素晴らしいとは決して言えないこの世界に祝福をいやマジで   作:おーり

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はい。時系列調整(キングクリムゾン)



ジャングルゥを飛ォび越ォえェ太陽とォ並ァんでェ

 

「だぁー! もぉーいやだぁー!」

 

 

 雇って一週間が過ぎたわけだが、()()()も堪え性というモノを見せてはくれなかったらしい。

 なまっちろい筋肉の欠片もついていないガキにしか見えない二十歳だと自己申告してきた、今では泥で汚れた白地タンクトップを着ている日雇い冒険者のカズマという男は、指示された場所へ手押し車で石材を運んでいる最中に情けのない悲鳴を上げた。

 

 

「せっかく異世界なのになんで労働してんだよ俺は!? 日雇い労働者として工事現場で働かせられるなら地元(日本)でも就職してたわ! 納得できるかこんな仕様ぉー!」

 

 

 工員らに喧嘩を売るような絶叫だが、彼らの場合それに怒りを覚えるよりも「若い奴ぁ元気が有り余っとるのぉ」という生温い目が先に向けられる。

 ガタイこそ厳ついが結構優しいこの現場の作業員らにとっては、冒険者が癇癪を起すくらい別段気にかかるようなモノでもない。

 ぶっちゃけ最弱職に就いているそれらがどう転んだとしても、明確に被害を出せたとしても、作業員らの片手で捻られるくらいには彼ら(冒険者)の実力も立場も低位置だ。

 しかも基本的に(この世界では)成人とされる14ほどから結構年を食っているのに冒険者であるという彼では……、改めて言うまでもない認識でしかなかった。

 

 

「アクアー! クエスト行くぞクエストー! このまま仕事してたらなんで此処まで来たのかわからなくなるわぁー!」

 

 

 そんなカズマはそのまま被らせていた安全メットを脱いで放り投げると、一緒に仕事に就いていたアクアという女性の作業場へと声を投げている。

 一緒についてきたので恐らくはパーティメンバーなのであろうが、カズマと比べると左官工事の才能があるのでは、と親方に思わせるくらい有能な彼女にだ。

 連れていかれるのは、正直カズマが抜けるよりも惜しかった。

 

 

「えー。カエルしか斃せないしいっぴき斃すのにも手間がかかりすぎるから嫌だって言うし斃しても汚れるしで働きたくないーって言ってたのカズマさんじゃないのー、その低レベルで何と戦うつもりなの?」

 

 

 作業ズボンに青いタンクトップで鉢巻みたいに白タオルで髪を纏めた格好であれ、恵体から醸し出される色気に作業員にとっては眼福この上なかったアクアが身も蓋もない科白でカズマの精神(やる気)をゴリっと削る。

 冒険したがっていた冒険者はナチュラルに煽られ、出足を挫かれて声に詰まっていた。

 

 

「ぬぐ、い、いいんだよもう! ココで戦わなきゃ冒険者になった意味もねぇ! 行くぞ!」

「あ、ちょっと待ってよー」

 

 

 聞けば上級職に就いているという彼女は、世話になったわね!と元気よく彼女らしい挨拶をして現場から離れてゆく。

 給仕係のおばちゃんらに出立を惜しまれつつも、カズマに付き添ってゆくアクア。

 離れてはならない理由でもあるのか、もしかしたら弱みを握って脅しているのでは、と思わせるくらいに傍若無人な扱いを甘んじて受けている彼女に対する心配こそ在れど、それを引っ張ってゆくカズマへの現場作業員一同からのヘイトは留まることを知らない。

 給仕係のおばちゃんらのスピーカーも斯くやと連想されし街中での立場を思えば、カズマに対するアクセルでの評判は虫の息も間近であったという。

 

 

 

  ▽   ▽   ▽

 

 

 

「……ちょっと来ない間に雰囲気変わったかしら……?」

「変わったどころじゃねえだろ、なんだこれ」

 

 

 冒険者ギルドへクエスト探しに足を運んだ俺たちだったが、ギルド内に蔓延る光景に少々引いていた。

 問題点は、屯する冒険者たちの恰好に集約される。

 

 統一されているのだ何故か、――妙な科白がでかでかと()()()()書きなぐられているネタ系Tシャツに。

 

 槍を持った野武士風の髪型をした男は『働いたら負け』、その隣にいる聖職者っぽい帽子の男は『ちょっとだけ、先っちょだけだから!』、一緒の卓でジョッキを片手に談笑している男は『やめろ!顔は撮るな!』。

 掲示板で仕事を探していると思しき魔法使いみたいな三角帽に眼帯の少女は『んばぁぁぁにぃんぐっ!』、銀髪で妙に可愛らしいと思わせる顔つきをした活発そうな少年は『貧乳はステータスだ!』、その子と連れ添っていると思える金髪ポニテに巨乳の女は『くっ、殺せ!』。

 他にも居並ぶ異様な光景は確認する限り全員が日本語だが、それに気づいている者は一見して居ないように思えた。居たら間違いなくドン引きだよ。

 

 

「あれ、お久しぶりですねアクアさん。それとカズマさんも。何か御用ですか?」

「ええ、えっと……その恰好は……?」

 

 

 受付の巨乳金髪お姉さんについでみたいに扱われたけどそんなことはさておいて、そのお姉さんまで全員が身に着けているTシャツ装備だ。

 お姉さんの胸元には『乳袋』と達筆に描かれているのが、……ダメだ、笑うな俺……っ!

 

 

「あ、これですか? 今とある道具屋から委託販売でギルドで取り扱っている一押しの装備なんです。着ているだけで体力を回復する自己治癒能力の強化と、一定レベルの攻撃系魔法を吸収する魔法防御、更には吸収した魔力を攻撃力へ加算する攻撃力上昇の三つの効果が付与されている新装備なんです! こんな高効果なのにお値段たったの1,000エリスで販売されていますから、アクセルの冒険者たちの間ではすっごい評判なんですよ!」

 

 

 見た目に反してガチの装備だった!?

 

 

「シンプルな外見に、なんて書いてあるのか読めないけど間違いなく凄い術式が施されているであろうデザイン文様、製作者は明らかにされていませんがこれは間違いなく高名な魔法使いの仕事ですよ……! 問題点はこれを着ている場合、上はそれ以外の装備を下着以外つけては効果が半減されるという点でしょうが、まあラフな軽装で高い防御と攻撃力と回復力まで得られるのですから、冒険者の皆さんから苦情の類は来ていないのですけど」

 

 

 いや、見た目は大事だと思うけど?

 最初此処に来たとき、夏フェスの会場かと思ったもん。

 というか、武器や頭部の装備以外だとガチで誰がどういう職業なのかが判別できねぇ。

 日本のハロウィンの方がまだ賑わってるぞ。

 異世界感が悉く消失していく……、これ間違いなく転生者の仕業だろ……!

 

 

「カズマさんも一着いかがですか? 今ならまだ在庫がありますけど」

 

 

 そう言って取り出されたTシャツには『働け、ニート共』。

 やめろ、その文言は俺に効く。

 

 

 

  ▽   ▽   ▽

 

 

 

「出足から挫いた感が否めないが……、ひとまずは冒険の準備だ。まずは駆けつけ一杯と行こうぜ」

「さんせーい! いやぁ、話が分かるわねカズマさんも。要するに今日はお休みってことでしょ?」

「ちげーよ、マジで冒険者として活動再開するための準備だよ。ていうか、お前結局それ着るの?」

 

 

 ひとまずの仕込みを終えて、空いているテーブルに腰かけて待機する俺たち。

 駄女神は先ほど受付で購入したネタ系Tシャツをちゃっかり着こなし、1人先に飲み物を注文していた。

 なお、胸元で踊っている文字は『ああぁぁんっ、女神さまっ』………………地球でのご長寿ラブコメのタイトルと伺えなくもないが、何故だろう、微妙に食い違いというか違和感というか、……迂闊に口出しするには憚られそうに文字が少々多い気がする。

 

 

「だって今ギルドに加入した冒険初心者には登録料追加500エリスでこれもついてくる、っていうくらいは推してるみたいだし。カズマさんも着たら? クエストにも役立つと思うわよ?」

「柄がもうアレしかねーじゃん。あの柄俺()だ」

 

 

 むしろアクアは何故読めないのか。お前元々地球の女神だろ?

 いや、読んだからその恰好が出来るのか? 自己主張? 女神だと言い張っても頭の可笑しい子扱いされるから止めとけっていつも言ってるじゃないの。いや、この世界の人だと読めないんだろうけれどもさ。

 

 

「というか、本当に来るのかしら。あんな貼り紙だけでパーティメンバー」

「来てもらわなきゃ困る。烏丸が居れば少しはマシになったかもしれないのになー……」

 

 

 注文した飲み物(ジョッキ)を片手に、駄女神は俺の案に訝し気に駄目出しする。

 言葉にもしたが、冒険者稼業を再開するに当たって俺が考えた策とも呼びきれぬ策はまず仲間を増やすことだ。

 同じ転生者の烏丸が居れば、目標の魔王退治にも話が通しやすいだろうから丁度良かったのだが、受付で聞いてみたところ奴はギルドへ全く顔出ししていないらしい。

 大量のゴーレムに遭遇しても生き残れるような奴だし、ひょっとすればとっくにこの街を出ているのかもしれない。

 むぅ、俺もこんな駄女神じゃなく、きちんとした才能なり武器なりのチートを要求しておけば、異世界で俺TUEEE!出来ていたのかもしれなかったのに、惜しいことをしたぜ……。

 

 冒険者ギルドから覗ける窓の外に蒼く広く澄み渡る大空に「ソラくんでっす☆ ちっすちっす☆」と妙にチャラいポージング付き謎のフェードアウトを浮かべつつ、掲示板に貼らせてもらった勧誘チラシに意識を切り替える。

 既に挙げたが、目標はやはり魔王退治だ。

 そのためにはカエルごときで留められていては話にならないし、だからこそメンバー加入の条件には『上級職のみ』と付け加えさせてもらった。

 名付けて【おんぶにだっこ。レベルが高いメンバーに引っ張ってもらって俺のレベルも一緒に上げよう大作戦!】。

 

 ……しかしこの回想で費やした1時間が過ぎようというのに、俺たちのテーブルに近づくのは給仕のお姉さん以外にめぼしい冒険者はいない……。

 ………………やっぱり募集掛けるなら報奨金出すのが必要かな?

 

 

「よし。アクア、宴会芸の出番だ! そんで呑んだくれ共からおひねりたっぷり徴収して来い!」

 

 

 第二作戦決行を決意して、駆けつけジョッキ8杯目に突入している駄女神へ発破をかける。

 つまみの枝豆(っぽい何か。ファンタジーなので詳細不明)をげっ歯類みたいに頬袋膨らませもぐもぐしていた駄女神は、俺の呼びかけに気付くとアヒルみたいに口角を変え飲み込んで、ジョッキを持ち直していた。

 

 

「カズマさん、宴会芸はお金のためにやるモノじゃないわ。芸事には矜持があるのよ、それを失くして乞食のように金銭を要求するなんて、浅ましい真似は私はしたくないわね」

 

 

 一転し、淑女のような態度を顕わにジョッキを傾ける駄女神。

 鳴らないはずのグラスが、何処かハードボイルドにカランッと氷の音を響かせた。

 幻聴だ。

 なお、言っていることも仕草も立派だが、手放さないそれのお陰でやはりイマイチ神としての厳格さは無い。

 ……というか、お前1週間前までは此処で酒盛りの際におひねりしっかり貰ってたじゃねーかっ!

 

 ……………………あっ、学習した?

 稼いでも俺が売り上げかっぱらうから、搾取されるくらいなら稼ぐ気もないってことか!?

 オノレ駄女神ぃッ! 小賢しい計算しやがってぇぇぇ!!!

 

 

「あのー、ちょっとよろしいですか?」

 

 

 酒代で嵩み掛ける借金の代わりにこの駄女神どうしてくれようか、と反撃の烽火を上げかけた俺のところへと、古きテンプレ魔法少女っぽい三角帽に眼帯をした少女が声を掛けてきたのは丁度良いタイミングだったと言えよう。

 良かったなアクア、売られずに済んで。

 

 ……ていうか、この子もやっぱりネタ系Tシャツ着用なんだな。

 

 

 




原作との相違点が色々あるかもしれませんが妄想全開で続きを書く
辻褄合わせ? いえいえそんなことはないですよぉー(棒
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