素晴らしいとは決して言えないこの世界に祝福をいやマジで   作:おーり

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むしゃくしゃして書いた。今では後悔している


またお前か

 ぐるりと見回しても一面白い其処に居た。

 個室とも銀世界とも呼べない、何やら境界線が伺えないその場所は酷く曖昧で、自分が何故この場所に佇んでいるのかも記憶もあやふやで。

 はてこれはいったいどうしたことなのか?と小首を傾げていた俺へと、同じように疑問符を浮かべた青い髪の美女が困惑の表情で問いかけてきた。

 

「……あんたなんでここにいるの?」

 

 それはこちらが訊きたい。

 

「えー、とにかく此処に来たってことはお仕事しなくちゃいけないわね。コホン、――ようこそ酷く残念なる若き魂よ。貴方はお亡くなりになってしまいました。私は女神、名をアクア。貴方のような迷える魂へ(しるべ)を示すのが私の役目です」

 

 荘厳に尊大に神々しく、初めてお目にかかった女神という者はなるほど、実にそれらしく賛美されて然るべき存在なのだなぁ、と感嘆の息も漏れる。

 これで直前にあった一分(いちぶ)の前置きさえなければ、俺でも素直に崇めていたであろうに、何処か残念な女神である。

 

「――で、本当にあんたどうしてこんなところにいるのよ。あんたみたいな人間、私の管轄にはいなかったと思うのだけど。生前記録を読み解いても文字化けだし」

 

 おい、やるからには最後までやり通せ。

 荘厳な空気が微塵に消え去り、今時羊皮紙で彼女が開いた巻物片手に、どうにもお互いに要領の得ない空気が生まれる。

 だから俺が知りたいのもその辺だっつーのに。

 

「とにかく、この生死の境に紛れ込んじゃったからには、人間の魂である以上その行方を指し示さなくちゃいけないのがお仕事。な の だ け ど、」

 

 ん?

 なにやら女神さまが目を怪しく光らせてる。

 どうにもこちらを騙そうという気配が伺えるのだが、やはりここまでキャラが立っていると概念存在でも思惑の一つは抱えているという証左なのかね。

 まあこちとら身一つでどうやら死んだ身なのだし、今更騙されたところで失うモノも特にないが、

 

「正直、天国か地獄か、なんてのも今時ないわよねぇー。地獄に好き好んで行く奴なんているはずないし、天国もぶっちゃけ退屈よー? 日柄一日中ぼんやりしているだけで、なーぁんにもないところだしぃー」

 

 サティちゃんに謝れ。

 彼女を初めとしたあの人たち、自分から地獄に向かって五大スピリットを獲得してきた苦労人だぞ。

 

「そ こ で、若い貴方に今だけチャンス! 転生してみたくない? 剣と魔法の異世界へ、特典をひとつだけ持ってカミカゼアタック!」

 

 おい、その表現だと完全に自爆特攻じゃねーか。

 転生特典という響きにはwktkするが、このひとの言い分には不穏成分の方が多く含まれていて関わりたくない匂いがプンプンしやがる。

 水の名を関する割には清らかさが伺えない。

 それとも(ドブ)川の女神なの? お前千と千尋に出てた()(かな)さんのご親戚?

 

 しばらく女神さまの勧誘文句が続いていたが、俺がジト目で見続けていると自分が疑われていることにも気づいてきたらしい。

 微妙に視線が落ち着かない彼女は、こちらの沈黙に耐えかねてか、今度は土下座も掻くやという勢いで泣き落としに掛かってきていた。

 

「お、お願いぃ~! 向こうの世界に転生してぇぇ~! あっちじゃモンスターに食べられたり魔王軍に酷い目に遭わせられたりの死に方をするひとばかりで、もう一度生まれ直しますか?って聞いても同じ世界なんて二度とごめんだ!って断られてばかりなのぉぉ~! このままじゃ向こうの世界の人口がどんどん減ってきちゃって私の立場がないのよぉぉ~!」

 

 そりゃあ誰も選ばんわ。

 しかし、なるほど。

 それで平和な日本からの死者をそれっぽい文句で勧誘するってことか。

 実際、剣と魔法の世界へチート持って逝ける、って誘われるのは男子の憧れの一つでもあるしな。

 無論、そんな事情を聞いた今となっては、わざわざ危険な橋を渡る意味などない。

 ――が。

 

「いーよ」

 

「――えっ?」

 

「特典付き転生大いに結構。死んだ後も自我が残るのなら、退屈よりかはそれもまた良し。受けようじゃないの、その異世界逝きをさ」

 

 だが俺は敢えてこの扉を選ぶぜ!

 いや、実際憧れていたんだよね、こういうテンプレ転生者。

 

 快く承諾したことが意外だったのか、女神さまは泣き縋りながら感謝を繰り返す。

 もう威厳も何もあったものじゃないが、まあ俺が口を挟むこともあるまい。

 もしそれがポーズだったとしても、一期一会なのだから気に掛ける気もなし。

 そんなガン泣き女神さまへと、とりあえずはと希望する特典に関してのお話。

 

「で、正直何を寄越してくれるの? 俺こういうことって初めてだから、よくわかんないんだよね」

「ぐすっ、なんでもいいわよ? ちょっと前の人は神話に出てくるようなすっごい魔剣とか、ステータスの上限の突破とか、まあゲームみたいに色々注文付けてきたわね。実際、こっちで与えられる祝福ってのも才能か武器か、ってくらいだし」

「ゲームみたいに。ゲームねぇ」

 

 云われても、正直ゲームらしいゲームも記憶にないな。

 少しレトロなファミコン(ピコピコ)くらいならば回した気もするが、それよりかはこちとら修行と研究と研鑽と実験の日々。

 ……やべぇ。

 今更だが、特典というものには憧れていたけれど、その中身にまでは一切想像が至っていなかった。

 

「とはいっても、『無限の剣製』とか『十二の試練』とか『一方通行』とか『幻想殺し』とか、そっちの『如何にも』な特典は無しにしてもらっているけどね。著作権とかあるし」

「著作権」

 

 何やら灰色っぽい学生生活を思い起こしつつある俺とは裏腹に、やはり少々夢のないあからさまな言い分で中二(カンジャ)共の身の程をぶった切るアクア(女神)様。

 それならばいっそ、と思いついたことを思いついたままに問いかける。

 

「なんか適当に決められる一覧とか、時間とか、ガラガラとか、無いものっすかね?」

「あんまり此処に長居されても困るんだけど……」

 

 一応仕事場だし、次の人も(つか)えているし、とやっぱり身も蓋もない言い分でぶった切られる。

 おいおい、導を示してくれるのが役割だろぉー?

 示してくれよ何某かをさぁー?

 とはいえ、こっちにも頼みたいことも無いのも事実で、お互いに唸る。

 困った、袋小路である。

 

「いっそ賽子(サイコロ)で決められたらなぁ……」

「あんたもうちょっと真面目に考えなさいよ。第二の人生よ?」

「死んだ覚えも無いのにそういわれても、……あ、いや、それでもいいか? というか、できるかな?」

「……ん?」

 

 才能か武器というよりは道具扱いになりそうだけど、例えば『気狂いピエロ(クレイジースロット)』みたいなルーレットで決まるのも悪くはないんじゃないかと。

 運に自信はないけど、物事万事当たるも八卦当たらぬも八卦塞翁が馬って立場だからあまり気に掛ける気も抱えてないから気楽なものである。

 

「いや、それは気楽すぎない……?」

 

 注文した言い分を相変わらずぶった切るアクア様。

 できませぬか。

 

「できるかできないかでいえばできるほうだけど、正直こっちで用意するものとしてはこれまで以上に破格な気もしてあんまり気が進まないわね……。ていうか、間違いなく制限とか色々掛かるだろうし、使い勝手も悪くなるんじゃないかしら。素直にそれっぽいものを注文しておいたら?」

「え、じゃあネクロノミコンでいいや――」

「史上最恐の魔導書選別して何をする気よあんたわ!? わかったわよ! 最近よく聞くゲーム系のアレでしょ要するに!? あんたの特典は『ガチャ』! 但し、それなりの代償も支払ってもらうことになるからね!」

 

 おお、なるほど。ソシャゲガチャとでも言っておけば良かったわけか。

 いやあ言ってみるものだ。

 

「うぅ、突然SAN値を削るような発言するから思わず決めちゃった……。まともそうに見えたけど、やっぱり此処に来る奴ってロクデナシばっかりなんじゃないの……?」

 

 どうにも項垂れて己の決定を悔やんでいるご様子の女神さま。

 ふむ、類が友を呼ぶ、って奴だな。

 なんでもいいから頑張れ。やってみなくちゃわからないし。

 

「やかましいわよ。――それでは特典と共に異世界への扉を開きましょう。烏丸イソラさん、貴方に祝福がありますように……――」

 

 こちらのやる気もないエールをやっぱりぶった切ると、一転荘厳な空気を醸し出す女神さま。

 おお、そういえば転生というからには赤子スタートなのかしら。

 そんな思考を一瞬過らせながらも、益々白く染まる視界に目を瞑った俺が居た。

 ――驚きの白さ(なにこれ眩しっ)

 

 

 




時系列はハイスクールD×Dに行く直前
異世界遭難の最中に一回分解されたのでワンペナ
またお前か、と言われることは承知の上で書いてみた
好評なら続きやってみる。なお、原作未読書き溜め無し
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