赤き謡精、白き雷霆   作:エステバリス

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 一章書くと一年放置する病気にでも罹患しているのでしょうか。
 あけましておめとうございます。そして来年もよろしく……ソーリー


白鋼守撃のL×R
昔日


 

 

 わたし、兵藤一誠は駒王町に一番近い場所に位置する空港に足を運んでいます。なぜと問われると、今日は空の向こうからやってくるお客様がいるからで。

 

「あ、ソーくん! いらっしゃい日本に!」

 

「ああ。久しぶりだなイッセー」

 

 ソーくん。名前を曹操というわたしの小さい頃からのお兄ちゃんみたいな人。

 ライザー・フェニックスさんと部長の婚約騒動が終わってから少しした頃、ソーくんから一通の電話が届いた。

 内容は『諸事情あって暫く駒王町の近くで仕事をするから、よければ部屋を貸してほしい』というものだった。どうやら色々込み入ったお仕事で、ソーくんの他にもイッくんともう一人、わたしの知らない人も一緒に来るらしく。それでもお母さんに聞いてみたら一発で「懐かしいから是非使って~!」と言ってくれたのだから家族の縁っていうのはすごく大きいものだ。

 

「えっと、ソーくんだけ? イッくんともう一人の人は?」

 

「イリナともう一人……ゼノヴィアは今職質を受けている」

 

「……はい?」

 

 え? なんて?

 

「職質を受けている。大事な持ち込み物が検査に引っかかったんだ」

 

「え、ええ……」

 

 職質って……なにを持ってきたんだろう……ソーくんがお父さんの大事なお仕事のお手伝いをしているって聞いてるから、それ関連なんだろうけど。

 

「多分、なんとかできると思うんだが……本人たちが少し問題がある。だからもしもの可能性が否定できない」

 

「ど、どんな人なの……」

 

 ソーくんはすごくしっかりしているから、悪い人っていうわけじゃないんだろうけど。もしわたしとあんまり波長の合わない人だったら嫌だなぁなんて、俗物的な考えがよぎる。

 そんなことを考えていると、ソーくんがふと、やって来た方に目を向けなおした。

 

「イリナ。ゼノヴィア。こっちだ」

 

 イッくんが来る! そう思ったらわたしの心は自分でもびっくりするくらい高揚していて、幼馴染と再会するっていうだけでこんなにも明るい気持ちになるんだなって思えてしまった。

 

「イッくん!」

 

「その声イッくん!? お兄ちゃんの傍にいる!?」

 

 イッくんの声が聞こえる。その時、わたしは一つの違和感を抱いた。

 

『……あれ、イリナの声、変わってなくない? 男の子ならもう変声期なような……』

 

 モルフォの声(わたしのこころ)が感じた僅かな違和感。それを証明するように、そこには()()()()()()が立っていた

 

「「久しぶり!! イッく~~~~…………ん…………?」」

 

 声が重なる。……あれ、イッくん……?

 

「「……女の子……?」」

 

 どうやらわたしたち、お互いが男の子だと思っていたらしいです……

 

◆◇◆

 

「おばさん、おじさん、久しぶりです。こっちが、仕事の都合で一緒に日本に来たゼノヴィアです」

 

「ゼノヴィアです。ふつつかものですが、紫藤兄妹ともども暫くお世話になります」

 

 ゼノヴィアと名乗る青い髪の女性はぺこりと一礼をする。

 

「彼女は、その、少々世間がわからない。責任や金銭に関わるトラブルが起きたらオレが責任を取るから、どうか大目に見てあげてください」

 

 そーくんがそういうと、彼女は露骨に眉をひそめる。お母さんたちは数年ぶりのそーくんとイッくんを歓迎しつつもゼノヴィアさんを快く受け入れる。数年会っていなかった娘の友達と、その仕事仲間をその場返事で泊めてくれる辺り懐の深い両親だなって心底思う。

 

「曹操くんとイッくんは本当にお久しぶりねぇ。ゼノヴィアさんも、自分の家だと思って寛いでね」

 

「ありがとうご婦人。それでは遠慮なく厄介に預からせてもらう」

 

 あらかじめ聞いていたゼノヴィアさんは、確かに不思議な印象こそ受けたけどそこまで妙ちくりんな人じゃなかった。服装とか態度も変だというほど奇妙ではなく、対人交流もしっかりできている。そーくんが「世間知らず」だと言うからにはその気はあるのだろうけど、そこまで気を張らなくてもいいのかな……?

 

「……あ! そういえばお母さんお父さん!! なんでイッくんが女の子って教えてくれなかったの!? わたし全然違う人とハグしたかと思ってすごい恥ずかしかったんだよ!?」

 

「あら、知らなかったの?」

 

「あれだけ仲が良かったんだからずぅっと知ってるものだと思ってたぞ」

 

 確かに……ずーっと家族ぐるみで仲良くしていたのに今日になるまでイッくんが女の子だなんて一切気が付かなかったっていうのはかえってすごいことなんじゃないだろうか。

 

「兵頭さん、心ばかりですが。オレたちの宿代です」兵藤

 

「そういうの気にしないでいいのよそーくんったら! 昔からイッセーによくしてくれたし、今だって頼ってくれるくらいなんだからこれは家族付き合いってことにして」

 

「し、しかし……」

 

「どうしてもっていうなら、そのお金でイッセーも連れてご飯でも行ってきて。ゼノヴィアちゃんとはイッセーも初対面だけど、久しぶりに幼馴染水入らずで楽しんで来て」

 

「……感謝します」

 

 そーくんはそう言って、封筒を持ち込んだカバンの中にしまった。正直、私だって奢られるのは本当にいいのかなっていう感じで好きじゃないんだけど。そーくんの顔を見ると、私が断ったら絶対えらいことになってしまうんだろうなってわかってしまう。

 

「三人とも、玄関で立ち話もなんだからさ。上がってよ。お部屋案内するから」

 

「ああ。……お邪魔します」

 

「お邪魔しまーす」

 

「お邪魔します」

 

 三者三様のお邪魔しますで、家に三人お客さんが来たのでした。

 

◆◇◆

 

 カキィン、という金属音が黄昏時の空に木霊している。

 野球部の人達が「こえろー」とか、「よっしゃ回れー」とか言っている声が聞こえる。

 

「イッセー、ゴロを捕球する時はもっと腰を下ろして、胸を張るの。グラブは頭より少し前で平行になるイメージで地面に少しだけつければいいわよ」

 

「は、はい!」

 

 その日私たちはそんな野球部と同じく、運動着で野球の練習をしていた。理由は一つ、来週は駒王学園の数ある行事の一つ、球技大会が控えているから。

 クラス対抗戦、男女別競技、色々あるけど、部活対抗戦というものもあるわけで。悪魔の皆さんがいるこのオカ研で、人間な上運動音痴な私が練習に混ざるのは忍びなくもあるけれど、部長は「あなたはオカ研の大事な部員です。それに総力戦に備える必要だってあるのよ!」と熱弁するので、私もつい、熱が入った練習をしてしまうのです。

 

 ああ、でもこういうの、いいなぁ。それに部長やみんなが確かに私を部員の一人として必要にしてくれているんだから。私、がんばれる。

 

「そういえば、球技大会って文化祭や運動会……じゃない。体育祭とも違うからお父さんたちは来れないんだよね」

 

『一応父兄の参加自体はOKみたいだけど。お父さんとお母さんに言ってみる?』

 

「んーん。平日だもん。無理に来てもらうことないよ」

 

『……そっか』

 

 モルフォにそう言われると、なんだか私の心が私の言葉で抑圧されたみたいで、少し胸がチクチクする。

 

「イッセー、今日は大分遅いから早く帰るのよ。ご両親に心配をかけてはいけないわ」

 

「はい。この前から幼馴染が三人ほど仕事で居候をしているので、寄り道なしで帰ろうと思います」

 

 私が言うと、部長は途端に怪訝そうな顔をして

 

「……そうなの?」

 

 と聞いてきた。

 

「え? はい」

 

 「妙ね」そう部長は呟くと、早く帰りなさいと言ったにもかかわらず、その場に立ち止まって、私の足を引き留める。あ、あれ……私なにかマズイこと言ったかな……?

 

「イッセー。駒王町が私……グレモリーとシトリーの二つの家の悪魔によって管理されていることは教えたわね」

 

「は、はい。確か、ちょうどキレイに二分割して土地を管理しているとかなんとか……」

 

「悪魔の世界にはこっちの世界の権力者に顔が利く者もいるの。お兄様もその一人。私は、不服だけどその繋がりで駒王町を管理し、学生として生活をしている。だけど、町を管理する仕事はちゃんとしているわ」

 

「はぁ……それでなにが今の話に繋がるんですか……?」

 

「……駒王町に居候をしに来る人がいるなんていう報告は受けていないわ。少なくとも、私の方からは」

 

 それ、って……

 

「……確証は持てないわ。本当になんのこともない海外出張で、駒王町に住むあなたの家が都合のいい仮屋にできるだけっていうこともある」

 

 けど。部長はそう言って私の顔に向けて、人差し指を立てた。

 

「あなたがこの世界に関わるようになった堕天使騒動、あれもその筋からの連絡が切っ掛けで判明した騒ぎでもあるの。……改めて忘れないで。あなたはもう、悪魔(わたしたち)や堕天使、教会とは無関係でいられないっていうことの意味を」

 

 部長は「それじゃあ」と言って、私が帰る道とは真逆の方へと歩いて行った。

 

◆◇◆

 

「ソーくん。ソーくん達は『教会』から来た人達なの?」

 

 学校から家に帰ってきた一誠はにべもなくオレ達三人を集めて問うてきた。突然『そのこと』を話題に出されてオレ達は……特にオレとイリナは信じられないものを見るような目で一誠を見てしまっていた。

 

「い……イッくん……なんでそのこと」

 

「やっぱり」

 

 動揺してつい言葉を漏らしたイリナの言葉を一誠は聞き逃さなかった。しまったというような顔で口を押さえたが、もう遅かった。

 

「……わたしね、悪魔の人たちと知り合いなの。ていうか、何度か助けてもらってるの」

 

「なっ」

 

「だから教えて。答えて。ソーくん達はわたしにとって大事な人たちを……殺しちゃうために来たの?」

 

「必要とあらば」

 

 言葉に詰まったオレ達を横目に、ゼノヴィアが答えた。

 

「宿を借りている身分で隠し事をしてしまうようで申し訳ないが、我々は教会の仕事を果たすためにこの駒王町に来た。仕事の障害に……兵藤一誠。キミの言う友人の悪魔がなるというのなら、私達はキミの友人を斬る」

 

「……そう、ですか」

 

 それは、オレ達の総意であることに違いはなかった。邪魔をするなら斬る。斬らなければならない。それほどにオレ達に託された使命は教会にとって……いや、ともすれば三大勢力すべてにとって脅威となる事柄なのだから。

 そして一誠は。

 

「じゃあ、よかった」

 

「え?」

 

 よかった。その言葉を聞いてゼノヴィアは目が点になっていた。一誠は目に見えて安心したような、心配事がまるっとなくなったようにあっけらかんと笑った。

 

「必要なら斬る。っていうことはみんなのやらなきゃいけないお仕事は悪魔を殺すことじゃないんだよね? だからよかったって。わたしの大事な人同士が殺し合わなくて本当によかった」

 

「……キミは」

 

「お仕事、がんばって!」

 

「……キミはおかしな子だな……きっと、誰よりもキミの隣人を愛せる子だ」

 

 混じりっけと屈託さを感じさせない笑顔で一誠は言う。困ったような心配の顔と、それが大丈夫だと知った時の顔。それは数年離れていてもオレ達兄妹には忘れることなんてない表情で──

 

『──ありがとう、アキュラくん──』

 

『──あこがれていたの。家族で食事をすることに。普通の家族みたいですてきだと思わない?──』

 

『──アキュラ、くん──』

 

『アキュラクン ワタシヲコロシテ』

 

『アリガトウ』

 

 ……違う。この子は、あの子じゃないんだ。オレの勝手な未練に巻き込んじゃいけない。もう、オレはあの世界の存在じゃない。

 

「……ありがとう、一誠。夜はどうする? 実は今日おじさんとおばさんは遅くなると伝え聞いている。四人でどこかに行こう」

 

「本当!? じゃあせっかくだからお寿司とか天ぷらとかのお店にしようよ! 二人には久しぶりの日本料理を食べてほしいし、ゼノヴィアさんにも日本のいいとこ見てほしいもん!」

 

 ……神に仕える仕事をするオレ達が言うことではないのであろうが。神よ、オレの願いを聞いてくれ。この子の……オレの優しい妹の望みに応えてほしい。

 

 

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