白き鋼鉄のXの発売日をはじめとした続報が続々来てる中ようやく投稿してますがぼくはげんきです
二つの陣営が入り乱れた運動場は閑散としたものとなり、今やこの場には3人の悪魔を残して誰も彼もがいなくなってしまった。
二人の騎士が彩った剣戟の世界もまた、然るべき戦いが終わったことを示すかのように霧散していく。
悲観に暮れる暇はない。
「『騎士』、撃破」
『
朱乃も祐斗も、先程の小猫も。皆彼女一人にやられた。
そしてこの盤面において、たった一人の『
「ぐっ……待て!」
正直、度重なる連戦と大多数への
ボクがなんとかしないといけない。
「どう考えても其方の負けでしょう? 無駄に傷つくことを良しとしないのならば、大人しく身を引くことをお勧めしますわよ」
雷の鎖から逃れたレイヴェルが焔の翼をはためかせながら降りてくる。余裕綽々といった表情だ。
戦う必要もないだろう、わざわざ手を下す必要もないだろう。そんな彼女の情を覚える。
……だったら、その厚意は受け取っておこう。
「試合が終わっていないのなら諦める道理はない。それにキミは、グレモリーとフェニックスの頭首達が見ているこの場で、自分の主の意思を蔑ろにしろと言うのか?」
「詭弁ですわね。主を思えばこそ、この戦いはもう諦めるべきですわ。主にみすみす下僕がやられていく姿を見せつけることが温情だとでも?」
平行線だ。勝たなければならないボク達と、最悪負けても構わない状況にある彼女らでは見えている世界が違う。
「それに、貴方もまるっきりの新入り悪魔でないのなら
ルールに抵触してしまいますからもてる数に限りはありますが、レーティングゲームに大人気のこれを生産元が持っていないわけがないでしょう?」
フェニックスの涙。レーティングゲームにおいて使用制限を課せられる程の逸品。使えばたちまちにあらゆる傷を癒すフェニックス家の万能薬。
これの流通こそが前大戦において圧倒的なダメージを受けた悪魔の中でフェニックス家を台頭させた道具。端的に言ってしまえば成金――
グレモリー家もこの婚約話に躍起になるワケだ。
理解はするが、それがリアスの本心を縛り付ける枷であっていいわけがないッ――!
「ご高説感謝するよ、レイヴェル・フェニックス。ボクが諦める口実も、諦めることに甘えてしまいそうになる甘言も受け取る。
だがボクは、だからこそボクは。リアスが諦めると言わない限り諦めない。彼女が諦めると言ってしまった時は……有難く、キミの情けを受け取る」
「ッ……! 知りませんわよ、主が負ける姿を見届ける以上の屈辱を、お兄様に味あわされることになっても……!」
「……ああ」
ボクがこれからやろうとしていることは、愚かなのだろう。
◆◇◆
雷の翼を纏う。悪魔に似つかわしくない、蒼白く光る翼だ。
ボクは羽ばたく。彼女の自由を掴む為に。立ち昇る朝日はまだ早いけれど、輝く翼は夜の闇でも消えることはない。
ボクは、彼女の自由を諦めたくはない。
「リアス……! アーシア!」
「ヴァーリ……!」
「先輩……!?」
リアスはボロボロ、アーシアも『爆弾王妃』に追い詰められ、今まさに三人と同じ末路を辿りかねないという瞬間。
間に合った……!
ライザー・フェニックスが『爆弾王妃』に追いついたボクに少しだけ驚くような顔を見せる。
「『戦車』の小僧……レイヴェルめ、見逃したのか。戦況に大差はないが面倒をしてくれる」
「妹が反抗期だったおかげで間に合ったみたいだ」
不愉快そうな顔をするライザー。ああ、そうだな。不愉快だろう。
「ライザーさま、彼のお相手、私がいたしましょうか?」
「ああ。完膚なきまでに叩き潰してやるといい」
『爆弾王妃』が右手を構える。ボクはそんな彼女を一瞥して、ライザーに向き直る。
「ライザー・フェニックス。貴方はボクと祐斗に言ったな。
『お前達の一撃はリアスの一撃だ』と」
「……? ああ、言ったとも」
「なら、ボクが見せる。リアスの一撃を。
ボクがリアスに代わって、貴方に挑戦する」
「なっ……ヴァーリ……!?」
リアスはボロボロの状態でボクを睨む。だがボクは、彼女の我儘に着いていけても、その我儘な挑戦を見過ごすことはできない。
「リアス、『
仮にこのまま戦いに入ったとして、ボク達の回復を担当できるアーシアを放っておくとも思えない。だからここはこうするのがいいんだ」
「でもッ、それじゃあ貴方が!」
「リアス」
彼女の言葉を遮る。ボクはそれまで以上に真剣な面持ちをしていただろう。
「キミにこれから辛い選択を迫る。きっとこれは、ライザー・フェニックスとの婚約よりもキミに辛い未来をもたらすことになってしまう。
それでもキミが自由を求めるなら……ボクはキミに過酷な未来を押し付けることになってしまう」
その先にあるものが、あの時の
ボクには、目の前にいる今の
「そうしないとライザー・フェニックスには勝てない。だから……こうするのなら、キミにも覚悟をしてもらわないといけない」
「……何を、するつもりなの」
「ライザーを倒す」
確固たる意志はここに。決意は決まっている。
あとは、彼女がそれを求めるかだけ。
リアスはボクの眼差しを暫く見続ける。任せるか、任せまいか。ボクの言う「過酷な未来」に即答することを許されない気を感じているのだ。
「ヴァーリ……正直、私は貴方がライザーに勝てるだなんて信じることはできない」
「わかってる」
「でも貴方の言う通り、今のままではどう足掻いても私達は詰み。私の望みを叶えることはできない」
リアスの言葉は尤もだ。手があると言っても、それをこれまで仄めかしもしなかったというのに信じろという方が難しいだろう。
彼女が否定しても、それは仕方ないことだ。それならば、ボクは愚直に、今のボクのままでライザーを倒しにいく。勝つ確率が万に一つもなかったとしても、彼女に臨まれたヴァーリ・アシモフとして戦う。
「――でも」
だが。
「貴方が私に覚悟を求める代わりに、貴方の秘密を一つ
冗談めかして言っているが、彼女は過酷な未来を受け入れる目をしていた。
それでこそリアス・グレモリーだ。それでこそ、ボク達の『王』であるリアスだ。
「貴方が隠し事を晒してもいいと言っているのだもの。私は果報者ね」
「……かもしれないね」
ふっ、と笑い合って。ライザーに向き直る。
「作戦会議は終了か? どの道結果は変わらないんだ。もっとしっかり話し込んだ方がいいと思うぜ?」
ライザーがクク、と笑う。
情けか。侮りか。
いずれにせよ、ヤツは今ボクに挑戦状を叩きつけてきた。
いや、ライザー・フェニックスにとってそれは、挑戦状ですらなく、リアス・グレモリーとの婚儀を終わらせる最後の儀式という認識なのかもしれない。
「もう十分だ、ライザー。ボクはお前に勝つ」
「ハッ! デカイ口を叩くんじゃあないぞ雷使い!
貴様程度の雷が、フェニックスの貴焔に焼かれることをせいぜい光栄に思うがいい!」
ライザーの炎が、屋上全体を激震させる。
同時に、ボクの雷もまた周囲一帯を蒼白く照らし、夜の学校とは思えない光景を作り上げる。
「いくぞッ……アルビオン! 『
『委細承知だ我が宿主よ! 嗚呼――久方ぶりに白龍皇の時間を楽しもうではないか!!』
雷を右手に集約させて、振るう。
稲光は焔をも巻き込んで輝き、ボクの背に集約される。
雷光に阻まれた翼が、姿を現す――
「煌めけ、白き翼よ――悪滅の雷を以て、その光翼を晒せ!
誘因子隔離用人工神器、一時機能停止……
悪魔として失格も甚だしい白の翼が雷を振り払う。
雷光を帯びた蒼い翼膜から白い羽根のようなプラズマが散る。
その翼は炎の翼を携えるフェニックスという特別を前にしても尚、異端であった――
「蒼白い、龍の翼……! それに神滅具『白龍皇の光翼』だと……!?」
ライザーの顔色が変わる。彼のその顔は、ゲーム開始前に渡された眷属悪魔達の情報にはこれが一切、記載されていない情報であったことの証明には十分で。
「リアス……お前、赤龍帝を保護していたのに飽き足らず、白龍皇までも手中に収めていたというのかッ!?」
赤い焰の群れを前にしても尚、その雷光は色褪せないものであった。
◆◇◆
『「白龍皇の光翼」……だと……ッ!?』
ドライグの驚愕する声が魂の中に響く。刹那、わたしの魂にもわたし自身の叫びが響いた。
「あれが……!? 先輩が、『赤龍帝』と対を為すっていう、『白龍皇』……!?」
『どういうことなの……!? ヴァーリ・アシモフの魂からは全く、二つ目の神器の波長が確認できなかった! 彼の翼が晒されるその瞬間まで!』
『俺の嗅覚もまるであの男からアルビオンの気配がなかった……高精度のステルスをヤツが持っていた筈もない。それは雷撃を操るヴァーリ・アシモフからも同様に。
ヤツは――否、ヤツらはどうやって、俺達からその存在を欺けていた……!?』
赤龍帝には対となる龍、白龍皇という存在がいる、というのは部長やドライグに聞かされた話だ。
赤龍帝と白龍皇――二天龍に関わった者はロクな生き方をしないとか、なんとか。他にも色々。
勿論そんなロクでもないことにわたしの周りの人達を巻き込みたくはないし、わたし達はこれでも意識して白龍皇の存在を探していた。
『
先輩がそうだとは微塵も思っていなかった。
赤龍帝と白龍皇はそれまで出逢えば殺し合う宿業に生まれた間柄で、お互いの存在を認知し合えばその時点で殺し合いに発展するものだと思い込んでいたからだろう。わたし達は身近にいる人達が白龍皇なわけがないと、オカルト部員の人達の神器の探知を怠っていた、のかもしれない。
『……しかしヴァーリ・アシモフが白龍皇ということならば、当然戦闘練度や二天龍としての戦闘経験、能力は俺達よりも上だということになる。
相棒、心象の翼よ、お前達が当代の赤龍帝となってしまった以上、ヤツの戦いはしっかりと見ろ。それがお前達のためだ』
「………」
先輩の翼はどこか毒々しく、寂しげだった。
◆◇◆
「白龍皇……ヴァーリが……?」
リアスが戦場の渦中で呆けている。だがそれでいいのかもしれない。
ライザーがリアスに向かって滾る感情を露わにしている。それも当然だろう。
戦場が静かだ。少なくともボクの観て、聴いていたこの戦場は、始まりから終わりまで常に慌ただしく、目まぐるしくしていたというのに。
いや。いいや。そうだとしても。
「ライザー……」
「リアスの『
そう溢すと、彼の軽い口は重くなった。ライザーはボクに対して軽口を交え合うつもりもなく、煉獄の炎を纏って突貫してきた。
「下がれユーベルーナ。ヤツが『白龍皇』ならば俺がやらねばならん!」
「承知……!」
「白龍皇……貴様がどれだけの異端を有していまいが、俺の炎は魂魄を浄化する煉獄の炎! いかに二天龍の一角といえども魂に作用する焔を受ければッ!!」
ライザーの炎が迫る。だがそれはブレたボクの身体を通り抜ける。
「話にあった
舌打ちをしながらライザーは構わず炎の弾丸を放つ。いくら同じものを放とうとも……
……いや!?
「足元に……!?」
足元に炎が着弾し、爆発。煙を巻き上げる。これは……!
「目くらましか!」
周囲が見えない。だがこの程度なら!
「……ッ、そこからか!」
左に向き直り、身体を捻じる。すると目を向けた先からはライザーの右腕が煙を突っ切って伸び、ボクの首があった場所に迫って来ていた。
カゲロウの存在を知っていながら、攻撃を行ってきた……?
「お前のその無敵の守りが、お前自身の神器由来なのは知っている! だったらば『白龍皇の光翼』のようなデタラメな力はないッ! お前のその無敵の力は、お前自身が溜め込んでいる雷のエネルギー量に依存していると踏んだぞ!!」
「ッ……!」
目敏い! やはり玉石混交としているとはいえ、群雄割拠とした悪魔社会のレーティング・ゲームで勝ち星の方を多く挙げているだけはある。
眼が良いんだ、このライザーは。データにも目を通して、恐らくはここに来るまでにボクが行ってきた戦いも観ていたに違いない。
ライザー・フェニックスは、『不死』と『眼』によって生きている。本質は長期戦特化のスタミナタンク!
……今のボクはライザーと同じで長期戦に向いている。だがこの長期戦の傾向には致命的な相性がある。
「うおおああああああああ!!!」
咆哮。ライザーは吼えると、ボクの回避に対して間髪入れずに拳を振るい、炎の弾丸もまた連射する。
「貴様が白龍皇だというのなら、俺の不死は最早松と鶴のみを飾る吊るしひなの飾り物に等しい!
であれば、貴様を早々に仕留めなければ……俺は負ける!」
白龍皇の力は半減の力。攻撃を加えた相手から断続的に戦闘能力を半減させ続ける、簒奪の力。一撃加えて白龍皇の力で半減を続ければ、ライザーに勝ち目はなくなる。
一撃だ、一撃当てればそれでいい。
――だというのに、ボクの反撃手はライザーに当たらない。これがヤツの執念か、ライザー・フェニックスの誇りが為す業だと言うのだろうか。
「俺に負けねばならない道理などない! グレモリーが相手だろうとも、白龍皇だろうとも、それが単に悪魔の下僕でしかないというのなら尚のことに!! だから俺は!!!」
「泥臭く卑怯と後ろ指を指されられようとも構わない。どんな誹りを受けようとも! 彼女に自由に羽ばたく翼を渡す約束をした!! だからボクは!!!」
お互いの拳がすれ違う。拳戟は標的に触れることは能わず、空を切る。
ライザーはボクにボクの雷撃のエナジーを使わせることはできなかった。ボクはライザーに布石の一撃を加えることはできなかった。
だが、それらがほぼボクとライザーの二人の身体を掠めそうになるまでに肉薄していた事実は覆らない。
「「今ッ!! お前に負けるわけにはいかないッ!!!」」
紅い焰と蒼い雷が、互いの敵意を感じ取るように弾けた。
アキュラくんが元気に討滅とかグズとかバケモノとか言ってるとこはやく見たいです