言っているうちに、ベールに連絡が入り、先ほどのモンスター含め何処へ逃げて行ったかが分かったと言う。
「…ええ、分かりましたわ。情報によりますと、街から北西にある“ゼーガ森林”に逃げたそうですわ。」
「分かった。直ぐに向かおう。」
しかし、ここで向かおうとした時にベールに引き留められる。
「ちょっとお待ちになりまして。まさか、そのまま行くお心算で?」
「武器は、向こうの港で預けられてるからな。それに、完全な丸腰ではない。」
と、言いつつ右腕でガッツポーズをとる様にする。とは言うものの、それでもベールは呆れた顔をしている。
「…そこまで仰られますと、その度胸には恐れ入りますわ。とは言え、わたくしからしたら、何も持ってない御方と肩を並べるのは、絵面的に不安しかありませんの。それに、先ほどの戦いで右手を全く使ってないあたり、何か理由がありまして?」
「………。」
「…話したくないのであれば、追及はしませんわ。ですが、街を経由していく必要がありますので、立ち寄るのであればそこで調達しておくべきですわ。本当はライセンスが居るのですが、そこはわたくしが何とかしますわ。」
「女神特権か…便利だな。」
不満的なのを漏らしつつも、リーンボックスを経由する必要がある為に街へ戻り、そこで銃と短剣、それをしまう為のガンベルトを調達する。
「…本当にそれでいいですの?レーザー銃とかはお嫌いのようですけど、あなたでしたら、45口径や…それこそ50口径の自動拳銃だってありましてよ?」
「オートマはあまり馴染まないんだ。それに、此奴は、
「まぁ…そこも口出しする気はありませんわ。」
M19コンバットマグナムを見たベールがそう言う。嘗ての愛用銃は、恐らく元の世界にある。それに、回転式銃をよく使っている側からしたら、こっちの方が馴染みが良い。自動拳銃は悪いとは言わないが、オートマで早打ちは向かないのもある。
「それで、例のモンスターは森林の何処へ行った?」
「流石にそこまでは分かりませんわ。入っていったという情報が入っただけでも、現状からしたら大きな一歩ですわ。」
地図を見る限りでは広くはないが、ドーム一、二個分程の長さはあるようだ。とは言え、分岐と言える道は少なく、探す場所は限られてくると思われる。RPG的に言えば、分岐が途中に三つあり、そこの奥に居るかマップ外に居るか…。
「…行けば分かるか。」
「そういう事ですわ。準備が出来ているなら行きますわよ。こっちとしては一日でも早く解決したいですし、もし他国へと流れ込んでしまったら、あの子たちになんて言われるか…。」
「そうだな。約二名は何て言うか…。」
巣を構えているのか、或いは先ほどの