「えい君どこ行ってたの?これからクエスト行くっていうのに。」
『…クエスト?』
教会執務室に戻ってきた俺とネプギアとユニに対し、唐突にクエストにイクゾー!という感じでネプテューヌが話しかけてきた。
アイエフから(面倒臭そうな感じで)説明をして貰ったが、内容としては先程までネプテューヌが勝手に書類整理をやっていたが、業務妨害さながらな行為が目立っていたそうだ。そこで、ネプテューヌにもできるであろう“国民からのモンスター退治”のクエストをしつつ、女神の心得を教わるという形に収まり現在に至るそうだ。場所は国境沿いであり、内容は移動しながら話すとのこと。ただ、国境近くということで、そこから歩いてプラネテューヌまで帰れとのことだが、俺はバイクをラステイションの教会に置いているから、一度教会に戻らなきゃならないという二度手間になってしまう。…誰もこのことには気づいてないようだが、まぁやらかしたものは仕方ない。
【ラステイション・ラスーネ高原への道】
「今回のモンスター退治は二ヵ所、ラスーネ高原と、その近くにあるトゥルーネ洞窟…どっちも難易度はそう高くはない―――――」
ノワールが淡々と、今回のクエスト内容を説明しているが、俺とユニの後ろがどうなっているか説明した方がいいのか迷っている。
「(ねぇ、後ろの事お姉ちゃんに話した方がいいわよね。永守さん、お願い出来る?)」
「(何故、俺が言わなきゃならない。別に構わないが…。)」
「ユニ、永守。説明中に無駄話しない!」
「あー失礼。ただなノワール。一旦180度回れ左してくれ。」
「それはどういう…えぇ?」
そしてノワールは後ろの光景を目の当たりにする。
「うぅ~疲れたですぅ。」
「コンパ、大丈夫?少し休んでおく?」
「おお!これは有名な裏から見ると読めない看板!!」
「お姉ちゃん、看板って基本そうだよ…。」
ここまでの道のりが長かった為か、疲れてしまったコンパを介抱しているアイエフ。そして、ネプテューヌは看板に対して訳の分からない事を言い、それを苦笑するネプギア。前者は置いといて後者は完全にふざけている感じである。…RPGツクールとかで設定ミスなら裏からでも看板は読めるだろう…。案の定、その光景を見たノワールは御立腹である。
「いぃっー!!」
「ほら、ペース落ちてる!!」
ノワールが最後尾となり、ペースが落ちているとみると、そこらで拾った妙に先端が尖っている木の枝でネプテューヌの背中を突っついている。
「もぅ、ノワールってば、真面目なんだからぁ。」
「悪い?」
「
「疲れるくらいどうってことないわよ。私はもっともっといい国を創りたいの。」
「そりゃ、私も
「貴方は楽しみすぎなの。あと、さり気無くネタ入れないでよ。」
「それは、俺も同意だな。」
「えい君さ、今日私に対する扱い酷くない?それに、いーすんからも頑張りすぎとか言われてるじゃん。」
「勤務時間に慣れないってのもあるが、ネプテューヌは女神であり、俺はその補佐。立場上は俺の上司だろ。なのにお前は何も言わないから、俺なりに
「むぅ、じゃあ今から言うよ!働きすぎだから少しは休もう!」
「…考えておく。」
「貴方も苦労してるのね。」
「まぁな…。(それに、二週間前に神殿で感じたあの気配。あの感じがまた現れるのであれば、居ても立っても居られないぜ。)」
そう話していると、森の出口が見えてきた。恐らくこの先がラスーネ高原なのだろう。さっきの看板にも―――――
↑ラスーネ高原
↓ラステイション
って書いてあったからな。
出口に差し掛かる前に、その向こう側から歓声が聞こえ、ノワールはその声を聞いた途端走り出し、森の出口、農村に続く坂道前で立ち止まる。
「きゃー!」「いらっしゃったわ!」「女神様よー!」「ブラックハート様だわ!」
まるでアイドルがステージに立った際の盛り上がりを見ている気分だ。考えてみれば、プラネテューヌではネプテューヌを見ても、こんな歓声が出た事はないな。まぁそれが今のプラネテューヌの方針であり、ラステイションとの違いなのかもしれない。で、あの村人たちが今回の依頼者ってとこか。しかしまぁ、これまた見事に女性ばっかだ。台詞にはないが、さり気無く俺の二つ名まで飛び交っている。ノワールは農村にいる人々に向けて軽く手を振っている。
「いけない…!アクセスッ!!」
何かを思い出したかのように、ノワールは女神化を発動する。…今するのか?
「えぇ~!?変身今やっちゃう!!」
ここにも、同じ事考えてるのがいる。ノワールの体が光り出し、ミニスカ風ドレスから、神殿の時のゴーレム討伐の際に、女神化したネプテューヌの時に似た黒いバトルスーツ的なのに変化し、式典の時に見た銀色の髪に変化した。しかし、女神化後のバトルスーツは妙に俺にとっては刺激的すぎるようで、またしてもいつの間にか目線を逸らしていた。
「女神の心得その2。国民には威厳を感じさせる事よ。皆さん、モンスターについて、聞かせてくれるかしら?」
「…目の前で変身しても、威厳とかなくね?」
「多分それは言わないお約束だろう。」
「と、とりあえず行きましょ。」
そうして、坂道を下り農村へ向かう。女神の心得その1がないなと思って聞こうと思ったが、自分がいない間に心得その1を話したのでは、納得させる。
【ラスーネ高原】
「ここがラスーネ高原ね。」
「ええ、スライヌが大量発生して困っている。」
俺は今、Nギアのカメラ機能を双眼鏡代わりに使って辺りを見回している。高原のいたるところに、DQに登場するスラ〇ムと犬の顔を合体させた“スライヌ”がうじゃうじゃいる。丘のようなでっぱりがある為、その先にいるかどうかは流石に見えない。
「随分と多いな。スライヌ以外はいないように見えるが、スライヌが大量発生したのは何時頃なんだ?」
「一週間前にはここまで多く無かったのですが、2、3日前に急激に増えて、それで依頼を出しておいたのですが、今日は前見た時より更に増えてますわ。」
「トゥルーネ洞窟内部がどうなってるか分からないが、どう考えてもこの増え方は異常と言えるか…。」
「とりあえず、現地調査はそれくらいにしてくれる?では、この件はお隣の国の、ネプテューヌさんと、ネプギアさんが対処してくれるそうです。」
「ねぷぅ!いきなり振るぅ!?」
「わ、私達がやるんですか?」
「心得その3、活躍をアピールすべし。」
これは予想外な展開だった。協力して一掃しつつ、トゥルーネ洞窟も同様な形で行うかと思ったが、ここでネプテューヌの活躍をさせるとなると…。言わないでおこう。これも彼女成りの“気遣い”であり“優しさ”なのだろう。
そう考えていると、ユニがネプギアの右太腿に着けているポシェットからNギアを取り出し、広報用に撮影してくれるとのこと。…何時もNギアをそこに携帯してるのか。せめて腰とかにしてほしい所。目のやり場に一瞬困った程である。
「面倒臭いなぁ…。まぁいいか、スライヌくらい、木の枝や丸太でも倒せるからねっ!」
そう言って、ネプテューヌは坂道を前転しつつ、前宙を決め武器を呼び出す。
「行くよ、ネプギア!!」
「うん、お姉ちゃん!!」
ネプテューヌに続くように、ネプギアがビームソードを出し、二人は応戦体制に入る。そして一番近くにいる2体のスライヌを、斬り付け2匹のスライヌは消滅する。
「流石ネプギアぁ、我が妹よ!」
「えへへ、うん!」
2匹のスライヌを倒した騒音に周りのスライヌが気づいたのか、何処からともなく画面外含め徐々にネプテューヌとネプギアに大量のスライヌが近づいてくる。しかし、腐ってもプラネテューヌの女神とその候補生。迫り来るスライヌを舞うかのように次々と倒していく。だが、スライヌは減るどころか徐々に増えている。一体何処から出てきている…。
「幾ら何でも、数が多すぎるわね。」
「確かに、画面外からどんどん出てきやがる。」
「アンタ、文章での説明で画面外って言われても分からないわよ。それに、前々から思ってたけど、表情が硬いから本気なのか冗談なのか分からないのよ。」
「…的確な突っ込みどうも。」
「そんなことより、私達も手伝うです。アイちゃん、永守さん。」
「そうね。」
「…助太刀するか。」
そう言いつつ、俺達三人はネプテューヌ、ネプギアの元へ走り出す。
「アイちゃん、コンパ、えい君!!」
足はかなり速い方で、助人一番手の先制攻撃として、左手で懐から短剣を、右手には銃を呼び出す。因みに、使用している銃は俺の私物ではなく、諜報部に導入予定である武器で試験運用兼ねて使ってほしいとの頼み事で使用している。見た目は至ってシンプルな自動拳銃だが、使用する弾が“ケースノン弾”と言って、発砲後に空薬莢が出ないという特徴を持っている。何でも、とある諜報部員が運悪く撃った後の空薬莢が肌に当たり、火傷してしまったというのが切掛けらしい。3ドットのグロウサイトで、狙いは付けやすくもなっている。発想はいいが個人的にはリボルバーの方が得意であり好みでもある。
…説明が長くなってしまったが、その銃で1匹に対して2発撃ち2匹、斬撃で1匹を討伐する。それに続いてアイエフは、両手にカタールを呼び出し3匹同時に斬り付け、コンパは巨大な注射器をスライヌの脳天あたりにブスリッと刺した。地味に痛そうだと感じた。
「当に百人力!この5人なら勝ったも同然!!」
「ぬらららららららららら―――――」
ネプテューヌがフラグ的な発言を言い終えたと同時に、信じられない数のスライヌが現れ一斉に此方に向かって飛んできている。
『んん…!?」
「なん…だと…!?」
一体何処に隠れてたんだこんな数。だが、それだけではなかった。飛んでいるスライヌの一部が集結し、スターダストならぬ“スライヌダスト”の如く上から降ってくる。
「うわぁ!変なとこ触んな!!」
「気持ち悪いですぅ…!」
「そんなとこ、入って来ちゃだめぇ…!!」
「わははは、くすぐったい、死ぬ、助けて!!」
「…クっ。」
ネプテューヌは永守を助ける為向かおうとしたが、スライヌに押し倒され、あらゆる所をprprされている。
アイエフも同様にスライヌが纏わり付きprprされている。
ネプギアとコンパに至っては服の中に入ったりされ、あられもない状態になっている。
襲い掛かってくる多数のスライヌに5人は、遊ばれているような事になっている。援護射撃を試そうにも、スライヌの数が多すぎる為に、体当たりしてくるスライヌを手で叩いたり、銃で突き捨てたりしつつ銃撃で応戦するが精一杯な状態だ。足元に張り付いたスライヌを、飛んできたスライヌを掴み足元のスライヌに叩きつけ、そのまま射撃、飛び掛かってくるスライヌをスライディングで交わし、奥のスライヌを射撃といった形で手一杯な状態だ。それでも尚スライヌは増え続け集まってくる。当に地獄絵図である。
「ぬ~ら~。」
「ぬ~~ら~~。」
「ぬ~~~~ら~~~~。」
「ぬ~~~~~~~~ら~~~~~~~~ぬら~。」
それでも尚、容赦なくスライヌが迫ってくる。
そんな中、振りほどいたかの如く上空に吹き飛ぶスライヌの山が二つほど飛び散っていく。片方は吹き飛ばしたスライヌが一斉に消滅。もう片方は吹き飛ばして落ちてきたスライヌを一振りで消滅させる。
「アイ…エフ…?」
「だあああああああっ!!お前らの魂、冥界に送ってやるよ!!!!」
その後、普段のアイエフとは思えない非常にキレのある動きによる無双が繰り広げられることとなった。
5人の力(後半は俺とアイエフでの無双だったが)でラスーネ高原のスライヌ討伐に成功した。残りの4人はそれぞれ疲労困憊な状態で仰向けになってたり座り込んだりしている。俺はそこまで疲れてはいないが、胡坐の状態で左手で頭を抱えている。妙に体中、特に手の平がベトベトになっている。
「どうしてこうなった…。」
「はうぅ…暫くはゼリーや肉まんは見たくな~い。」
これを一部始終見ていたノワールは、ネプテューヌに対して怒りを露にしているのが目にとってわかる。
「どうして女神化しないの!変身すれば、大したことないのに…!」
「まぁほら、何とかなったし。」
「他の人に何とかしてもらったからでしょ!」
「ねぷぅ!!」
「そんなんだからシェアが…。もういい、頭を冷やすこと含め、精々休んでなさい!後は私一人でやるから。」
…言いたい事は分かる。ノワールから見たら、手抜きや舐めプに見えたのだろう。流石にここにいる農村の方々は“女神化しないとスライヌも倒せないの?”っていう人はいないだろう。とはいえ、俺も実践データのない試作銃の運用テストを兼ねている時点で舐めプしてるようなものだろう。
「トゥルーネ洞窟まで案内して。」
「あ、はい!」
「あ、私も…。」
「一人で行く気か?万が一を考えて俺も―――――」
「大丈夫よ。ユニはネプギア達の介護を。永守は英気を養っておきなさい。」
「うん…。」
随分とつれない態度だ。ユニの実戦経験兼ねて連れて行ってもいいだろうと思う。戦力の邪魔になるのか、ケガさせたくないのか。しかし、妙に胸騒ぎがする。野生の勘が一人にしてはいけないと警告している感じだ。…着いて来るなとは言ってないし、蛇男宜しくという具合に着いて行くか。
「おぉ!可愛い~!私のメアドにも送っちゃえ!!えい君、えい君。みてm…あれ?えい君は?」
【トゥルーネ洞窟】
「消えなさい!!」
トゥルーネ洞窟内に住み着いているモンスターを、ブラックハートことノワールが次々と華麗に倒していく。現状からみれば、まさに“向かうところ敵なし”という感じである。何事も無く最深部の突き当りまで向かう事が出来た。
「行き止まりか…。打ち止めね。」
危険となり得るモンスターはあらかた片付いたので、農村に報告する為、最深部から出口まで戻ろうとする。その時だった…。
グルルル―――――
「エンシェントドラゴン!?何故こんなところに…!!しかも何、この感じは…!?」
ドッスンッという重々しい足音と共に、暗い洞窟の奥からエンシェントドラゴンと言う
「へぇ、強そうじゃない。でも、勝つのは私よ!!」
後ろ壁まで飛んでおり、そこから壁を蹴りドラゴンに勢いよく向かう。エンシェントドラゴンは振り下ろした腕を戻し終えたところで、防御に回るには間に合わないだろうと判断しており、このまま斬り倒せると判断しての行動である。
「隙だらけよ、貰った…!!」
次の瞬間、悲劇が訪れる―――――
突如、エンシェントドラゴンの頭に飛び乗ってきたヤンキーキャット。しかも、報告時には確認されていない汚染状態のヤンキーキャットが、そのまま飛び乗った反動を利用して、ノワールに向かって体当たりを仕掛ける。突然の攻撃な上、勢いよく飛んでしまった為避けることができない。
「ぐぁっ!!」
ヤンキーキャットの体当たりを直に受けてしまい、後ろの壁に背からぶつかる。痛みを堪え体制を立て直すため、立ち上がろうとする―――――が、ノワールは急に力が抜ける感覚に陥り、女神化が解除される。突然の出来事に「えっ?」と声を上げてしまった。女神化が解ける要因はウィルス状態になった場合。だが、それとは違った感覚だと直感する。女神化さえできれば苦戦する事のない相手だが、何故か女神化が出来ない。それどころか徐々に力が抜けている感覚に陥っている。そんな事などお構いなしに、目の前には敵意を剥き出しているドラゴンが、一歩ずつ近づいてくる。
「あ…あぁ…。」
始めて恐怖を感じ、自らにおごりが有ったことを悔やむ。逃げようにも後ろは壁、退路もエンシェントドラゴンの方となっている。何より、恐怖で足がくすんでしまい思うように立ち上がれない。ドラゴンがノワールに向けて、両手を振り上げる。誰がどう見ても振り下ろす構えだ。無意味とはいえ本能的に武器を持ち防御の構えをする―――――
「はぁああっ!!」
突如、エンシェントドラゴンの足元に、短剣が刺さるのが見え底が青く光り、人が放出されるかのように現れる。その人物はその勢いのまま、右手に刺さっていた短剣を持ちつつエンシェントドラゴンの顎にアッパー、付近にいたヤンキーキャットに回し蹴りをする。不意をついた為、二体のモンスターは防御できず、エンシェントドラゴンはそのまま仰向けに倒れ、ヤンキーキャットは壁にぶつかる。その人物は着地をすると、直ぐ格闘家のように身構える。右手にはバタフライナイフ、左手にはリボルバー、そして見覚えのある後ろ姿―――――
「え、永守…!?」
間一髪だったと言えよう。あの後胸騒ぎがあった永守は、スニーキングの如く着いて来ており、巨大な竜が現れノワールが吹き飛ばされた上に、女神化が解除されている現場を見てしまった。走っても間に合うとは思えない為、テレポートを使い間に合わせたと見える。
「女神化が解けている事以外は無事か。」
「なんで貴方がここにいるのよ!!」
「…着いて来るなとは聞いてないからな。」
「そんなことはどうでもいいの!それより逃げなさい!これはラステイションの問題で、貴方には関係ない事よ!!今なら逃げれるわ、今すぐ逃げなさい…!!」
「逃げる…?仲間を置いていく程、俺は腐ってない。後、涙目になりそうな奴に言われても説得力ないぜ。」
「う…。そ、それでも、これは私の問題なのよ!!」
「そうも言ってられない。少なくとも俺にも関わりはあ―――――」
「危ない!!」
前を向くとドラゴンが立ち上がっており、口から炎を吐き出してくる。俺は直ぐに両手を前にだし、ドラゴンと同じように両手から炎を出し相殺している。そんな状態で俺はノワールに問いただす。
「何故、そこまでして一人で乗り越えようとする。そもそも、おごりが有ったんだろ。」
「う、五月蠅い!私は一国を背負う女神よ!他の人に迷惑は掛けられないのよ!!」
永守から見ても、ノワールは模範的な女神と言っても過言ではないだろう。だが、幾ら女神といえど、根本的には人に近い存在であり、何れ限界を迎える。そして尚且つ何処までも頑固ときている。永守はそんなノワールの態度に痺れを切らしてしまう。
「他人を頼ってはいけないと、誰が決めやた!何のための友好条約だ…!!いい加減頼る事を覚えろ!」
「誰に頼れと言うのよ…!!」
「ネプテューヌやユニ…それに、お前には頼れる友達や仲間がいるだろう!!少しは周りを見てみろ!!」
ノワールは、永守の言葉を聞きはっとする。そして理解したかのように、力が抜けているのが見える。そして、永守は目の前のエンシェントドラゴンから非常に禍々しい闇の力、「イグーニ」から放たれている力に似ていると感じる。何らかの形でエンシェントドラゴンに、その力が宿ったのだろうと考察し、少々不味い状況だと察する。永守の火炎が1分以上放出し続けている為か、力が落ち威力が弱まっている。このままでは二人共焼肉になってしまうが、永守は逃げることを選ばない。
「ちぇすとおおおおおっ!!!!」
エンシェントドラゴンの横方向から声がし、顔面に向かって飛び蹴りをする一人の少女が現れる。
「あ、貴方…。」
「ナイスタイミングだ、ネプテューヌ。助かったぞ。」
「やっほーぃ!えい君、ノワール!!ってかえい君、炎も出せたの?」
「ふぅ…まぁな。」
「あれ、ノワール。なんで変身解けてるの?」
「と、突然の事で私にも分からなくて…。」
「悠長に会話している暇はなさそうだぞ。」
蹴っ飛ばされたエンシェントドラゴンが起き上がっており、怒りを露にしているのが分かる。ネプテューヌと永守はエンシェントドラゴンの方に体制を向ける。
「流石に怒ってるか。ここからは手抜きは出来そうにない。ネプテューヌ!!」
「おーけー!ノワールも見ててよ。変身ってのはさ、こういう時に使うんだよ、刮目せよ!!」
その掛け声と共に、ネプテューヌの周りが光り出し、パープルハートへと変身する。
「女神の力、見せてあげるわ!!」
変身が完了し、決めポーズを決めている。だが、後ろから何か小さいモンスターが来ているのにネプテューヌは気付かない。その時、ネプテューヌの横を横切るように、ノワールが普段扱っている武器が小さなモンスターに向かって、勢いよく飛び突き刺す。急所を突かれたヤンキーキャットは結晶片となり消滅する。
『え…?』
「全く、隙だらけだったぞ。」
ノワールが自分の武器が急に飛んできたことに驚き、ネプテューヌも見覚えのある武器が、独りでに飛んで行った事に驚くも、その正体にすぐ気づく。その武器が永守の元へ来たことで確信する。
「ありがとう、えい君。助かったわ。」
「蒸着!とか言って0.3秒ぐらいで変身とか出来ないのか?」
「…それは無理な注文ね。」
「ノワール、少し借りるぞ。」
「え、あ、うん。」
「えい君、剣なんて使えるの?」
「武蔵伝なら全巻読んだ事ある。」
「…使えるって事ね。“アレ”やるわよ。私に合わせて頂戴!」
「…ああ、“アレ”か。了解。」
永守がリボルバーでエンシェントドラゴンを牽制し、驚いている所をネプテューヌが一瞬で距離を詰め、鋭い二撃を加える。その力は凄まじく、たったの二撃でエンシェントドラゴンが苦しい声を上げている。
「えい君、行くよ!!」
「OK。」
ネプテューヌの声に合わせて、二人同時に飛び上がり斬り下ろす構えをする。
『クロス、ヴィクトリースラッシュ…!!』
永守とネプテューヌが、それぞれV字の片方を描くように同時に斬り下ろす。エンシェントドラゴンが爆発と共に光り出し、爆散すると大量の結晶片となり消滅した。
「決まったわね。」
「数回しか練習してないのに、良く決まったもんだ。」
ネプテューヌと永守がハイタッチを決め、永守はそのまま持っている剣の刃背を持ち、ノワールに剣を返す。
「悪いな、勝手に操ったり使ったりして。」
ノワールに剣を渡し、手を差し出して立ち上がらせる。
「べ、別に助けて貰わなくても良かったのに。」
「まだ言うか。」
「でも…今回ばかりは、確かに危なかった…あ、ありがと…。」
「珍しいじゃない、ノワールが有難うって言うなんて。でも、助け合うのが仲間、でしょ?」
「国境付近を選んだ事。最初にネプテューヌに討伐させたのも、プラネテューヌの為、だろ?」
「な、な…!?」
「ふふ、えい君も分かってたのね。改めて言うわ、ノワール。有難う。」
「…ふん。」
完璧に伏せており気づかれてないだろうと思っていたノワールは、最初から思惑が突抜かれている事に照れくさそうな感じで腕を組んでいる。ネプテューヌが変身を解き、皆のいるところに戻ろうとした時、ネプテューヌの言葉で、場の雰囲気が一転する。
「そうだ!ノワールがやられそうになってた事も、報告しないとね!!」
「そ、それはダメ!!」
「おーいみんなー!」
「ネプテューヌー!仲間なんでしょー!!」
「…全く、元気だな。………?」
一瞬、永守はノワールが寄りかかっていた方から、一瞬だけだが不思議な力を感じ足を止める。ニグーラとは違った、何か不吉な力のようなものを感じ取った。
「…気のせいか。」
今は、ネプテューヌとノワールを追う事が先決の為、永守もその場から離れる事にした。
その後、ラスーネ高原で待っていた村人達にも報告(何故か、パープルハートとブラックハートの協力コンビによって倒したという話になっている。)を終え、永守、ノワール、ユニ以外はそのまま足で帰る事となる。永守は教会に置いてきてしまっているバイクを取りに行く為、一旦ラステイションに戻る。
少し教会で休んだ後にプラネテューヌへ向けて、夕暮れの中バイクを飛ばしている。暫く人気無い道をバイクで進んでいると、目の前に人が道を塞ぐかのように立っているのが見え、数メートル前で止まり、バイクから降りる。
「…子ども?」
「やぁ、初めまして。獨斗永守。」
その帰路途中の人気のない道で、不吉な奴と出会う―――――
名乗ってもいなにも関わらず、自分の名前を言われた事に警戒心を露にする。更に、その目の前にいる少年から、二週間前に行った神殿から帰る際に感じた不吉な雰囲気を察する。そして、永守は直感している。此奴は一人で立ち向かうのはやばいと―――――
「何者だ、何故俺の名を知っている。」
「ふふ。それは、ボクにとって君は重要人物だからだよ。」
「重要…?質問しても無駄だと思うが聞く。何故、俺の名を知っている。」
「言うわけないでしょ?君は知らなくてボクは知っている。こんな美味しい立場を逃すなんて出来ないよ。ま、その内分かるけどね。」
まるで子どもが玩具を独占しているように感じ、永守は良り警戒心を高める。
「一体何が目的だ…。」
「そう殺気立たなくていいんだよ。今回は挨拶しに来ただけなんだから。ボクの名は‘エンデ’。暫くは外野にいるよ。また何れ会うけどね。それじゃ。」
強烈な黒い波動と共に、エンデと名乗る少年は消えていった。最後に放った波動は挨拶代わりなのか分からないが、もし戦うとなると今のネプテューヌでも一対一で勝てるか怪しいと察する。しかし、永守は考える事を止め、プラネテューヌに帰る事が先決だと思い、バイクに乗り再び帰路を走る。
―――朝です。
翌日、俺はプラネテューヌのシェアが回復していた事を確認した。…のはいいが、シェアが回復した理由が、昨日のスライヌまみれになったネプギアのあられもない姿を、ネプテューヌが間違えて、国民向けに配信してしまい流出しているからである。
“ビジュアルショック”
“脳天直撃”
“まだまだイけるぜプラネテューヌ”
なんてコメントが寄せられていた。本当に大丈夫かこの国…。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
またしても長くなってしまいましたが、その文あらゆる所にネタを入れてみました。
また、多くの方がこの小説を開いている事にも驚いております。