素晴らしいとは決して言えないこの世界に祝福をいやマジで   作:おーり

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3話目drinkin無礼講!
未成年の飲酒は条例違反です。絶対にやめましょう



サイフーの中にー諭吉が何人いたってー奢ってもらう焼肉はー極上絶品格別です!

 

 おっ料理ぃーのさしすせそー、砂糖(シュガー)! (ソルト)! お酢(ビネガー)! 背油! ソイソオース! 味噌が消えた!? そんな会話の下に献上した巨蟹の甲羅を鍋替わりに、冒険者ギルドの皆さんで突っつくカニ鍋大会の開催である。

 なんせ此奴、甲羅だけで2メートルはある。

 中の蟹味噌に千切った脚の中身をほぐして入れて、皆さんで持ち寄った酒やら魚醤やらで味付けをして火に掛けて、香ばしい匂いを漂わせて宴会が始まった。

 どうやらこの世界でも蟹は極上と思しき背景を伺いつつ、そんなつまみを肴にビールジョッキみたいなドリンクをイッキする女神さまを眺めて俺もまた一献。

 うん、やっぱり美人は笑った顔が一番だ。

 

「~~~っ、ぷっはぁ~! 生き返るぅ~! 悪いわねぇ、こんな良い肴まで用意してもらっちゃってぇ!」

「いやいや、道中狩れた程度の獲物でよけりゃなんぼでも。それよかご機嫌になったようで何よりだよ」

「……それよりお前普通に呑んでた気がするけど、幾つくらいなんだ?」

「歳? 15だけど?」

「おい未成年」

 

 同卓についた先輩冒険者に当たる俺と同じ転生者・佐藤和真さんに、服装でなんとなく察してたけどさぁ!と窘められる。

 まあまあ、この世界の飲酒は年齢ではなくて個人の自己判断に依るようだし問題なっしんぐ。

 大体こんな軽口ワインで酔うほど弱くもないがな。

 ところで中世ヨーロッパでは水よりワインを常飲していた、っていう定説はインチキらしいな。いや、関係ない話だけどね?

 

 さてこんな事態になったのは至極簡単。

 この冒険者ギルドへと到着する直前くらいに、俺をこの世界へ転生させた女神アクアさまとばったり出会ってしまったことに由来する。

 なんでもこのおひと、俺のすぐ後に控えていた転生者カズマさんによって『特典』として選択されて、いっしょにこの世界へ落ちてきたらしい。

 なるほど、その手があったか。と思わず納得しかけたとき、それを察したアクアさまに涙目で詰め寄られたのはお察しである。

 

「それにしたってカズマ先輩は運がいいねぇ。最初にこの近辺に落ちたんでしょ? 俺なんて妙なゴーレムの群れのど真ん中に落ちちゃって。いやぁびっくりした」

「それびっくりで済ますなよ……!? つーかよく生き延びられたな。どういう特典を頼んだんだ?」

「ガチャ」

「は?」

 

 とはいっても、まだ使ったことも無いのだけど。

 そう説明したら、なんでコイツ生きてんだろう、みたいな目で見られていた。

 ふむ。

 

「というか使いどころと使い道がよくわからない代物だし、用意したご本人に訊いてみたいところですな。おーいアクアさまー、俺の特典ってどうやって使えばいいの?」

「そこからかよ」

「だって正直手元にそれらしいアイテムも無しですし」

 

 と女神さまへと呼び声を掛けてみたところ、いつの間にか別卓で宴会芸を披露している美女が其処に居た。

 扇子から水を出しておひねりを貰う女神さま。

 そこはかとなく、そっちの芸よりかは動くたびにちらちらと気になる短いスカートに冒険者共の視線は向いていた。

 転生の間では空気に合っていたから言わなかったけど、あの下ってひょっとして穿いてなくない?

 

「カズマさんカズマさん! おひねりこんなにもらったわよ!」

「おお、やったなアクア! それだけあれば今日の損失分はさておき、宿代二人分くらいなら賄える! よし、預かっておいてやろう」

「え? 何言ってるの? 全部私のに決まってるじゃない」

 

 喜色満面で戻ってきた女神さまに、完全に上前を撥ねる気満々のカズマ先輩。

 そしてそれに対して真顔で拒否る女神さま。慈愛の心は無いらしい。

 自分がその立場に落とされた原因がこのひとなのだから、そりゃあ対処がツンデレどころかツンドラになるのも致し方なし。

 取った獲物を本当にただ見せに来ただけの犬でも親猫でもない、ただの自慢だったと思しき態度でおひねりらを改めて己の懐ならぬスカートのポケットへと仕舞うアクアさま。スカートは膨らんだ様子がない。四次元ポッケを再現するのも神の御業のようだ。

 

「私はこのお金で優雅に高級宿で休ませてもらうわね? カズマさんの世界にもあるじゃない、男女七つにして席を同じにせず、って」

 

 相部屋は御免だぜ、とばかりに卓へ着き直し、ジョッキを煽る女神さま。

 ついでにカズマ先輩のことも煽っていた感じだが、そんな先輩が無言なのでどうしたのかとちらりと視線を向けてみると、何故か妙なドヤ顔でアクアさまを睥睨していた。

 

「おいアクア、お前がこの世界にいるのはなんでだ?」

「カズマさんの特典の所為だけど? 迷惑な話よねぇー」

「うむ。そうして特典に選んで、それが申請された以上、お前はきっちり俺と行動を共にしなくてはならない。さっきは地球での故事を持ってきたようだからこちらも敢えて言わせてもらおう、地球には、こんな言葉がある。

 お前のモノは俺のモノ」

 

 途端に始まる残虐ファイト(Easy)。

 やぁーだぁー!これ私の!わーたーしーのぉぉぉー! と泣きつつ、呑んだくれのヒモに売り上げを持って行かれる女衒の如く、問答無用でスカートを(まさぐ)られおひねりを奪い取られる女神が其処に居た。

 あんなに騒いで微塵も下着を見せないのは、ある意味鉄壁過ぎるスカートだ。

 神の御業ってスゲー!

 

 

 

  ▽   ▽   ▽

 

 

 

「――で? 特典の詳細が知りたいってことなの……?」

「あ、はい」

 

 ひと通りの問答もそこそこに、やや不貞腐れた女神さまが肘を付いてジョッキを傾ける。

 助けなかったことが不満なのか、その態度と表情はあからさまに不機嫌だ。

 なお、いっそ尊敬するくらいのゲス野郎っぷりを発揮したカズマ先輩も、雌猫に掻っ捌かれたような生傷を顔中に晒しつつも同卓。

 彼は彼で興味を抱いているらしい。

 

「私が直に弄ったわけじゃないから詳しくはないのよね。地球にあるガチャシステムを間借りしてコピペした感じのモノだし」

「あれ、著作権がどうのって言ってませんでしたか?」

「え、なに聴こえない」

 

 これは、あれか、ばれなきゃ犯罪じゃねーんだよ、という奴か。

 神は神でも邪神じゃねーか。

 

「本来人間には基本的に魔法の力が備わっていて、それを無意識的に使っている人もいるわ。けど、この世界じゃそれらを行使するには『スキル』を習得する必要があるの。その為には『職業』を得て、専用のスキルを習得できる下地をつけなくちゃならないわね」

「……ガチャの職業ってなんですかね?」

「……賭博師(ギャンブラー)かしらね?」

 

 そんな才能は得てないと思うのだが。

 

「まあ特典に関してはスキルの形をとっていても職業に左右されることは無いはずだし、使ってみればいいんじゃない? 名称を呼べば発動するはずよ?」

 

 これまで散々ガチャガチャと口走っていた気がするのだが。

 云い方の問題?

 えーと、

 

「スキル、ガチャ発動!」

 

 何も起こらず。

 

「俺のターン! ドロー!」

 

 何も起こらず。

 

「天啓の導き! 俺を誰だと思ってやがる! 運命をかき乱せ! 格の違いを見せてやる! この世は私のためにある! さぁパーティーの始まりだぁー! 我は求め訴えたり! カッラカラにしてあげる! 楽しい付録がいっぱいいっぱい! 恋符マスタースパーァク!」

 

 何も起こらない。

 お の れ 。

 

「どうすりゃええねん!」

「いやふざけんな、後半どころか大概がそれっぽくない文句ばかりだった気がするぞ」

 

 ダァン!と絶望混じりにテーブルへとこぶしを握り何なん!?と諸手を付けば、カズマ先輩の容赦のないツッコミが空しく響いた。

 ふざけてはいません割かし本気です(真顔。

 

「んー、呼び方が違うんじゃないかしら? ガチャって要するに、アレでしょ? お店の前とかにあるガチャぽん、だっけ?」

「また懐かしい呼び方を……、ガチャぽん、……ガチャガチャ?」

 

 もうガチャという言葉がゲシュタルト崩壊しそうになっていた其処に、ずらっと画面が眼前に開く。

 ……これで合っていたらしい。

 なんだか間抜けな話だ。

 

「おわ、なんだこれ。ラインナップ、か?」

「あ、先輩にも見えてるんすか。……えーと、アイテムガチャ、スキルガチャ、キャラガチャ、一日一回ガチャに女神ガチャ……放出内容の詳細は見当たりませんね。けどまあ、最近はこういう種類を豊富にして購買欲を煽るらしいですし、これはこれで福袋感が――」

 

「――……ふたりとも、私に何か言うことがあるんじゃないの?」

 

 カズマ先輩と目の前に突然出現した半透明の未来感溢れるスクリーンを覗きこみつつ、宝箱を前にした探索者の如くワクワクとチェックをしていたところで、妙に落ち着き払ったアクアさまの声が静かに響いた。

 振り向けば、天へ突き出す長い耳、鎖骨から胸の谷間へかけて露出した紺色のレオタード、網タイツにハイヒールを装着した、要するにバニーさんに変貌したアクアさまが其処に居た。

 なんでさ。

 

「……似合ってるぞ?」

「お似合いっすよ?」

 

「嬉しくない!」

 

 どうやら不本意な恰好らしい。

 いや、ぶっちゃけスタイルも悪くないのだし普通に良いと思われますが?

 脚の付け根をあしらうスカートのようなフリルもまた素敵。

 というか、今の今まで気配もなかったのに何故に突然衣装チェンジ?

 

「今のでわかったわ、あんたが発動させると『こうなる』みたいね」

「わぁお、すげぇサービスショット」

「だから、とっとと回しなさい。初回サービスで無料らしいから」

 

 これがソシャゲに嵌まる奴らへの最初の甘言か、ととりあえず目についたスキルガチャというモノを選択。

 瞬間、右手に魔法陣が浮かび上がり、グルグル回って輝いた。

 

「……終わり?」

「終わりみたいね」

 

 選択しウインドウは消えて、アクアさまも服装が元に戻っている。

 ちょっと待て、何を入手できたのか全く分からねーぞ。

 

「アイテムガチャにすればわかりやすかったんじゃないの? スキルは、此処だと冒険者カードに記載されるわよ」

 

 何とも遣る瀬無い結果に脱力しか浮かばない。

 その日は結局それで解散し、連れ立って宿屋へと歩いてゆく先輩方になんだか言いようのない感情を覚えただけである。

 ……結局お二人は一緒の宿に泊まるのですかね……?

 

 

 

  ▽   ▽   ▽

 

 

 

 さてその数時間後。

 飲み明かした冒険者たちがギルドより二次会へと繰り出して征き、後片付けを手伝うことになった俺は一緒に皿を洗っていたお姉さんに質問していた。

 

「そういえば、冒険者になろうかと思ってるんですけど手続きってどうするんですかね?」

「そういうことは業務時間内(もっと早く)に訊きましょうね!?」

 

 皿洗いのお姉さんはギルド職員でもあったらしい。

 

 





~キング・シザーハンズ
 大地と水を汚す人間共に目にもの見せてくれるわ、あと食われてたまるかと精霊の力に導かれて奮い立った陸棲の高足蟹。レベル70
 彼らが棲む処は力尽くで浄化される傾向にあり、自然生物由来以外のモンスターや人間を捕食し繁殖する。その血肉にはターンアンデッドの効果もある。ポケモンで言うなら水・フェアリー
 群棲生物でもあるので群れに遭遇した冒険者に逃げ場はない。なお、増えると巣離れをする傾向にあり、未だ見ぬ汚染地区を浄化する旅に出立する若い者もレベルは50ほどある。巣には『浄化』の際に食べ残った宝石や武器の類が埋蔵されているという噂もあるがそれを確認できたものはいない
 ポン酢で食べるのが最良。ちなみに原作には恐らく出現しません


活動報告に寄せられたご意見を参考にとりあえず書いてみました
ガチャはまだ手探りです…
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