超次元ゲイムネプテューヌ~闇夜の円舞曲~   作:KeyMa

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Scene79 続・禁断の楽園~Lost Happiness~

 

 

【プラネテューヌ:教会・ベランダ】

 

「準備できたですよ~」

『わーい!!』

「あ、こらピーシェっ!!飛び込んじゃダメでしょ!!」

 

うーん、まさかビニールプールを用意する事になるとは思っていなかったなぁ。しかも、結構な大きさのビニールプールがあるとはな。おまけに水着もしっかりとある用意周到振りである。

 

「全く…こんな子ども騙しのプールなんて、わたし別に―――――わわっ!!」

 

ビシャーッ

 

「へっへーんっやりぃ!」

「………やったわねぇ!!」

 

R-18アイランドに行けなかったことをいじけていたユニだったが、そんなことはなかったと言わんばかりにはしゃいでいる。

 

「…スミレ?」

「どうしたの、一緒に遊ばないの?」

「あ~…なんというかな…」

 

改めて思う事だがこうして冷静に考えると、女性だらけのメンツの中に男一人。あの時はゲイムギョウ界を救うと言う事で頭が一杯だったけどさ―――――

 

「なんか、場違いな気がしてきてな…」

「場違い…?あ~…」

「それに、着いて行かなくてよかったのかよ」

「うーん、まぁ今回いけなくても、次回行ければいいかなって」

「何よ、今更場違いとか言って」

「アイエフさん…?」

 

そんな気難しい事を考えている所に、アイエフさんが声を掛けてくる。

 

「随分と委縮してるじゃないの。“さん”付けするタチじゃないでしょ?それに、永守程じゃないけど、そういう事考えてるタチでもないでしょうに」

 

ここに来てからそういうのは覚悟していたが、改めてしまうと今まで冷静でいた自分が別人みたいだと思ってしまう。

 

ビシャーッ

 

『冷たっ!!』

「ほらほら、話してないで、いっしょにあそぼう!!」

「あそぼう?(わくわく)」

「…そういう訳よ。覚悟決めなさい」

 

…アイエフの言う通りだな。向こうには連絡着かないし、こうなったら部屋に籠っていた分遊びまくるか。

 

だが、この時は水面下であんな出来事が進んでいたとは、この時の俺も獨斗も知る由は無かった。

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

【R-18アイランド:ビーチ】

 

条件付きであるが、とりあえず砲台に関しての情報は後ほど調べる事となり、ビーチで遊ぶこととなる。

 

「ところで、砲台に関して、あなたは何か知ってるの?」

「うーん、運び込まれたというのは知ってますが、アタイはちょっと見ただけでどういう代物かまでは分からねぇっすよ」

「そんな事より、楽しい所ってあるんだよね?」

「ええ、もっちろん!!もうすぐ着きますぜ」

 

リンダがお勧めする場所まで案内される。そして、森を抜けた先の開けた場所へと出る。

 

「つきました、いい所ですよぉ!!なんと言っても、今やR-18アイランドに無くてはならない観光地、ヒワイキキビーチです!!」

 

案内された場所は、如何にも海水浴が可能なビーチだ。海は透き通るように綺麗であり、浮き輪、水上ボート等の施設も充実している。

 

「おおおおお…ぉぉおおおおおお!!??」

「うわぁあああああ~~!!」

「こ、これは…!!」

「な、な、な、な…なんで、みんな、は、は、はだ…!」

「み、皆さん、裸だぁ…!」

「まぁ、開放的ですわねぇ!!」

「………」

 

そう、文字通りビーチに居る女性の大半が裸でいる。いや、厳密に言えば裸に見えると言ったところか。見えてはいけない部分が、まるで全年齢向けに差し替えられた挿入絵のように、謎の光によって遮断されている。

 

「ああ、そうか。オメーには刺激が強過ぎたか?」

「…どういう現象なんだ」

「そうそう、わたしも気になる!!」

「あれは、謎の光草って言うんだ。原理は分からねぇが、普段から閃光のように光ってるんだが、際どい所に張り付くとより強く光るだけじゃなく、そういうのが大好きな草なんだ!」

「ふ、普通に水着を着てればいいじゃないのっ!!」

「き、際どい所…!」

 

目の前に光景に対応しきれない二人と、何故か妙に興奮しているのが一人…。俺はと言うと、原理は分かっているとは言え目のやり場に困る。

 

「…てことは―――――こーんな事しても大丈夫って事だよね!!」

「ちょっ!?」

「お、お姉ちゃん、大胆…!!」

 

何やら隣でベールとヒソヒソやっていると思ったら、突如ネプテューヌは、シーンが変わるかのように水着と謎の光草をすり替える。側転をしつつ“ネプギアもやろう”と誘っている。…まぁ、違和感はあるが。

 

「わたくしも、やりますわよっ!!」

「あたしもぉ~」

『えぇ!?』

「………、何やってるんだか」

 

まるでネプテューヌに誘われるかのように、ベールとプルルートもネプテューヌと似たような事で包み隠している。見た光景としては、サービスシーンかのようなシチュエーションが繰り広げられている。

 

「…み、皆がやるなら、わ、私も!!」

『えぇ?』

「っ…!!」

「…?どうしたのよ、永守。急に顔を背けて…」

「…いや、別に…」

 

三人に誘われるかのように、ネプギアも身に着けている水着を脱ぎ捨て、謎の光草で身を包む。見た目はポロリどころか、スッポンポーンな状態ではあるが…匠の業と言えばいいのか、二人に話していい事なのか…。

 

「ふっふふーん。聖人ぶっても無駄無駄ぁ!!三人とも謎の光草まみれになーっれ!!」

「のああああ!!」

「な、何!?」

「…マジか」

「あ~らら~、不思議(ふっしぎ)不思議~?水着を着てても裸に見えるぅ!!それに、えい君はマニアック層にはタマラナイんじゃない?」

 

ネプテューヌが投げてきた謎の光草は、まるで意思を持っているのか水着に張り付く。ノワールとブランはぴったりと水着全体に張り付き、俺に至っては、前開きのパーカー、ショートパンツ内部にある水着へと張り付いて、変な光になっている。

 

「もう、何すんのよ!!ネプテューヌのえっち!!」

「えっちは、心の仕事だよ!ほらほら、早く脱いだ脱いだ!」

「…もう、仕方ないわね…」

 

そう言って、「自分達のように脱いじゃいなよ」と言いたそうにネプテューヌが催促してくる。そして、流されるように赤面しながら脱ごうとするノワールがいる。…流石にこれは止めた方がいい。そう思いノワールの方に手を添える。

 

「…?な、何よ」

「脱ぐ必要はない」

「え?ど、どういう意味よ」

「…!?」

 

その遣り取りに何かを察したブランはハンマーを呼び出し、砂浜を吹き飛ばすように体を一回転させ振り上げ、砂を含んだ突風がネプテューヌ達を襲う。その風圧は凄まじく、こっちの謎の光草も吹き飛ばす勢いだ。

 

「ああっ!!ねっぷぅ…!!」

「あらら~ばれちゃったよぉ~」

「完璧な作戦だと思いましたのに…」

 

その突風により、ネプテューヌ、ネプギア、ベール、プルルートの謎の光草が吹き飛び、一人を除き脱いだと思われていた水着は、脱いでいなかった事が分かる。

 

「…何となく違和感はあったけど、永守の反応を見て確信したわ」

「どういう原理よ!!あなた、あの時脱いだわよね!!」

「あれは残像だよ、てへっ!!でも、えい君は何時から分かってたの?…ていうか、何で後ろ向いてるのさ?」

「…確かに、見た目は女性の俺だが、それでも見れるものと見れないものがある」

 

そう俺は言いつつ、見てない状態であるがある一点に指を指す。

 

『…?』

「あ…あ…あぁ…」

 

俺は後ろを向いて見ていないが、その先には本当に水着を脱ぎ捨ててしまった…生まれたての子どものような状態のネプギアがいる。ネプテューヌの時は良く見ていなかったが、ベールとプルルートが脱ぐ際は違和感があるような動作をしていた為に、なんとなく抜いては無いと思ったが、謎の光草があるとは言え、本当に脱ぎ捨てたネプギアを直視できない感覚に陥っていた。

 

「いやぁぁあ!だ、騙すなんて酷いよっ!!」

「ご、ごめんね、ネプギア。まさか、本当に脱ぐなんて…」

「水着、取ってきてあげるね~」

「って言うか、永守さん気づいてたんなら言って下さいよ!!」

「最初は気づかなかったから、何とも言えないな…」

 

 

 

「(計画通り…ですわね…)」

 

…とか、ベールは思ってそうだなと思いつつ、水着を着るまで見ない様にしているしかない。

 

「…飽きないだろうが、オメーも苦労してるんだな」

「なら、変わってくれるか?」

「はっ?冗談は寝て言えっての。例え女神の加護があろーが、アタイはアタイの思うが儘に動くっての」

 

仲間にはならないが、“テメーから受けた借りは返す”と呟き、協力関係はとりあえず続くようだ。

 

 

 

 

 

と、プルルートが水着を持ってきて、ネプギアはそれを受け取りしっかりと水着を着る。その後はR-18アイランドを堪能するかのように各々遊び始める。ネプテューヌとノワールがビーチバレー、ブランとプルルートは砂で城、三倍サイズのネプテューヌ人形(砂)を作成、ネプギアとベールは日焼け止めを塗っている。

 

「ホント、オメーは規格外な事してんな。今の恰好もそうだけどよぉ」

「褒め言葉として受け取っておく」

 

リンダにこれまであった事等含め、情報交換という事で話し合いをしている。何故ここに来たのかを伝えつつ、消息不明の剣士について聞いてみる。ゲイムギョウ界の四カ国を探し、情報収集をしても全く見つからなかった為にここに居るのではないかと聞いてみる。例えば、従業員に紛れているのではないか等々…。

 

「そこまで言われてもな…アタイだって只の従業員の一人にすぎねぇしよ。従業員全員に会ったわけでも、偽名使った奴いるかってのもわからねぇよ」

「まぁ、そうなるか」

「おう、んな事より喉乾いてねぇか?オメーの分含めた全員分持ってきてやるぜ」

「…ああ」

 

立ち上がる際に、何やら悪どい顔をしていたような…恩を仇で返す気でもあるのか。

 

「ねーねー!えい君も日陰に居ないで、遊ぼうよ!!2対1でさ、ノワールをやっつけようよ!!」

「ちょ、言い方酷くない!?」

「…ま、時間もまだあるからな」

 

飲み物を取りに行ったリンダが離れ、一人になったところに1対1でノワールとビーチバレーをしていたネプテューヌが誘ってくる。誘いに乗ってビーチバレーのコートに入ろうとした時、飲み物を持ったリンダが戻ってくる。

 

「持ってきましたぜ!冷たい麦茶でもどーぞぉ!!」

「…麦茶か」

「あら、気が利くじゃない」

「ごっつぁんでーす!!」

 

普段はコーヒーやら水やらで、麦茶なんて何年ぶりに飲むのだろうと思いつつ、ビーチコートにボールを投げ捨てつつ一気に駆け寄るネプテューヌ。麦茶の入ったコップをとり、まるで風呂上りの牛乳、仕事終わりのビールを飲むような勢いで飲む。

 

「プハーッ!!堪んないねぇ!!」

「ささっ、皆さんもどーぞ!」

 

とりあえず、見た目は誰がどう見ても普通の麦茶だ。麦茶の入ったコップを取り、口元に運ぼうとした時だった。

 

「はぅ…」

「…ん?」

「え?お、お姉ちゃん…!?」

「どうしたの、ネプテユーヌ?」

「大丈夫ですの?」

 

突如、ネプテューヌが力が抜けたかのように座り込む。突然の事だからか、全員がネプテューヌの元へ寄るが、直ぐにネプテューヌは立ち上がるが――――――

 

「いやぁ…恥ずかしい!!なんか…はしたないわ!お願い…見ないでぇ!!」

「な、なんなの…このキモいネプテューヌは…」

「こ、こんなのお姉ちゃんじゃない…!!」

「…何をした」

「あ、アタイは何もしてねぇぞ!!」

 

突如、くねくねしつつ今までのネプテューヌとは思えない程、恥ずかしそうな振舞いをしている。今までのネプテューヌからかけ離れているせいか、女神全員が今のネプテューヌにドン引きしている。恐らくは、麦茶に何か入れていたのだろうと読み、リンダに問いただすも白を切るようだ。

 

「…聞いたことがありますわ。この島で、最大のタブーとされている羞恥心を、倍増させてしまう薬があると…」

「その薬は、麻薬のように禁止薬か?」

「そこまでではありませんが、合法的な薬ではないのは確かですわよ」

 

もし、その薬が全ての麦茶に入っているのであれば、言い訳は出来ないであろうリンダに、全員視線を向ける。

 

「え、ええ!?た、確かに麦茶を持ってきたのはアタイですが、そ、そんな薬なんて―――――」

 

………ボトッ

 

テンパって腕を振り回していた為か、リンダの腰あたりからシールの張られた茶色いビンが落ちる。位置的に何が書いてあるか全て見えないが“いけない♡おくすり”というのは見えた。

 

「…はっ!!」

「てめぇえええ!性懲りもなく、舐めた真似を―――――」

「よく分からないけどぉ、あたし達にはこういう事するんだね~?」

「ぷ、プルルートさん!?」

 

ブランが突っ掛かろうとしたが、ブランの目の前に割り込むようにプルルートが割り込んでくる。プルルートの表情は、明らかにストレスがマッハの状態に似た顔をしている。…これは、俺に止める義務はない。

 

「ふんっ!!こいつに借りがあろうが、女神には小さくても一泡吹かせてぇのさ!!それにな、この島でも一部の客にはニーズがあるからなぁ!!」

「…そっかぁ、あたし達だけじゃなくて、ダメなのに他の人にも…じゃあ…」

 

次の瞬間、プルルートは光に包まれ女神化する。そして、持っているのは何故か蛇腹剣ではなく、仕付け鞭のようなものを持っている。

 

『っ!?』

「ああ、変身しちゃったぁ…」

「うっふふ…ゆっくり甚振って、生まれ変わらせてあげようかしらねぇ!!」

「や…やれるものなら…やってみ…あああああああああああ!!」

 

リンダは戦略的撤退の如く、森の方へ逃げ出す。だが、忘れてはならない。女神化した女神はあらゆるステータスが伸びる。しかも、女神化したプルルートは奇想天外な事に定評がある。一瞬にしてリンダの前に先回りしたプルルートは、完全にスイッチの入ったドS女王様のように、リンダを“仕付け”と言わんばかりに痛めつけている。

 

「…これでも、ダメか?」

「あぁ、隙間から見える水着が、恥ずかしい…!でも、見られないのも、見られないで、寂しい…」

「だ、大丈夫だよ、お姉ちゃん!私が見ててあげるから!!」

 

俺が来ていた水着用のパーカーを脱いでネプテューヌに羽織らせても、抑制にはなってないようだ。いずれは、その薬を作っている業者を突き止めなきゃならないのかと考え、違う意味で面倒ごとが増えてしまった。

 

 

 

 

 

数十分後――――――

 

 

 

 

 

「皆サン、砲台ノ有ル場所ハ、モウスグデス」

「すっかり、人が変わっちゃったわね」

「まぁ、流石にあんなことをされましたら、誰でもああなってしまいますわね」

「…やった本人は、涼しい顔だけど…」

 

様態の戻ったネプテューヌを境に、さっさと砲台の所へ行こうと言う事になった。案内をするリンダは、アイリスハートことプルルートの仕付けの一時的な後遺症により、まるで壊れかけたロボットのような喋りと動きをしている。肝心なネプテューヌは、薬の影響なのか自分が何やってたかは覚えていない様子。プルルートが“ネプちゃんは可愛かったよ”とその時の事を言ったが、何故かネプテューヌは悪寒が走ったかのようにブルッとしている。

 

「皆サン、砲台ガ見エテキマシタ」

「…ぶっ!!」

『…え?』

 

確かに、そこには物騒な砲台があった。見た目は大型戦艦に積んでいそうな、主砲や副砲と言ったところだ。その主砲、副砲の先端からは大量のシャボン玉が、BGMのリズムと合わせているように放出されている。…俺としては砲台よりも大問題が、そこで踊っている女性達が水着を着てなく、それこそ謎の光草も無しにダンスエボリューションの如く踊っている。流石に光景に、手で目元を隠す。

 

「ん~?どうしたのぉ、えー君?」

「…刺激が、強すぎる」

「ああ…遊び過ぎて忘れてたわ…。そんな事より、これが例の砲台よね」

「でも、これじゃあ只のシャボン玉製造機だよね?」

 

と、話しているうちにタイミングよくBGMが終わり、放たれていたシャボン玉が止まる。そして、砲台全問が上の方へ向く。

 

「…何か、仕掛けてくる?」

「何を、する気なんですの?」

 

全員が、何か仕掛けてくると思い身構えるも、再び別のBGMが始まり、先程の量とは比較にならない程のシャボン玉が放たれる。

 

「うわぁ~」

「綺麗だなぁ~」

「…じゃなくてぇ!私達は、こんなものの為に態々調査しに来た訳!!」

「っ…!」

『永守(えい君)!?』

 

と、ノワールからしたら完全に骨折り損の草臥れ儲けとも言える状況である。見た目こそ攻撃性のありそうな砲台にも関わらず、見た限りではBGMに合わせて放たれる、只のシャボン玉製造機である。しかし、その大量のシャボン玉が放たれている時、その砲台の上部あたりに、見覚えのある人物と、もう一人誰かが居たのを見る。しかし、近くに寄った時にはそこには誰もいなかった。

 

「どうしたのよ、永守。いきなり走り出して…」

「…今、アノネデスともう一人誰かが居たように見えた」

「…何言ってるのよ。あいつは報告によれば、今も刑務所の中にいるのよ?」

「だといいが…」

 

確かに、ラステイションの刑務所は未だに脱走者がいないと聞く。だからこそ、それはあり得ないと言いたいのだろう。だが、何かしら協力者や内通者が居るのなら話は変わってくるのではないか。

 

 

 

 

 

【プラネテューヌ:教会ベランダ】

 

完全に“骨折り損のなんとやら”とブランが呟いたように、収穫としては“見た目が武装放題の施設の1つ”としか言いようがない状態だ。帰る前にR-18アイランドの土産(ほとんどがプリンなのだが)を購入しプラネテューヌに戻るも、すっかり夜になってしまった。…まだ一日経ってないからか、未だに女性のままだが…。

 

「たっだいまぁ!!見て見て、こんなに買ってきちゃったよ!!」

「お、お帰りなさい…」

「ふふん、これぜーんぶネプのプリンだよ。これで喧嘩しなくて済むね、ピー子!!…あれ?」

 

全員明るく迎えてくるかと思ったが、出迎えた全員が何やら嬉しくない朗報でもあるかのような表情をしている。その答えが、今目の前にある。出迎えの中に、ピーシェの姿が居ない。

 

「…ピーシェはどうした。疲れて寝落ちしたか?」

「いえ…そうではなくて、非常に言い辛いのですが…」

 

 

 

「っ!!」

『ね、ネプテューヌ(お姉ちゃん)!!』

 

イストワールからの話は、最近作られて話題となっている保育園の先生と名乗る人が夕方前に訪れ、ピーシェを是非ウチで預からせて欲しいと頼み込んできたと言う。最初はイストワールも戸惑い、お茶を用意する為に席を外したが、戻ってくるとピーシェが保育園の方に行きたいと言い出した。その話を聞いた瞬間、ネプテューヌは教会内に猛ダッシュで入っていく。恐らく、ピーシェを探す為に走り出したのだろう。

 

「…ピーシェがそんなことを言ったのか」

「はい…私も信じがたいのですが、ピーシェさん本人が保育園へ行くと申しまして…」

 

場所をロビーに変え、当時の状況を聞くことにする。イストワールも、ピーシェの変わりように戸惑ったものの、ピーシェ本人の意志は固く、止める義務はないと判断しばた為に承諾し、俺達が帰ってくる一時間前にはピーシェを連れて行ってしまったと言う。

 

「わたし達が、しらないうちにでてっちゃって…」

「さみしい…(うるうる)」

「で、でも、きっと直ぐ会えるんだよね?」

「それが、住所を聞く前に出て言っちゃったのよ…普通だったら信じられないけど」

「そんな…」

 

自分の意志とは言え、腑に落ちない所がある。ピーシェの性格を考えれば、ねぷてぬの方がいいと言いそうだが、それをあっさりと保育園の方に行きたいと言うのが可笑しい。

 

「離れている間に、何かあった事は?」

「いえ、特に荒らされたとかそういう事はないので…だた、一つ気になるのは、あれだけお気に入りでした、プルルートさんが作ったネプテューヌさんの人形を持って行かなかった事ぐらいしか…」

「ピーシェちゃん…」

 

…プルルートお手製のネプテューヌ人形を、持っていかなかったというのがやはり引っかかる。R-18アイランドで一瞬だが見た人物と言い、ピーシェの変わりようと言い…何か裏がありそうだ。全員が帰ったら、色々と調べてみるしかないが、何より一番心配なのは…ネプテューヌが辛そうな顔をして飛び出していった事…あんな顔をしたのは、俺を魔剣で刺した時以来だ。一体、何が始まろうとしているんだ…。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

【プラネテューヌ:???ビル】

 

「つ、連れてきました…」

「ご苦労様、予定通りじゃないの」

 

人気の少ないとあるビルに、キセイジョウ・レイがピーシェを連れて入っていく。そして、その部屋の奥にはラステイションの牢屋にいるはずのアノネデスがいる。

 

「あ、あの…ほ、本当にこんなことしてよかったのでしょうか…?それに、あ、あのビンに入ってたのは、結局なんだったんですか?」

「…今更怖気づいても遅いわよ?アタシ達、既に引けない所まで首を突っ込んでるんだから。そもそも、レイちゃんが言った事じゃないの。持っていたビンだって、あなたが持ってたものじゃないの」

「そ、それはそうですけど、なんで私があんな説明付きのを持ってたのも、良く覚えてないんですけど…」

「変わった娘ねぇ。全てあなたの言った事通りに動いてるじゃないの。“こ、これで100%上手くいきます、た、多分…”なんて言ったじゃない。あれだけ反女神と訴えてた上で、世界を変えると言ったのを忘れたわけじゃないわよね?その胸の奥に何か野心的なのが見えた気がしたんだけどぉ…」

「うっ…確かに言いましたけど、そこまで再現しなくても…」

 

キセイジョウ・レイが、全ての作戦を考えたような事をアノネデスが言うが、何故自分があんな事を言ったのか、どうしてこれで成功するか、当の本人は上手く行った事が不思議な事だと思っている様子でいる。犯罪組織マジェコンヌが現れた際は、願ったり叶ったりの状況のように見えたが、どういう訳か自分の方針とは違ったらしく、犯罪組織には非協力的だった。そういう事もあり、アノネデスは自分の拘りがあるのではないかと思い、新しい国の下準備もしていたにも関わらず本人のこの反応に呆れつつも、キセイジョウ・レイの引かれたレールが順調に動いている事にも興味があるらしく、表面上は協力をしている。

 

「あ、あの、一人足りないような…?」

「ああ、あの忍者ね?彼ならもう来ないと思うわよ?」

「ええ!?どどどどど、どうして!?」

「彼は、お金に目が眩んで協力しただけだったしね。まぁでも、彼の協力が無かったら、彼女が上手く行動できず、アタシを助けるような事は出来なかったのは確かよ。だから、手助けをした彼に対して、アタシ自身は後始末する気はないわよ?」

「そ、そこまで言うなら、私も後追いはしませんけど…」

「でも、本当凄いわね、あなたが持っていた刀…。あなた自身が使い方知らなかった事も、彼女が直ぐに刀の力を引き出して使えたのは驚きだったけど、一番焦ってるのは、ノワールちゃんの国かしらね?まぁ、未だに騒ぎになってないから、脱走したのは把握してないようね」

 

アノネデスの隣に居る女性が持っている二本のうちの一本が、アノネデスを助けるのに役立ったと言う。何かをしたらしいが、兎に角未だにラステイションの牢屋の中には、アノネデス(偽)が居るようなことを言う。

 

「さ・て・と…やる事も済んだし、さっさと行くわよ」

「え、ど、何処に…ですか?」

「何よ、R-18アイランドに決まってるじゃないの」

「い、今からですか!?少し休んでからでもいいじゃないですか!?」

「そんな悠長な事は言ってられないわよ。彼、獨斗永守の存在はデカいわ。まさか、本物の女性になってR-18アイランドに来たのよ?アタシが直接見たのと、あなたの提示したデータ通りであれば、彼の行動力を見た限り嗅ぎつかれるのも時間の問題よ」

「獨斗…永守さん…」

 

その名を聞いた瞬間、一瞬だがキセイジョウ・レイの表情が険しくなった。だが、直ぐに表情はいつも通りのおたおたした表情へ戻る。それでも、嗅ぎつける可能性を考え直ぐ発った方が良いと思ったのか準備を始める。静かに、だが大胆に、ゲイムギョウ界は何かが起ころうとしている。

 

 

 

 

 

 


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